病弱設定されているようです

との

文字の大きさ
28 / 145
第三章 ロケットスタート

01.二次元が今目の前に!

しおりを挟む
 現在8歳のミリーだが栄養不足で成長が遅れ、見た目は精々5歳程度だとターニャ婆から言われている。

『ほら、これも持って帰りな! もうちょっとマシなもんを食わなきゃ⋯⋯ちっとも大きくなりゃしないじゃないか。そ~んなヒョロっこい身体をしてたんじゃ、うちの4歳の孫にも負けちまうよ。あ~、も~、見てらんない。ほら、これは今食ってきな』

 セオじいの娘のセリナが作ってくれた肩掛け鞄の中に、ターニャ婆がせっせと食べ物を詰めてくれる光景は定例行事のようになっている。




 ミリーが今日着ているのは、新たなステージに向かう為になけなしのお金から新しい布地を買って、セリナさんに仕立ててもらったエプロンドレスで、肩掛け鞄はターニャ婆に預けておいた。

(ちっこいは正義! ちっこいには抗えない! 久しぶりの幼児語で行くのにジャストサイズのこのボディー。ふっふっふ)

 生成りの長袖ワンピースの上に重ねたピナフォアと呼ばれるエプロンは濃い茶色だが、この色選びの時にミリーとセリナはかなり揉めた。

『グリーンの服は社会的地位の高さや尊敬される職業を示すの。だから、ミリーはグリーンを纏うべきだわ』

『ダメダメ、灰色か茶色の質素な服を着なきゃダメなの。私は農民か農民志望なんだもん』

(今世ではドレスなんて初めて着たけど、エプロンドレスって超可愛いかも~。今日の私は小金持ちの家のお嬢ちゃんってところかな⋯⋯セリナさん尊い)

 スカートは足首が見えるくらいの長さで、その足元を飾っているのはセオじいがプレゼントしてくれた革靴。

「アタシからは帽子じゃ。ミリーはすぐに走り回るから、しっかりと顎んとこでリボンを結ぶんだよ」

「ターニャ婆の財布の紐が緩むとは⋯⋯明日は大雪かも知れんのう」

 いえ、ミリーは毎回大量の食料をいただいてます。



 一緒に行きたがるセオじいをガン無視して、ミリーがやって来たのは商人ギルド。

 数年前の農作物便乗値上げ事件の時、トーマス達の口ぶりから知ったのは、セオじいはひとかどの人物で今もなおそれなりの影響力があるらしいという事。

 だが、今日の戦いはミリーひとりの力で成し遂げる必要がある。

(だって、ミリーちゃんの将来を決する戦いだから全部自分実里の力でやり遂げなきゃ。人の力に頼って行動してたら、梯子を外された時に身動きできなくなるもん。
現時点ではセオじいに寝首を掻かれるとは思ってないけど、考えや抱えてるものは人それぞれだからね。誰だって敵に回る可能性を秘めてる。前世では、それを忘れて何度痛い目にあったことか⋯⋯)

 実里の失敗はミリーの破滅につながる。この世界のこの身体はどう考えてもミリーの物。間借りしているに等しい実里がいつかミリーに全てを返すまで、失敗などしている余裕はないのだから。



 木造二階建ての建物は大きな両開きの扉にギルドの紋章が彫り込まれ、平民街の広場の真ん前に立っていた。

 道を歩く人々を避けながら建物に近付き、ミリーには大きすぎるドアを誰かが開けるのをひたすら待った。

(う~ん、ギルドが暇になりそうな時間を狙いはしたけど⋯⋯ここまで出入りがないとは。失敗したか?)

 王党派の貴族からの横槍を無事に凌いだ商人ギルドは、多くの平民達で賑わって⋯⋯いなかった。

 待つこと(体感で)1時間。急ぎ足で広場を横切って来た人がギルドのドアに手をかけた。

(よっしゃ~! お待ちしておりましたぁ)

 長髪を一つにまとめ洗いざらしのシャツにズボンを履いたイケメンは、後ろにピタリと張り付いて中に入る気満々のミリーに気付いて首を傾げた。

「あらあら、チビちゃんは⋯⋯もしかして迷子さんなのかしら。ねぇ、どこから来たのかお話しできるかしら?」

「⋯⋯ひょえっ! ま、まさかのオネエさんだった! あ、あの、えっと、このなか⋯⋯そう、このなかにね、ごようがあるの」

 ミリーの前にしゃがみ込んで顔をガン見した後、エプロンドレスの精査を始めたイケメンは『凄え』と言いながらスカートを捲って縫い目のチェックに夢中。

「ちょ、ちょっと待たんかい! パンツが見えるじゃんか!」

 変態イケメンの手を叩いてスカートを取り戻したミリーは、一歩下がって申し訳なさそうに頭を下げた変態を睨みつけた。

「ごめんなさいね~。すっごく素敵なエプロンドレスだったから、つい我を忘れちゃったわぁ。ここにご用があるの?」

「⋯⋯うん」

「ここはチビちゃんにはハードルが高すぎると思うの。熊とか虎とか⋯⋯猛獣がウヨウヨだから、お家に帰った方が良いんじゃないかしら」

「オネエさんがも~じゅ~ちゅかい使いちてくりりばしてくれればあんでん安全もん。(継ぎはぎの)パンチュみてたらかし貸しひとちゅなからね」

 いつの世も美人とイケメンには甘いものと決まっている。その両方を兼ね備えたオネエさんを生贄にすれば、熊も虎もひれ伏すはず。

(この際だもん、美人かイケメンのどっちかだけがいいなんて言われても聞き流せばいいよね~。だってさ、二次元にしか存在してなかったイケメンでオネエな生物が実在してるんだよ?⋯⋯いざという時には利用するしかないじゃん。保険よ、保険)

 実里のオタク心が暴走中。

「え、えっとぉ⋯⋯よく分かんないけどまぁいいわ、ついてらっしゃいな。ではでは、寂れた商人ギルドへようこそ~」

 慌ててドアを開けたイケメンがミリーに向けてウインクした。

しおりを挟む
感想 25

あなたにおすすめの小説

なぜ、私に関係あるのかしら?

シエル
ファンタジー
「初めまして、アシュフォード公爵家一女、セシリア・アシュフォードと申します」 彼女は、つい先日までこの国の王太子殿下の婚約者だった。 そして今日、このトレヴァント辺境伯家へと嫁いできた。 「…レオンハルト・トレヴァントだ」 非道にも自らの実妹を長年にわたり虐げ、婚約者以外の男との不適切な関係を理由に、王太子妃に不適格とされ、貴族学院の卒業式で婚約破棄を宣告された。 そして、新たな婚約者として、その妹が王太子本人から指名されたのだった。 「私は君と夫婦になるつもりはないし、辺境伯夫人として扱うこともない」 この判断によって、どうなるかなども考えずに… ※ 中世ヨーロッパ風の世界観です。 ※ ご都合主義ですので、ご了承下さい、 ※ 画像はAIにて作成しております

悪役令嬢は永眠しました

詩海猫(8/29書籍発売)
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」 長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。 だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。 ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」 *思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

はっきり言ってカケラも興味はございません

みおな
恋愛
 私の婚約者様は、王女殿下の騎士をしている。  病弱でお美しい王女殿下に常に付き従い、婚約者としての交流も、マトモにしたことがない。  まぁ、好きになさればよろしいわ。 私には関係ないことですから。

〖完結〗残念ですが、お義姉様はこの侯爵家を継ぐことは出来ません。

藍川みいな
恋愛
五年間婚約していたジョゼフ様に、学園の中庭に呼び出され婚約破棄を告げられた。その隣でなぜか私に怯える義姉のバーバラの姿があった。 バーバラは私にいじめられたと嘘をつき、婚約者を奪った。 五年も婚約していたのに、私ではなく、バーバラの嘘を信じた婚約者。学園の生徒達も彼女の嘘を信じ、親友だと思っていた人にまで裏切られた。 バーバラの目的は、ワイヤット侯爵家を継ぐことのようだ。 だが、彼女には絶対に継ぐことは出来ない。 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 感想の返信が出来ず、申し訳ありません。

【完結】離縁ですか…では、私が出掛けている間に出ていって下さいね♪

山葵
恋愛
突然、カイルから離縁して欲しいと言われ、戸惑いながらも理由を聞いた。 「俺は真実の愛に目覚めたのだ。マリアこそ俺の運命の相手!」 そうですか…。 私は離婚届にサインをする。 私は、直ぐに役所に届ける様に使用人に渡した。 使用人が出掛けるのを確認してから 「私とアスベスが旅行に行っている間に荷物を纏めて出ていって下さいね♪」

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら

みおな
恋愛
 子爵令嬢のクロエ・ルーベンスは今日も《おひとり様》で夜会に参加する。 公爵家を継ぐ予定の婚約者がいながら、だ。  クロエの婚約者、クライヴ・コンラッド公爵令息は、婚約が決まった時から一度も婚約者としての義務を果たしていない。  クライヴは、ずっと義妹のファンティーヌを優先するからだ。 「ファンティーヌが熱を出したから、出かけられない」 「ファンティーヌが行きたいと言っているから、エスコートは出来ない」 「ファンティーヌが」 「ファンティーヌが」  だからクロエは、学園卒業式のパーティーで顔を合わせたクライヴに、にっこりと微笑んで伝える。 「私のことはお気になさらず」

処理中です...