恋した宇宙人

こぐま

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遠く離れた好きな人

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人間の男に恋をしてしまった…。


でも私の体は宇宙人。



でも目が大きく、
人間に比べてスレンダーで
スタイルは宇宙人の方が良いと思う。


けど、人間は宇宙人を怖がるから、
きっと彼は、私が前に現れただけで
びっくりしてしまう…。
確かに、人間とは違って触覚が生えてるし…。


そう言っても、
私も初めて人間を見た時は
びっくりした…。


けど、宇宙船から地球を観察してた時、
好きな人の笑顔を見て、
心ときめいたの…。


だから、こっそり
宇宙船から見るだけにした。


友達に相談しようとも
バカにされそうで怖かった…。





そしてモヤモヤしていたら、一人の
友達が心配してくれ
私をカフェに誘ってくれた。


地球の飲み物がメニューの
喫茶店に行き、
二人でコーヒーを頼んだ。


コーヒーは苦いけど、砂糖や
ミルクなんかを入れると美味しい…。
彼もこんなものを飲んでいるのだろうか…。





コーヒーを飲み、落ち着いたところで
友達が本題を聞いてきた。


「シー、最近元気ない、どうした?」

「言えない…」

「笑わないから言え」

「でも…」

「いいから言え」

「…人間の男に…」


そこまで言うと言葉が詰まった…。


「人間の男がどうした?」

「人間の男に私…」




なかなか言い出せず
数分間、友達は黙って
私の言葉を待ってくれた。


「人間の男に…恋…した…」


その言葉を言うと、
溜めていたわけでもないのに
涙が溢れてきた…。


「ほう…なるほど…。
で、シーはどうしたい?」


友達はそのまま話を促してくれた。
だから、私も話していいものだと
安心して、話すことを心で決める。


「私の恋…叶わない…悲しい…」


さらに大きな目から
大きな涙がたくさん溢れてくる…。


「話は分かった、私がシーの恋、
叶えさせてあげる、安心しろ」


友達はそう言って私の肩を
優しく叩いてくれた。


「叶えて…くれるの?
…どう…やって?」


「叶えたくて、手術の覚悟が出来たら
私に言え、とびっきり可愛い人間にしてやる」


そう、彼女は地球人解剖学のトップであり、
人間の体はよく知っているはずだし、
私たちの体を人間にするのも簡単なはずだ。


「…ありがとう」





私は考えた、手術をして地球人になる事、
今まで付き合ってきた宇宙人との関係も、
親との関係も、手術をして
地球に行けば無くなる事…。


手術をしてくれる友達とも、
会えなくなる事…。


でも、友達がせっかく
人間になることを叶える
って言ってくれたんだ。


それに、叶わなくてもいいから
好きな人と一度でもいいから
話してみたい…。


そして私は、
覚悟を決めて手術を申し出た。





目を開けると、いつもより視界が狭い…。


あの人もこんな景色で生活してるのかな?
そう思うと少し、胸がドキドキした。


頭を触ると触覚もない…。
そのかわり、フサフサしたものがある。
たぶん、人間でいう髪だろう…。


体を起こすと、恐ろしいほど、重い…。


「シー、起きたか?」

「うん…なんか視界が狭いし
体が重い…」

「それでも人間世界では軽い方だぞ?」

「うそっ?!
人間って重い…」

「出るとこ出して、絞るとこは絞った。
人間の男はそう言うのが好みらしい、
人によるらしいが」


「ふーん…」


私の胸には大きな膨らみがあった。
こんなのが好きなの?
よく分かんないや、人間って。


「シー、今から人間の知識たたき込む!」

「勉強ーやだー」

「好きな奴に変だと思われてもいいのか?」

「やだ…」

「好きな奴に近づいて、一緒に居たいだろ?」

「う…うん」


それを言った瞬間、顔が熱くなる…。


「かお…顔があつい…」

「あぁ、人間は体が熱くなったり、
寒くなったりするらしい、それを体温と言う」

「ふ、ふーん…じゃあ今なんで熱いんだろ?
あついよ~…」


そうして自分の顔をぺたぺた触ってみる。
まだ熱い…。


友達も私の顔を触ってみる。


「たぶんだが、照れたからじゃないか?
人間は好きな人の事を見たり、考えると
顔が熱くなるらしいから」



それを聞くと私の体温は
ますます上がった…。


「あついよぉ…人間って大変…」

「いずれ慣れる」


人間になったんだ、私。
あとは、地球に私が存在していたように
歴史を改ざんさえすれば、
好きな人と話せるかもしれない。


体は熱いが、それを思うと心が弾んだ。


「地球の勉強、頑張る!」

「宇宙人のシーも可愛いけど、
人間のシーも、可愛いよ」

「ありがとう…ウーちゃんのおかげだよ…」

「私は手術の腕はトップだからな」


そう言って友達のウーちゃんは
腕を組む。


そこから毎日、地球の基礎勉強、
好きな人の母国語を覚えたり、
毎日を過ごした。






地球に旅立つ日、
家族やたくさんの人、
ウーちゃんにも見守られながら、
宇宙船に乗った。


窓ごしからで、声はエンジン音がかき消して
聞こえないがウーちゃんが


『幸せになってね』


と、言ってる姿が見えた。
だから私も


『ありがとう!
ウーちゃんもみんなも幸せになってね』


この声は向こうも
エンジン音で聞こえないだろうが
最高の笑顔で言ったから、
きっと…この声、届いてるよね。


星を出ると、やっぱり寂しかった…。
時々、観察で宇宙船に乗って
見にくるとは言っても、
同じ生活をしないのは、やっぱ寂しい…。


少しだけ、小さな目から
小さな涙がこぼれ落ちた…。






歴史改ざんの手配は済んでいる。
あとは、自然に地球の家族に潜るだけ。


地球に着き、自分の住む予定の家に着く。


私は今日から、いや、20年前から
この中野家の1人娘という事で
これから生活していく。





「お父さん、お母さん、
おはよう!」

「おはよう、しずく、ご飯しっかり食べて、
初出勤、頑張ってね!」

「お父さんも応援してるからな」

「いつもありがとう!
頑張ってきます!」


いつもの日常のように
話す、家族にはこれだけを
気をつけた。





歴史を改ざんしたおかげで、
好きな人の会社にも就職した。
地球に慣れてないから、
新入社員としてなら、このぎこち悪さも
目立たないだろう。


しっかり髪をまとめ、会社に向かう。
私はここでこれから頑張るんだ。


好きな人にも会いたいが、
会社に向かう道中はもう、
好きな人の事よりも、地球の世界に
私は興味津々だった。


花をこんなに近くで見れる事、
宇宙人の乗り物と違って、燃費の悪そうな車に
たくさんの人で賑わう町。


楽しいな…。


会社に着き、私は自己紹介をした。


すると、好きな人が目の前にくる…。


一瞬、時が止まったかのように思えた…。


ゆっくりとした時間が流れる…。


挨拶しなきゃ!


「お、おはようございます!
本日からお世話になります!
中野  雫と申します!」


全力で頭を下げる。
ドキドキする、顔が今までより熱い!


「ははっ、そんな緊張しないで、
俺は川原、中野さんの教育担当だから
よろしくね」


「は、はい!
よろしくお願い致します!」


「はい、リラックス、リラックス~」





川原さんは優しくて
教え方も分かりやすくて
私は社会人としても
ぐんぐん成長できた。


どんどん私は
川原さんが好きになっていく…。


「はい、中野ちゃん、
ちょっと休憩しなよ」


真剣に仕事をしていると
時々、川原さんは
甘い甘い缶コーヒーをくれる。


「わーい!
川原さん、ありがとうございます!」


「可愛い後輩が、無理しすぎないように
見守るのも先輩の仕事だから」


そう言って屈託のない笑みを見せる。


あぁ…もう…この笑顔が
宇宙人の時から好きだったし
可愛いし、かっこいいし、
こんなに近くで見れるのが…。



もう…
私、これだけでもう充分
幸せかも…。



地球に来て良かった…。









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