7 / 7
陶器の人形は帰らない。
しおりを挟む
ある日、旅芸人一座は海辺の町に来ていた。
興行が終わった夕方、みんな好きに過ごしていた。
昼寝をする者、街に遊びに行く者、芸の稽古をする者。
それぞれが自由に過ごす中アデルフィンは1人浜辺で海を見ていた。
ソフィアは隣りに座った。
「何を見ているの?」
「あの海の向こうに故郷があるんだ。
小さな村だけどみんな仲が良くて楽しかった。」
アデルフィンが珍しく故郷の話をした。
「アデルフィン、帰りたいの?」
「帰りたい。あの海にもう一度帰りたい。」
アデルフィンは泣き出した。
ソフィアはたまらない気持ちになった。
「アデルフィン!帰ろう!
あなたの故郷に帰って私達家族になろう!」
ソフィアはアデルフィンの肩をつかんでそう言った。
ソフィアはいつの間にかこの物静かで海の香りのする青年を愛していたことに気がついた。
アデルフィンはびっくりした顔をしたがすぐに目を輝かせてソフィアを抱きしめた。
それからソフィアとアデルフィンはウォードからもらった宝石の1つを売って旅費を工面し、アデルフィンの故郷に帰った。
故郷でもう1つの宝石を売って宿付きのレストランを買い取り、2人は結婚して家族になった。
それからは二人三脚でがんばり、宿屋とレストランを守ってきた。
やがてかわいい子供も3人生まれ、あっという間ににぎやかになった。
気がつけば船から飛び降りてから10年が過ぎていた。
ソフィアは10年前に比べたらだいぶ太ってたくましくなった。
真っ白でつややかだった肌は日に焼け、髪の手入れやメイクなどする暇などないからいつもスッピンだ。
それでもアデルフィンは「君は世界一キレイだ。」と言ってくれる。
自分も何の飾り気もない今の自分の方が好きだった。
ある日、市場で突然娘が
「これお母さんにソックリ!」
と言い出した。
それは美しい陶器の人形だった。
確かに面影がソフィアに似ていた。
正確に言えばカイル王子の婚約者だった頃のソフィアに。
「奥さん!それ少し欠けてるから安くしとくよ!」
商人に声をかけられた。
ソフィアはちょっとしたイタズラを思いついた。
値切りに値切って陶器の人形を買うと家に帰って箱に入れてリボンをかけた。
そしてその箱を2階の窓から落とした。
ガチャン! と派手な音がした。
箱を振ってみるとガチャガチャ耳障りな音がして、陶器の人形は壊れたようだった。
その箱を匿名でカイル王子宛に送った。
ソフィアはかつてカイル王子に『陶器の人形』と呼ばれた。
今はもう陶器の人形のように完璧でもないし美しくもない。
でも愛する人々に囲まれて幸せだ。
『陶器の人形は壊れたけど幸せよ。』
そういう思いを込めたつもりだった。
(カイル王子はわかってくれるかな。
そもそも王子のもとに届くのかしら?)
そんなことを思いながらソフィアはアデルフィンと子供達のために夕食の準備をはじめた。
興行が終わった夕方、みんな好きに過ごしていた。
昼寝をする者、街に遊びに行く者、芸の稽古をする者。
それぞれが自由に過ごす中アデルフィンは1人浜辺で海を見ていた。
ソフィアは隣りに座った。
「何を見ているの?」
「あの海の向こうに故郷があるんだ。
小さな村だけどみんな仲が良くて楽しかった。」
アデルフィンが珍しく故郷の話をした。
「アデルフィン、帰りたいの?」
「帰りたい。あの海にもう一度帰りたい。」
アデルフィンは泣き出した。
ソフィアはたまらない気持ちになった。
「アデルフィン!帰ろう!
あなたの故郷に帰って私達家族になろう!」
ソフィアはアデルフィンの肩をつかんでそう言った。
ソフィアはいつの間にかこの物静かで海の香りのする青年を愛していたことに気がついた。
アデルフィンはびっくりした顔をしたがすぐに目を輝かせてソフィアを抱きしめた。
それからソフィアとアデルフィンはウォードからもらった宝石の1つを売って旅費を工面し、アデルフィンの故郷に帰った。
故郷でもう1つの宝石を売って宿付きのレストランを買い取り、2人は結婚して家族になった。
それからは二人三脚でがんばり、宿屋とレストランを守ってきた。
やがてかわいい子供も3人生まれ、あっという間ににぎやかになった。
気がつけば船から飛び降りてから10年が過ぎていた。
ソフィアは10年前に比べたらだいぶ太ってたくましくなった。
真っ白でつややかだった肌は日に焼け、髪の手入れやメイクなどする暇などないからいつもスッピンだ。
それでもアデルフィンは「君は世界一キレイだ。」と言ってくれる。
自分も何の飾り気もない今の自分の方が好きだった。
ある日、市場で突然娘が
「これお母さんにソックリ!」
と言い出した。
それは美しい陶器の人形だった。
確かに面影がソフィアに似ていた。
正確に言えばカイル王子の婚約者だった頃のソフィアに。
「奥さん!それ少し欠けてるから安くしとくよ!」
商人に声をかけられた。
ソフィアはちょっとしたイタズラを思いついた。
値切りに値切って陶器の人形を買うと家に帰って箱に入れてリボンをかけた。
そしてその箱を2階の窓から落とした。
ガチャン! と派手な音がした。
箱を振ってみるとガチャガチャ耳障りな音がして、陶器の人形は壊れたようだった。
その箱を匿名でカイル王子宛に送った。
ソフィアはかつてカイル王子に『陶器の人形』と呼ばれた。
今はもう陶器の人形のように完璧でもないし美しくもない。
でも愛する人々に囲まれて幸せだ。
『陶器の人形は壊れたけど幸せよ。』
そういう思いを込めたつもりだった。
(カイル王子はわかってくれるかな。
そもそも王子のもとに届くのかしら?)
そんなことを思いながらソフィアはアデルフィンと子供達のために夕食の準備をはじめた。
196
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
婚約破棄? あら、それって何時からでしたっけ
松本雀
恋愛
――午前十時、王都某所。
エマ=ベルフィールド嬢は、目覚めと共に察した。
「…………やらかしましたわね?」
◆
婚約破棄お披露目パーティーを寝過ごした令嬢がいた。
目を覚ましたときには王子が困惑し、貴族たちは騒然、そしてエマ嬢の口から放たれたのは伝説の一言――
「婚約破棄されに来ましたわ!」
この事件を皮切りに、彼女は悪役令嬢の星として注目され、次々と舞い込む求婚と、空回る王子の再アタックに悩まされることになる。
これは、とある寝坊令嬢の名言と昼寝と誤解に満ちた優雅なる騒動録である。
【完結】広間でドレスを脱ぎ捨てた公爵令嬢は優しい香りに包まれる【短編】
青波鳩子
恋愛
シャーリー・フォークナー公爵令嬢は、この国の第一王子であり婚約者であるゼブロン・メルレアンに呼び出されていた。
婚約破棄は皆の総意だと言われたシャーリーは、ゼブロンの友人たちの総意では受け入れられないと、王宮で働く者たちの意見を集めて欲しいと言う。
そんなことを言いだすシャーリーを小馬鹿にするゼブロンと取り巻きの生徒会役員たち。
それで納得してくれるのならと卒業パーティ会場から王宮へ向かう。
ゼブロンは自分が住まう王宮で集めた意見が自分と食い違っていることに茫然とする。
*別サイトにアップ済みで、加筆改稿しています。
*約2万字の短編です。
*完結しています。
*11月8日22時に1、2、3話、11月9日10時に4、5、最終話を投稿します。
愚か者の話をしよう
鈴宮(すずみや)
恋愛
シェイマスは、婚約者であるエーファを心から愛している。けれど、控えめな性格のエーファは、聖女ミランダがシェイマスにちょっかいを掛けても、穏やかに微笑むばかり。
そんな彼女の反応に物足りなさを感じつつも、シェイマスはエーファとの幸せな未来を夢見ていた。
けれどある日、シェイマスは父親である国王から「エーファとの婚約は破棄する」と告げられて――――?
それは立派な『不正行為』だ!
柊
恋愛
宮廷治癒師を目指すオリビア・ガーディナー。宮廷騎士団を目指す幼馴染ノエル・スコフィールドと試験前に少々ナーバスな気分になっていたところに、男たちに囲まれたエミリー・ハイドがやってくる。多人数をあっという間に治す治癒能力を持っている彼女を男たちは褒めたたえるが、オリビアは複雑な気分で……。
※小説家になろう、pixiv、カクヨムにも同じものを投稿しています。
公爵令嬢の一度きりの魔法
夜桜
恋愛
領地を譲渡してくれるという条件で、皇帝アストラと婚約を交わした公爵令嬢・フィセル。しかし、実際に領地へ赴き現場を見て見ればそこはただの荒地だった。
騙されたフィセルは追及するけれど婚約破棄される。
一度だけ魔法が使えるフィセルは、魔法を使って人生最大の選択をする。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる