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2.安易に関わると大火傷
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「王子妃教育にかかった費用を貴様に請求しようと思ったが田舎の侯爵家風情にはそのような大金払えまい?
そこでだ、貴様にはこの三人の教育をさせてやろう。いくら貴様でも王子妃教育の初歩くらいなら教えられるだろうからな」
突き出た腹の上で腕を組みグレイソン王子は足を組み直した。
「教えて頂く事なんてほとんどないとは思いますけどね。お母様が貴方は王子妃の婚約者として最低だって仰ってましたもの」
一番気の強いリディアが扇子の先をルーナに向けて言い放った。
(ディスペンサー伯爵家から税が払えないって泣きついてきたのを却下したからかしら)
「お父様からも貴方を選んだのは失敗だったと聞いておりますもの。
そんな方に教えて頂く事なんてあるとは思えませんわ」
扇子で口元を隠し損ねたイザベルの口元は歪んでいた。
(チャーター侯爵と第二側妃の密会を目撃したからかしら。王宮の庭でコトに及ぶ方がおかしいと思うわ)
「あたし側妃狙いなんですぅ。だから! お勉強とか要らないと思うんですよねー。それに、頭の悪そうな人に教えて貰うなんてお断りって感じ。うふっ。おとーさまがルーナさんは礼儀知らずって言ってたしぃ。そんな人に教わるなんてエミリー嫌ですぅ」
本当に頭の悪そうなエミリーがふわふわと身体を横に揺らしている。
(毎回赤点で補習の呼び出しから逃げ回ってる人に頭が悪いって言われてもねぇ。
ああ、この間勝手に王宮に乗り込もうとした男爵が衛兵に止められてるのを見かけた時助けなかったからかしら)
全てを黙殺することに決めたルーナは唯一大切な婚約破棄のみに焦点を合わせて話すことにした。
「・・婚約破棄に関する書類については一部をわたくしが頂戴し、一部をドアの所におられるドジャース法務官にお渡しすれば宜しいでしょうか?」
「ああ、教育の日程については改めて連絡をする」
ヨロヨロとした足取りで近くまでやって来たドジャース法務官の顔は青褪め書類を受け取る手がプルプルと震えているが、気付かないふりをしたルーナは優雅に立ち上がった。
「陛下のサインもあり国璽も押されておりましたのでこれで婚約破棄の手続きは完了です。
慰謝料等に関しましては、婚約時の取り決めに従うと書かれてありましたのでそのように。
ドジャース法務官は今日ここであった事について立ち合いを行なった証人となりますので、その旨お忘れなきようお願いいたします。
それから殿下の申された王子妃教育の日程についての連絡は不要で御座います。
何故ならわたくしの王子妃教育の費用につきましては、国庫からの支出は一切御座いませんので、皆様の教育のお手伝いは出来かねます。
国璽の押された契約ですから変更はできません」
「国璽が? ・・本当だ、なっ何故」
最後の一言を聞いたドジャース法務官が呟き顔色が青から白へと一気に変化した。
「どう言う意味だ?」
「殿下がお忘れなのであれば後程ドジャース法務官からお聞きくださるのが宜しいかと存じます。
婚約時の取り決めの際に立ち会われた方の一人がドジャース法務官でしたのでお詳しいはずですわ。
それではこれで失礼させて頂きます」
ルーナがドアに向けて歩きはじめると、ドジャース法務官が震える声で縋り付いてきた。
「あっ、あの、あの。ルーナ様、少し・・少しお時間をいただけないでしょうか?」
「わたくしは執務室の私物を片付けたら直ぐに下がらせて頂きますので、それ迄にお会いできればあるいは」
ドジャース法務官は手の中の書類とルーナを代わる代わる見ていたが膝をついてルーナに縋りついた。
「きっ、聞いてた話と違うんです。助けて、助けて下さい」
「貴様は何も勉強していないから教えられんのだろう! いつも偉そうな態度で王宮を闊歩しておきながらなんと情けない!」
哀れな法務官に同情を感じ声をかけようとしていたルーナは振り向き、王子と三人の候補者? に向けて態とらしく微笑んだ。
「それでは王子妃教育の基礎と概略を申し上げます。
勉強内容ですが語学・文学・数学・哲学・地理・歴史は最低ライン。
その他には絵画・音楽・刺繍・ダンス・乗馬と宮中儀礼くらいでしょうか。
学園への登校以外に政務と視察などの公務を行いますが、学園の勉強はその合間に時間を作らなくてはなりません。
音楽会やオペラ・舞踏会も公務となりますので、参加する内容について個人の趣味趣向は加味されません。それらの内容や状況によっては参加できないものも出て参ります。
お茶会や舞踏会は呑気にダンスとお喋りを楽しむ場ではございません。
王族や貴族にとっては政治の場です。お茶会や舞踏会に参加する貴族の家柄や貴族同士の関係の他特産品などを前もって勉強せねばなりません。
大規模な舞踏会になりますと参加する国や参加される方の諸々の母国語・歴史・文化・政治情勢なども追加で必要になります。
もちろん近隣諸国の主な家系も必要でございます。
旅行に関してですが、これも公務となりますので訪問先のあらゆる情報と歴史、政治情勢なども追加で必要になります。
日々使用する品や訪問先も好き勝手にするわけにはまいりません。好みだからと特定の物ばかり使っていると商人やそれに関係する貴族とのバランスが崩れてしまう可能性が御座います。
それからこれは老婆心から申し上げますが、この国の法律で側妃を持つことが出来るのは国王のみ。従いまして、現時点で側妃を選ぶと言うことは国王陛下に対し二心ありと公言する事になります」
部屋を出た後ルーナは、淑女に出来る最大の速さで歩き出した。
そこでだ、貴様にはこの三人の教育をさせてやろう。いくら貴様でも王子妃教育の初歩くらいなら教えられるだろうからな」
突き出た腹の上で腕を組みグレイソン王子は足を組み直した。
「教えて頂く事なんてほとんどないとは思いますけどね。お母様が貴方は王子妃の婚約者として最低だって仰ってましたもの」
一番気の強いリディアが扇子の先をルーナに向けて言い放った。
(ディスペンサー伯爵家から税が払えないって泣きついてきたのを却下したからかしら)
「お父様からも貴方を選んだのは失敗だったと聞いておりますもの。
そんな方に教えて頂く事なんてあるとは思えませんわ」
扇子で口元を隠し損ねたイザベルの口元は歪んでいた。
(チャーター侯爵と第二側妃の密会を目撃したからかしら。王宮の庭でコトに及ぶ方がおかしいと思うわ)
「あたし側妃狙いなんですぅ。だから! お勉強とか要らないと思うんですよねー。それに、頭の悪そうな人に教えて貰うなんてお断りって感じ。うふっ。おとーさまがルーナさんは礼儀知らずって言ってたしぃ。そんな人に教わるなんてエミリー嫌ですぅ」
本当に頭の悪そうなエミリーがふわふわと身体を横に揺らしている。
(毎回赤点で補習の呼び出しから逃げ回ってる人に頭が悪いって言われてもねぇ。
ああ、この間勝手に王宮に乗り込もうとした男爵が衛兵に止められてるのを見かけた時助けなかったからかしら)
全てを黙殺することに決めたルーナは唯一大切な婚約破棄のみに焦点を合わせて話すことにした。
「・・婚約破棄に関する書類については一部をわたくしが頂戴し、一部をドアの所におられるドジャース法務官にお渡しすれば宜しいでしょうか?」
「ああ、教育の日程については改めて連絡をする」
ヨロヨロとした足取りで近くまでやって来たドジャース法務官の顔は青褪め書類を受け取る手がプルプルと震えているが、気付かないふりをしたルーナは優雅に立ち上がった。
「陛下のサインもあり国璽も押されておりましたのでこれで婚約破棄の手続きは完了です。
慰謝料等に関しましては、婚約時の取り決めに従うと書かれてありましたのでそのように。
ドジャース法務官は今日ここであった事について立ち合いを行なった証人となりますので、その旨お忘れなきようお願いいたします。
それから殿下の申された王子妃教育の日程についての連絡は不要で御座います。
何故ならわたくしの王子妃教育の費用につきましては、国庫からの支出は一切御座いませんので、皆様の教育のお手伝いは出来かねます。
国璽の押された契約ですから変更はできません」
「国璽が? ・・本当だ、なっ何故」
最後の一言を聞いたドジャース法務官が呟き顔色が青から白へと一気に変化した。
「どう言う意味だ?」
「殿下がお忘れなのであれば後程ドジャース法務官からお聞きくださるのが宜しいかと存じます。
婚約時の取り決めの際に立ち会われた方の一人がドジャース法務官でしたのでお詳しいはずですわ。
それではこれで失礼させて頂きます」
ルーナがドアに向けて歩きはじめると、ドジャース法務官が震える声で縋り付いてきた。
「あっ、あの、あの。ルーナ様、少し・・少しお時間をいただけないでしょうか?」
「わたくしは執務室の私物を片付けたら直ぐに下がらせて頂きますので、それ迄にお会いできればあるいは」
ドジャース法務官は手の中の書類とルーナを代わる代わる見ていたが膝をついてルーナに縋りついた。
「きっ、聞いてた話と違うんです。助けて、助けて下さい」
「貴様は何も勉強していないから教えられんのだろう! いつも偉そうな態度で王宮を闊歩しておきながらなんと情けない!」
哀れな法務官に同情を感じ声をかけようとしていたルーナは振り向き、王子と三人の候補者? に向けて態とらしく微笑んだ。
「それでは王子妃教育の基礎と概略を申し上げます。
勉強内容ですが語学・文学・数学・哲学・地理・歴史は最低ライン。
その他には絵画・音楽・刺繍・ダンス・乗馬と宮中儀礼くらいでしょうか。
学園への登校以外に政務と視察などの公務を行いますが、学園の勉強はその合間に時間を作らなくてはなりません。
音楽会やオペラ・舞踏会も公務となりますので、参加する内容について個人の趣味趣向は加味されません。それらの内容や状況によっては参加できないものも出て参ります。
お茶会や舞踏会は呑気にダンスとお喋りを楽しむ場ではございません。
王族や貴族にとっては政治の場です。お茶会や舞踏会に参加する貴族の家柄や貴族同士の関係の他特産品などを前もって勉強せねばなりません。
大規模な舞踏会になりますと参加する国や参加される方の諸々の母国語・歴史・文化・政治情勢なども追加で必要になります。
もちろん近隣諸国の主な家系も必要でございます。
旅行に関してですが、これも公務となりますので訪問先のあらゆる情報と歴史、政治情勢なども追加で必要になります。
日々使用する品や訪問先も好き勝手にするわけにはまいりません。好みだからと特定の物ばかり使っていると商人やそれに関係する貴族とのバランスが崩れてしまう可能性が御座います。
それからこれは老婆心から申し上げますが、この国の法律で側妃を持つことが出来るのは国王のみ。従いまして、現時点で側妃を選ぶと言うことは国王陛下に対し二心ありと公言する事になります」
部屋を出た後ルーナは、淑女に出来る最大の速さで歩き出した。
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