【完結】育成準備完了しました。お父様を立派な領主にしてみせます。

との

文字の大きさ
18 / 34

18.最後の言葉

しおりを挟む
 マッケナとジョージは休む暇なく騎士団にやって来た。王宮の東に位置する騎士団本部は3階建ての石造りの堅牢な建物で、広場では多くの騎士達が訓練に汗を流していた。

「ウォルデン侯爵だが、ディスペンサー騎士団長はおられるか?」

 受付にいた見習い騎士は予約なしに現れたマッケナに訝しげな顔をしていたがと言う名前に反応した。

「あっ、あの、もしかして有名なウォルデン侯爵様ですか!? お会いできて光栄です!」

「騎士団長に会いに来たんだが、取り次いでもらえるかな」

「えっと、あの、はい。団長なら2階の団長室におられるはずです。ご案内致します」

 憧れのウォルデン侯爵に会えて目を輝かせている見習い騎士は舞い上がり、マッケナの面会の内容を問うことも団長に確認を取ることも忘れマッケナ達を団長室へ案内した。


「ディスペンサー団長、ウォルデン侯爵様がお見えです」

 受付の見習い騎士は団長室をノックした後返事も待たずドアを開けてしまった。

「なっ、わしの許可なく勝手に人を連れてくるなど何を考えておる!!」

 机に向かい書類にペンを走らせていた騎士団長がペンを握りしめたまま案内をした見習い騎士を怒鳴りつけた。マッケナが真っ青になって硬直した見習い騎士の肩を叩き耳元で何かを囁いた後ドアを指差すと、見習い騎士の少年はペコリと頭を下げて団長室を逃げ出した。

「どんな要件できたのか知らんがさっさとお引き取り願おう。貴様と違ってわしは忙しいのでな」

「2ヶ月前は武器の購入代から10万ギル。商人から賄賂として馬一頭。半年前は本部改築費用から50万ギル。賄賂として100万ギル。その前は「待て、一体何の、何の話をしているんだ!」」

「詳しい説明が必要ですかな? 6年前からはじまった横領の全ての証拠が揃っているとしたら? それにしても、領地の経営が傾きはじめてからは随分と横領額が跳ね上がっている。その所為で古い武具や鈍な剣で戦っている騎士は可哀想だとは思いませんかな?」

「・・」

「それについて、生真面目な副団長は何と言っておられるのかお聞きしたいですな。彼は腕は確かだがなかなか苦労しておられるようだ」

「・・」

「ああ、副団長は貴殿の推薦でしたな。推薦理由は、平民相手なら思い通りになる・・でしたか」

「馬鹿馬鹿しい。副団長なんかが役に立つものか。わしの周りには貴族出身の騎士が揃っておる。奴等はわしの言いなりじゃからな。
わしを脅して何になる・・貴様の狙いは何だ」

「今回は15年前の戦争の思い出話と、かつてあちこちで出没していた盗賊について昔話をしようと思いまして」

 ディスペンサー騎士団長が青褪め額に冷や汗を浮かべながら手にしていたペンを机にそっと置いた。右手が机の下に向けて少しずつ動いていくのを見咎めたマッケナがニヤリと悪どい笑みを浮かべた。

「無駄な争いはやめておきたいので手は机の上に置いたままでいていただこうか。昔から貴殿は残念な腕前だったがぬるま湯に浸かった騎士団団長が剣を抜いても無駄になるとは思うがな」

 昔は書類仕事の最中でも剣を手放さないと言われたディスペンサー騎士団長だったが学生時代からマッケナに勝てたことは一度もなかった。今では訓練に参加することも鍛錬もしなくなった団長と今だに戦いに明け暮れているマッケナでは戦っても結果は見えている。

「貴様の娘の婚約破棄を決めたのも娘のリディアを婚約者にすると決めたのもグレイソン王子殿下だ。わしは一切関わっておらん!」

「知っているとも。だが、侯爵家にとっての全ての禍根を断ちたいと思ってな」

「先の戦争の事だと言っていたな。それが何だと言うんだ。もう終わった事だろうが!」

「国王の欲を煽って武功と報償を狙った挙句一人逃げ出した奴が随分と偉そうな物言いだな。それにその後貴様が仕出かしたことへの言い訳はどうする?」

「わしは・・貴様の、貴様のせいだ。貴様が戦いに参加しておれば負けることなどなかったんだ。ウォルデン侯爵家の兵力があれば尻込みしていた貴族達も立ち上がった! そうすれば間違いなく勝てていたんだ!! そうなったら俺が逃げ出す事も、その後あんな事をする必要もなかったんだ!」

「王家の奴等と同じことを言うんだな。全ては俺のせいか?」

「ああ、貴様が愛国心のない臆病者だったからだ。その所為で戦争に負けて貴様の父親と兄が殺されたんだ」

「殺されたんじゃない。貴様が、ディスペンサー騎士団長、お前が殺したんだ」

「負けた責任を取れ、逃げ出した責任を取れと言われて仕方なかった。陛下の命令だと言われて断れるわけがない!」

「違うな。貴様は兵を見捨てて戦いから一人で逃げ出した事がバレるのが怖かったんだ。ウォルデン侯爵の兵がいれば勝てたのにと言われてプライドが傷ついたんだ。その腹いせに俺の父と兄を殺した。国王やユージーンはそのきっかけを作ったにすぎん」

「それがどうした!! 自分より年下の奴に一度も勝てず周りから馬鹿にされ続けた挙句、ウォルデンがいないから騎士団長になれただのウォルデンさえいれば勝てたのにと言われて・・。
ウォルデンウォルデンウォルデン! 誰も彼も貴様のことばかり褒め称える。貴様さえいなければわしが!! わしこそが!!
ユージーン様から言われて貴様の父親と兄を殺った時、貴様の父親と兄は『俺達を殺してもマッケナがいる』って言いやがった。ところがどうだ? その後の貴様は腑抜けのように王家に金を出し続け娘を人身御供に出し、呑気に山を駆け巡ってばかり。
は! 戦いしか能のない人間の屑じゃねえか」

 顔を真っ赤にして唾を撒き散らしながらディスペンサー団長が言い募っていると団長室のドアが開いた。

「その辺でやめておかれてはいかがですか? 騎士の風上にも置けない発言は非常に見苦しい」

「貴様ら! 出ていけ!!」

 団長室に入って来たのは騎士団の副団長と受付にいた見習い騎士。その後ろに2人の騎士が苦々しい顔で立っていた。

メルト見習い騎士が呼びに来た時は何事かと思いましたが、ドアの外で話は聞かせていただきました。騎士団長が横領と賄賂ですか。騎士団の装備が酷い状況になっているのが団長の横領の所為だったことは訓練に参加しない団長でさえご存じだったはずなのに。しかもウォルデン前侯爵とご子息の殺害の実行犯・・騎士団副団長の権限を持って団長を逮捕勾留いたします」

しおりを挟む
感想 68

あなたにおすすめの小説

「地味ブス」と捨てられた私、文化祭の大型スクリーンで王子様の裏の顔を全校生に配信します

スカッと文庫
恋愛
「お前みたいな地味女、引き立て役にもならないんだよ」 眼鏡にボサボサ頭の特待生・澪(みお)は、全校生徒が見守る中、恋人だった学園の王子・ハルトから冷酷に捨てられた。 隣には、可憐な微笑みを浮かべる転校生・エマ。 エマの自作自演により「いじめの犯人」という濡れ衣まで着せられ、学園中から蔑まれる澪。 しかし、彼女を嘲笑う者たちはまだ知らない。 彼女が眼鏡の奥に、誰もが平伏す「真実の美貌」と、学園さえも支配できる「最強の背景」を隠していることを――。 「……ねぇ、文化祭、最高のステージにしてあげる」 裏切りへのカウントダウンが今、始まる。 スクリーンの裏側を暴き、傲慢な王子と偽りのヒロインを奈落へ突き落とす、痛快・学園下剋上ファンタジー!

悪役断罪?そもそも何かしましたか?

SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。 男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。 あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。 えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。 勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。

わざわざ証拠まで用意してくれたみたいなのですが、それ、私じゃないですよね?

ここあ
恋愛
「ヴァレリアン!この場をもって、宣言しようではないか!俺はお前と婚約破棄をさせていただく!」 ダンスパーティの途中、伯爵令嬢の私・ヴァレリアンは、侯爵家のオランジェレス様に婚約破棄を言い渡されてしまった。 一体どういう理由でなのかしらね? あるいは、きちんと証拠もお揃いなのかしら。 そう思っていたヴァレリアンだが…。 ※誤字脱字等あるかもしれません! ※設定はゆるふわです。 ※題名やサブタイトルの言葉がそのまま出てくるとは限りません。 ※現代の文明のようなものが混じっていますが、ファンタジーの物語なのでご了承ください。

「君は有能すぎて可愛げがない」と婚約破棄されたので、一晩で全ての魔法結界を撤去して隣国へ行きます。あ、維持マニュアルは燃やしました。

しょくぱん
恋愛
「君の完璧主義には反吐が出る」――婚約者の第一王子にそう告げられ、国外追放を命じられた聖女エルゼ。彼女は微笑み、一晩で国中の魔法結界を撤去。さらに「素人でも直せる」と嘘を吐かれた維持マニュアルを全て焼却処分した。守護を失いパニックに陥る母国を背に、彼女は隣国の軍事帝国へ。そこでは、彼女の「可愛くない」技術を渇望する皇帝が待っていた。

公爵家の家政を10年回した私が出ていったら、3ヶ月で領地が破綻しました

歩人
ファンタジー
エレナは公爵家に嫁いで10年、夫は愛人に入れ込み、義母には「家政婦代わり」と 罵られた。だが領地の財務も、商会との交渉も、使用人の管理も、全部エレナが やっていた。ある日、義母から「あなたの代わりなんていくらでもいる」と言われ、 エレナは静かに離縁届を出した。「では、代わりの方にお任せください」 辺境の町で小さな商会を開いたエレナ。10年間の実務経験は伊達ではなかった。 商会はたちまち繁盛する。一方、エレナがいなくなった公爵家は3ヶ月で経営破綻。 元夫が「戻ってこい」と泣きつくが—— 「お断りです。あと、10年分の未払い給金を請求いたしますね」

処刑台の皇妃、回帰して復讐を誓う ~冷酷公爵と偽りの婚約者~ おまえたちは許さない!

秦江湖
ファンタジー
皇妃エリアーナは、夫である皇帝アランと、たった一人の親友イザベラの策略により、無実の罪で処刑される。 民衆に罵られ、アランの冷酷な目とイザベラの嘲笑を「始まりの景色」として目に焼き付けながら絶命した彼女は、しかし、処刑の記憶を持ったまま三年前の過去に回帰する。 「おまえたちは許さない」 二度目の人生。 エリアーナの目的はただ一つ、自分を陥れた二人への完璧な復讐。 彼女はまず、アラン(皇太子)からの婚約内示を拒絶。そして、アラン最大の政敵である「北の冷血公爵」ルシアン・ヴァレリウスに接触する。 1周目で得た「未来の知識」を対価に、エリアーナはルシアンに持ちかける。 「貴方様には帝国の覇権を。わたくしには復讐の舞台を。そのための『契約婚約』を――」 憎悪を糧に生きる皇妃と、氷の瞳を持つ公爵。 二人の偽りの婚約の行く末は……

【完結】キズモノになった私と婚約破棄ですか?別に構いませんがあなたが大丈夫ですか?

なか
恋愛
「キズモノのお前とは婚約破棄する」 顔にできた顔の傷も治らぬうちに第二王子のアルベルト様にそう宣告される 大きな傷跡は残るだろう キズモノのとなった私はもう要らないようだ そして彼が持ち出した条件は婚約破棄しても身体を寄越せと下卑た笑いで告げるのだ そんな彼を殴りつけたのはとある人物だった このキズの謎を知ったとき アルベルト王子は永遠に後悔する事となる 永遠の後悔と 永遠の愛が生まれた日の物語

婚約破棄された人たらし悪役令嬢ですが、 最強で過保護な兄たちと義姉に溺愛されています

由香
ファンタジー
婚約破棄のその日、 悪役令嬢リリアーナは――弁明すら、しなかった。 王太子と“聖女”に断罪され、すべてを失った彼女。 だがその裏で、王国最強と名高い三人の兄と、 冷静沈着な義姉が、静かに動き始めていた。 再検証によって暴かれる“聖女の嘘”。 広場で語られる真実。 そして、無自覚に人を惹きつけてしまう リリアーナの優しさが、次々と味方を増やしていく――。 これは、 悪役令嬢として断罪された少女が、 「誰かの物語の脇役」ではなく、 自分自身の人生を取り戻す物語。 過保護すぎる兄たちと義姉に溺愛されながら、 彼女は静かに、そして確実に幸せへ向かっていく。

処理中です...