20 / 37
20.好みを聞かれても・・
しおりを挟む
「何それ、意味分かんないんだけど」
「修理するとしたら窓と玄関、どっちが良い?」
「まっ窓?」
アイヴィが返事をした途端、カリタス修道士は腰に下げていた剣の柄で窓を叩き壊した。
漸く異常事態に気付いたアイヴィが、窓枠に手を掛け頭から中に入ろうとすると、
「馬鹿野郎、頭打ったらどうすんだよ」
アイヴィを抱え上げたカリタス修道士が足先から窓の中に入れてくれた。
「玄関開けてくる」
アイヴィは急いで走り出し、マチルダの名前を呼びながら玄関の鍵を外した。
マチルダは台所のテーブルの近くに倒れ気を失っていた。マチルダの横に椅子が倒れている。
胸の音を聞き呼吸を確かめた後、外傷の有無を調べた。
「運ぶか?」
「そっとね、頭を動かさないように気をつけて」
ベッドに運び、濡らしたタオルで頭を冷やした。
マチルダがうっすらと目を開けた。
「マチルダさん、痛いとこない?」
「アイヴィ・・来てくれたの?」
「勿論よ、何があったのか覚えてる?」
「椅子に引っかかって転んだの。どこかぶつけた気がするけど」
「喉乾いてる? エールを持ってきたの」
小さく頷いたマチルダを支えて少しずつエールを飲ませた。
マチルダは一昨日の昼間、椅子にぶつかった拍子に腰を捻ってしまい倒れたと話した。
身動きのできなくなったマチルダは、そのまま二日間台所の床に倒れていた。
「腰の様子診るから少し横向ける?」
アイヴィがそっと支えながらマチルダを横向きにして診察した。
「腰は暫くの間コルセットしなきゃ駄目みたい。痛みが酷いならアヘンチンキ飲みましょう」
「あれ飲むと眠っちゃうから」
「大丈夫、一人にはしないから。痛みを我慢しすぎるのは良くないよ」
アヘンチンキで眠りに落ちたマチルダをカリタス修道士に頼み、アイヴィはコルセットを取りに店に帰った。
「どうだった?」
「二日前に転んで動けなくなってた。コルセット持って行ってくる」
「家に入れたのか?」
「うん、そうだ。マチルダさんちに大工さん来させて。窓直してって」
「窓壊して入ったのか?」
「緊急事態だったからね。カリタス修道士がいてくれて助かった」
「ふーん、二人で行ったのか」
「違うわよ、向こうに着くまで気がつかなかったんだから」
マチルダの家に着くと近所に住んでいる女性が来ていた。
「大きな音がしたから来てみたの。近くに住んでるのに、マチルダが怪我して動けなくなってたって気付かなくて申し訳ないことをしたわ」
カリタス修道士を家から追い出しながら、
「さっきはありがとう。この後コルセットの使い方で着替えとかするから」
「時間かかるんだろ? 外で待ってる」
「この暑い中で? 倒れちゃうわ」
「慣れてる」
いくら言っても聞かないカリタス修道士の事は諦めて、アイヴィはマチルダの元に戻っていった。
「修理するとしたら窓と玄関、どっちが良い?」
「まっ窓?」
アイヴィが返事をした途端、カリタス修道士は腰に下げていた剣の柄で窓を叩き壊した。
漸く異常事態に気付いたアイヴィが、窓枠に手を掛け頭から中に入ろうとすると、
「馬鹿野郎、頭打ったらどうすんだよ」
アイヴィを抱え上げたカリタス修道士が足先から窓の中に入れてくれた。
「玄関開けてくる」
アイヴィは急いで走り出し、マチルダの名前を呼びながら玄関の鍵を外した。
マチルダは台所のテーブルの近くに倒れ気を失っていた。マチルダの横に椅子が倒れている。
胸の音を聞き呼吸を確かめた後、外傷の有無を調べた。
「運ぶか?」
「そっとね、頭を動かさないように気をつけて」
ベッドに運び、濡らしたタオルで頭を冷やした。
マチルダがうっすらと目を開けた。
「マチルダさん、痛いとこない?」
「アイヴィ・・来てくれたの?」
「勿論よ、何があったのか覚えてる?」
「椅子に引っかかって転んだの。どこかぶつけた気がするけど」
「喉乾いてる? エールを持ってきたの」
小さく頷いたマチルダを支えて少しずつエールを飲ませた。
マチルダは一昨日の昼間、椅子にぶつかった拍子に腰を捻ってしまい倒れたと話した。
身動きのできなくなったマチルダは、そのまま二日間台所の床に倒れていた。
「腰の様子診るから少し横向ける?」
アイヴィがそっと支えながらマチルダを横向きにして診察した。
「腰は暫くの間コルセットしなきゃ駄目みたい。痛みが酷いならアヘンチンキ飲みましょう」
「あれ飲むと眠っちゃうから」
「大丈夫、一人にはしないから。痛みを我慢しすぎるのは良くないよ」
アヘンチンキで眠りに落ちたマチルダをカリタス修道士に頼み、アイヴィはコルセットを取りに店に帰った。
「どうだった?」
「二日前に転んで動けなくなってた。コルセット持って行ってくる」
「家に入れたのか?」
「うん、そうだ。マチルダさんちに大工さん来させて。窓直してって」
「窓壊して入ったのか?」
「緊急事態だったからね。カリタス修道士がいてくれて助かった」
「ふーん、二人で行ったのか」
「違うわよ、向こうに着くまで気がつかなかったんだから」
マチルダの家に着くと近所に住んでいる女性が来ていた。
「大きな音がしたから来てみたの。近くに住んでるのに、マチルダが怪我して動けなくなってたって気付かなくて申し訳ないことをしたわ」
カリタス修道士を家から追い出しながら、
「さっきはありがとう。この後コルセットの使い方で着替えとかするから」
「時間かかるんだろ? 外で待ってる」
「この暑い中で? 倒れちゃうわ」
「慣れてる」
いくら言っても聞かないカリタス修道士の事は諦めて、アイヴィはマチルダの元に戻っていった。
18
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
【完結】政略婚約された令嬢ですが、記録と魔法で頑張って、現世と違って人生好転させます
なみゆき
ファンタジー
典子、アラフィフ独身女性。 結婚も恋愛も経験せず、気づけば父の介護と職場の理不尽に追われる日々。 兄姉からは、都合よく扱われ、父からは暴言を浴びせられ、職場では責任を押しつけられる。 人生のほとんどを“搾取される側”として生きてきた。
過労で倒れた彼女が目を覚ますと、そこは異世界。 7歳の伯爵令嬢セレナとして転生していた。 前世の記憶を持つ彼女は、今度こそ“誰かの犠牲”ではなく、“誰かの支え”として生きることを決意する。
魔法と貴族社会が息づくこの世界で、セレナは前世の知識を活かし、友人達と交流を深める。
そこに割り込む怪しい聖女ー語彙力もなく、ワンパターンの行動なのに攻略対象ぽい人たちは次々と籠絡されていく。
これはシナリオなのかバグなのか?
その原因を突き止めるため、全ての証拠を記録し始めた。
【☆応援やブクマありがとうございます☆大変励みになりますm(_ _)m】
才能が開花した瞬間、婚約を破棄されました。ついでに実家も追放されました。
キョウキョウ
恋愛
ヴァーレンティア子爵家の令嬢エリアナは、一般人の半分以下という致命的な魔力不足に悩んでいた。伯爵家の跡取りである婚約者ヴィクターからは日々厳しく責められ、自分の価値を見出せずにいた。
そんな彼女が、厳しい指導を乗り越えて伝説の「古代魔法」の習得に成功した。100年以上前から使い手が現れていない、全ての魔法の根源とされる究極の力。喜び勇んで婚約者に報告しようとしたその瞬間――
「君との婚約を破棄することが決まった」
皮肉にも、人生最高の瞬間が人生最悪の瞬間と重なってしまう。さらに実家からは除籍処分を言い渡され、身一つで屋敷から追い出される。すべてを失ったエリアナ。
だけど、彼女には頼れる師匠がいた。世界最高峰の魔法使いソリウスと共に旅立つことにしたエリアナは、古代魔法の力で次々と困難を解決し、やがて大きな名声を獲得していく。
一方、エリアナを捨てた元婚約者ヴィクターと実家は、不運が重なる厳しい現実に直面する。エリアナの大活躍を知った時には、すべてが手遅れだった。
真の実力と愛を手に入れたエリアナは、もう振り返る理由はない。
これは、自分の価値を理解してくれない者たちを結果的に見返し、厳しい時期に寄り添ってくれた人と幸せを掴む物語。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?
タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。
白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。
しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。
王妃リディアの嫉妬。
王太子レオンの盲信。
そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。
「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」
そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。
彼女はただ一言だけ残した。
「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」
誰もそれを脅しとは受け取らなかった。
だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。
(完結)伯爵令嬢に婚約破棄した男性は、お目当ての彼女が着ている服の価値も分からないようです
泉花ゆき
恋愛
ある日のこと。
マリアンヌは婚約者であるビートから「派手に着飾ってばかりで財をひけらかす女はまっぴらだ」と婚約破棄をされた。
ビートは、マリアンヌに、ロコという娘を紹介する。
シンプルなワンピースをさらりと着ただけの豪商の娘だ。
ビートはロコへと結婚を申し込むのだそうだ。
しかし伯爵令嬢でありながら商品の目利きにも精通しているマリアンヌは首を傾げる。
ロコの着ているワンピース、それは仕立てこそシンプルなものの、生地と縫製は間違いなく極上で……つまりは、恐ろしく値の張っている服装だったからだ。
そうとも知らないビートは……
※ゆるゆる設定です
【完結】王都に咲く黒薔薇、断罪は静かに舞う
なみゆき
ファンタジー
名門薬草家の伯爵令嬢エリスは、姉の陰謀により冤罪で断罪され、地獄の収容所へ送られる。 火灼の刑に耐えながらも薬草の知識で生き延び、誇りを失わず再誕を果たす。
3年後、整形と記録抹消を経て“外交商人ロゼ”として王都に舞い戻り、裏では「黒薔薇商会」を設立。
かつて自分を陥れた者たち
――元婚約者、姉、王族、貴族――に、静かに、美しく、冷酷な裁きを下していく。
これは、冤罪や迫害により追い詰められた弱者を守り、誇り高く王都を裂く断罪の物語。
【本編は完結していますが、番外編を投稿していきます(>ω<)】
*お読みくださりありがとうございます。
ブクマや評価くださった方、大変励みになります。ありがとうございますm(_ _)m
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる