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91.可愛いは正義!
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「⋯⋯ゆ、幽霊か!? 人がおらんのに声が聞こえた」
おじさんの声で我に返ったジルベルトが4人に欠けていた魔法を解き、ロクサーナの前に仁王立ちした。
「あ、みんなごめんね。タコ焼き⋯⋯串焼きを頼んでたのを忘れてたから、ちょっと慌てちゃって。食べる?」
「「「食う」」」
ジルベルト以外の3人はおじさんから串焼きを受け取って食べはじめたが、ジルベルトは無言のまましゃがみ込んで、ロクサーナの顔を睨み⋯⋯抱きついた。
「頼むから、いなくならないで⋯⋯もう、あんな思いはしたくないの」
「ごめんなさい。いつもの癖で、ついうっかり」
仕事でもプライベートでも1人で行動することに慣れすぎたロクサーナは、行動する前に人に声をかけるという習慣がない。もちろん意識すれば出来るが、今回は慌てていたのでそこまで頭が回らなかった。
「この間、突然飛び出した時死にかけたじゃない。もう忘れちゃったの?」
「あ~、忘れてな⋯⋯はい、忘れてました」
「はぁ、やっぱり今回のお仕置きはぬくぬくも追加だわ」
「あ、え? いや、それはちょっと。さっきプニプニとかトントンって⋯⋯アレだけでも限界超えてるから! 無理だから! 頭が爆発しちゃう。色んなとこが崩壊するぅぅ」
「やっぱ、焼きたては美味えな」
「よく分かんないけど、美味しいは正義だわ」
「おっちゃん、俺もう1本。ちびすけの奢りで」
「お、俺も⋯⋯あと、土産に2本⋯⋯自腹で」
立ったままでハムハムむしゃむしゃと、タコを貪るウルサ達の生暖かい視線の先で、ロクサーナはプルプルと震えていた。
(お仕置き怖い! 恥ずかしすぎるぅぅ)
宿に泊まるのは危険な為、ロクサーナとジルベルトはアンセルの家にお邪魔することになった。
アンセルは妻帯者で子供もいる上に、小さな一軒家に住んでいる。カーニスも妻帯者だが妻のフェーリスはBランク冒険者で、現在泊まりがけの依頼を受けて出かけている。
「嫁さんが出かけてる間に、女の子を連れ込んだとかって言われたらマズイだろ?」
「それならジルベルトだけ、カーニスんとこに泊めりゃ良いじゃねえか」
「いや、それがマズイんだって⋯⋯分かんねえ奴だな。そんなだからウルサにゃ嫁のキテがねえんだよ! この唐変木が!!」
意味が分かったシーミアはゲラゲラと笑い出し、ジルベルトは苦い顔で目を背けた。
「ちびちゃん、アンセルんちだと部屋が一つしかないと思うんだけどぉ、ジルベルトと同室オッケー?」
「へ? 大丈夫だよ。依頼を受けて森に入った時とかに、人と雑魚寝したことあるし。昔はジルベルト司祭に添い寝してもらっていたしね」
「⋯⋯ジルベルト、それって犯罪じゃねえのか?」
「違うわよ! あの時は色々事情があったの! 別にそんな意味で一緒に寝たんじゃないわ」
「ふむ、ジルベルトはムッツリって奴かしら⋯⋯それとも育てて美味しくいただく育成系? まあ、いただかれる方も気にしてないみたいだし、今日はもう帰って寝るわね」
シーミアが『夜更かしはお肌の大敵』だと言いながら、ウルサの首根っこを掴んで歩き出した。
「ウルサは邪魔なの! アンタの嗜好は知ってるけど、保護者ズラはやめて空気を読みなさいよ。ポメラニアンかビションフリーゼでも飼いなさい、泊まりで出かける時はアンセルの子供が世話してくれるから!」
巨大な熊は無類の小動物好き。初めて会った時から何かにつけてすぐに噛みついてくるロクサーナは、ウルサの庇護欲を揺さぶり続けているらしい。
「いーっつもちっこい動物に嫌われるんだから、ちびちゃんを構いすぎて嫌われたらどうすんの? 二度とそばに来るなとか言われたら立ち直れないでしょ!?」
「うん⋯⋯ちびがキャンキャン言うのが可愛くて、つい構っちまうんだよなぁ。ジルベルトの野郎は真面そうだし。あ、でもよお。なんで時々オネエ言葉になるんだ?
シーミアといいジルベルトといい⋯⋯似合っちゃいるが、おかしくねえか?」
「ジルベルトさんの場合は訳アリなんじゃないかしら。あたしは単なる趣味だけどね」
いくら鍛錬しても細いままの身体と女顔で揶揄われてばかりいたシーミアは、ある日突然オネエ言葉を使いはじめた。
『むっさい野郎達が女役を強請ってくるじゃない。だーかーら、願い通りにしてあげたの。文句があるなら言ってみなさいよ!』
予想以上の出来栄えに、ウルサ達3人を含めた町の連中は文句を言う勇気が出なかった。揶揄ってきた奴はいつも通りの腕力で叩き潰したが⋯⋯。
「アンセルの妻でキコーニアよ、この子はパーヴォ。よろしくね」
「パーヴォ、たんたいでつ!」
(か、可愛い~! 噛んだよね、今間違いなく噛んだけど⋯⋯やり切った顔満載のドヤ顔してる! ああ、どうしよう。めっちゃ可愛いくて堪んない!)
「突然お邪魔して申し訳ありません。一晩ご厄介になります」
「あの、これ⋯⋯お土産代わりと言いますか、良ければ食べて下さい」
「あかいのとぉ、ちあうのいっぱ~い! ちゅおいねえ」
「そう、赤いのはリンゴで黄色いのはバナナ⋯⋯で、こっちのはライチって言うの」
初めて見たライチを人差し指でツンツンしたパーヴォが目を輝かせた。
「わあ、アイチ! たかいねぇ」
「ライチは硬い⋯⋯言えるかな?」
「ラ、ラニチはぁ、たか~い! パーヴォ、いえたね~。えらい~?」
もう、何を言っても何をしても可愛い。可愛いは正義だと、ロクサーナはパーヴォ君の頭をわしゃわしゃと撫でて追加のお土産をサービス。
「食べるのは明日にしてね」
「あーちゃん⋯⋯こえ、な~に?」
「とっても美味しそうなクッキーとスコーンよ。お利口さんでベッドに入れたら、明日のおやつに出してあげるわ」
「パーヴォ、べットにいってねんねちゅる~。おつや、たのちみも~ん。おあつみなたい!」
パタパタと走って行く後ろ姿も可愛い⋯⋯あ、転んだ。
「くぅ~、アンセルさんが羨ましい。素敵な奥ちゃまだけでなく、あんな可愛いお子ちゃままでいるなんて! 隣に引っ越してきた~い」
ロクサーナなら本気で家を建てそうだが、この辺りに越してきたらもれなく熊がついてきそうな予感がする。
(それはちょっと面倒かも。ウルサを見てると年頃の娘を持った頑固親父の前に出た気分になる)
ソファを勧められ妻のキコーニアが淹れてくれたお茶で乾杯。
「家にお酒を置いてないから、お茶でごめんなさいね」
漁師や船乗り達は何かにつけて酒を飲むので、せめて家にいる時くらい肝臓を休めて欲しいと言う妻の愛情らしい。
「ロクサーナちゃんにはお礼を言いたかったの。アンセルがまた船に乗れるようになって、本当に感謝してるわ。ありがとう」
親切でしたわけではなく船は単なる報酬なので、感謝されるのは居心地が悪い。
(結構強引に魔法契約させたし、クラーケンとかシーサーペントとかに巻き込んだし)
「あ! クラーケン食べます? 良かったら少し置いてきますけど」
(精霊だって知らなければ美味しく食べられるもんね! 別に罪悪感があって食べにくいとかじゃないから。うん、多分⋯⋯それにしても鳥一家なのはビックリ)
アンセルは雉、キコーニアはコウノトリ、パーヴォは孔雀。
(カーニスさんちは犬と猫だった)
アンセル一家と少しお喋りして、将来パーヴォ君の部屋になる予定の客室に案内された。
ソファとシングルベッドがあり、クローゼットがあるだけのシンプルな部屋だが、淡い緑のカーテンや格子模様のラグが部屋を明るく広く見せている。
「素敵な家族だね」
ソファにせっせと巣作りをしながらロクサーナが話しかけると、ひょいとベッドに放り投げられた。
「忘れてないよね~、お膝でプニプニとなでなでトントンのお仕置きに、ぬくぬくも追加したはず。翌日繰越は利息をつけるけど、どうする?」
ロクサーナ、絶体絶命!
おじさんの声で我に返ったジルベルトが4人に欠けていた魔法を解き、ロクサーナの前に仁王立ちした。
「あ、みんなごめんね。タコ焼き⋯⋯串焼きを頼んでたのを忘れてたから、ちょっと慌てちゃって。食べる?」
「「「食う」」」
ジルベルト以外の3人はおじさんから串焼きを受け取って食べはじめたが、ジルベルトは無言のまましゃがみ込んで、ロクサーナの顔を睨み⋯⋯抱きついた。
「頼むから、いなくならないで⋯⋯もう、あんな思いはしたくないの」
「ごめんなさい。いつもの癖で、ついうっかり」
仕事でもプライベートでも1人で行動することに慣れすぎたロクサーナは、行動する前に人に声をかけるという習慣がない。もちろん意識すれば出来るが、今回は慌てていたのでそこまで頭が回らなかった。
「この間、突然飛び出した時死にかけたじゃない。もう忘れちゃったの?」
「あ~、忘れてな⋯⋯はい、忘れてました」
「はぁ、やっぱり今回のお仕置きはぬくぬくも追加だわ」
「あ、え? いや、それはちょっと。さっきプニプニとかトントンって⋯⋯アレだけでも限界超えてるから! 無理だから! 頭が爆発しちゃう。色んなとこが崩壊するぅぅ」
「やっぱ、焼きたては美味えな」
「よく分かんないけど、美味しいは正義だわ」
「おっちゃん、俺もう1本。ちびすけの奢りで」
「お、俺も⋯⋯あと、土産に2本⋯⋯自腹で」
立ったままでハムハムむしゃむしゃと、タコを貪るウルサ達の生暖かい視線の先で、ロクサーナはプルプルと震えていた。
(お仕置き怖い! 恥ずかしすぎるぅぅ)
宿に泊まるのは危険な為、ロクサーナとジルベルトはアンセルの家にお邪魔することになった。
アンセルは妻帯者で子供もいる上に、小さな一軒家に住んでいる。カーニスも妻帯者だが妻のフェーリスはBランク冒険者で、現在泊まりがけの依頼を受けて出かけている。
「嫁さんが出かけてる間に、女の子を連れ込んだとかって言われたらマズイだろ?」
「それならジルベルトだけ、カーニスんとこに泊めりゃ良いじゃねえか」
「いや、それがマズイんだって⋯⋯分かんねえ奴だな。そんなだからウルサにゃ嫁のキテがねえんだよ! この唐変木が!!」
意味が分かったシーミアはゲラゲラと笑い出し、ジルベルトは苦い顔で目を背けた。
「ちびちゃん、アンセルんちだと部屋が一つしかないと思うんだけどぉ、ジルベルトと同室オッケー?」
「へ? 大丈夫だよ。依頼を受けて森に入った時とかに、人と雑魚寝したことあるし。昔はジルベルト司祭に添い寝してもらっていたしね」
「⋯⋯ジルベルト、それって犯罪じゃねえのか?」
「違うわよ! あの時は色々事情があったの! 別にそんな意味で一緒に寝たんじゃないわ」
「ふむ、ジルベルトはムッツリって奴かしら⋯⋯それとも育てて美味しくいただく育成系? まあ、いただかれる方も気にしてないみたいだし、今日はもう帰って寝るわね」
シーミアが『夜更かしはお肌の大敵』だと言いながら、ウルサの首根っこを掴んで歩き出した。
「ウルサは邪魔なの! アンタの嗜好は知ってるけど、保護者ズラはやめて空気を読みなさいよ。ポメラニアンかビションフリーゼでも飼いなさい、泊まりで出かける時はアンセルの子供が世話してくれるから!」
巨大な熊は無類の小動物好き。初めて会った時から何かにつけてすぐに噛みついてくるロクサーナは、ウルサの庇護欲を揺さぶり続けているらしい。
「いーっつもちっこい動物に嫌われるんだから、ちびちゃんを構いすぎて嫌われたらどうすんの? 二度とそばに来るなとか言われたら立ち直れないでしょ!?」
「うん⋯⋯ちびがキャンキャン言うのが可愛くて、つい構っちまうんだよなぁ。ジルベルトの野郎は真面そうだし。あ、でもよお。なんで時々オネエ言葉になるんだ?
シーミアといいジルベルトといい⋯⋯似合っちゃいるが、おかしくねえか?」
「ジルベルトさんの場合は訳アリなんじゃないかしら。あたしは単なる趣味だけどね」
いくら鍛錬しても細いままの身体と女顔で揶揄われてばかりいたシーミアは、ある日突然オネエ言葉を使いはじめた。
『むっさい野郎達が女役を強請ってくるじゃない。だーかーら、願い通りにしてあげたの。文句があるなら言ってみなさいよ!』
予想以上の出来栄えに、ウルサ達3人を含めた町の連中は文句を言う勇気が出なかった。揶揄ってきた奴はいつも通りの腕力で叩き潰したが⋯⋯。
「アンセルの妻でキコーニアよ、この子はパーヴォ。よろしくね」
「パーヴォ、たんたいでつ!」
(か、可愛い~! 噛んだよね、今間違いなく噛んだけど⋯⋯やり切った顔満載のドヤ顔してる! ああ、どうしよう。めっちゃ可愛いくて堪んない!)
「突然お邪魔して申し訳ありません。一晩ご厄介になります」
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「あかいのとぉ、ちあうのいっぱ~い! ちゅおいねえ」
「そう、赤いのはリンゴで黄色いのはバナナ⋯⋯で、こっちのはライチって言うの」
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「わあ、アイチ! たかいねぇ」
「ライチは硬い⋯⋯言えるかな?」
「ラ、ラニチはぁ、たか~い! パーヴォ、いえたね~。えらい~?」
もう、何を言っても何をしても可愛い。可愛いは正義だと、ロクサーナはパーヴォ君の頭をわしゃわしゃと撫でて追加のお土産をサービス。
「食べるのは明日にしてね」
「あーちゃん⋯⋯こえ、な~に?」
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「パーヴォ、べットにいってねんねちゅる~。おつや、たのちみも~ん。おあつみなたい!」
パタパタと走って行く後ろ姿も可愛い⋯⋯あ、転んだ。
「くぅ~、アンセルさんが羨ましい。素敵な奥ちゃまだけでなく、あんな可愛いお子ちゃままでいるなんて! 隣に引っ越してきた~い」
ロクサーナなら本気で家を建てそうだが、この辺りに越してきたらもれなく熊がついてきそうな予感がする。
(それはちょっと面倒かも。ウルサを見てると年頃の娘を持った頑固親父の前に出た気分になる)
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「家にお酒を置いてないから、お茶でごめんなさいね」
漁師や船乗り達は何かにつけて酒を飲むので、せめて家にいる時くらい肝臓を休めて欲しいと言う妻の愛情らしい。
「ロクサーナちゃんにはお礼を言いたかったの。アンセルがまた船に乗れるようになって、本当に感謝してるわ。ありがとう」
親切でしたわけではなく船は単なる報酬なので、感謝されるのは居心地が悪い。
(結構強引に魔法契約させたし、クラーケンとかシーサーペントとかに巻き込んだし)
「あ! クラーケン食べます? 良かったら少し置いてきますけど」
(精霊だって知らなければ美味しく食べられるもんね! 別に罪悪感があって食べにくいとかじゃないから。うん、多分⋯⋯それにしても鳥一家なのはビックリ)
アンセルは雉、キコーニアはコウノトリ、パーヴォは孔雀。
(カーニスさんちは犬と猫だった)
アンセル一家と少しお喋りして、将来パーヴォ君の部屋になる予定の客室に案内された。
ソファとシングルベッドがあり、クローゼットがあるだけのシンプルな部屋だが、淡い緑のカーテンや格子模様のラグが部屋を明るく広く見せている。
「素敵な家族だね」
ソファにせっせと巣作りをしながらロクサーナが話しかけると、ひょいとベッドに放り投げられた。
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