【完結】期間限定聖女ですから、婚約なんて致しません

との

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6.ストレス解消に、お部屋改造するもんね〜

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「一人部屋、最高!」

 2階にあるロクサーナの部屋はベッドと勉強机、クローゼットがあるだけの狭いスペース。

 ロクサーナの荷物は大小の鞄が2つ、残りの荷物は異空間に収納しているのをセシルとサブリナは知っている。勿論レベッカには内緒。

(バレたらますます便利に使われそうだもん。気をつけなくちゃ)



「セシルも同じ2階でサブリナは3階だったから、爵位で決まってそうだね」

 3階はドアの間隔も広かったので、3人で揃う時にはサブリナの部屋がメインになりそう。

「はぁ、この様子だと学園でも爵位を傘に着る奴とかいそうだなあ」

【ロクサーナは大聖女、誰よりも凄いのに】

「いや、違う違う。ミュウのそれは勘違いだし、大聖女なんかならんし! 期間限定の聖女だから。次の更新は絶対しないもん」

 大聖女は魔力量と使用可能属性の数、無詠唱かつ使用できる魔法の練度で決まると言うが、長い間その基準に達する者が現れておらず、大聖女の席は空席のまま。

 聖王国では⋯⋯10歳の判定で魔法士や聖女やシスターの素質ありと判断されると、見習いとして修練がはじまり、徐々にランクが上がっていく。

 その次の段階として『見習い』の文字が消えると、国外の依頼を受ける事もできるようになり年俸は爆上がりする。

 ロクサーナが見習いをすっ飛ばして聖女認定を受けたのは、10歳の判定式の時。使える魔法が多かったり習熟度が高かったりしたのは、聞くも涙語るも涙の苦労があったわけで⋯⋯。





 神託の儀と呼ばれる判定式の日に初めて会ったジルベルト司祭と話し、2年の期間限定で聖女(仮)契約をした。

 12歳の時と14歳の時にジルベルト司祭の泣き落としで再更新したが、次はないと言ってある。

「だって、女神様も他の神様も信じてない聖女なんてあり得ないじゃん。今の契約はあと1年だけど卒業まで伸ばしてあげたんだから、感謝してもらわないとだよ。
これを破ったら大聖堂を爆破して逃げるって言ってあるもん」

【飛び級するつもりのくせに~】

「へへっ、目標は1年かな~。この国の問題をピックアップできたら聖王国に帰って、聖女も卒業するんだ~。問題解決は追加報酬って契約だし、後は家でも買ってのんびりスローライフする」

 ロクサーナは他の聖女と違って能率給で働いているので、既に生涯働かずに済むくらいの資産を持っている。

【固定給の奴等は駄々を捏ねて仕事を減らしてるけど、ロクサーナほどは稼げないもんね】

 だからアリエス達のような『働かない給料泥棒の魔法士』が大量に発生するのだと思っているが、聖王国としては『単独の属性でショボショボの魔法士』でも、抱え込んでおかなければならない事情があるのも分かっている。

【ロクサーナはセシルより銭ゲバ】

「ほーっほっほ、なんとでも言うがいい。お金は正義! 人は悪!」

【僕達は?】

「ミュウ達は正真正銘の家族! 近々、みんなとスローライフするんだもん」

【はぁ~い、アタシはねぇ高いとこに住みたいのぉ】

 突然話に参加したのは虹色に光る小鳩のピッピ。ダンゼリアム王国行きが決定した直後、『今度は王国なの? ピッピ、先に行って遊んでくるね~』と言って飛び出して行った2匹めの家族。

「お帰り~、どうだった?」

【トロールはいたけどぉ、スタンピードはまだかなぁ。あとあと、北の森の奥でドワーフを見たの~。モジャでゴツゴツゥ】

「マジか! 北⋯⋯やっぱり帝国産の武器は怪しいと思ってたんだよなぁ。あの国だけ強すぎなんだもん」

 ダンゼリアム王国の北の森は特に魔物が多く、『帰らずの森』と言われている。奥に行くに従い毒や麻痺を使う大型の魔物が増え、冒険者でさえ森の入り口辺りしか手を出さない。

(凶悪な魔物がいる森の奥にドワーフ⋯⋯面白くなってきた~)




【ここ狭すぎてヤダ】

 ベッドに座ったまま『どうやってドワーフにコンタクトを取るかなぁ』と考えていたロクサーナが、ハッと我に返った。

「確かに⋯⋯ここにコーヒーテーブルを置いたら、座る場所もないよね」

【広げる?】

「うーん、この部屋の鍵、ちゃちだから見えないとこじゃないとマズいよね。広げるんじゃなくて、クローゼットの中から繋げよう」

 レベッカが確実に部屋を荒らしにくると予想しているロクサーナは、クローゼットの隅に扉をつけて認識阻害の魔法をかけた。

「無理やりこじ開けたら罠が発動するようにしといた。他の子達にも伝えといてくれる?」

【分かった】

【ラジャー~! ピッピ、海に行ってくるね~】

 自由気儘なピッピは休憩もせず、空高く舞い上がって消えた。




「どう考えても狭い⋯⋯問題はベッドだよね。このスペースでダブルベッドはおかしすぎる」

 と言うことで、部屋の改造開始。

 ベッドを異空間に収納。傷だらけの床の上に木目が綺麗な床板を敷き詰め、オフホワイトで型押しの壁紙を貼った後、カーテンを新しくして部屋全体にクリーンと消臭浄化をかける。

 お気に入りのソファベッドとオットマンを設置すると、なんとかコーヒーテーブルを置くスペースができた。

 部屋のドアに探知魔法をかけて記録用の魔導具を仕掛け、異空間から適当に出した荷物をクローゼットや本棚に並べる。

 最後に机の上に置いたランプは、この部屋の監視と記録にも使える優れもの。

 これがロクサーナの居間兼見せ部屋。本当の部屋はクローゼットの中につけた扉の奥にある。

「ふふん、どうかなぁ? 結構イケるでしょ」

 腰に手を当てたドヤ顔のロクサーナだったが、ミュウの点は辛かった。

【微妙だけど~、これが限界かな。僕のベッドがないから50点減点だね】

「あ、すんません」

 ミュウお気に入りの籐の籠にひんやり効果を付与した毛布を敷いて『ははぁ、お納め下さいませ~』と巫山戯て差し出した。

【うむ、良かろう。後はクッキーとアイスがあれば合格とし⋯⋯(ボフン)⋯⋯わあ、ごめん。ちょっと調子に乗りすぎた~】

 ロクサーナが投げたクッションが飛んできてミュウが籠の中に逃げ込んだ。

(籠の縁から顔を半分だけ覗かせるとか⋯⋯あざとすぎる! しかもチラッと見える前足の肉球が⋯⋯)

 ロクサーナは出したばかりのテーブルに、アイスクリームマシマシでクッキーを出した。

【ロクサーナ、大好き~】

「ロクサーナのアイスが大好き~。だよね~」

【クッキーもだよ~】




 お菓子と一緒にミュウの姿が消えると同時に、コンコンとノックの音が聞こえてきた。

「ロクサーナ、セシルだよ~」

 片付けが済んでお茶に誘いに来たセシルは、ロクサーナの部屋を見て『おお!』と大袈裟な声をあげた。

「超羨ましい! 私の部屋も改造して欲しいくらい」

 セシルの部屋はロクサーナの部屋より広く、テーブルを置くスペースがあるらしい。

「サブリナの部屋は⋯⋯ちょっと強烈だけど広くてさ、ソファのセットが置いてあったし、ミニキッチンも付いてた。水属性があるとほんと便利だよな~。
でね、お湯の出る魔導具持ってたら売って欲しいんだけど、高い?」

「保冷と保温付きのポットもセットなら金貨20枚にまけてあげる」

「いいの! やったぁ。この国めちゃくちゃ暑いから、時々氷も売って貰えたらすっごく助かる。保冷庫を送ってもらうつもりだったんだけど、部屋が狭すぎて置けそうになくて」

「量にもよるけど、いつも通りの金額で」

 よしっとガッツポーズを決めたセシルに氷入りのポットを渡した。

「これを部屋に置いて、サブリナのとこでおやつ食べない?」

 喉も乾いたことだし⋯⋯他の人の部屋、楽しみかも。

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