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第一章 入学編
新しい私
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「大母上!発言してもよろしいでしょうか!」
私が困惑していると、レオンハルト殿下が興奮した様子でハーティルティア様に声をかけました。
「レオンハルト殿下。その前に忠告しますが、公の場でハーティルティア様をそのように呼ぶことはなりません」
「リリス・・まあ、いいじゃない」
「いいえ、なりません。『神帝国』の下、『自治国』全ての立場は平等です」
「他国の重鎮もいる中、『イルティア自治国』王家がハーティルティア様の事を『大母上』と呼ぶのは他国に対するマウンティングと思われかねません」
「特に『魔導国家オルテアガ自治国』のオルクス国王陛下もいらっしゃるのですよ?」
「っ!?申し訳ありません・・興奮してしまい、つい・・」
リリス様に嗜められたレオンハルト殿下が顔色を悪くします。
「まあまあ・・リリス、そのへんにしておいて・・レオンハルト君、何か私に言いたいのよね?」
「は・・はいっ!アリア・・嬢がナラトス様とニアール様の正当な後継者となるのでしたら、『神帝国』預かりとなったお二方の爵位について一考頂けませんか!?」
レオンハルト様は、先ほどから焦っているような様子を見せています。
一体、どうしたのでしょうか。
「・・・確かに、今までの歴史の流れでは正当な『神器』の所有者には、何らかの地位が与えられています・・それに例外はありません」
「私もかつては平民でしたが、ハーティさんに『神聖魔導甲冑』を賜った際、『聖騎士』の地位と『騎士爵位第一位』の位を賜りました」
シエラ様はそう言いながら、胸当てに手をやりました。
「それに・・レオンハルト殿下の言う通り、ナラトスとニアールは『貴族籍』を捨てて『ヨークスカ』に隠居しましたが、結局当時の帝国はそれを受理しないまま、その件については『神帝国』預かりになりました」
リリス様がシエラ様の言葉に続きます。
「つまり、ナラトスとニアールから預かった『貴族籍』は今もまだ有効という事ね」
「そうなります。ニアールの生家である『ソフィミア伯爵家』は『邪神』討伐の武勲として『公爵位』に陞爵しています」
「そして、ニアールの実父である当時の公爵は、一族の総意でニアールへ自らの爵位を譲渡しています」
「以後、ニアールの預かり知らないまま『ソフィミア公爵』の位は『神帝国』預かりとなりました」
「『神帝国』の貴族法に則れば、アリアさんが『メルティーナ』の正当な所有者でナラトスとニアールの子孫であるならば、当然に『公爵位』を継ぐ権利を有していると言えます」
「ふぇっ!?」
私は突然の話に戸惑うばかりです。
『ヨークスカ』で宿屋の給仕をしている小娘な私にとっては、自分がナラトス様とニアール様の子孫という事や『邪神』の生まれ変わりという事さえすんなり受け入れられません。
なのに、突然『貴族になれ』と言われても頭の整理がつきません。
「いずれにせよ、現在自治国全ての王位と貴族位の任命権者は女神帝陛下であらせられるハーティルティア様です。ご判断を」
「お、お待ちください!!それについてはこの場ではなく一考の機会を・・・」
リリス様の言葉を聞いたライオネル侯爵が、何故か突然慌て始めました。
「ライオネル卿、ハーティさんの判断に意見するとは、余程自身が偉いと思っているようですね。なら、代わりに玉座に座ったらどうです?」
シエラ様の口調は穏やかですが、鋭い視線からは凄まじい殺気が溢れています。
シエラ様は普段愛嬌溢れるお方ですが、『女神様』への不敬は絶対に許さないことで有名です。
「はっ・・はっ・・はっ・・そ・・そんなっ!めっ滅相もございませんっ!!」
かつて『邪神』を滅ぼした武人の殺気に当てられたライオネル侯爵は呼吸もままならない様子で平伏しました。
「まあまあ、シエラちゃん・・落ち着いて、ね?」
「はっ!?す、すいません!つい・・・」
ハーティルティア様に嗜められたシエラ様は、獣耳をぺたんと畳んでしゅんとしています。
・・シエラ様、可愛いです。
・・正直、モフりたいです。
はっ!?・・私はどうやら現実逃避に走っているようです。
「こほん、話が逸れちゃったけど・・私としてはアリアちゃんに爵位をあげるのに異存はないわ」
「そんなっ!?む、無理です!私が貴族だなんて!?」
私は不敬と思いながらも声を上げます。
『公爵』といえば、貴族の中でも最上位です。
それに、政治上の重要な役割や広大な領地の管理も必要と聞きます。
どう考えても、たかが町娘の私には荷が重すぎます。
「大丈夫よ、アリアちゃん。『ソフィミア公爵家』の領地は公爵に陞爵した時から『オルテアガ自治国』が管理しているわ」
「それに、『ソフィミア公爵』の主たる役割は『軍事貴族』。つまり、有事の際に武力をもって『神帝国』の矛となる事よ」
「その点、人工女神の『騎士』で、『ナラトス』の力を受け継ぐアリアちゃんにはぴったりの役割よ」
「と言っても・・この千年間で『軍事貴族』が必要になる事態は一度もなかったけどね」
「当たり前です、ハーティさんに仇なす存在なんていれば、私が『聖騎士』の名の下に塵一つ残さず滅ぼします!!」
「シエラちゃんが本気で戦ったら大陸の地図を描き変えないといけないから本気でやめて!・・・はぁ、最近シエラちゃんが昔のユナみたいになってきて心配よ・・」
ハーティルティア様はそう言いながら頭を抱えました。
その時、オルクス国王陛下が手を上げました。
「よろしいでしょうか」
「どうしたんですか、オルクスさん?」
「我々としてはハーティルティア様の決定に意見するつもりは全くございません」
「ですが、いくら『軍事貴族』とは言え、貴族である以上はある程度の『社交』は必要になります。その点は、アリア嬢の言う通り、少々荷が重いかと・・」
「うーん、たしかに・・」
よかったです。
オルクス国王陛下の進言のおかげで、もしかしたら貴族にならなくて済むかもしれません。
「ハ・・ハーティルティア様!!わ、わたくしからも一つご提案がこざいます!」
続いて、マリア様が挙手しながら声をあげました。
「どうしたの?マリアちゃん」
マリア様の言葉に、ハーティルティア様が愛らしく首を傾げます。
「は、はい!もしおねぇさ・・アリア様が貴族になられるのでしたら!我が国の『イルティア騎士貴族学園』へ通って頂くのはいかがでしょうか!」
マリア様!せっかく貴族にならなくて済みそうな話になっているのに余計なことを言わないで欲しいです!!
「『イルティア騎士貴族学園』は未来の騎士や紳士、淑女を育成する専門機関です」
「アリア様にはそこで、一から貴族としての振る舞いを学んでいただくのです!」
「それに、アリア様が今後人工女神の正式な『騎士』となられるのでしたら、『騎士』のカリキュラムも併せて受けて頂くべきだと思います!」
「もちろん、我が国はアリア様を『特待生』として迎える意向ですわ!ねぇ?お兄様!!」
「あ、ああ・・だが、マリア・・その話は私からハーティルティア様に奏上しようと思ったんだが」
「それは、お兄様が遅いからですわ!(そんな様子でしたらディートリヒ殿下にお義姉様を掻っ攫われますわよっ)」
「ぐっ!?」
「ふうん、なるほどね・・アリア嬢を囲い込むのが目的というわけか。この謁見も最初からそのつもりだったな?」
「さて、なんのことかな?」
・・何やらレオンハルト殿下とディートリヒ殿下の間で不穏な空気が流れていますが、私はそれどころではありません。
つまり、私はこれから貴族だらけの学校に通うことになります。
本当に、私が貴族としての振る舞いをする事ができるのでしょうか。
「まあ、とにかく!私ができるのはアリアちゃんに爵位を与える事までよ。あとは自治国の皆さんに委ねるわ」
「その為の『自治国』なのだから」
そして、ハーティルティア様は私に淡く光る白銀の目を向けました。
「けど、アリアちゃん。あなたにはナラトスとニアールが遺したものを受け継いで欲しいという私の気持ちは本当よ」
「アリアちゃんは、今まで自分が『邪神』の生まれ変わりだったらどうしようと思っていたのでしょう?」
「っ!?」
驚きました。
ハーティルティア様には私の気持ちがお見通しだったようです。
「でも、勘違いしないでね。ナラトスは確かに『邪神』だったけど、私にとってはかけがえのない大切な『仲間』だったのよ」
「だから、アリアちゃんにはナラトスの生まれ変わりだと言う事に誇りを持って欲しいわ」
「これからアリアちゃんの生活は大きく変わってしまうかもしれない」
「けど、きっとみんながあなたのことを助けてくれるわ」
私は『邪神』ではなく、『ナラトス様』の生まれ変わり・・。
その言葉を聞いた瞬間、私の心の中にあった枷が外れたような気がしました。
私は溢れそうになる涙を堪えながら、ハーティルティア様をしっかりと見据えました。
「・・わかりました、ニアール様・・そして、ナラトス様の遺したもの、私が大切にします!」
「アリア・・」
「お義姉様・・」
私の言葉を聞いて、レオンハルト殿下とマリア様が感動したように瞳を潤ませます。
「・・ありがとう」
ハーティルティア様はゆっくりと頷くと目の前に魔導式を展開しました。
ズズズズ・・・。
そして、その魔導式に右手を触れると、そこからゆっくりと一本の剣を引き抜きました。
ハーティルティア様が引き抜いたのは、一振りの神白銀剣《プラティウム・ソード》でした。
その剣は『女神教』信者であれば、誰でも知っている伝説の『神剣』です。
「『女神の絆』・・・」
私は、目の前に現れた剣の名を口にします。
『女神の絆』は、かつてハーティルティア様の大切な専属侍女であらせられた初代『聖騎士』の『ユナ・エインヘリアル』様に下賜されたものです
そして、ユナ様が老衰で亡くなられた後も、ハーティルティア様が大切に保管されているという『神剣』です。
ハーティルティア様は『女神の絆』を携えると、私の目の前へゆっくりと歩み寄ります。
そして、『女神の絆』を両手に持って掲げました。
「『女神ハーティルティア』の名の下に、『神器』の正当な所有者であるアリアへ『ソフィミア公爵位』を授ける」
「以後、アリアはソフィミア公爵家当主として『アリア・フォン・ソフィミア』と名乗ることを認める」
ハーティルティア様は口上を述べると、『女神の絆』の刀身で私の両肩へ順番に触れました。
パパァーーー!!
「「ワアァァァァ」」
パチパチパチパチ!!
直後、謁見の間に拍手と歓声が響き渡りました。
そして、この瞬間・・。
私、『アリア』は『アリア・フォン・ソフィミア』になったのです。
私が困惑していると、レオンハルト殿下が興奮した様子でハーティルティア様に声をかけました。
「レオンハルト殿下。その前に忠告しますが、公の場でハーティルティア様をそのように呼ぶことはなりません」
「リリス・・まあ、いいじゃない」
「いいえ、なりません。『神帝国』の下、『自治国』全ての立場は平等です」
「他国の重鎮もいる中、『イルティア自治国』王家がハーティルティア様の事を『大母上』と呼ぶのは他国に対するマウンティングと思われかねません」
「特に『魔導国家オルテアガ自治国』のオルクス国王陛下もいらっしゃるのですよ?」
「っ!?申し訳ありません・・興奮してしまい、つい・・」
リリス様に嗜められたレオンハルト殿下が顔色を悪くします。
「まあまあ・・リリス、そのへんにしておいて・・レオンハルト君、何か私に言いたいのよね?」
「は・・はいっ!アリア・・嬢がナラトス様とニアール様の正当な後継者となるのでしたら、『神帝国』預かりとなったお二方の爵位について一考頂けませんか!?」
レオンハルト様は、先ほどから焦っているような様子を見せています。
一体、どうしたのでしょうか。
「・・・確かに、今までの歴史の流れでは正当な『神器』の所有者には、何らかの地位が与えられています・・それに例外はありません」
「私もかつては平民でしたが、ハーティさんに『神聖魔導甲冑』を賜った際、『聖騎士』の地位と『騎士爵位第一位』の位を賜りました」
シエラ様はそう言いながら、胸当てに手をやりました。
「それに・・レオンハルト殿下の言う通り、ナラトスとニアールは『貴族籍』を捨てて『ヨークスカ』に隠居しましたが、結局当時の帝国はそれを受理しないまま、その件については『神帝国』預かりになりました」
リリス様がシエラ様の言葉に続きます。
「つまり、ナラトスとニアールから預かった『貴族籍』は今もまだ有効という事ね」
「そうなります。ニアールの生家である『ソフィミア伯爵家』は『邪神』討伐の武勲として『公爵位』に陞爵しています」
「そして、ニアールの実父である当時の公爵は、一族の総意でニアールへ自らの爵位を譲渡しています」
「以後、ニアールの預かり知らないまま『ソフィミア公爵』の位は『神帝国』預かりとなりました」
「『神帝国』の貴族法に則れば、アリアさんが『メルティーナ』の正当な所有者でナラトスとニアールの子孫であるならば、当然に『公爵位』を継ぐ権利を有していると言えます」
「ふぇっ!?」
私は突然の話に戸惑うばかりです。
『ヨークスカ』で宿屋の給仕をしている小娘な私にとっては、自分がナラトス様とニアール様の子孫という事や『邪神』の生まれ変わりという事さえすんなり受け入れられません。
なのに、突然『貴族になれ』と言われても頭の整理がつきません。
「いずれにせよ、現在自治国全ての王位と貴族位の任命権者は女神帝陛下であらせられるハーティルティア様です。ご判断を」
「お、お待ちください!!それについてはこの場ではなく一考の機会を・・・」
リリス様の言葉を聞いたライオネル侯爵が、何故か突然慌て始めました。
「ライオネル卿、ハーティさんの判断に意見するとは、余程自身が偉いと思っているようですね。なら、代わりに玉座に座ったらどうです?」
シエラ様の口調は穏やかですが、鋭い視線からは凄まじい殺気が溢れています。
シエラ様は普段愛嬌溢れるお方ですが、『女神様』への不敬は絶対に許さないことで有名です。
「はっ・・はっ・・はっ・・そ・・そんなっ!めっ滅相もございませんっ!!」
かつて『邪神』を滅ぼした武人の殺気に当てられたライオネル侯爵は呼吸もままならない様子で平伏しました。
「まあまあ、シエラちゃん・・落ち着いて、ね?」
「はっ!?す、すいません!つい・・・」
ハーティルティア様に嗜められたシエラ様は、獣耳をぺたんと畳んでしゅんとしています。
・・シエラ様、可愛いです。
・・正直、モフりたいです。
はっ!?・・私はどうやら現実逃避に走っているようです。
「こほん、話が逸れちゃったけど・・私としてはアリアちゃんに爵位をあげるのに異存はないわ」
「そんなっ!?む、無理です!私が貴族だなんて!?」
私は不敬と思いながらも声を上げます。
『公爵』といえば、貴族の中でも最上位です。
それに、政治上の重要な役割や広大な領地の管理も必要と聞きます。
どう考えても、たかが町娘の私には荷が重すぎます。
「大丈夫よ、アリアちゃん。『ソフィミア公爵家』の領地は公爵に陞爵した時から『オルテアガ自治国』が管理しているわ」
「それに、『ソフィミア公爵』の主たる役割は『軍事貴族』。つまり、有事の際に武力をもって『神帝国』の矛となる事よ」
「その点、人工女神の『騎士』で、『ナラトス』の力を受け継ぐアリアちゃんにはぴったりの役割よ」
「と言っても・・この千年間で『軍事貴族』が必要になる事態は一度もなかったけどね」
「当たり前です、ハーティさんに仇なす存在なんていれば、私が『聖騎士』の名の下に塵一つ残さず滅ぼします!!」
「シエラちゃんが本気で戦ったら大陸の地図を描き変えないといけないから本気でやめて!・・・はぁ、最近シエラちゃんが昔のユナみたいになってきて心配よ・・」
ハーティルティア様はそう言いながら頭を抱えました。
その時、オルクス国王陛下が手を上げました。
「よろしいでしょうか」
「どうしたんですか、オルクスさん?」
「我々としてはハーティルティア様の決定に意見するつもりは全くございません」
「ですが、いくら『軍事貴族』とは言え、貴族である以上はある程度の『社交』は必要になります。その点は、アリア嬢の言う通り、少々荷が重いかと・・」
「うーん、たしかに・・」
よかったです。
オルクス国王陛下の進言のおかげで、もしかしたら貴族にならなくて済むかもしれません。
「ハ・・ハーティルティア様!!わ、わたくしからも一つご提案がこざいます!」
続いて、マリア様が挙手しながら声をあげました。
「どうしたの?マリアちゃん」
マリア様の言葉に、ハーティルティア様が愛らしく首を傾げます。
「は、はい!もしおねぇさ・・アリア様が貴族になられるのでしたら!我が国の『イルティア騎士貴族学園』へ通って頂くのはいかがでしょうか!」
マリア様!せっかく貴族にならなくて済みそうな話になっているのに余計なことを言わないで欲しいです!!
「『イルティア騎士貴族学園』は未来の騎士や紳士、淑女を育成する専門機関です」
「アリア様にはそこで、一から貴族としての振る舞いを学んでいただくのです!」
「それに、アリア様が今後人工女神の正式な『騎士』となられるのでしたら、『騎士』のカリキュラムも併せて受けて頂くべきだと思います!」
「もちろん、我が国はアリア様を『特待生』として迎える意向ですわ!ねぇ?お兄様!!」
「あ、ああ・・だが、マリア・・その話は私からハーティルティア様に奏上しようと思ったんだが」
「それは、お兄様が遅いからですわ!(そんな様子でしたらディートリヒ殿下にお義姉様を掻っ攫われますわよっ)」
「ぐっ!?」
「ふうん、なるほどね・・アリア嬢を囲い込むのが目的というわけか。この謁見も最初からそのつもりだったな?」
「さて、なんのことかな?」
・・何やらレオンハルト殿下とディートリヒ殿下の間で不穏な空気が流れていますが、私はそれどころではありません。
つまり、私はこれから貴族だらけの学校に通うことになります。
本当に、私が貴族としての振る舞いをする事ができるのでしょうか。
「まあ、とにかく!私ができるのはアリアちゃんに爵位を与える事までよ。あとは自治国の皆さんに委ねるわ」
「その為の『自治国』なのだから」
そして、ハーティルティア様は私に淡く光る白銀の目を向けました。
「けど、アリアちゃん。あなたにはナラトスとニアールが遺したものを受け継いで欲しいという私の気持ちは本当よ」
「アリアちゃんは、今まで自分が『邪神』の生まれ変わりだったらどうしようと思っていたのでしょう?」
「っ!?」
驚きました。
ハーティルティア様には私の気持ちがお見通しだったようです。
「でも、勘違いしないでね。ナラトスは確かに『邪神』だったけど、私にとってはかけがえのない大切な『仲間』だったのよ」
「だから、アリアちゃんにはナラトスの生まれ変わりだと言う事に誇りを持って欲しいわ」
「これからアリアちゃんの生活は大きく変わってしまうかもしれない」
「けど、きっとみんながあなたのことを助けてくれるわ」
私は『邪神』ではなく、『ナラトス様』の生まれ変わり・・。
その言葉を聞いた瞬間、私の心の中にあった枷が外れたような気がしました。
私は溢れそうになる涙を堪えながら、ハーティルティア様をしっかりと見据えました。
「・・わかりました、ニアール様・・そして、ナラトス様の遺したもの、私が大切にします!」
「アリア・・」
「お義姉様・・」
私の言葉を聞いて、レオンハルト殿下とマリア様が感動したように瞳を潤ませます。
「・・ありがとう」
ハーティルティア様はゆっくりと頷くと目の前に魔導式を展開しました。
ズズズズ・・・。
そして、その魔導式に右手を触れると、そこからゆっくりと一本の剣を引き抜きました。
ハーティルティア様が引き抜いたのは、一振りの神白銀剣《プラティウム・ソード》でした。
その剣は『女神教』信者であれば、誰でも知っている伝説の『神剣』です。
「『女神の絆』・・・」
私は、目の前に現れた剣の名を口にします。
『女神の絆』は、かつてハーティルティア様の大切な専属侍女であらせられた初代『聖騎士』の『ユナ・エインヘリアル』様に下賜されたものです
そして、ユナ様が老衰で亡くなられた後も、ハーティルティア様が大切に保管されているという『神剣』です。
ハーティルティア様は『女神の絆』を携えると、私の目の前へゆっくりと歩み寄ります。
そして、『女神の絆』を両手に持って掲げました。
「『女神ハーティルティア』の名の下に、『神器』の正当な所有者であるアリアへ『ソフィミア公爵位』を授ける」
「以後、アリアはソフィミア公爵家当主として『アリア・フォン・ソフィミア』と名乗ることを認める」
ハーティルティア様は口上を述べると、『女神の絆』の刀身で私の両肩へ順番に触れました。
パパァーーー!!
「「ワアァァァァ」」
パチパチパチパチ!!
直後、謁見の間に拍手と歓声が響き渡りました。
そして、この瞬間・・。
私、『アリア』は『アリア・フォン・ソフィミア』になったのです。
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