心の穴を埋めるには

こぐま

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心の穴を埋めるため

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みんなも楽しんで…。


そんな事を考えていたら、着信音が鳴る。


『SNS見たよ、どこの海?』

「○○海岸」

『まだ1人?』

「うん」

『ウケるー!』

「うるさい!」

『今からそっち行く!』

「今から?」

『昨日、免許取れたから!
親の車で行く!』





そう言って、10分後、
その子は本当に来た。
新免マークを貼って。


相変わらず、モデル顔で整った顔だ。
ゆるっとした上着に、黒のスキニージーンズが
良く似合う。


「お久しぶり~、新免だからまだ怖いわ~」

「新免、おめでと、事故んなくて良かった」

「まだドキドキする~!助けて~」

「無理無理、ってかさ、美織みおり
免許取れたとか意外すぎ!」

「うるさいな~」


お互い笑い合って、懐かしい気持ちになった。


「ってか、全然遊べなくてごめんね?
でもやっと免許取れたから、
今日から少し遊ぶ余裕あるよん~」


「1人をせっかく満喫してたのに…」


「ウソつけー、寂しかったくせに!
みんな、佳奈かなが寂しがり屋なの知ってるから、
卒業前みんな心配してたんだから!」


「なにそれ?」


「可愛い佳奈かながみんな大好きなんだよ!
だから、みんなの親心が動くの!」


「親心って、子供じゃないし…」


「はいはい、お詫びにカフェオレあげる、
これ好きだったでしょ?」


そう言って笑いながら、彼女はカフェオレを
私に無理やり差しだす。
…ありがたく貰うけど…。


私の事、みんなよく知ってるなー…。
カフェオレが好きな事も、寂しがり屋な事も…。


海を一緒に見ながら、
笑い合い、ふざけて、会社の愚痴を言ったり、
2ヶ月以上の積もる話を、夕方までした。


夕焼けを見ながら、
1番聞きたい事を質問した。


「ねぇ…美織は…高校時代に戻りたいって
思った事ないの?」


美織はニコッと笑って、
また真剣な表情をして、考えるポーズをして、


「うーん…思うけど…思っても、
過去には戻れないからね~…」

「まあね…」

「でもね、だからこそ、今を楽しむの…
過去を思い出して寂しくならないように、
そしてね、高校のみんなに、私は元気にして、
今を楽しんでるよって胸を張って言いたいの」


そっか…
そんな考え方があるんだ…



「そうなんだね、私はそう前向きになれなくて…」


「みんな同じ、佳奈かなだけじゃないよ。
だから安心して、ね?
前向きにならなくたっていいし、今は私がいる!
だからドライブ行こ?楽しもう!
助手席で助手よろしく~」


「え…怖い…助手席のらないから!」


1人じゃない、その言葉が
私の心を落ち着かせてくれた気がした…。


みんな、私が寂しがり屋なのを
心配してくれてた、
その事実がすごく嬉しい。


そうだ、私も胸張って、
みんなに今を楽しんでる事を伝えて、
安心させたい。


「ねぇねぇ美織みおりツーショ撮ろ!
口隠してSNS載せていい?」


「もちろん、いいよん~!
他の子達に佳奈かなに会ったって言ったら、
みんなから、羨ましがられそうだわ~!
私も『デートなう!』で送っとこ」


「なにそれ?」


「みんなに自慢だよ~」


ありがとう…。





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