転生女神は自分が創造した世界で平穏に暮らしたい

りゅうじんまんさま

文字の大きさ
154 / 229
第四章 エルフの国リーフィア編

リーフィアの樹海2

しおりを挟む
(どうしよう・・ユナが出たら余計まずい雰囲気になっちゃったよ・・)

(こうなったら私が説得するしか・・・でもいきなり私が出てきて大丈夫かな・・『エルフ』がみんな帝都のシグルドさんみたいな感じだったとしたら混乱を招く気しかないわ・・)

 ガサッ!

 ハーティが今からどうするべきか考えを巡らせていた時に、近くの枝が揺れている音が聞こえてきた。

「ん?」

 ハーティがその音の方へ向いてみると、人工女神アーク・イルティアを上から弓で狙うために移動してきたらしい女性の弓使い『エルフ』と目があった。

「はえあ!?」

 その弓使い『エルフ』はハーティと目が合った瞬間、口と目を大きく開いて言葉にならない声を出した。

「・・・きゅう」

 そして、そのまま意識を手放すと、木の枝から落ちていった。

「え!?あ!ちょ!!」

 ガササササ!!ドサッ!!

「「「!!!」」」

 気絶した『エルフ』は木の枝に引っかかりながら落ちたので目立った外傷はなかったが、突如上から落ちてきた『エルフ』の姿を見たユナ達は動揺を隠せないようであった。

「っ!?大丈夫か!?はっ!?貴様ぁぁ!!貴様に注意を向けている間に仲間に攻撃をするなど何という卑怯な只人だ!成敗してくれる!」

「ええ!!?いや!?誤解ですよ!!」

 仲間が木から転落したのを目の当たりにして頭に血が上った騎士の『エルフ』は、そのまま構えていた剣を振りかぶってユナへ攻撃を始めようとしていた。

「くっ!?やむを得ませんか・・・」

 それに対して、ユナが騎士の『エルフ』を無力化する為に動き始めようとする。

「ちょっと待ってええ!!」

 動き出した二人を見てこれ以上話が拗れたらまずいと判断したハーティは、すぐさま『メルティーナ』から飛び降りてユナ達の前へ立ち塞がった。

 ガキイィィィィン!!

 直後、振り下ろされた剣がハーティの肩口に衝突するが、その攻撃は常時発動している防御魔導によって防がれた。

「「「・・・・」」」

 カランカラン・・・。

 そして、立ち塞がったハーティの姿を見た瞬間、『エルフ』達は皆一様に絶句しながら手にしている武器を落としていた。

 ドサッ!ドサッ!

 更には木に登っていたであろう『エルフ』達数人がボトボトと転落していった。

『なんだか『アーティナイ連邦』に伝わる『蚊取り線香』みたいね』

 クラリスの暢気な言葉に付き合う人間は誰もいなかった。

「なんてことでしょう・・これは夢なのでしょうか?」

 ユナの前にいた女性騎士達は呆けながら膝を地面に落としていった。

 そして、その頬には一筋の涙が伝っていた。

「わたしは・・なんということをしてしまったのだ・・『エルフ』とあろうものが・・至高の女神様に剣を向けてしまった・・」

 そして、ハーティに剣を当ててしまった騎士の『エルフ』は絶望に染まった顔になりながら、地に落ちた魔導銀ミスリルの剣を力なく手に取った。

『あ・・察し・・』

 クラリスが言葉を漏らすと同時に、騎士の『エルフ』は手に取った剣の刃先を首筋に向けて充てがおうとする。

「いや!させませんよ!?」

 ハーティは慌てて自害しようとする騎士の剣を奪い取った。

「ああ!そんな!?御無体な!!せめて騎士として誇りある死を!!」

 剣を奪われた騎士は涙を流しながら平伏してハーティに懇願してきた。

「そんなこと気にしなくていいですから、死ぬなんて馬鹿な真似はやめてください!ほら!そこの『エルフ』さんも勝手に自決しようとしないでください!」

 ハーティに向かって弓を向けたことが自分にとって相当許せない事案らしく、先ほどから複数の『エルフ』達が思い思いの方法で自決を図ろうとしていた。

「あーもう!めんどくさい!ここでの一切の出来事を『女神ハーティルティア』の名において赦します!これ以上この件についてとやかく言うのはこの私が許しません!!」

 ザザッ!

「「「御意」」」

 やけっぱちになったハーティが声高々に宣言すると、『エルフ』達は一糸乱れぬ動きで平伏した。

 そして、先程自害を阻止された騎士『エルフ』がハーティに歩み寄ると、そのまま『最敬礼』の姿勢となった。

「女神様の御慈悲に心から感謝致します。私は『エルフの国リーフィア』の王宮騎士団長を務めている『クロード』と申します。我々『リーフィア』の民は女神様の御降臨を心より嬉しく思います」

「いえ、こちらこそ驚かせてすいません」

 ハーティはそういうとクロードに向かってペコリと頭を下げた。

「いやいや!そんな!恐縮すぎます!それよりも、どうかその敬語をおやめください!『女神様』に畏まられたら、我ら『エルフ』は落ち着かない気分になります!どうか『リーフィア』ではそのような事はおやめください!」

「・・わかりました、じゃあ、気楽に接するようにするわね」

「助かります」

「じゃあ、さっそくだけど私の仲間達を紹介させてもらうわね。みんな!もう降りてきてもいいわよ!」

『まったく、待ちくたびれたわよ!』

 バシュウウウ・・・。

 ハーティの言葉を聞き、クラリス達がボヤきながら人工女神アーク・イルティアから地上に降り立った。

 ズズズ・・・。

 そして、二機の人工女神アーク・イルティアは、そのままそれぞれの収納魔導に格納されていった。

「「「ザワザワ・・・」」」

 そのタイミングに合わせて、周囲にいる『エルフ』達がざわめき始めた。

「やっぱりあたし達の人工女神アーク・イルティアを見たらこうなるわよねえ」

 クラリスはやれやれといった感じで呟いていたが、どうやら『エルフ』達が騒いでいるのは人工女神アーク・イルティアを見たからではなさそうであった。

 何故なら、『エルフ』達は一様にわなわなと震えながらに視線を向けていたからであった。

 そして、その視線の集まる先にはナラトスが立っていた。

「うん?」

 突如『エルフ』達の視線を感じたナラトスは首を傾げていた。

 そして、再び顔を青ざめさせたクロードが、戦慄した様子で口を開いた。

「な・・なんというをした男なのだ・・・!?そこの黒髪の男!貴様ただの人間ではないな!よもや・・『邪神』だというのか!!」

「あっ・・!?そう言えば『エルフ』って種族的に『魂の色がえる』って言ってたのよね・・」

「『エルフ』からすれば我の『魂の色』は恐怖しか与えぬだろうな」

 ハーティはもう一つの誤解が生まれそうな気配を感じで嘆息した。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

転生先の異世界で温泉ブームを巻き起こせ!

カエデネコ
ファンタジー
日本のとある旅館の跡継ぎ娘として育てられた前世を活かして転生先でも作りたい最高の温泉地! 恋に仕事に事件に忙しい! カクヨムの方でも「カエデネコ」でメイン活動してます。カクヨムの方が更新が早いです。よろしければそちらもお願いしますm(_ _)m

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?

たまご
ファンタジー
 アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。  最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。  だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。  女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。  猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!! 「私はスローライフ希望なんですけど……」  この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。  表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

【完結】発明家アレンの異世界工房 ~元・商品開発部員の知識で村おこし始めました~

シマセイ
ファンタジー
過労死した元商品開発部員の田中浩介は、女神の計らいで異世界の少年アレンに転生。 前世の知識と物作りの才能を活かし、村の道具を次々と改良。 その発明は村の生活を豊かにし、アレンは周囲の信頼と期待を集め始める。

異世界ほのぼの牧場生活〜女神の加護でスローライフ始めました〜』

チャチャ
ファンタジー
ブラック企業で心も体もすり減らしていた青年・悠翔(はると)。 日々の疲れを癒してくれていたのは、幼い頃から大好きだったゲーム『ほのぼの牧場ライフ』だけだった。 両親を早くに亡くし、年の離れた妹・ひなのを守りながら、限界寸前の生活を続けていたある日―― 「目を覚ますと、そこは……ゲームの中そっくりの世界だった!?」 女神様いわく、「疲れ果てたあなたに、癒しの世界を贈ります」とのこと。 目の前には、自分がかつて何百時間も遊んだ“あの牧場”が広がっていた。 作物を育て、動物たちと暮らし、時には村人の悩みを解決しながら、のんびりと過ごす毎日。 けれどもこの世界には、ゲームにはなかった“出会い”があった。 ――獣人の少女、恥ずかしがり屋の魔法使い、村の頼れるお姉さん。 誰かと心を通わせるたびに、はるとの日常は少しずつ色づいていく。 そして、残された妹・ひなのにも、ある“転機”が訪れようとしていた……。 ほっこり、のんびり、時々ドキドキ。 癒しと恋と成長の、異世界牧場スローライフ、始まります!

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

処理中です...