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第一章 入学編
『黒の君』 〜第一章エピローグ〜
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凍てつく永久凍土が果てしなく続く大地。
同じく、冷たく黒い海は静かに揺らめく。
そこは、この世界の『存在』全ての始まりの地と言われる『サウスポイント』と呼ばれていた。
『サウスポイント』に穿たれた大地の大孔は直径数百メートルにも及び、その底は知れない。
そして、その大孔からは常に膨大なエーテルが溢れ出していた。
今から千年前に『女神ハーティルティア』率いる勇者達と『邪神デスティウルス』の決戦地となったこの場所は、今では最新の魔導工学の研究の為に様々な施設が建設されていた。
そして、それら施設の中でも一際巨大な敷地面積を持つものがあった。
『邪神デスティウルス』討伐の勇者『クラリス』の生家であり、その後栄華を極めた『レゾニア公爵家』が管理するその敷地は、凍てつく大地には似合わない程の広さを持っていた。
そして、一つの街と言っても過言ではない程の広さを持った敷地内に存在する大小様々な施設の中でも一番大きい建物は、まるで一国の宮殿のようであった。
その建屋の中心部は高さ数十メートルにも及ぶ塔になっており、それを囲うようになっている五階建ての建屋すら数百メートルに及ぶ。
建屋の中心に聳え立つ塔の最上部は広大な広間となっていて、部屋の最奥は数ある玉座の間のように一段高くなっていた。
そして、その広間の最奥に設けられた壇上に、一人の少女が佇んでいた。
その姿はどう見ても十代中ごろの少女のようであり、緩やかに巻かれている長髪とふさふさの睫毛に囲われた大きな瞳が愛らしく、陶磁器のように白い身体を包む多数のフリルとリボンをあしらった漆黒のドレスを見れば、どこかの貴族の子女のように見えた。
しかし、彼女の持つ一番の特徴は、美しい長髪と瞳が白銀色に輝いていることであった。
そして、その少女の前に一人の壮年の美丈夫が歩み寄ってきて跪いた。
その男は魔導銀糸であしらわれた緻密な意匠が美しい貴族服をぴっちりと着こなし、ロマンスグレーの短髪をセンターで分けていた。
同じくグレーの瞳を収めた目は切長で、その全身からは言いようもない高貴さを醸し出していた。
「戻りましたのね、アルヴァイン」
「はい、ただ今『黒の君』の御前に」
『アルヴァイン』と呼ばれた男は恭しく頭を垂れた。
「『ヒメツバキ』奪取の件、ご苦労でしたわ」
「お気遣いいただき、恐悦至極に存じます」
アルヴァインは一礼すると、『黒の君』の身体へ目を向けた。
「それはそうと、新しい『器』は如何ですか?」
アルヴァインの言葉を聞いた『黒の君』は、自身の身体を見下ろした。
「ん?この『自動人形』ですか?今回のはとても良い出来ですわ。特にこの造形・・かなり『本来の姿』を再現できていましてよ?」
そう言いながら少女がうっとりとした表情をして腕を上げた時、僅かな駆動音が聞こえてきた。
「ですが、あの『聖騎士シエラ』と『聖杖エーテリア』を持つ『女神』!!忌々しいですわ!!」
「特に『聖杖の女神』の方!!リリがシエラによって『サウスポイント』に転移させられた直後、不意打ちのように『神技』を放ってきたあの女型は許せませんわ!」
『黒の君』はかつての真名に因んで、自身のことを『リリ』と名乗っていた。
「そのせいで『存在』を維持できなくなったリリは千年もの間、この『サウスポイント』で回復を待つ羽目になったのですから!!」
「けれど、『聖杖エーテリア』のせいでリリの『存在』の殆どが失われ、その後『サウスポイント』のエーテルを使って『存在』を回復したことで、肉体の再生能力は失われましたわ」
「あげく、他の肉体を乗っ取ることすらできなくなってしまったから、こんな『自動人形』にリリの『存在』を移すことでしか『存在』を維持できなくなってしまったのですわ!」
『黒の君』は悔しそうに顔を歪めると、自身の髪を一房手に取った。
「まあ・・リリの髪が『おねえさま』とお揃いになった事だけは喜ばしいですけれど」
「とにかく、『デスティウルス』様が『女神』等に討伐されてしまった今、『邪神』の悲願を叶えることが出来るのはリリだけですわ」
「けれど、今のままではとても『おねえさま』方には太刀打ち出来ませんわ」
「・・ですから、さらに強力な『器』が必要、という事ですね」
「そう言う事ですわ」
「今回、リリ達は『ヒメツバキ』を手に入れましたわ」
「これで、計画も早まるというものですわね!」
「ああ・・千年前!あの時、結局『おねえさま』と戦う事が出来なかったのが心残りでしたの!」
「けれど、もうすぐその願いも達成できそうですわ!」
「と、いうわけでアルヴァイン?貴方には計画を一段階早めて頂きますわよ」
「・・『黒の君』の仰せのままに」
「我が一族や商会の全てを使って、必ずや貴方様の悲願を達成させて見せましょう」
「うふふふふ」
『黒の君』はアルヴァインの言葉を聞いて微笑んだ。
「如何されました?」
「うふふふふ・・いえ、皮肉な話ですわね」
「千年前、かつて『おねえさま』と共に戦った勇者の末裔が、こうしてリリの前に跪いているのですから!」
「そうでしょう?『アルヴァイン・フォン・レゾニア』公爵閣下?」
「・・過去は過去、今は今ですから」
アルヴァインはそう言うと、再び頭を垂れた。
「では、引き続き世界中からありったけの魔導銀と使えそうな武器をかき集めてくださる?」
「『レゾニア』の名にかけて必ず・・では御前失礼致します」
「あら?もう行ってしまわれますの?」
「ええ、これでも『神帝国』の『公爵』は忙しい身でしてね」
そう言って口角を上げたアルヴァインは、そのまま踵を返して広間から立ち去っていった。
「うふふふ・・『おねえさま』」
「なにも、神白銀を錬金できるのは『おねえさま』だけでは無いのですわ!」
「ですから、リリが『おねえさま』に相応しい『器』を手に入れた時、リリは『おねえさま』へ会いに行きますわ!」
「うふふふ・・あはははは!!」
そう言って、『黒の君』は邪悪に嗤った。
-Continue to the next chapter....-
同じく、冷たく黒い海は静かに揺らめく。
そこは、この世界の『存在』全ての始まりの地と言われる『サウスポイント』と呼ばれていた。
『サウスポイント』に穿たれた大地の大孔は直径数百メートルにも及び、その底は知れない。
そして、その大孔からは常に膨大なエーテルが溢れ出していた。
今から千年前に『女神ハーティルティア』率いる勇者達と『邪神デスティウルス』の決戦地となったこの場所は、今では最新の魔導工学の研究の為に様々な施設が建設されていた。
そして、それら施設の中でも一際巨大な敷地面積を持つものがあった。
『邪神デスティウルス』討伐の勇者『クラリス』の生家であり、その後栄華を極めた『レゾニア公爵家』が管理するその敷地は、凍てつく大地には似合わない程の広さを持っていた。
そして、一つの街と言っても過言ではない程の広さを持った敷地内に存在する大小様々な施設の中でも一番大きい建物は、まるで一国の宮殿のようであった。
その建屋の中心部は高さ数十メートルにも及ぶ塔になっており、それを囲うようになっている五階建ての建屋すら数百メートルに及ぶ。
建屋の中心に聳え立つ塔の最上部は広大な広間となっていて、部屋の最奥は数ある玉座の間のように一段高くなっていた。
そして、その広間の最奥に設けられた壇上に、一人の少女が佇んでいた。
その姿はどう見ても十代中ごろの少女のようであり、緩やかに巻かれている長髪とふさふさの睫毛に囲われた大きな瞳が愛らしく、陶磁器のように白い身体を包む多数のフリルとリボンをあしらった漆黒のドレスを見れば、どこかの貴族の子女のように見えた。
しかし、彼女の持つ一番の特徴は、美しい長髪と瞳が白銀色に輝いていることであった。
そして、その少女の前に一人の壮年の美丈夫が歩み寄ってきて跪いた。
その男は魔導銀糸であしらわれた緻密な意匠が美しい貴族服をぴっちりと着こなし、ロマンスグレーの短髪をセンターで分けていた。
同じくグレーの瞳を収めた目は切長で、その全身からは言いようもない高貴さを醸し出していた。
「戻りましたのね、アルヴァイン」
「はい、ただ今『黒の君』の御前に」
『アルヴァイン』と呼ばれた男は恭しく頭を垂れた。
「『ヒメツバキ』奪取の件、ご苦労でしたわ」
「お気遣いいただき、恐悦至極に存じます」
アルヴァインは一礼すると、『黒の君』の身体へ目を向けた。
「それはそうと、新しい『器』は如何ですか?」
アルヴァインの言葉を聞いた『黒の君』は、自身の身体を見下ろした。
「ん?この『自動人形』ですか?今回のはとても良い出来ですわ。特にこの造形・・かなり『本来の姿』を再現できていましてよ?」
そう言いながら少女がうっとりとした表情をして腕を上げた時、僅かな駆動音が聞こえてきた。
「ですが、あの『聖騎士シエラ』と『聖杖エーテリア』を持つ『女神』!!忌々しいですわ!!」
「特に『聖杖の女神』の方!!リリがシエラによって『サウスポイント』に転移させられた直後、不意打ちのように『神技』を放ってきたあの女型は許せませんわ!」
『黒の君』はかつての真名に因んで、自身のことを『リリ』と名乗っていた。
「そのせいで『存在』を維持できなくなったリリは千年もの間、この『サウスポイント』で回復を待つ羽目になったのですから!!」
「けれど、『聖杖エーテリア』のせいでリリの『存在』の殆どが失われ、その後『サウスポイント』のエーテルを使って『存在』を回復したことで、肉体の再生能力は失われましたわ」
「あげく、他の肉体を乗っ取ることすらできなくなってしまったから、こんな『自動人形』にリリの『存在』を移すことでしか『存在』を維持できなくなってしまったのですわ!」
『黒の君』は悔しそうに顔を歪めると、自身の髪を一房手に取った。
「まあ・・リリの髪が『おねえさま』とお揃いになった事だけは喜ばしいですけれど」
「とにかく、『デスティウルス』様が『女神』等に討伐されてしまった今、『邪神』の悲願を叶えることが出来るのはリリだけですわ」
「けれど、今のままではとても『おねえさま』方には太刀打ち出来ませんわ」
「・・ですから、さらに強力な『器』が必要、という事ですね」
「そう言う事ですわ」
「今回、リリ達は『ヒメツバキ』を手に入れましたわ」
「これで、計画も早まるというものですわね!」
「ああ・・千年前!あの時、結局『おねえさま』と戦う事が出来なかったのが心残りでしたの!」
「けれど、もうすぐその願いも達成できそうですわ!」
「と、いうわけでアルヴァイン?貴方には計画を一段階早めて頂きますわよ」
「・・『黒の君』の仰せのままに」
「我が一族や商会の全てを使って、必ずや貴方様の悲願を達成させて見せましょう」
「うふふふふ」
『黒の君』はアルヴァインの言葉を聞いて微笑んだ。
「如何されました?」
「うふふふふ・・いえ、皮肉な話ですわね」
「千年前、かつて『おねえさま』と共に戦った勇者の末裔が、こうしてリリの前に跪いているのですから!」
「そうでしょう?『アルヴァイン・フォン・レゾニア』公爵閣下?」
「・・過去は過去、今は今ですから」
アルヴァインはそう言うと、再び頭を垂れた。
「では、引き続き世界中からありったけの魔導銀と使えそうな武器をかき集めてくださる?」
「『レゾニア』の名にかけて必ず・・では御前失礼致します」
「あら?もう行ってしまわれますの?」
「ええ、これでも『神帝国』の『公爵』は忙しい身でしてね」
そう言って口角を上げたアルヴァインは、そのまま踵を返して広間から立ち去っていった。
「うふふふ・・『おねえさま』」
「なにも、神白銀を錬金できるのは『おねえさま』だけでは無いのですわ!」
「ですから、リリが『おねえさま』に相応しい『器』を手に入れた時、リリは『おねえさま』へ会いに行きますわ!」
「うふふふ・・あはははは!!」
そう言って、『黒の君』は邪悪に嗤った。
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