転生女神は自分が創造した世界で平穏に暮らしたい

りゅうじんまんさま

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第三章 商業国家アーティナイ連邦編

鼓舞

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 屋敷に戻ったハーティ達は、クラリスが言っていた『ハーティにおあつらえ向きな装備』を回収してから、カームクランの中心部にある広場に特設された壇上に立っていた。

 と言うのも、これからエメラダ達を迎え撃つにあたって連邦軍と冒険者や神官達を動かす際に、『女神ハーティルティア』として群衆を激励した方が士気の向上につながるとミウとアキトが判断した為であった。

 そして、二人が招集した数千にもなる連邦軍と冒険者や神官達が続々と広場に集結し始めていた。

「どう?新しいハーティの装備は?」

 クラリスの問いに対して、ハーティはもじもじと身体を縮こませた。

「は・・はずかしいよ」

「はぁ・・・ハーティルティア様・・尊いです。まさに『女神教神話』で描かれる『女神ハーティルティア』様を現実にしたようです!」

 新しいハーティの装備を見たユナは恍惚の表情を浮かべていた。

「『神聖魔導甲冑』を作る際に出来た試作品だったんだけどね。置いておいて正解だったわ。まさにハーティにぴったりの装備ね!」

 クラリスはそう言いながら、満足げに頷いていた。

 恥ずかしそうにしているハーティは、神白銀プラティウムで作られた鎧ドレスを身につけていた。

 それは胸当て、腰当て、腕と脚のアーマーで構成された神白銀プラティウム製の装甲の下に、今までハーティが着ていたようなベアトップのトップスとプリーツのミニスカートのボトムズを豪華にしたようなものを組み合わせた衣装であった。

 そして、同じく神白銀プラティウムで作られた羽根兜がハーティの美しい白銀の長髪と調和して、その姿はまさに世界中の『女神教会』で飾られる絵画に描かれている『女神ハーティルティア』を現実にしたような装いであった。

「あくまで『神聖魔導甲冑』の試作品として作ったものだから、何か特別な魔導式を刻んだものではないけど『女神』として元々の能力が人智を超えているハーティには不要だものね!」

「さしずめ、『神聖魔導甲冑零型』といったところかしら?」

 クラリスの言葉にユナは顎に手をやりながら難色を示した。

「ハーティルティア様の鎧としては『神聖魔導甲冑零型』という名は無骨すぎますね・・・ハーティルティア様、是非身につけられている神聖な鎧にふさわしいお名前を付けてください」

「え!?いや・・その・・・じゃ、じゃあ・・『イルティアの鎧』なんてどうかなっ?」

「なんだか安直な名ま・・「素晴らしいです!まさにハーティルティア様が装着する鎧に相応しい至高の名前です!」」

 クラリスが突っ込む言葉を打ち消すように、ユナがハーティの考えた鎧の名前を賞賛した。

 ハーティ達がそんなやりとりをしている間に群衆がハーティを目にして騒ぎ出しはじめた。

「見ろ!女神ハーティルティア様だ!!」

「おお・・なんと神々しい・・」

「女神様が直接軍を指揮なさるとは・・負ける気がしないな!」

 そんな騒ぎの中、屈強そうな体格を甲冑と兜に身を包んだ一人の武人が騎馬から降りると、ハーティの前で跪いて『最敬礼』をした。

 その男の胸元には魔導銀ミスリル製の女神ハーティルティアを模したペンダントが輝いていた。

「うっ・・・」

 それを見たハーティは眉を顰めた。

「至高なる女神ハーティルティア様。その神々しく美しい御姿を拝見できまして恐悦至極に存じます。某、カームクラン連邦軍総司令官の『シゲノブ・マツダイラ』と申します」

『シゲノブ』という名を聞いたユナは素早く反応した。

「『マツダイラ』?」

「はい、『聖騎士エインヘリアル』様。カームクラン冒険者ギルドの『アキト・マツダイラ』は某の弟にございます」

 そう言うとシゲノブはユナにも恭しく礼をした。

『ユナ・エインヘリアル』がハーティの専属侍女であり、騎士爵位第一位の『聖騎士』としてハーティと共に行動していることは既に『女神教会』によって全世界に知らされており、本人の預かり知らぬところで絶対的な地位を確立していた。

「現時刻を持ちましてカームクラン連邦軍の全権は女神ハーティルティア様へ返還致します。女神様、ご指示を」

「へあっ!?ちょちょちょっ!?待ってください!いきなりそんなこと言われても!?」

 いきなり一国の軍隊が自分の物になると言われ、ハーティは狼狽えた。

「何をおっしゃいます?そもそも『女神教』の教義では人間社会は女神様によってもたらされた借り物なのですよ?ですから我が軍は元より女神ハーティルティア様の物なんです。何の問題もありません」

 シゲノブはさも当たり前のことを言うように答えた。

「あ・・あの!!私は大軍の采配とかはわからないので、軍はシゲノブさんに任せます!もし『カームクラン』に『ワイバーン』が迫ってきたら民衆の避難と迎撃をお願いします!」

「御意に」

 ハーティの言葉を聞いたシゲノブは再び『最敬礼』を行った。

「皆の者!聞いたか!至高なる女神ハーティルティア様は『『カームクラン』防衛のために死力を尽くせ』と仰った!」

「え!?いや、そこまでは言ってな・・」

「貴様らの命はだれのものだ!!」

「「「全ての命は女神ハーティルティア様のものです!!」」」

「違いますっ!」

「これからの戦いは『アーティナイ連邦』が始まって以来の厳しく激しい戦いになるであろう!だが案ずるな!今こうして至高の女神ハーティルティア様が我々の為に顕現された。最早我々に恐れるものはない!例えこの身が戦いで滅びようとも、必ずや『失われた神界ヴァルハラ』へと召されるであろう!」

「これは『聖戦』である!皆、信仰心を胸に抱いて力を振り絞るのだ!」

「「「おおおおお!!!」」」

 シゲノブの言葉にハーティがいちいち突っ込んでいったが、興奮した群衆には全く伝わらなかった。

「では、女神ハーティルティア様。群衆に一言お願いします」

「えっ!?」

 シゲノブにいきなり言葉を振られたハーティが慌てながら周囲を見渡す。

 そこには数千の軍人、冒険者、神官達が一様に期待の眼差しを向けていた。

 ハーティはその光景に緊張して汗を飛ばしながらも何とか言葉を紡いだ。

「あの・・・みなさん・・死なない程度に頑張ってくださいね?」

「「「「「おおおおおおお」」」」」

 ザッザッ!!

「「「女神様万歳ハイルア・イルティア!!」」」

 ザッザッ!!

「「「女神様万歳ハイルア・イルティア!!」」」

 ハーティの辿々しい言葉を聞いた群衆は、皆が全員手持ちの武器を高く掲げながら、聖書にある言葉で女神ハーティルティアを称えていた。

 その大喝采は『カームクラン』中に響き渡り、その士気は最高潮となっていた。

「いや・・これ、どうやって収集つけるのよ・・」

「これこそ、女神ハーティルティア様に対する正しき姿ですね!」

「『女神教』ってなんか民衆を洗脳する魔導でも使ってるわけ?」

「そなたの人望は凄まじいな。『邪神』である私には無いものであるな」

 それを見たクラリス達は平常運転であった。
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