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4.修道院長を追い出す
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「“るいれき” の権威だと申すのか?」
「はい、父の代より薬剤師を致しており、多くの患者を治療して参りました」
国王陛下に返答しているのはジョセフで、アイヴィはその横に助手として控えていた。
国王陛下は顔色が悪く、よく見ると目の下に隈が出来ている。
「・・余も宮廷医師達も役に立たなんだ。修道院長の治療も捗々しくない」
国王陛下は目を瞑り額を擦りながら、
「其方には自信があるのだな。必ず王女を助けると余の前で誓えるのか?」
「恐れながら、今現在の王女殿下の御様態も不明なままでは確約は致しかねます。
ただ、今迄の経験と知識が必ずや王女殿下のお役に立つと信じております」
長い沈黙の間、国王陛下はジョセフをじっと見つめていた。
「・・王女を頼む。どうかあれを助けてやってくれ」
「全身全霊をもって」
ジョセフとアイヴィは頭を下げた後、
「一つお願いがございます」
「申してみよ」
「修道院長殿に一時ご退出を願いたいと」
「あの者が邪魔と申すか?」
「治療方法の違いから議論になりましては無駄な時間がかかってしまいます。
私達の聞き及んでいる様子では一刻も無駄に出来ないと思われますので」
「分かった。修道院長には口を挟まぬよう申し伝える。但し、其方達には王宮医師団の者をつけるが良いな」
「はい、その方が何かと好都合でございます」
王宮医師団長のリアム・エバンズとその息子タイラー・エバンズの後ろを、ジョセフとアイヴィは歩いている。
王女殿下は塔の外れの部屋に移動されており、謁見の間からはかなりの距離があった。
王女殿下の部屋に近付くと、きつい薬草の匂いがしてきた。
部屋の前には二人の衛兵がおり、リアム達の顔を見た途端敬礼した。
「修道院長殿に取次を」
「はっ」
衛兵がドアを開けると薬草の匂いが益々強くなり、暫くして修道院長が奥の部屋から出てきた。
「そこにおる者達に治療を代われだと? 陛下はそれ程までに愚かであったか!
わしがおらねば王女殿下の御命はないのだぞ」
顔を赤くして怒鳴る修道院長に対してリアムは冷静に、
「陛下のご指示でございます。部屋の準備をしてありますゆえ、どうか暫くのご休憩を」
「なんと愚かな! そこにおるのは薄汚い平民ではないか。
そのような者を王女殿下の部屋に招き入れるなどあり得ん! さっさと立ち去れ」
リアムは修道院長を冷たい目で見ながら、
「では、修道院長殿は陛下のお言葉に従うことは出来ないと申されますかな?」
「・・そうは申しておらん。愚かな決断に呆れておるのよ。
勝手にするが良い」
修道院長は靴音高く部屋を出て行った。
リアム達四人は王女殿下の部屋に入ったが、部屋の中は薄暗く薬草の匂いで息もつけないほどだった。
「はい、父の代より薬剤師を致しており、多くの患者を治療して参りました」
国王陛下に返答しているのはジョセフで、アイヴィはその横に助手として控えていた。
国王陛下は顔色が悪く、よく見ると目の下に隈が出来ている。
「・・余も宮廷医師達も役に立たなんだ。修道院長の治療も捗々しくない」
国王陛下は目を瞑り額を擦りながら、
「其方には自信があるのだな。必ず王女を助けると余の前で誓えるのか?」
「恐れながら、今現在の王女殿下の御様態も不明なままでは確約は致しかねます。
ただ、今迄の経験と知識が必ずや王女殿下のお役に立つと信じております」
長い沈黙の間、国王陛下はジョセフをじっと見つめていた。
「・・王女を頼む。どうかあれを助けてやってくれ」
「全身全霊をもって」
ジョセフとアイヴィは頭を下げた後、
「一つお願いがございます」
「申してみよ」
「修道院長殿に一時ご退出を願いたいと」
「あの者が邪魔と申すか?」
「治療方法の違いから議論になりましては無駄な時間がかかってしまいます。
私達の聞き及んでいる様子では一刻も無駄に出来ないと思われますので」
「分かった。修道院長には口を挟まぬよう申し伝える。但し、其方達には王宮医師団の者をつけるが良いな」
「はい、その方が何かと好都合でございます」
王宮医師団長のリアム・エバンズとその息子タイラー・エバンズの後ろを、ジョセフとアイヴィは歩いている。
王女殿下は塔の外れの部屋に移動されており、謁見の間からはかなりの距離があった。
王女殿下の部屋に近付くと、きつい薬草の匂いがしてきた。
部屋の前には二人の衛兵がおり、リアム達の顔を見た途端敬礼した。
「修道院長殿に取次を」
「はっ」
衛兵がドアを開けると薬草の匂いが益々強くなり、暫くして修道院長が奥の部屋から出てきた。
「そこにおる者達に治療を代われだと? 陛下はそれ程までに愚かであったか!
わしがおらねば王女殿下の御命はないのだぞ」
顔を赤くして怒鳴る修道院長に対してリアムは冷静に、
「陛下のご指示でございます。部屋の準備をしてありますゆえ、どうか暫くのご休憩を」
「なんと愚かな! そこにおるのは薄汚い平民ではないか。
そのような者を王女殿下の部屋に招き入れるなどあり得ん! さっさと立ち去れ」
リアムは修道院長を冷たい目で見ながら、
「では、修道院長殿は陛下のお言葉に従うことは出来ないと申されますかな?」
「・・そうは申しておらん。愚かな決断に呆れておるのよ。
勝手にするが良い」
修道院長は靴音高く部屋を出て行った。
リアム達四人は王女殿下の部屋に入ったが、部屋の中は薄暗く薬草の匂いで息もつけないほどだった。
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