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私の取り柄
しおりを挟む昔から、親や学校の先生、友達から
「芽依ちゃんの笑顔大好き!」
「いっつもニコニコしてて素敵ね」
「あなたの長所は笑顔ね」
私の周りからのイメージは『笑顔』だ。
そう言われて育ってきた。
でも…家でも学校でも
ずっと笑顔でいるのはきついよ…。
部活が大変できついし、
肩こりで肩が痛い…。
先輩からのプレッシャーや、
後輩への言葉かけだったり、
どんな対応が正解なのか分からない…。
けど、『辛い時こそポジティブで笑顔を作る!』
って、何かで見たし、
私はどんな時も笑顔でいなきゃ!
私の取り柄は笑顔なんだから!
けど、教室だと先輩も後輩も、
夏の大会へのプレッシャーも
緊張感もないから、休み時間はぐったりするし、
笑顔がひきつる…。
「芽依大丈夫?
顔、引きつってるよ」
「え…大丈夫、大丈夫!」
そう言って私は笑顔を作る。
「無理はしなくていいからね?」
「ありがとう…でも大丈夫だよ!」
だめだ、だめだ!
笑顔作ってなきゃ!
7月に入り、部活も大会に向けて
先輩や顧問の先生のプレッシャーも
ピリピリ感も増してくる…。
より一層、教室では休み時間に
伏せて寝るようになった…。
お昼ご飯を食べながら、
友達が、
「芽依、最近疲れてない?
笑顔すっごい引きつってるよ?」
「え…あ…ごめん」
「いやいや、謝ることじゃないから、
大丈夫なんだけど」
どうしよう、私が笑顔じゃないから、
不快な気持ちにさせちゃった…?
笑顔でいなきゃ…。
笑顔でいなきゃ…。
そう思い、笑顔を作るけど、
しんどくて…心が締め付けられてるようで…
そんな自分が悔しい…。
すると、頬にぬるく伝うものがある…。
「芽依?大丈夫?」
「うん…大…丈夫だから…」
そう言いながらも、私の目からは
涙が止まらない!
ほら、友達も困ってるじゃん!
なんで!?
なんで!?
出てこないでよ!
「芽依、どうしたの?」
「なんでもない…」
「なんでもなくない!
ほら、私を信用して話してごらん?」
「ごめん…ね…」
「なんで謝るの?」
「笑顔になれなくてごめんね…」
そう言うと、友達は目を見開いた。
どうしよう…こんな私に苛立ちが募ったのかな?
「なんでそう思うの?
別に人間いつでも笑顔になれないよ?」
「でも、私は笑顔だけが取り柄だから
泣いたらダメなんだよ…」
「そんな事ない!」
「そんな事あるよ!
笑顔じゃなかったら、
取り柄のない人間だもん…」
そう言うと、
友達は私の背中をさすってくれた。
それが少し、安心できて心地よかった。
「芽依は笑顔だけが取り柄じゃないよ。
芽依の取り柄は私がよく知ってる」
「でも…そんなにない…」
「部活大変なんでしょ?」
「うん…楽しいけどね…大丈夫だよ…」
「他の吹奏楽部の子言ってたよ、
先輩ピリピリしてるって。
でも、芽依は全然、弱音ん吐かなくて凄いけど
でもね…私、芽依に頼られたい!」
「え?」
「私はね、泣いてる芽依も、
愚痴ってる芽依でもいいと思ってる!
笑顔じゃなくても芽依は芽依!
私の前では取り繕わなくていいよ…」
あっけにとられた…。
笑顔じゃなくてもいい?
「ほら、泣け泣け!
思いっきり泣け!」
その言葉がおかしくて笑ったら、
「お、次は笑いたいか?
笑え笑え!」
「もー変なの!」
「何よ、せっかく慰めてんのに!
ま、それでいいけど」
「うん…」
「もっと自由にしなね?」
「ありがと…」
この子の前では、
無理に笑わなくていいのかも。
そんな感情が
私の心を軽くしてくれた…。
この子の前では自由にしよう。
そして探そう、
笑顔以外の自分だけの取り柄を。
きっとあるよね。
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