もう1人の、王子と呼ばれる人が気になって話しかけただけだった

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1.もう1人の王子

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 この高校には、みんながキャーキャー言うような、アイドルみたいな男子生徒がいる。

「あ、晴人くんおはよう」
「晴人、おはよう」
「おはよう大崎」

 自然と周りに人が集まり、みんなからそれなりに好かれている自覚はある。

「おはよう」

 それがこの俺、大崎晴人。廊下を歩くだけで、次々と女子に挨拶される。まあ、挨拶くらいは普通のことかもしれないけど。
教室に入り、自分の席にカバンを置くと、友人の慎吾が近づいてきた。慎吾は中学から仲が良い。

「おはよう」
「おはよう」
「お前、相変わらずだな。いつになったらお前のモテ期は終わるんだよ」
「別にモテてるわけじゃないよ。俺の顔が派手で目につきやすいだけだろ」
「うわー、太陽王子は言うことが違いますわー」

 そう。俺はこの高校では通称•太陽王子。入学から1週間も経たないうちに、そんなあだ名がついてしまった。誰が言い出したことかは知らないが、俺がイケメンで、明るい性格だから、そう呼ばれるらしい。イケメンな自覚はある。昔から、バレンタインにもらうチョコの数は多かったし、よく知らない女子から告白されることも珍しくない。鼻につくかもしれないが、それでイケメンの自覚無かったら、やばいだろう。

「ってかさ、晴人知ってた? 月王子」
「月王子? 俺の他にも王子いるんだ」
「そうそう……って、何その言い方ー、腹立つー」

慎吾はあからさまに冗談だと分かる声でそう言った。

「まあ、いいや。お前と違って、騒がしくないから、月王子みたいよ。だから、お前のファンと違って、静かにみんな見てるだけなんだって。ファンはアイドルの鏡って言うしな」
「表立って王子って言われないから、今まで知らなかったのか」
「そういうことだな」

 自分以外に王子と呼ばれる存在に興味が湧いた。俺ぐらいにかっこいいのだろうか。こんなこと自分で言うのもなんだが、俺は俺以上にかっこいい顔の男に会ったことはない。

「その月王子って、何年何組?」
「同級生だよ。1年1組」
「ああ、1組だから関わりないのか」

 俺は4組。他のクラスと行事かなんかで行動を共にする時は、大体、1•2組、3•4組だから、関わりがなくてもおかしくはない。

「その月王子、見に行ってみようかな」
「目立つぞ、お前が行ったら」
「月王子って呼ばれるくらいだから、俺ぐらい目立ってるだろ」
「王子2人でいたら、もっと目立つだろ」
「それはそれで面白いじゃん」

 そんな理由で俺は、月王子に会いに行くことを決めた。

「月王子って、名前なんて言うの?」

 俺の質問に、慎吾はここまで出かかってるんだという素振りで、右手を喉にやる。

「名字は分かんないけど、下の名前は……なんだっけ? 旧暦だった。それで月王子ってぴったりだなって思って」
「皐月とか睦月とか?」
「そうそう。あ、でも月は入ってなかった。なんだっけ?」
「月が入ってないんだったら、弥生?」
「そうそう、弥生だ」

 慎吾は指をパチンと鳴らしてそう言った。弥生くんは昼休みに図書室にいるらしい。さっそく、昼休みに会いに行くことを決めた。
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