陶器の人形は夢を見る

透明

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陶器の人形は帰らない。

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 ある日、旅芸人一座は海辺の町に来ていた。
 興行が終わった夕方、みんな好きに過ごしていた。
 
 昼寝をする者、街に遊びに行く者、芸の稽古をする者。
 それぞれが自由に過ごす中アデルフィンは1人浜辺で海を見ていた。
 ソフィアは隣りに座った。 

 「何を見ているの?」

 「あの海の向こうに故郷があるんだ。
 小さな村だけどみんな仲が良くて楽しかった。」 

 アデルフィンが珍しく故郷の話をした。 

 「アデルフィン、帰りたいの?」 

 「帰りたい。あの海にもう一度帰りたい。」

 アデルフィンは泣き出した。 
 ソフィアはたまらない気持ちになった。

 「アデルフィン!帰ろう! 
 あなたの故郷に帰って私達家族になろう!」 

 ソフィアはアデルフィンの肩をつかんでそう言った。
 ソフィアはいつの間にかこの物静かで海の香りのする青年を愛していたことに気がついた。
 アデルフィンはびっくりした顔をしたがすぐに目を輝かせてソフィアを抱きしめた。 

 
 それからソフィアとアデルフィンはウォードからもらった宝石の1つを売って旅費を工面し、アデルフィンの故郷に帰った。  
 故郷でもう1つの宝石を売って宿付きのレストランを買い取り、2人は結婚して家族になった。 
 それからは二人三脚でがんばり、宿屋とレストランを守ってきた。 
 やがてかわいい子供も3人生まれ、あっという間ににぎやかになった。
 気がつけば船から飛び降りてから10年が過ぎていた。

 ソフィアは10年前に比べたらだいぶ太ってたくましくなった。 
 真っ白でつややかだった肌は日に焼け、髪の手入れやメイクなどする暇などないからいつもスッピンだ。
 それでもアデルフィンは「君は世界一キレイだ。」と言ってくれる。 
 自分も何の飾り気もない今の自分の方が好きだった。

 
 
 ある日、市場で突然娘が 
 「これお母さんにソックリ!」 
 と言い出した。 
 
 それは美しい陶器の人形だった。
  確かに面影がソフィアに似ていた。 
 正確に言えばカイル王子の婚約者だった頃のソフィアに。 

 「奥さん!それ少し欠けてるから安くしとくよ!」

  商人に声をかけられた。 
 ソフィアはちょっとしたイタズラを思いついた。
  
 値切りに値切って陶器の人形を買うと家に帰って箱に入れてリボンをかけた。 
 そしてその箱を2階の窓から落とした。 
 
 ガチャン! と派手な音がした。

 箱を振ってみるとガチャガチャ耳障りな音がして、陶器の人形は壊れたようだった。 
 その箱を匿名でカイル王子宛に送った。 

 ソフィアはかつてカイル王子に『陶器の人形』と呼ばれた。
 今はもう陶器の人形のように完璧でもないし美しくもない。
 でも愛する人々に囲まれて幸せだ。 

 『陶器の人形は壊れたけど幸せよ。』 

 そういう思いを込めたつもりだった。 

 (カイル王子はわかってくれるかな。 
 そもそも王子のもとに届くのかしら?) 

 そんなことを思いながらソフィアはアデルフィンと子供達のために夕食の準備をはじめた。
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