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5.唖然とする二人と、もう一人の執事
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「一階の応接室からはじめます」
全ての荷物を片付けるのに二時間程度かかっただろうか? 手持ちのノートと照らし合わせながら、各部屋にあったルーシーの荷物を片付けていった。
最後に玄関を片付けたルーシーは一通の封筒をエマーソンに手渡した。
「覚えてると思うけど結婚前にあった物は全て離れと地下室に片付けてあるから、手間をかけて申し訳ないけど必要なものがあればそこから持って来てね」
「奥様が【収納】スキルをお持ちだとは存じませんでした」
「家族以外には殆ど教えてないの。出来ればあなた達も知らない事にしてくれたら助かるんだけど、難しいわね」
「そうですね、旦那様からどうやって運び出したのか聞かれたら・・」
「寝ていて気づかなかった事にいたします。エマーソン、奥様の手紙を執務室に置いたらさっさと寝てしまいましょう」
「そっそうですね。その方が良さそうです」
「今まで本当にありがとう。これから大変になるかも知れないけど・・その」
「こちらこそ。奥様のお陰で三年間とても楽しゅうございました。使用人一同同じ気持ちでございます」
「ミセス・ブラックリー。色々教えて頂いて本当に助かりました。
この後うちの者に馬を引き取りに来させたいんだけど良いかしら?」
「はい、お待ちしております」
「ではこの後まだ仕事があるので、宜しく頼みます」
アリスを従えたルーシーは馬車に乗り込んだ。
「この後はお家ですね」
「いいえ、一旦倉庫に寄ってからソールズベリーに行くわ。あそこにも私の私物があるから。
ラッキーな事に今お義父様達は旅行中なの」
「ソールズベリーの別荘ですか?」
ソールズベリーは王都から馬車で凡そ一時間。緑豊かな自然が広がり多くの貴族達が挙って別荘を建てている。
澄んだ空気とミネラルを多く含んだ温泉、ルーディー競馬場や複数のカジノがあり王族から庶民までが訪れるアンバーシア王国でも有数の観光地となっている。
マルフォー伯爵家も別荘を持っており、現在はリチャードの義父と義母が悠々自適の隠居生活を送っている。
「アリスは家に帰りなさいね。倉庫に寄る前に一旦家に寄るから」
「お供します。お一人なんて危ないです」
「御者もいるし荷物を貰って帰るだけだから大丈夫よ」
結局、頑として譲らないアリスをお供にソールズベリーの別荘についたルーシー。
玄関をノックするが誰も出てこない。延々とノッカーを叩き続けると、寝癖の跡がつきパジャマのままの執事がようやく出て来た。
「こんな夜遅くに一体何のようだね。旦那様方はお留守だ。さっさと帰んな」
「私はルーシー・マルフォー、リチャードの妻ですわ。荷物の片付けに来ましたの、そこを通して下さる?」
「はっ、へっ。ああ! おっ奥様でいらっしゃいますか? お久しぶりで御座います。気付きませんで、申し訳ありませんでした」
執事は慌ててドアを大きく開いてルーシー達を中に入れ、手櫛で髪を整え始めた。
「今から私の荷物を片付けるので、あなたは・・邪魔になりそうだからお部屋で待機していて。
終わったら声をかけるわ」
「あのー、仰ってる意味がよく分かりませんのですが?」
「リチャードから屋敷にある私の荷物を纏めるように言われたので、この屋敷にある私物も片付けなくてはなりませんの」
「はあ、ではその間に着替えてまいります」
「そんなに時間はかからないから部屋で待機していてね」
「畏まりました。お荷物は馬車に?」
「馬車は外に待機しているわ。人手も足りてるから」
面倒になりそうな執事を追いやったルーシーは早速応接室に入って行った。
「アリス、執事達が覗かないよう見張っておいてくれる?」
「はい、畏まりました!」
ここでもまた、ノートと照らし合わせながらどんどん荷物を収納していくルーシーだった。
全ての荷物を片付けるのに二時間程度かかっただろうか? 手持ちのノートと照らし合わせながら、各部屋にあったルーシーの荷物を片付けていった。
最後に玄関を片付けたルーシーは一通の封筒をエマーソンに手渡した。
「覚えてると思うけど結婚前にあった物は全て離れと地下室に片付けてあるから、手間をかけて申し訳ないけど必要なものがあればそこから持って来てね」
「奥様が【収納】スキルをお持ちだとは存じませんでした」
「家族以外には殆ど教えてないの。出来ればあなた達も知らない事にしてくれたら助かるんだけど、難しいわね」
「そうですね、旦那様からどうやって運び出したのか聞かれたら・・」
「寝ていて気づかなかった事にいたします。エマーソン、奥様の手紙を執務室に置いたらさっさと寝てしまいましょう」
「そっそうですね。その方が良さそうです」
「今まで本当にありがとう。これから大変になるかも知れないけど・・その」
「こちらこそ。奥様のお陰で三年間とても楽しゅうございました。使用人一同同じ気持ちでございます」
「ミセス・ブラックリー。色々教えて頂いて本当に助かりました。
この後うちの者に馬を引き取りに来させたいんだけど良いかしら?」
「はい、お待ちしております」
「ではこの後まだ仕事があるので、宜しく頼みます」
アリスを従えたルーシーは馬車に乗り込んだ。
「この後はお家ですね」
「いいえ、一旦倉庫に寄ってからソールズベリーに行くわ。あそこにも私の私物があるから。
ラッキーな事に今お義父様達は旅行中なの」
「ソールズベリーの別荘ですか?」
ソールズベリーは王都から馬車で凡そ一時間。緑豊かな自然が広がり多くの貴族達が挙って別荘を建てている。
澄んだ空気とミネラルを多く含んだ温泉、ルーディー競馬場や複数のカジノがあり王族から庶民までが訪れるアンバーシア王国でも有数の観光地となっている。
マルフォー伯爵家も別荘を持っており、現在はリチャードの義父と義母が悠々自適の隠居生活を送っている。
「アリスは家に帰りなさいね。倉庫に寄る前に一旦家に寄るから」
「お供します。お一人なんて危ないです」
「御者もいるし荷物を貰って帰るだけだから大丈夫よ」
結局、頑として譲らないアリスをお供にソールズベリーの別荘についたルーシー。
玄関をノックするが誰も出てこない。延々とノッカーを叩き続けると、寝癖の跡がつきパジャマのままの執事がようやく出て来た。
「こんな夜遅くに一体何のようだね。旦那様方はお留守だ。さっさと帰んな」
「私はルーシー・マルフォー、リチャードの妻ですわ。荷物の片付けに来ましたの、そこを通して下さる?」
「はっ、へっ。ああ! おっ奥様でいらっしゃいますか? お久しぶりで御座います。気付きませんで、申し訳ありませんでした」
執事は慌ててドアを大きく開いてルーシー達を中に入れ、手櫛で髪を整え始めた。
「今から私の荷物を片付けるので、あなたは・・邪魔になりそうだからお部屋で待機していて。
終わったら声をかけるわ」
「あのー、仰ってる意味がよく分かりませんのですが?」
「リチャードから屋敷にある私の荷物を纏めるように言われたので、この屋敷にある私物も片付けなくてはなりませんの」
「はあ、ではその間に着替えてまいります」
「そんなに時間はかからないから部屋で待機していてね」
「畏まりました。お荷物は馬車に?」
「馬車は外に待機しているわ。人手も足りてるから」
面倒になりそうな執事を追いやったルーシーは早速応接室に入って行った。
「アリス、執事達が覗かないよう見張っておいてくれる?」
「はい、畏まりました!」
ここでもまた、ノートと照らし合わせながらどんどん荷物を収納していくルーシーだった。
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