【完結】期間限定聖女ですから、婚約なんて致しません

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21.ロクサーナ、キルケーへの愛を語る

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「じゃあさ、じゃあさ、キルケーもいたり?」

【繋がってる次元の先だけどね】

「よっしゃあぁぁ! キルケーに会えるぅぅ」

【ええ! 会いたいの? アイツ性格悪いのに。危なすぎだよ?】

「次元が違うだけならノープロブレム! 会いたい会いたい! 猛烈に会いたい! だって、薬草学と薬学についての膨大な知識だよ。元々はすごい神だったんでしょ⋯⋯んで、精霊になったんだよね。
冥府に赴いて霊を呼び寄せて予言を得るって、闇魔法の死霊術とは違うのか知りたいの。
変身術のプロだし、キメラ作るって魔法なのか錬金術なのか⋯⋯もう、わけわかんないもん。
薬と杖で人を動物にするしキメラも作るし。動物から人間に戻せる塗り薬の作り方もついでに知りたい。
キルケーは アコニツムトリカブトマスターなんでしょ? あれ上手く使いこなせなくてさ。
キュケオーン向精神的な醸造酒の作り方も教えて欲しい! 試したんだけど全然だったんだもん。水と大麦とペニーロイヤルミントで作るとか、ワインと粉チーズを材料とするとかって記録があるんだけど、作れないのよ~。
そんなので向精神的な効果だの幻覚見れるだの、ぜーったい無理。何が足りないのかぜんっぜんわかんない」

【⋯⋯会いたいのだけは分かった、うん】




「取り敢えずイカ焼きと海老食べてから、船を探そうか⋯⋯セイレーン&カリュブディス&スキュラ&キルケーじゃ、船だしてもらえないかなぁ」

【うん、それに追加でクラーケンね。これが今回のメインだから】

「うん、分かってる。踊り食い⋯⋯巨鯨くらいの大きさのクラーケンを踊り食いしたがる子猫のミュウの希望。頑張るよ」

 ロクサーナの頭の中をよぎったのは、足⋯⋯本当は腕⋯⋯の先っちょに、小さな点かシミみたいになっているミュウの姿。

(小さすぎて食いつかれても痛くも痒くもない⋯⋯歯が立つんだろうか)




【あそこの屋台だよぉ、ピカピカのおじさんのが美味しいってみんなが言ってたの~】

「あっ! ピッピ、元気だった?」

【うん、超元気なのぉ。でもねぇ、ちょうど500年目だったから忙しくて~】

「ん? よく分かんないけど、元気ならいいか】

【ピッピはおじさん好き】

【違うも~ん! 長年焼き続けたからぁ自慢のテクニックとかぁ、工夫を重ね続けた技が光るのぉ】

【頭も光るおじさん】

「おじさん! イカ焼き3枚ちょうだい」

「ちっこいのに3枚も食えるのか? うちのイカはでけえぞぉ。俺の持ち物みてえにな⋯⋯がっはっは」

「(ギャグがガンツしてる)大丈夫、友達と食べるから」

「そうか、ちょっと待ってな。焼きたての一番いいやつを作ってやるからな」

 焦げたタレの匂いが白い煙と共に立ち上がり食欲をそそる。

「ほれ、銀貨1枚と銅貨5枚な。熱いから気をつけろよ」

「ありがとう!」

 お金を払って人目につかなそうな木陰を探して座り込んだ。

「ハフハフ⋯⋯美味し~い。ピッピ情報に感謝だね」

【光る、ピカピカ光る⋯⋯ハムハム⋯⋯眩しすぎて目が痛い】

「ミュウの事は気にしないでいいからね。ストレスでちょびっと壊れかけててさ」

【燃やしちゃう? 復活したらピッピみたく新品同様になるよぉ?】

「いや⋯⋯あれ? 新品にはなんないんだ」

【完全燃焼したらぁ、新品になるかもぉ⋯⋯あ、消し炭じゃ無理だねぇ】

【復活しないじゃんか】

【ミュウはぁ燃え残っちゃうから平気なのぉ~。ふふっ】

 右の小さな翼をピッと上げて苦笑いした(当社予測)ピッピがミュウの尻尾に追い払われた。

(良き良き、この子達といる時が一番ホッとするね。はぁ、私もやっぱり疲れてたのかもな~)

【疲れるの、当然だよぉ~。ロクサーナは人嫌いだもんね~】




 イカ焼きを堪能して港を散策。

「なるべく丈夫そうな船がいいよね。んで、クラーケンごとき平気じゃあ! とか言ってくれそうな強者」

【いないと思うよぉ】

【僕もそう思う。踊り食いは諦めないけど】



「キャラック船は操縦に人がたくさんいるし大きすぎてダメ。小回り重視のキャラベル船が良いんだよなぁ。キャラベル船なら沿岸の浅瀬や河川での活動が迅速で、風を自在につかむし操舵性が極めて優れてる」

 港に停泊している船の中からいくつか候補を選んで交渉してみた。

「え? 無理無理。船は俺達の仕事道具なんだから、嬢ちゃんの遊びにゃ使えねえよ。全く親は何考えてんだか」

「おままごとがしてえなら、通りの向こうにおもちゃの船が売ってる。そいつを池に浮かべりゃいい」

「邪魔だ邪魔だ! 忙しいからどっか行けよ、怪我しても知らねえからな」

「う~ん、この身長が⋯⋯成長期後ならなんとかなったのかも。どうしようかなあ」

 超絶小柄なロクサーナは10歳くらいの子供に見えているらしく、話を聞いてくれそうな気配もない。

【15歳でも無理かも】

 クラーケンが今回の目標だが、最終的には毎年暴れるという海獣の調査が狙いなので、船⋯⋯船頭だけはどうしても必要になる。

「空を飛んでったら町中大騒ぎになるしなぁ。って事は、夜の闇に紛れて⋯⋯いやいや、朝と夜とじゃ条件が変わりすぎる。う~ん、そうだ!」

 突然立ち上がったロクサーナがイカ焼きの屋台に向かって走り出した。



「おじさ~ん」

「お? さっきの嬢ちゃんじゃねえか」

「ねえ、ここの海って毎年海獣が出るんだよね」

「ああ、出るぜ~。こ~んなでっかい口の魔獣が海からどっば~んってな」

「でっかいの?」

「おう、めちゃめちゃでけえぞお。すんごいデカいひれを器用に動かして、くねくね動いてきやがるんだ。鱗がキラキラしてよお、海水をどばーんと吐き出しやがるんだ。

ひれ⋯⋯ なんだ、シーサーペントじゃん)

 シーサーペントは、たてがみのような毛が生え、上下に身をくねらせて泳ぐ。幅の広いひれと鱗に覆われた体躯、攻撃は大量の潮を吹くなどの水属性のものばかり。

「んじゃ港とか船とか、屋台も壊れちゃって大変だね~」

「いや、大したこたぁねえよ。船も屋台も移動しとくし、港がちょこっと壊れるくれえだから、夏の風物詩ってやつだな。聖王国の魔法士ってのが来て追い払ってくれるしな」

「やっつけないの? 魔法でババーンとかしてさ」

「さあ、魔物と魔法士のバトルを観にきた観光客が金を落としてくれるから、倒されたら困る奴がいるのかもな」

 ジルベルト司祭が見せてくれた報告書によると、夕方海が荒れて翌日の午前中に騒ぎになると言う。素早い動きで船を沈め港に向かい潮を吐く。毎回、討伐ではなく追い払っただけ。

 まるで『もう直ぐ騒ぎますからね~、乞うご期待!』みたいな礼儀正しい海獣。

(へえ~、聖王国を舐めてんなぁ。客寄せのイベントに無料で魔法士を呼んでるんだ~。ほお~。国王に呪いかけてやろっかなぁ。鼻毛が伸び続けるとか、便秘になってオナラが出続けるとか)

「そっかぁ、魔物が暴れたら船が壊れて大変かなぁって思ったんだ~」

「まあ、何人かはいるけどな。船は高えから壊れたからってホイホイは買えねえ、漁師やめておかに上がるしかねえんだよなぁ」

 キラーんとロクサーナの目が光った。

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