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第五章 良き出会いに乾杯

06. メープルシロップをかけたパンケーキが食べたいんだもん

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「だって必要な資金が必ず調達できるとは言えないから。そこんとこは熊に頑張ってもらわないとね」

「はあ? なんで俺!?」

「そろそろ例の情報の結果が出てるでしょ? 出てるよね~。それ次第で収入が大きく変わっちゃうんだからさあ、早くしてくんないかな~。
例の情報を教えた料金と熊パパ達にお付き合いした手間賃の金貨20枚をお支払いくださいね~。ギルド長のくせに払い渋りとか、セコいって悪評が広まっちゃうぞ~」

「例の情報って⋯⋯ああ、あれか。それに、金貨20枚ってぼったくりだろ」

「証拠を見つけたって言ったのに音沙汰がないんだもん。『報・連・相』は健全な商売に必須ですからね」

「アレは⋯⋯もうちょい時間がかかるぜ。問題がデカすぎて向こうに回してるからよお」

 例の情報とはラッセル伯爵の密輸と脱税の件で、レオンが現地に赴き集めた証拠を法務大臣と第二騎士団が精査している。

「奴の毎月の支払い分については問題が解決したら遡って支払うように掛け合ってね」

 ラッセル伯爵との契約は全利益の15パーセントを10年間。少しでも早く密輸&脱税の摘発がされなければ雀の涙の『純利益』しか手に入らない。

「奴が潰れても他の人が領主になるだけだから、契約は変更なしにさせなきゃ大損しちゃう⋯⋯う~ん⋯⋯そこんとこも考えないとだなぁ」

「言うだけは言ってやるよ。奴等がうんと言うかは分からんがな。で、手間賃とか情報料ってのは?」

「えぇぇぇっ! 情報提供したじゃん。お買い上げしたじゃん。あの情報があったから分かったんでしょ!? ガセじゃなかったでしょ!? ギルドに3パーセント払わなきゃなんないんだから、商会員はしっかり稼がないといけないんだもん。ガッツリたっぷり払ってもらわなきゃ割りに合わないじゃん。国がボケボケしてたせいであんな事になってたんだよ!? それを教えてあげたんだから、たんまりちょうだい。ウハウハになるくらい。メープルシロップが食べたいんだもん!」

「⋯⋯それについちゃ金額が決まってねえのに払えるかよ」

 猫目になってふふんと笑ったレオンが腕を組んでふんぞり返ると、椅子の背がギシギシメリメリと不吉な音を立てた。

「ん? んん? あっちゃ~、熊にツッコミ入れられるなんて末代までの恥じゃんか~。銭ゲバを目指してるのに、大失態じゃん⋯⋯って事で、情報料はラッセルの8掛けでどう?」

 ラッセルの8掛けとは、ラッセル伯爵が輪栽式農業と言う手法に支払った情報料の8掛け。

「はあ? 高すぎんだろ!? それから、目指さなくっても間違いなくチビすけは銭ゲバだからな。完全無欠の銭ゲバ」

「いいじゃん、グレイゾーンギリギリを攻めてるってなんかかっこよく聞こえるし? 正義は高くつくのよね~、ほ~んと、世知辛い世の中だわ~。そう考えると、もっと高くても良いんじゃないかな~って気もしてくるから不思議よね~。だってほら、世のため人のため、ミリーの為って言うじゃない?
でもまぁ、仕方ないから7掛けでトイチの複利付きにしたげるね~」

「誤魔化してんじゃねえよ、増えてんじゃねえか!」

「あ! 情報提供日から計算してのお支払いで。よろ~」

「レオンったら素直に払えば良いじゃない。おかしな事を考えてるからミリーの反撃に合うのよ。ミリーにはラッセルの10割で払うんでしょ?」

「⋯⋯へ? 10割って、マジで?」

「⋯⋯」

「く~ま~、本当にいいの? 嬉しいけど、くれるって言うなら貰っちゃうよ? 貰いすぎたらお腹壊しそうで怖いけど。夜眠れなくなりそうだけど」

「⋯⋯」

「イリス~、熊が動かなくなっちゃった。まさかオートマタからくり人形だったの?」

「⋯⋯俺の名前は?」

「ん? 熊?」

(いつまで経っても『熊』呼びしかされないから、レオンって呼んで欲しいのよね。『レオンと呼んでくれ』ってはっきり言わなくちゃミリーは気付かないと思うんだけど)

 当たり前のように名前を呼んでもらえるイリスやシオンが羨ましくて仕方ないレオンだが、何故それが気になるのか分かっていない。

 熊呼びをするミリーも、レオンと呼ばない理由に気付いていないのだからお互い様かもしれないが。

(困った子達よね。レオンの気持ちはともかくとして、ミリーの気持ちはまだそれ程でもないみたいだし。シモンの気持ちもちょっと気になる時があるのよね。もう暫くは様子見かしら)




 レオンがさっさと情報料を払おうとしないのは⋯⋯。

 ブランドール公爵一家の襲撃の後、ミリーとレオンの仲はギクシャクし解決の糸口さえ見つからないまま時間だけが過ぎているから。

(なんとかしねえとなぁ)

 ブランドール公爵に対して真っ向から『レオンを子供扱いするな』と言い切ったミリーに、感謝の気持ちを伝えたいが素直に口にするのは恥ずかしすぎる。

 仕事中にチラチラとミリーを横目で見てしまうのをやめられないが、全く目が合わないと気付いては落ち込む日々が続いていた。

(なんか、落ち着かねえ! あ~も~、イライラする。多分、ちゃんとお礼を言えてないからだな。うん、それしかチビすけが気になる理由なんて思いつかねえ)

 ミリーの喜ぶ顔を想像しつつ、ラッセル伯爵が払った情報料と同額を法務大臣からもぎ取ったレオンは意気揚々とギルドに戻ってきたが、いざ声をかけようと思うと言葉が見つからない。

(8歳のガキ相手に、なに緊張してんだよ! チビすけはほんのお子ちゃま⋯⋯おままごとが似合うお子ちゃま。花束やアクセサリーよりもクッキーとか甘いパンを欲しがるお子ちゃまなんだからな。『ありがとな』って言って頭でも撫で⋯⋯そう言やぁシルバーブロンドって珍しくねえか? 紫の目も他に見た事ねえような。
俺に熊って言うたびにドヤ顔するのも妙に⋯⋯妙に⋯⋯なんだ? う~ん、よく分からんがなんかゾワゾワする)





「あぁぁぁ! 忘れてた⋯⋯私って」

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