転生女神は自分が創造した世界で平穏に暮らしたい

りゅうじんまんさま

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第三章 商業国家アーティナイ連邦編

『カームクラン』防衛戦1

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「調子に乗るんじゃあないわよ!このクソビッチがぁぁぁ!!」

 エメラダが目を血走らせながら叫びだすと、爆散した右腕の付け根から血肉が伸び出した。

 そして、その伸び出た血肉が捻れて束になると、ものの数秒でエメラダの腕が再生した。

 エメラダは再生した手を開いたり閉じたりして具合を確かめると満足げにわらった。

「うーん、い・い・か・ん・じ!」

 そんなエメラダの様子を見たハーティは驚愕した。

「そんなっ!?治癒魔導も使わずに肉体が再生するなんて聞いたことがないわよ!?」

「お返しにハーティルティアクソビッチの腕も捥いであげるわねぇぇぇ!!」

 シュイイイイン!!

 エメラダはそう言いながら両手から魔弾を出現させると、それをハーティに向かって交互に投擲した。

 ビシュンビシュンビシュン!!

 そして、その後も更に魔弾を生み出すと、次々と投擲した。

「あはははは!あはははは!」

 チュドン!チュドォォン!!

 ハーティを狙ってはいるものの、出鱈目に飛んでいく魔弾は彼方此方あちこちへ衝突して近くの大地や山脈を抉った。

 その内の半分程は狙い通りハーティへと向かってくる為、ハーティはそれを何とか防御魔導で弾いて凌いでいた。

「・・っく!無茶苦茶なやつだわ!」

 辛抱堪らなくなったハーティは無数の魔弾を弾きながら、まるで防御魔導でシールドアタックをするようにエメラダへと真っ直ぐ突っ込んだ。

「ぐぅぅ!?」

「はぁぁぁぁぁぁ!」

 バチバチバチッ!!

「っく!こんなもの!!やあぁぁぁ!」

 ハーティの防御魔導で押し潰されたエメラダはそれを弾くとハーティへ殴りかかってきた。

 バシッ!

「ふんっ!」

 ハーティは飛んできた拳を自分の腕で弾いて受け流すと、そのままエメラダの勢いを利用して背負い投げをした。

「なぁ!?にぃ!?」

 キイィィィン!!ドガァァン!!

 ハーティに投げられたエメラダは、もんどりを打って地面を削りながら飛んでいった。

 その間に、ハーティは向かい合わせた両掌の間に空間を持たせ、そこに自身のマナを一気に込めた。

「はぁぁぁぁぁぁ!」

 ギュンギュン!!

 直後、ハーティによって込められた高出力のマナが白銀の球体となって掌の間で圧縮されていく。

「食らえぇぇぇ!魔導収束砲!!もどきぃぃぃ!」

 ハーティはいよいよ膨大な量になるマナの球体を両手で掴み取ると、両掌で押し出すようにしてエメラダに向かって放った。

 ビィィィシュウウウウ!!

 ハーティが放った高出力のマナは極太の魔光線となって真っ直ぐエメラダへ向かう。

 ビシュアアアアアアア!!

 その光線はエメラダが墜落したであろう大地を消しとばすだけでは飽き足らず、遥か彼方の山脈をいくつも赤熱させて蒸発させていった。

『ちょ!?何よあの馬鹿みたいな威力の魔弾は!?ハーティ!ぶっ放すならちゃんと周りを見てやってね!絶対こっちに飛ばさないでよ!』

 蒸発する山脈に驚いたクラリスは、ピアスによる通信でハーティに釘を刺した。

「はあ・・はあ・・善処するわっ!『善処ってちょっ・・』はあはあ・・っく!」

 しかし、その魔弾でエメラダを滅ぼせたと思っていないハーティはクラリスの突っ込みを無視して、落下地点に向かって飛翔した。

 キイィィィン!

 赤熱してガラス化した大地から揺らめく水蒸気の霧と熱波が風で流されて晴れた頃、エメラダに肉薄したハーティの視界の先にはズタボロ状態から蠢く肉に包まれつつ回復しているエメラダの姿が見えた。

「こーーのーービチグソがぁぁぁぁ!!」

 ハーティが到着する前に完全回復したエメラダが口の端から泡を飛ばして、血走った目をむきながら拳を構える。

 ハーティはそれに向かって全力の飛び蹴りを放った。

「はぁぁぁぁ!」

 ドガァァンァァン!!

「ふんぬぅ!」

 ハーティの大地を穿つ飛び蹴りを腕で受け止めたエメラダは後方の空中に飛ばされながらもその勢いを殺す。

 ハーティはそれを仰ぎ見ると、自分が作ったばかりのクレーターの底で大地を蹴り、再びエメラダへと肉薄した。

「あだだだだだだだ!」

「はぁぁぁぁぁぁぁ!」

 パシシシシシ!!バキッ!ドシュ!シュバババ!!

 ハーティとエメラダはお互いに肉眼では見えない速度の打撃と蹴りの応酬を重ねる。

 その神速の素手喧嘩ステゴロにより巻き上がった暴風が周囲の樹木を薙ぎ倒した。



 ヴヴヴヴヴ・・・。



「・・・・まったく、『女神と邪神のガチバトル』に巻き込まれたら溜まったもんじゃないわ!」

 クラリスは光魔導スクリーンに映り出される人智を超えた激しい戦いを目の当たりにして独り言を漏らした。

『クラリス!よそ見をしている場合じゃないですよ!』

 キラッ!

「うおっと!」

 ガチャリ・・。

 ユナの言葉に気を取り直したクラリスが素早く操縦レバーを操作した。

 バシュウ!

 ビィシュウウウウ!!

 それにより真横へ回避飛行した『プラタナ』のすぐ側を『黒竜バハムート』の『ブレス』が通過した。

『ひぃぃぃ!?あのデカブツがぶっ放してくる『ブレス』はなんとかならないわけ!?』

 バシュウ!

 文句を言う『プラタナ』の側へ『メルティーナ』がやってきた。

『注意をすれば回避するのは難しくないけど、これじゃあこっちが攻撃する暇がないわ!』

『うむ、何か手立てを考えねば防戦一方であるな』

『ハーティや『邪神』も大概だけど、コイツのマナは一体どれだけあるって言うのよ!』

 シュタッ!

 拳を握りしめてプリプリと怒る『プラタナ』の肩部にユナがふわりと着地した。

「何か弱点があればいいのですが、『還元』の魔導が効かない以上、地道に防御魔導を突破してダメージを与えるしかないですね」

「グルルルァァァァァ!!」

 キィィィィィィィ!!

 ユナが『プラタナ』の肩部で顎に手をやって考察する中、再び『黒竜バハムート』が『ブレス』を放つ為に、開け放たれた口腔内にマナを収束し始めた。

『くっ!みんな!回避!』

 クラリスの言葉を皮切りに、その場にいた全員が回避運動を取る。

 しかし、『プラタナ』の急機動に置いて行かれたユナは、飛翔魔導も使わずそのまま真下へ自由落下していた。

 ビシュウウウ!!

 そして、ユナは落下する自分の頭上を過ぎ去る白銀の光条を仰ぎ見ながら目を見開かせた。

「これです!!」

『ユナ!?大丈夫!?『これ』ってどういうことよ!?』

 ヒュウウウ・・。

 今もなお落下するユナが、ピアスを使って『プラタナ』と『メルティーナ』へ声をかけた。

「みなさん、聞いてください。私に一つ、があります」

 ユナはそう言いながら、ブレスを放出し終えた『黒竜バハムート』へと視線を移した。
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