【完結】育成準備完了しました。お父様を立派な領主にしてみせます。

との

文字の大きさ
25 / 34

25.相変わらずルーナはレガーロでのんびり

しおりを挟む
 マッケナ達が奮闘している中、ルーナとアリシアは相変わらずレガーロに滞在しのんびりと観光を楽しんでいた。

 今日は島一番のワイナリーでワイン造りを見学した。発酵の最中浮いてきた皮や種などを掬い取る作業を手伝わせてもらったが、ルーナは初めて見るタイプのワインプレス 圧搾機に目を輝かせた。案内人に質問しては手帳に何かを書き込みワインプレスの中を覗き込んで転びかけたり・・。その挙句座り込んで構造を調べはじめてしまうと案内人に『こんな珍しい人は見たことない』と笑われた。

 残り滓と水を混ぜて発酵させたピケット酒はほぼ透明で、アルコール度数が低くルーナも試飲する事ができた。

「残り滓で作ったなんて思えないくらい結構美味しいわ。これならもう一杯くらい飲「ダメです。アルコール度数が低いと言ってもゼロではないんですからね」」

 おかわりを強請ろうとしたルーナはアリシアからダメ出しされて舌を出した。 

「最後に残った滓は藁と混ぜて畑に廃棄されるなんて思ってもみなかった。土の栄養になるって事よね、うちの領でも試してみたいわ」



 恒例のカフェでフィアドーネタルトの一種に舌鼓をうち広場から流れてくるポリフォニーの調べに後ろ髪を引かれながら宿に帰るとルーナが待ち望んでいた手紙が届いていた。
 ルーナは部屋に着くと着替えもせず手紙を読んだ後テーブルに向かい返事を書きはじめた。

「インクでドレスにシミができてしまいそうです。先にお着替えをされてはいかがですか?」

「ええっと、直ぐに終わるから大丈夫」

 30分位無言でペンを走らせていたルーナが晴れやかな顔で勢いよく立ち上がった。

「漸く許可が降りたの。明日は遺跡巡りだから汚れても大丈夫なドレスと丈夫な靴を準備してね」



「今日は随分と熱心にワインプレスを見ておられましたね」

「ええ、今うちで使ってるワインプレスは水平式って言って上から押さえる物なんだけど、今日見たワインプレスは垂直式って言って左右両側から圧力をかける物なの。この方法を使えば今までより大量の搾汁が出来るから領地に帰ったら早速作ってみたいと思って」

 身振り手振りを加えて夢中でワインプレスについて話すルーナの着替えをなんとか終わらせたアリシアは、笑いを堪えながらルーナを鏡の前に座らせて髪を梳きはじめた。

「お嬢様は大旦那様の血を濃く受け継いでおられるんですね。大旦那様も新しい道具を見つけると夢中になられたとお聞きしています」

「お祖父様が作られた道具はどれもとても役に立つものばかりだわ。生活は便利になるし侯爵家は潤う。とっても助かってるけど、どんどん新しい物が出来てくるでしょう? 先細りにならないように頑張らなくちゃね」

「お嬢様はもう十分頑張られたと思いますけど? そろそろのんびり貴族の令嬢らしくお茶会や夜会を楽しまれても良いのではないですか?」

 腹の探り合いばかりのお茶会や夜会が大嫌いなルーナは眉間に皺を寄せたが言葉だけはアリシアに同意した。

「そうね。勿論、今回の件が片付いたら考えてみるわ」

「はい、侯爵家の将来の為に考えていただかなくては。屋敷に戻られたら山のような釣書が届いてる事でしょうからきっとお忙しくなられますね」

「(げっ)えーっと、漸く婚約破棄出来たんだもの暫くは無視しても良いんじゃないかしら。それにほら、私って傷物になったから。凄く良い口実があるでしょ? それより、明日が楽しみ」




「ここは紀元前千五百年頃の火山の大噴火で埋もれてしまった街なの。まだ一般公開されてなくて大学の発掘チーム以外は立ち入り禁止だから諦めてたのだけど、今回は運良く叔母様の伝手で見学させてもらえる事になったのよ」

 真っ白な空間にはかつての家の石組みや塀、窓枠や竈門の名残が点在していた。暑い日差しから遺跡を守る分厚いテントの下は思いの外過ごし易く、しゃがみ込んで発掘作業をしている学生らしき青年や手に持った何かを陽に翳しながら議論をしている紳士達を遠くから見つめた。

「そんなに古いんですか? その割にあそこに見えるのとか随分綺麗なんですね」

「発見されるまで火山灰に埋もれていたからとても良い保存状態で見つかったから壁画が残ってる箇所もあるんですって。
この後出土品も見せてもらえる事になってるのよ」



 遺跡の端でルーナ達が発掘作業を眺めているとテントの中からよれよれの帽子を被った紳士がルーナの元にやって来た。真っ黒に日焼けした40代前半位の紳士は目尻に皺を寄せルーナの前で帽子を脱ぎ胸に手を当てて挨拶をした。

「失礼ですが、アビゲイル・フリューゲル様の姪御さんでしょうか?」

「はい、ルーナと申します。この度は無理を聞き届けてくださり感謝しております」

「アビソール大学考古学教授のクリント・アラステアと申します。どうかクリントとお呼びください。
考古学など不要だという風潮の中、アビゲイル様はここの調査以外にも後援者としてご支援いただいておりますので今回お声がけ頂いて喜んでおります」

 日傘を差したルーナはクリントの後に続いて遺跡の中を歩きながら遺跡が発見された経緯や発掘状況などの説明を受けた。大学で教鞭をとっているだけあってクリントの説明はとてもわかり易く、少し低めの穏やかな話し振りは眩い日差しの中でも途切れる事なく続いた。
 ルーナ達が通り過ぎると発掘作業をしている学生達が小さく会釈を返してくれるのはクリント教授が慕われている証だろう。

「この続きは彼に頼みましょう。向こうにある小屋にはここで出土した物が集められているのですが、予想以上に保存状態の良いものもありますから楽しんでいただけると思います。リック、ちょっと良いかな? ルーナ様の案内を頼みたいんだが」

 スコップを持ってしゃがみ込んでいる青年はルーナと同年代の学生のようで、クリント教授が声をかけると眩しそうに目を細めた後がっしりした体躯に似合わずさっと立ち上がった。青年はズボンの埃をはたきペコリと頭を下げて挨拶をした。

「はじめまして、ルーナ様。不勉強ですが宜しくお願いします」

 近くに寄ってきたリックはルーナより頭ひとつ大きい。野外での活動が多いのか、クリント教授と同じくよく日に焼けていた。

「歳は若いがとても優秀な学生なのでなんでも聞いてやってください。出来ればリックが分からないことがあって慌てさせていただけると嬉しいですね」

「教授、意地悪ばかり言っていると学生に嫌われますよ。
ルーナ様は出土品をご覧になりたいのでしたね。こちらへどうぞ、ご案内いたします」

 リックは前もってクリント教授から指示を受けていたようで、ルーナ達の返事を待たず遺跡のはずれにある大きな小屋に向けて歩き出した。
 クリント教授に会釈したルーナは慌ててリックの後を追いかけた。



 小屋の中は薄暗く外に比べると少し涼しかった。片側の壁際には大小様々な壺や元がなんなのかルーナにはわからない石や石柱らしき物が並び反対側には木箱が積み上げられている。机の上には様々な形の出土品が並び分別され箱詰めされるのを待っている。


「はじめまして。ウォルデン侯爵家長女、ルーナ・ウォルデンと申します」

 ルーナがドレスの裾を抑え美しいカーテシーで挨拶をした。

しおりを挟む
感想 68

あなたにおすすめの小説

「地味ブス」と捨てられた私、文化祭の大型スクリーンで王子様の裏の顔を全校生に配信します

スカッと文庫
恋愛
「お前みたいな地味女、引き立て役にもならないんだよ」 眼鏡にボサボサ頭の特待生・澪(みお)は、全校生徒が見守る中、恋人だった学園の王子・ハルトから冷酷に捨てられた。 隣には、可憐な微笑みを浮かべる転校生・エマ。 エマの自作自演により「いじめの犯人」という濡れ衣まで着せられ、学園中から蔑まれる澪。 しかし、彼女を嘲笑う者たちはまだ知らない。 彼女が眼鏡の奥に、誰もが平伏す「真実の美貌」と、学園さえも支配できる「最強の背景」を隠していることを――。 「……ねぇ、文化祭、最高のステージにしてあげる」 裏切りへのカウントダウンが今、始まる。 スクリーンの裏側を暴き、傲慢な王子と偽りのヒロインを奈落へ突き落とす、痛快・学園下剋上ファンタジー!

わざわざ証拠まで用意してくれたみたいなのですが、それ、私じゃないですよね?

ここあ
恋愛
「ヴァレリアン!この場をもって、宣言しようではないか!俺はお前と婚約破棄をさせていただく!」 ダンスパーティの途中、伯爵令嬢の私・ヴァレリアンは、侯爵家のオランジェレス様に婚約破棄を言い渡されてしまった。 一体どういう理由でなのかしらね? あるいは、きちんと証拠もお揃いなのかしら。 そう思っていたヴァレリアンだが…。 ※誤字脱字等あるかもしれません! ※設定はゆるふわです。 ※題名やサブタイトルの言葉がそのまま出てくるとは限りません。 ※現代の文明のようなものが混じっていますが、ファンタジーの物語なのでご了承ください。

政略結婚だからと諦めていましたが、離縁を決めさせていただきました

あおくん
恋愛
父が決めた結婚。 顔を会わせたこともない相手との結婚を言い渡された私は、反論することもせず政略結婚を受け入れた。 これから私の家となるディオダ侯爵で働く使用人たちとの関係も良好で、旦那様となる義両親ともいい関係を築けた私は今後上手くいくことを悟った。 だが婚姻後、初めての初夜で旦那様から言い渡されたのは「白い結婚」だった。 政略結婚だから最悪愛を求めることは考えてはいなかったけれど、旦那様がそのつもりなら私にも考えがあります。 どうか最後まで、その強気な態度を変えることがないことを、祈っておりますわ。 ※いつものゆるふわ設定です。拙い文章がちりばめられています。 最後はハッピーエンドで終えます。

公爵家の家政を10年回した私が出ていったら、3ヶ月で領地が破綻しました

歩人
ファンタジー
エレナは公爵家に嫁いで10年、夫は愛人に入れ込み、義母には「家政婦代わり」と 罵られた。だが領地の財務も、商会との交渉も、使用人の管理も、全部エレナが やっていた。ある日、義母から「あなたの代わりなんていくらでもいる」と言われ、 エレナは静かに離縁届を出した。「では、代わりの方にお任せください」 辺境の町で小さな商会を開いたエレナ。10年間の実務経験は伊達ではなかった。 商会はたちまち繁盛する。一方、エレナがいなくなった公爵家は3ヶ月で経営破綻。 元夫が「戻ってこい」と泣きつくが—— 「お断りです。あと、10年分の未払い給金を請求いたしますね」

悪役断罪?そもそも何かしましたか?

SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。 男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。 あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。 えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。 勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。

婚約破棄された宰相です。 正直、婚約者も宰相も辞めたかったので丁度よかったです

鍛高譚
恋愛
内容紹介 「婚約破棄だ! そして宰相もクビだ!」 王宮の舞踏会で突然そう宣言したのは、女性問題を繰り返す問題王太子ユリウス。 婚約者であり王国宰相でもあるレティシアは、静かに答えた。 「かしこまりました」 ――正直、本当に辞めたかったので。 これまで王太子の女性問題の後始末、慰謝料交渉、教会対応、社交界の火消し…… すべて押し付けられていたレティシアは、婚約も宰相職もあっさり辞任。 そしてその瞬間―― 王宮が止まった。 料理人が動かない。 書類が処理されない。 伝令がいない。 ついにはトイレの汚物回収まで止まり、王宮は大混乱。 さらに王太子の新たな女性問題が発覚し、教会は激怒。 噂は王都中に広がり、王宮は完全に統治不能に。 そしてついに―― 教会・貴族・王家が下した決断は、 「王太子廃嫡」 そして。 「レティシア、女王即位」 婚約破棄して宰相をクビにした結果、 王宮を止めてしまった元王太子の末路とは――? これは、婚約破棄された宰相が女王になるまでの 完全自業自得ざまぁ物語。

処刑台の皇妃、回帰して復讐を誓う ~冷酷公爵と偽りの婚約者~ おまえたちは許さない!

秦江湖
ファンタジー
皇妃エリアーナは、夫である皇帝アランと、たった一人の親友イザベラの策略により、無実の罪で処刑される。 民衆に罵られ、アランの冷酷な目とイザベラの嘲笑を「始まりの景色」として目に焼き付けながら絶命した彼女は、しかし、処刑の記憶を持ったまま三年前の過去に回帰する。 「おまえたちは許さない」 二度目の人生。 エリアーナの目的はただ一つ、自分を陥れた二人への完璧な復讐。 彼女はまず、アラン(皇太子)からの婚約内示を拒絶。そして、アラン最大の政敵である「北の冷血公爵」ルシアン・ヴァレリウスに接触する。 1周目で得た「未来の知識」を対価に、エリアーナはルシアンに持ちかける。 「貴方様には帝国の覇権を。わたくしには復讐の舞台を。そのための『契約婚約』を――」 憎悪を糧に生きる皇妃と、氷の瞳を持つ公爵。 二人の偽りの婚約の行く末は……

だから聖女はいなくなった

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」 レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。 彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。 だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。 キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。 ※7万字程度の中編です。

処理中です...