病弱設定されているようです

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第四章 ご利用は計画的に

11.悪魔ちゃんからのお手紙

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 口の重い村長から無理やり聞き出した話によると⋯⋯1年位前から、腕や顔などの日に当たる場所に発疹が現れる村人が出始めたと言う。

 虫にでも刺されたのかと思いはじめは気にしていなかったが、発疹は少しずつ増え皮膚がポロポロと剥がれ落ちるようになり、原因不明の皮膚病のように見えはじめた。

「この村には医者なんていませんし、医者のいる町まで行く時間もお金もないんで放っておくしかないと諦めていたらしいんですけど、発疹の出た村人の多くが疲労や不眠を訴えるようになってきてたんだそうです」

 10日ほど前、最も体調が悪かった女性が意味不明な言葉を叫びながら暴れ出したのを皮切りに、おかしな言動をとりはじめたのは合計で4人。隔離・監視していると言う。

「原因が分からないので対策も立てられないし、流行り病だったらどうしようって怯えているらしいです。かなり前に領主代行宛てに手紙を送ってて、普段ならすぐに対応してくれるんだけど来月の初めに行われる花祭り⋯⋯」

「ちょ、ちょ、ちょっと待って! 皮膚病と錯乱って言った?」

 シモンはネイサンの返事も待たず突然立ち上がり、お尻の下に敷いていたカバンの蓋を開けて中を探り始めた。

「はい。原因の分からない皮膚病だなんて⋯⋯」

「どこだっけ⋯⋯えーっと多分一番下だよね」

「もしシモン様に移りでもしたら⋯⋯すぐにでもここを出た方が良いかもしれません」

「暗くてよく見えない⋯⋯ネイサン、ランプをもっと近くに」

 シモンに背中を向けて荷物を片付けながら話していたネイサンが振り返り、地面に散らばった書類を指差して叫んだ。

「って、人が急いで片付けしてるってのに、シモン様は何をしておられるんですか!?」





「つまり⋯⋯とうもろこしが原因だと?」

「うん、出発前にミリーから渡された怪しげな書類にはそう書いてある」

 広げたカバンの横に座り込んだシモンは一枚の手紙を手にしていた。よほど急いで中を確認したかったのだろう、足元にはペーパーナイフを使わずに破った封筒が落ちている。

「怪しいのに信じるんですか?」

「あのミリーだからねぇ」

「そうですね⋯⋯あのミリーさんなら、奇天烈な事を言い出してもおかしくないですねぇ。でも、とうもろこしで皮膚病なんて聞いた事ないですけど?」

 今回のプロジェクトの為に渡された資料は鞄二つ分にもなっていたが、それとは別にしっかりと封をされた手紙の束を渡されていたシモン。


『封筒に書いてあるキーワードが関係してる事態になった時だけ読んでね。それ以外の時は絶対の絶対に開けちゃダメだから。もし興味本位で開けたりしたら~⋯⋯一通につき貸し一つにするからね~。でっか~い、でっか~い貸しにしちゃうかもよ~』


 ミリーの『貸し』はこの世の何よりも恐ろしい。うっかりミリーに弱みを握られたせいで『秘密にしてあげるから貸し一つね~』と言われて有無を言わせずに偽商会長にさせられたシモンにとって『貸し』の原因になりかねない手紙の束は『悪魔からの召喚状』にしか見えなかった。

 貸しのせいでマッケナー領に行かされた挙句に今ここにいて、しかもこの先も酷使される未来しか見えないのだから。

 そして、今回シモンが封を切ったのは『皮膚病と幻覚』と書かれていた封筒。


「怖すぎて鞄の一番奥に突っ込んでおいたんだんだけど⋯⋯要約するとね⋯⋯とうもろこしばかり食べてると栄養失調ってのになるんだって。で、発疹が出て皮膚が剥離し始めて幻覚を見るようになって⋯⋯ヤバい! 最悪死んじゃうって」

「えぇぇぇ! ヤバいどころじゃないですよ


 農民の間で流行っていたのはペラグラという病気で、ビタミンB3やビタミンPPが不足しておきるナイアシン欠乏症⋯⋯分かりやすく言うと栄養失調。

「完全な治療法はミリーも知らないみたいだけど⋯⋯肉や卵、あとはミルクなんかを増やす事で症状が改善する可能性があるって。だから荷物と一緒に積み込んだ干し肉をいざという時まで食べるなって言ってたんだね。ネイサン、後で村長に説明に行ってくるね」

「ええ! 顔出し禁止のシモン様が行かれるのはマズくないですか!?」

「じゃあ、ネイサンが村長達に説明してくれる?」

「⋯⋯行ってらっしゃい。てか、お供します。コートを被っていると不審者か顔を晒せない犯罪者にしか見えないですけど」

「んじゃ、善は急げって事で⋯⋯栄養失調なら干し肉以外にもパンとか果物とかもあるだけ持って行こう」



 ネイサンが持つランプの灯りだけを頼りに真っ暗な夜道を歩き、村長の家のドアをノックした。その後ろにはストールで頭や顔を隠した不審者シモン。

「こない夜更けにどうしなすったと?」

「先程お聞きした病気につ⋯⋯」

「ああ、不安になったで出ていくとね。そりゃすまんかったですな」

 頭を下げて謝罪しながらもどこかホッとした様子の村長は、ネイサンの背後に立つ不審者に気付いて一歩後ろに下がった。

「そ、そんお方も皮膚病で⋯⋯?」

「いえ、解決策になるかもしれない品をお持ちしたので、話を聞いていただけませんか?」

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