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第三章 ロケットスタート
01.二次元が今目の前に!
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現在8歳のミリーだが栄養不足で成長が遅れ、見た目は精々5歳程度だとターニャ婆から言われている。
『ほら、これも持って帰りな! もうちょっとマシなもんを食わなきゃ⋯⋯ちっとも大きくなりゃしないじゃないか。そ~んなヒョロっこい身体をしてたんじゃ、うちの4歳の孫にも負けちまうよ。あ~、も~、見てらんない。ほら、これは今食ってきな』
セオじいの娘のセリナが作ってくれた肩掛け鞄の中に、ターニャ婆がせっせと食べ物を詰めてくれる光景は定例行事のようになっている。
ミリーが今日着ているのは、新たなステージに向かう為になけなしのお金から新しい布地を買って、セリナさんに仕立ててもらったエプロンドレスで、肩掛け鞄はターニャ婆に預けておいた。
(ちっこいは正義! ちっこいには抗えない! 久しぶりの幼児語で行くのにジャストサイズのこのボディー。ふっふっふ)
生成りの長袖ワンピースの上に重ねたピナフォアと呼ばれるエプロンは濃い茶色だが、この色選びの時にミリーとセリナはかなり揉めた。
『グリーンの服は社会的地位の高さや尊敬される職業を示すの。だから、ミリーはグリーンを纏うべきだわ』
『ダメダメ、灰色か茶色の質素な服を着なきゃダメなの。私は農民か農民志望なんだもん』
(今世ではドレスなんて初めて着たけど、エプロンドレスって超可愛いかも~。今日の私は小金持ちの家のお嬢ちゃんってところかな⋯⋯セリナさん尊い)
スカートは足首が見えるくらいの長さで、その足元を飾っているのはセオじいがプレゼントしてくれた革靴。
「アタシからは帽子じゃ。ミリーはすぐに走り回るから、しっかりと顎んとこでリボンを結ぶんだよ」
「ターニャ婆の財布の紐が緩むとは⋯⋯明日は大雪かも知れんのう」
いえ、ミリーは毎回大量の食料をいただいてます。
一緒に行きたがるセオじいをガン無視して、ミリーがやって来たのは商人ギルド。
数年前の農作物便乗値上げ事件の時、トーマス達の口ぶりから知ったのは、セオじいはひとかどの人物で今もなおそれなりの影響力があるらしいという事。
だが、今日の戦いはミリーひとりの力で成し遂げる必要がある。
(だって、ミリーちゃんの将来を決する戦いだから全部自分の力でやり遂げなきゃ。人の力に頼って行動してたら、梯子を外された時に身動きできなくなるもん。
現時点ではセオじいに寝首を掻かれるとは思ってないけど、考えや抱えてるものは人それぞれだからね。誰だって敵に回る可能性を秘めてる。前世では、それを忘れて何度痛い目にあったことか⋯⋯)
実里の失敗はミリーの破滅につながる。この世界のこの身体はどう考えてもミリーの物。間借りしているに等しい実里がいつかミリーに全てを返すまで、失敗などしている余裕はないのだから。
木造二階建ての建物は大きな両開きの扉にギルドの紋章が彫り込まれ、平民街の広場の真ん前に立っていた。
道を歩く人々を避けながら建物に近付き、ミリーには大きすぎるドアを誰かが開けるのをひたすら待った。
(う~ん、ギルドが暇になりそうな時間を狙いはしたけど⋯⋯ここまで出入りがないとは。失敗したか?)
王党派の貴族からの横槍を無事に凌いだ商人ギルドは、多くの平民達で賑わって⋯⋯いなかった。
待つこと(体感で)1時間。急ぎ足で広場を横切って来た人がギルドのドアに手をかけた。
(よっしゃ~! お待ちしておりましたぁ)
長髪を一つにまとめ洗いざらしのシャツにズボンを履いたイケメンは、後ろにピタリと張り付いて中に入る気満々のミリーに気付いて首を傾げた。
「あらあら、チビちゃんは⋯⋯もしかして迷子さんなのかしら。ねぇ、どこから来たのかお話しできるかしら?」
「⋯⋯ひょえっ! ま、まさかのオネエさんだった! あ、あの、えっと、このなか⋯⋯そう、このなかにね、ごようがあるの」
ミリーの前にしゃがみ込んで顔をガン見した後、エプロンドレスの精査を始めたイケメンは『凄え』と言いながらスカートを捲って縫い目のチェックに夢中。
「ちょ、ちょっと待たんかい! パンツが見えるじゃんか!」
変態イケメンの手を叩いてスカートを取り戻したミリーは、一歩下がって申し訳なさそうに頭を下げた変態を睨みつけた。
「ごめんなさいね~。すっごく素敵なエプロンドレスだったから、つい我を忘れちゃったわぁ。ここにご用があるの?」
「⋯⋯うん」
「ここはチビちゃんにはハードルが高すぎると思うの。熊とか虎とか⋯⋯猛獣がウヨウヨだから、お家に帰った方が良いんじゃないかしら」
「オネエさんがも~じゅ~ちゅかいちてくりりばあんでんもん。(継ぎはぎの)パンチュみてたらかしひとちゅなからね」
いつの世も美人とイケメンには甘いものと決まっている。その両方を兼ね備えたオネエさんを生贄にすれば、熊も虎もひれ伏すはず。
(この際だもん、美人かイケメンのどっちかだけがいいなんて言われても聞き流せばいいよね~。だってさ、二次元にしか存在してなかったイケメンでオネエな生物が実在してるんだよ?⋯⋯いざという時には利用するしかないじゃん。保険よ、保険)
実里のオタク心が暴走中。
「え、えっとぉ⋯⋯よく分かんないけどまぁいいわ、ついてらっしゃいな。ではでは、寂れた商人ギルドへようこそ~」
慌ててドアを開けたイケメンがミリーに向けてウインクした。
『ほら、これも持って帰りな! もうちょっとマシなもんを食わなきゃ⋯⋯ちっとも大きくなりゃしないじゃないか。そ~んなヒョロっこい身体をしてたんじゃ、うちの4歳の孫にも負けちまうよ。あ~、も~、見てらんない。ほら、これは今食ってきな』
セオじいの娘のセリナが作ってくれた肩掛け鞄の中に、ターニャ婆がせっせと食べ物を詰めてくれる光景は定例行事のようになっている。
ミリーが今日着ているのは、新たなステージに向かう為になけなしのお金から新しい布地を買って、セリナさんに仕立ててもらったエプロンドレスで、肩掛け鞄はターニャ婆に預けておいた。
(ちっこいは正義! ちっこいには抗えない! 久しぶりの幼児語で行くのにジャストサイズのこのボディー。ふっふっふ)
生成りの長袖ワンピースの上に重ねたピナフォアと呼ばれるエプロンは濃い茶色だが、この色選びの時にミリーとセリナはかなり揉めた。
『グリーンの服は社会的地位の高さや尊敬される職業を示すの。だから、ミリーはグリーンを纏うべきだわ』
『ダメダメ、灰色か茶色の質素な服を着なきゃダメなの。私は農民か農民志望なんだもん』
(今世ではドレスなんて初めて着たけど、エプロンドレスって超可愛いかも~。今日の私は小金持ちの家のお嬢ちゃんってところかな⋯⋯セリナさん尊い)
スカートは足首が見えるくらいの長さで、その足元を飾っているのはセオじいがプレゼントしてくれた革靴。
「アタシからは帽子じゃ。ミリーはすぐに走り回るから、しっかりと顎んとこでリボンを結ぶんだよ」
「ターニャ婆の財布の紐が緩むとは⋯⋯明日は大雪かも知れんのう」
いえ、ミリーは毎回大量の食料をいただいてます。
一緒に行きたがるセオじいをガン無視して、ミリーがやって来たのは商人ギルド。
数年前の農作物便乗値上げ事件の時、トーマス達の口ぶりから知ったのは、セオじいはひとかどの人物で今もなおそれなりの影響力があるらしいという事。
だが、今日の戦いはミリーひとりの力で成し遂げる必要がある。
(だって、ミリーちゃんの将来を決する戦いだから全部自分の力でやり遂げなきゃ。人の力に頼って行動してたら、梯子を外された時に身動きできなくなるもん。
現時点ではセオじいに寝首を掻かれるとは思ってないけど、考えや抱えてるものは人それぞれだからね。誰だって敵に回る可能性を秘めてる。前世では、それを忘れて何度痛い目にあったことか⋯⋯)
実里の失敗はミリーの破滅につながる。この世界のこの身体はどう考えてもミリーの物。間借りしているに等しい実里がいつかミリーに全てを返すまで、失敗などしている余裕はないのだから。
木造二階建ての建物は大きな両開きの扉にギルドの紋章が彫り込まれ、平民街の広場の真ん前に立っていた。
道を歩く人々を避けながら建物に近付き、ミリーには大きすぎるドアを誰かが開けるのをひたすら待った。
(う~ん、ギルドが暇になりそうな時間を狙いはしたけど⋯⋯ここまで出入りがないとは。失敗したか?)
王党派の貴族からの横槍を無事に凌いだ商人ギルドは、多くの平民達で賑わって⋯⋯いなかった。
待つこと(体感で)1時間。急ぎ足で広場を横切って来た人がギルドのドアに手をかけた。
(よっしゃ~! お待ちしておりましたぁ)
長髪を一つにまとめ洗いざらしのシャツにズボンを履いたイケメンは、後ろにピタリと張り付いて中に入る気満々のミリーに気付いて首を傾げた。
「あらあら、チビちゃんは⋯⋯もしかして迷子さんなのかしら。ねぇ、どこから来たのかお話しできるかしら?」
「⋯⋯ひょえっ! ま、まさかのオネエさんだった! あ、あの、えっと、このなか⋯⋯そう、このなかにね、ごようがあるの」
ミリーの前にしゃがみ込んで顔をガン見した後、エプロンドレスの精査を始めたイケメンは『凄え』と言いながらスカートを捲って縫い目のチェックに夢中。
「ちょ、ちょっと待たんかい! パンツが見えるじゃんか!」
変態イケメンの手を叩いてスカートを取り戻したミリーは、一歩下がって申し訳なさそうに頭を下げた変態を睨みつけた。
「ごめんなさいね~。すっごく素敵なエプロンドレスだったから、つい我を忘れちゃったわぁ。ここにご用があるの?」
「⋯⋯うん」
「ここはチビちゃんにはハードルが高すぎると思うの。熊とか虎とか⋯⋯猛獣がウヨウヨだから、お家に帰った方が良いんじゃないかしら」
「オネエさんがも~じゅ~ちゅかいちてくりりばあんでんもん。(継ぎはぎの)パンチュみてたらかしひとちゅなからね」
いつの世も美人とイケメンには甘いものと決まっている。その両方を兼ね備えたオネエさんを生贄にすれば、熊も虎もひれ伏すはず。
(この際だもん、美人かイケメンのどっちかだけがいいなんて言われても聞き流せばいいよね~。だってさ、二次元にしか存在してなかったイケメンでオネエな生物が実在してるんだよ?⋯⋯いざという時には利用するしかないじゃん。保険よ、保険)
実里のオタク心が暴走中。
「え、えっとぉ⋯⋯よく分かんないけどまぁいいわ、ついてらっしゃいな。ではでは、寂れた商人ギルドへようこそ~」
慌ててドアを開けたイケメンがミリーに向けてウインクした。
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