【短編】ザ・ライジング・猿~the Rising “salu”~日本史上最大のサクセスストーリーはここから始まった!

枢木卿弼

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2:『六つ猿』

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――天正九年(1581)十二月二二日
〈本能寺の変の半年前〉

この日、《歳暮》の挨拶のため中国・備中高松より秀吉が戻ってきたと、信長の一代記『信長公記しんちょうこうき』に記されてある。

その秀吉は、安土城天主にて信長に拝謁している。
その顔は……



やはり猿顔。

「――“むっつ猿”よ、
今後も毛利攻め頼むであるぞ。これは褒美である」
――多くの名茶器を秀吉に与える信長。

それにしても何故か?秀吉の事を――
“六つ猿”と呼ぶ信長。


それはそうと、
信長は『茶の湯御政道ごせいどう』といって――
茶会を開くには信長の許しが必要にしたのだ。
これによって許され茶会を開けるのはステータスシンボルになった。よって茶器の価値が高まり、
信長の家臣の中には――
「領地より名物茶碗の方がいい」と言った者がいたという逸話まである。

そして信長が褒美で茶器を贈るのは「茶会を開いてよい」という意味であり、信長の絶大なる信頼を表している。


「……こんな農民出身の私を大将にして頂いただけでも涙ものですのに、その上……」


「こんなのではない!
余は知っておるぞ、この“手”が味わった――
苦難、困難、非難の多さを。
そしてそれを乗り越えてきたからこそ――
余はお主を大将にしたであるぞ!!」

――そう言って、信長は秀吉の右手を持ち――
その手を優しく包みこんだ。

「よくここまできたな、六つ猿よ。
そして後少しであるな、

“面白く”なるのは。

――楽しみであるぞ」


そう言う信長の顔は、四十代後半とは見えぬくらい若々しく、まるで少年の様にキラキラ輝いていた――



次回、黒人侍――ヤスケ登場!
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