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20.好みを聞かれても・・

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「何それ、意味分かんないんだけど」

「修理するとしたら窓と玄関、どっちが良い?」

「まっ窓?」


 アイヴィが返事をした途端、カリタス修道士は腰に下げていた剣の柄で窓を叩き壊した。

 漸く異常事態に気付いたアイヴィが、窓枠に手を掛け頭から中に入ろうとすると、

「馬鹿野郎、頭打ったらどうすんだよ」

 アイヴィを抱え上げたカリタス修道士が足先から窓の中に入れてくれた。


「玄関開けてくる」

 アイヴィは急いで走り出し、マチルダの名前を呼びながら玄関の鍵を外した。


 マチルダは台所のテーブルの近くに倒れ気を失っていた。マチルダの横に椅子が倒れている。

 胸の音を聞き呼吸を確かめた後、外傷の有無を調べた。

「運ぶか?」

「そっとね、頭を動かさないように気をつけて」


 ベッドに運び、濡らしたタオルで頭を冷やした。
 マチルダがうっすらと目を開けた。

「マチルダさん、痛いとこない?」
「アイヴィ・・来てくれたの?」

「勿論よ、何があったのか覚えてる?」

「椅子に引っかかって転んだの。どこかぶつけた気がするけど」


「喉乾いてる? エールを持ってきたの」

 小さく頷いたマチルダを支えて少しずつエールを飲ませた。


 マチルダは一昨日の昼間、椅子にぶつかった拍子に腰を捻ってしまい倒れたと話した。
 身動きのできなくなったマチルダは、そのまま二日間台所の床に倒れていた。


「腰の様子診るから少し横向ける?」

 アイヴィがそっと支えながらマチルダを横向きにして診察した。

「腰は暫くの間コルセットしなきゃ駄目みたい。痛みが酷いならアヘンチンキ飲みましょう」

「あれ飲むと眠っちゃうから」

「大丈夫、一人にはしないから。痛みを我慢しすぎるのは良くないよ」


 アヘンチンキで眠りに落ちたマチルダをカリタス修道士に頼み、アイヴィはコルセットを取りに店に帰った。


「どうだった?」
「二日前に転んで動けなくなってた。コルセット持って行ってくる」

「家に入れたのか?」

「うん、そうだ。マチルダさんちに大工さん来させて。窓直してって」

「窓壊して入ったのか?」
「緊急事態だったからね。カリタス修道士がいてくれて助かった」

「ふーん、二人で行ったのか」
「違うわよ、向こうに着くまで気がつかなかったんだから」


 マチルダの家に着くと近所に住んでいる女性が来ていた。

「大きな音がしたから来てみたの。近くに住んでるのに、マチルダが怪我して動けなくなってたって気付かなくて申し訳ないことをしたわ」


 カリタス修道士を家から追い出しながら、
「さっきはありがとう。この後コルセットの使い方で着替えとかするから」

「時間かかるんだろ? 外で待ってる」
「この暑い中で? 倒れちゃうわ」

「慣れてる」


 いくら言っても聞かないカリタス修道士の事は諦めて、アイヴィはマチルダの元に戻っていった。

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