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第八章 いざ、決戦!

05.湧いて出てくる偉そうなやつら

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「名前はミリー・コンプトン。平民で親はいません。趣味は花や野菜を育てる事です」

 ミッドランド侯爵家から離籍して相手不明で養子縁組が取り消された時、ターニャ婆に勧められた名前が『コンプトン』だった。セオじいの件もあり、ターニャ婆の本当の名前に関係しているのかもとミリーは疑っている。

「平民の孤児って事? 恥ずかしくないのかしら」

(どこがやねん! 嬢ちゃん達の派手な服装の方が恥ずかしいぞ~。学園ぞ? 勉強するとこぞ?)

「花や野菜って売って食費を稼いでるとかかな?」

(じゃがいも売ってパン買ってましたけど~⋯⋯農家からジョブチェンジしましたけど、それが何か?)

「貧乏なのに学園の入学金とか授業料とか払えるのかしら」

(払えます~! お高いって聞いてたからどんだけ~って思ってたけど、調べたら余裕でした~。払おうと思ったら払えます~)

 教室に着いてからの度重なるお貴族様ムーブに嫌気がさしていたミリーの心の声がかなりやさぐれてきている。

(見た目は子供、中身は大人を体現しているから我慢してるけど~、貧乏で恥ずかしい? この国の大半の貴族より金持ってますんで~)


「良い加減にしろよ。コンプトンは奨学生だ。つまり、成績は学年の上位3人の中に入っている。つべこべ言うよりも、コンプトンを見習って成績を上げるように頑張れ」

 平民になる事を選んだのはミリー自身だったので、平民だと誹られるのは覚悟していた。メイナード担任の言葉で興味をそそられた者と腹を立てた者は半々くらいだろうか。

(ディスられるのも興味本位で近づかれるのも、どっちのパターンも面倒なんで。静かなボッチ生活希望で~す)

 どこの貴族家の養子になるのか、実里とミリーの性格が違いすぎて(実里比較)選べなかった。どの家もゆっくり考えれば良いと言ってくれたので、選択は本物のミリーに任せようと思っている。



「明日の午前中は学園内の案内をする。クラス全員で行動するが、上級生達は授業中だから私語は厳禁。午後から授業が始まるから忘れ物がないように」

 午後の時間に空きができたので、作りかけの試算表の続きをしようと決めたミリーは席を立った。





「失礼します。メイナード先生、ミリー・コンプトンさんはいますか?」

 ノックの後でドアが開いたが教室に入ってくる様子はない。

「ああ、あまり騒がしくせんでくれよ。コンプトン、面会人が来たぞ」

(ヤダなぁ、先生の言い方からすると、絶対騒ぎになるって事でしょ? いったい誰なんだろう。教室までくるとか思いやりがなさすぎ~)

「きゃあ、あの方達って⋯⋯」

「コンプトンに会いに来たってまさか⋯⋯」

 鞄を持って教室の前まで歩く間、クラスメイトの目が追いかけてくる。教室の外には男子学生が6人も立っていた。

「ミリー・コンプトンですが何かご用でしょうか」

「私はロベール・マクガイヤー。さっき在校生代表として祝辞を述べたので覚えてるかな?」

 マクガイヤーの『覚えてるよね』と言いたげな自信満々の顔に妙にイラついたが、ミリーの記憶に祝辞云々の記憶はない。

「こんにちは(寝てたので記憶にございません)」

「⋯⋯そ、それは良かった」

 ミリーのリアクションが薄いのが意外だったようで、言葉に詰まったマクガイヤーが少し不満げな顔になった。

「えーっと、ちょっと時間をもらえるかな?」

 ミリーの後ろから興味津々の野次馬達が声の聞こえる範囲まで近付こうと、じわりじわりと移動をはじめているのが目にはいった。

「えっと、園舎の外で⋯⋯」


 マクガイヤーと愉快な仲間達に連れられて園舎の外に出ると、そこにも数人の生徒がおりマクガイヤーが眉を顰めた。

「リンドブルム第三皇子殿下、なぜこのような場所まで?」

 名前を聞いたミリーは平民らしく両手を揃えて頭を下げた。

(腐っても皇族、腐ってなくても皇族。不敬からの無礼打ちは最強の武器)

「今年度入学した満点少女はどんな子なのか気になっていたので、無理を言って案内を頼んだんだ」

 リンドブルム第三皇子殿下の後ろには、申し訳なさそうな顔をした生徒が2人と、護衛っぽい人が3人立っている。

「⋯⋯そ、そうですか。彼女が満点少女のミリー・コンプトンです。コンプトンさん、この方は紹介しなくてもわかるよね」

「はい、先程先輩が皇子殿下と呼んでおられたので(じゃなきゃ分かりませんでした、爆睡してたんで!)」

 見たんだからもう十分だろうと言いたそうなマクガイヤーが早口で紹介をして、皇子の後ろの生徒に『連れて行け』と目で合図している。

「やあ、私の名前はテオドール。ミリーと呼んで良いかな」

「コンプトンと申します。寄る辺ない平民でございますので恐れ多く⋯⋯どうかご容赦願います(呼ばねえし、呼ばせね~よ)」

 皇族など『触るな危険』のトップに君臨している存在。偉そうな権力者がGと呼ばれる虫と同じくらい嫌いなミリーは、最低限の関わりしか持ちたくない。

 ましてやミッドランド侯爵家は帝国に対してやらかしている。ミリーが侯爵家出身だとバレたら何をされるか⋯⋯ガクガクブルブル。

(離籍してても元侯爵家のや~つ~って思うかもだからヤバいじゃんね)

「リンドブルム第三皇子殿下。大変申し訳ないのですが、コンプトンと少し込み入った話をする必要がありまして⋯⋯」

「ああ、邪魔をして悪かったね。入学試験で学園初の満点をとった生徒の顔が見れたから十分だよ。ミリーのお陰で次の試験が楽しみになった。感謝する」

(満点? 聞いた事ないけど⋯⋯試験が満点だったから満点少女かぁ。顔が残念だったから残念少女、口が悪いから暴言少女?)

 軽く右手を上げてから踵を返した皇子殿下は、生徒や護衛を引き連れて東棟の方に帰って行った。



「さて⋯⋯ミリー、こちらは主席入学のギルバート・モラヴィアス第二王子殿下。新入生の挨拶をされたから覚えているだろ?」

「コンプトンと申します(寝てたので覚えてないです~)」

 常に称賛を浴びてきたマクガイヤーは、自分に対してもだが王子殿下にまで冷淡な返事しかしないミリーの態度が理解できない。

((ここは普通、感動でひれ伏すか緊張でガタガタと震え出すものだろう? 随分と態度のデカい平民だな))

「今日コンプトンさんに会いにきたのは生徒会についてなんだ。1年生の成績優秀者は来年の生徒会役員候補なので、補佐として私達の手伝いをしてもらっているんだ。
私達3年生が2年生に仕事を引き継いだ後は少し大変になるけれど、それまでは週に1回くらいかな。
選ばれるのが成績順なので、試験の結果によって候補者が変わる可能性はあるけど、今年はギルバート第二王子殿下が役員候補に選ばれてる。
本来ならコンプトンさんも対象なんだけど、王子殿下と一緒というのは緊張するんじゃないかと思って相談にきたんだ」

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