邪神令嬢の学園事情

りゅうじんまんさま

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プロローグ

五年前の悪夢

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 そして、宿泊者の皆さんの夕食の配膳と後片付けを済ませて、イシズおばさんに作ってもらった賄いを頂いてからシャワーを浴びて寝床につく頃には、すっかり夜も深まる時間になってしまいました。

「偉大なる『女神ハーティルティア』様。今日も健やかな一日をありがとうございます。明日も私たちの事をお護りください」

 私は与えられた自室の隅に祀られた小さな祭壇に祈りを捧げます。

 この世界は、数千年前に『女神ハーティルティア』様が『邪神』によって滅びゆく『神界』の代わりに生み出したものだと言われています。

 その際に『女神ハーティルティア』様も『邪神』や『神界』と共に消滅したのですが、今から千年程前に『女神』の力を持った人間として再び生まれ変わりました。

 ですが、時を同じくして『デスティウルス』という名の『邪神』も復活してしまったのです。

 そして、その後世界中の人類や勇者達と力を合わせた『女神ハーティルティア』様は、今度こそ完全に『デスティウルス』を滅ぼすことに成功しました。

 以来、『女神ハーティルティア』様は全人類の『現人神あらびとがみ』として、千年経った現在も『聖都リーフィア』に御座すそうです。

 私達は、そんな偉大な『女神様』に毎日祈りを捧げたり、休日には各都市にある『女神教会』に足を運んで日々の感謝を捧げています。

「・・おやすみなさい」

 そして、日課の祈りを終わらせた私は、そのまま布団に入りました。

 それから程なくして私は眠りについたのですが、その夢の中で、私にとっては決して忘れる事のできない五年前のとある出来事が映し出されてきたのです。





 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。






「おばあちゃん!!」

「おや、どうしたんだい?アリア?そんなに慌てて走ったら、また転んでしまうよ?」

 そう言いながら、おばあちゃんが私の頭を優しく撫でます。

 私のお父さんとお母さんは、私が生まれてからすぐに流行り病で亡くなってしまいました。

 そして、その後は同居していたおばあちゃんに沢山の愛情をもらいながら育ててもらいました。

 おばあちゃんは自分のしわがれた声や皺だらけになった手が嫌だと言っていましたが、私はいつでも優しく声をかけてくれるおばあちゃんの声や手が大好きでした。

「あのね!今日はこんなに沢山の魔導結晶を集めてきたんだっ!これ全部にマナを込めたら、きっと美味しいものが食べられるよ!!」

 私は、開け放たれた玄関の向こうに停めてある魔導三輪トラックの荷台に積んでいる大量の魔導結晶を指差しました。

 魔導三輪は本来『女神教会』で本洗礼を受けて成人と認められる十五歳になってから運転する乗り物です。

 しかし、それは所詮建前だけで、小さい頃から親の仕事を手伝うような田舎の子供達は、魔導三輪をわりと早い段階で乗りこなしてしまいます。

 私がおばあちゃんと住んでいる此処『ライズ』の町は、『ヨークスカ』の造船所に卸す資材や部品を作る工場が建ち並ぶ工場町です。

 そして、私は高齢で働けないおばあちゃんの代わりに、工場を巡っては職人さんから工具に使われている魔導結晶を預かってマナを込める代わりにお金を貰って生計を立てています。

 といっても、本来大きな工場には魔導結晶にマナを充填する為の『発導機』が置いてあるので、その稼ぎは本当に私みたいな子供にお駄賃をあげるような微々たるものです。

「こんなに沢山!?最近おおいねぇ・・工場が忙しいような用事があるのかねぇ?」

 確かに、ここ最近は充填を頼まれる魔導結晶の数が多い気がします。

 特に、『魔導機甲マギ・マキナ』を製造するレゾニア重工の職人さん達からの依頼が多いです。

魔導機甲マギ・マキナ』とは、二十メートル近い大きさをした、人が中に乗り込んで操作できる巨大な人型の魔導具です。

魔導機甲マギ・マキナ』は、千年前の『邪神デスティウルス』との戦いの時に、勇者であり魔導工学博士であったクラリス様・二アール様のお二方によって発明されました。

 以来、『魔導機甲マギ・マキナ』は各自治国の騎士団に配備されたり、土木・建設作業用の魔導具として広く普及しました。

 そして、その世界シェア一番の製造元が、勇者クラリス様の生家であるレゾニア公爵家が運営されるレゾニア重工なのです。

「じゃあ、いつも通りがんばるよ!えいっ!」

 私は荷台の上に積んである魔導結晶が詰まった箱の一つに手をかざすと、マナを込めはじめます。

 すると、瞬く間に箱の中にある大小様々な魔導結晶にマナが込められて光り輝き始めます。

「アリアのマナは本当に底なしだねぇ、大昔は高位の魔導士でも一つ一つ込めるのが関の山だったらしいけどねえ・・」

 おばあちゃんは私がマナを込めると、いつも不思議そうに首を傾げます。

 確かに、私はどれだけ沢山の魔導結晶にマナを込めても全くマナ切れを起こさないのです。

 でも、黒髪の私がマナを込めれることが知られたら化け物扱いされるかもしれないので、この事はおばあちゃんと私だけの秘密です。

 ちなみに、職人さん達には亡くなった両親が昔にスクラップを寄せ集めて修理した発導機でマナを充填していると嘘をついています。

 本来、あらゆる物はその材質によって『マナ抵抗』というものがあって、マナを流すと次第に劣化してしまいます。

 なので、本来発導機もマナ劣化によって、定期的に高価なコアを交換しないといけないので、そろそろそんな嘘も通用しなくなるかもしれません。

 おばあちゃんの為にも、魔導結晶にマナを込める以外にお金を稼ぐ方法を考えないといけません。

 おそらく、この町に住む住民の殆どが工場勤めなので、私も成人したら何らかの形で工場に働きに出る事になると思いますが・・。

「よし、おわった!じゃあ、私は昨日預かった魔導結晶を返してきてから、市場で今日の夕御飯のおかずを買ってくるよ!」

「今日は豪勢なおかずにできると思うから、楽しみにしててね!」

 私はおばあちゃんに声をかけながら、荷台に積んである箱を昨日預かった魔導結晶が入ったものと入れ替えます。

 これも、嘘がバレないための工夫です。

 預かった魔導結晶がすぐに戻って来たら不自然ですからね。

「気をつけて行くんだよ」

「はーい!」

 積み込みが終わって運転席に座った私は、慣れた手つきで魔導三輪を始動します。

 ちなみに、私にかかれば魔導三輪に搭載された魔導結晶にだってマナを込め放題なので、維持費も安上がりです。

 カタタタタ・・・・。

「今日は白米にお肉!それに新鮮な魚も買えるよね!嬉しいなあ!」

 私は今日の晩御飯を考えながらハンドルを握ります。

「そうと決まれば、いい食材がなくなる前に市場へいかなくっちゃ!!」

 そして、無事に工場へ魔導結晶を引き渡して小金を手に入れた私は、市場で望みの食材を手にすることができました。
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