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20.確か執事と公爵令嬢だったはず
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「マーシャル夫人から届きました。詳細はお手紙が付けてあるそうです」
「その大きな箱はドレスかしら?」
「恐らくは」
「そう、残念だけどクローゼットは一杯で入りそうにないわね。今度の夜会用のドレスもいずれ届くでしょうし」
「⋯⋯お召しになられないドレスを引き取ります。そうすれば十分なスペースができるかと」
「ではサイズが合わないものでサイズ直しをする予定のない物と、季節や流行に合わないものは全部持っていって下さいね」
「⋯⋯」
そんな事をすればクローゼットの中が空になると知っているジョージは無言でセアラを睨みつけた。それを無視して窓際の椅子に戻ったセアラはやりかけの刺繍をはじめた。
「⋯⋯では、ケイト達にやらせます」
「あら、不要なものがわかるのかしら? 確か着付けもできないし髪も結えないって言ってたわよね。ジョージも聞いてたでしょう? そんなメイドに任せるなんて⋯⋯まあ、レトビア公爵家の使用人にはそれなりの作法があるようですから任せますわ」
初めて食堂に呼ばれた日に言われたセリフ。
『私達は着付けも髪結いも出来ませんからぁ。ご自身でどうぞ』
そのセリフを聞いた時チラリとジョージの顔を見たがいつも通りの眉間に縦筋を入れた能面だったのだ。
肩をすくめただけで刺繍の手を止めずにジョージ達が退出するまでセアラは顔を上げなかった。
「メイド長に申し付けます」
余程気に入らなかったのか普段より足音高くジョージが出て行った。
疲れる攻防の後不機嫌丸出しのメイド長が部屋に入って来て、セアラに声もかけずにクローゼットから乱暴にドレスを抜き出し始めた。乱暴に床に投げ捨てられるドレスをケイト達が慌てて拾い上げている。
(素材は良いのに傷んでしまいそう。バザーに出せば喜んでいただけそうなのにもったいないわ)
無言で出て行ったメイド長の後ろをドレスの山を抱えたケイト達が続く。ドアの鍵はかかったがレトビア公爵家に来て初めての一人にセアラはふふっと笑みをこぼした。
開きっぱなしのクローゼットを覗き込み残ったドレスを端に寄せてスペースを作った。マーシャル夫人から届いた箱を開けると3枚のデイドレスと手袋・帽子・日傘・踵の低い靴・髪を結ぶリボン・髪留め・肌を整えるための質の良い化粧品⋯⋯。
帽子の箱に入っていた手紙を開くとマーシャル夫人のお小言が書いてあった。
『客人に会う時、それに相応しい身なりを整える事は貴族として最低限のマナーです。愚かな使用人を躾けることが貴族の役目であることも忘れないように』
感謝の気持ちを込めながら一つづつクローゼットにしまっている途中でケイト達が帰ってきた。
(一人で着られるデイドレスと髪留めは特に嬉しいわ。化粧品も夜会に向けて助かるし)
セアラが持ってきた化粧品はとうの昔に使い切り仕方なく部屋に置いてあったものを使っていたが、香料のせいか古くなっているせいか酷い肌荒れに悩まされていた。
(石鹸やボディーローションまで入ってるなんてあの短い間で状況を理解して帰られたってこと? 肌荒れに気付かれてたなんて恥ずかしすぎるわ)
片付けをするセアラを遠目に見ながらケイトとナビアはヒソヒソと小声で話をしている。
「役立たずって言われても」
「突然すぎよね」
ジョージかメイド長に叱られたのかケイト達は機嫌が悪そうだが、セアラが箱から出している品が気になって仕方ないよう。
「あれ、あの瓶なに?」
「日傘って、部屋に閉じ籠ってるのに?」
閉じ込められてるの間違いだわと思いながら沢山の箱を片付け終わる頃ガチャガチャと鍵が開いてアメリアが部屋に乗り込んできた。
「届け物って何よ!? アンタに届いたって何かの間違いでしょ」
目を吊り上げて腰に手を当てて金切り声を上げるアメリアを見ながらゆっくりと立ち上がったセアラはニッコリと微笑んだ。
「お久しぶりです。届け物は間違いなくわたくし宛でしたわ。マーシャル夫人からのお手紙もついておりましたから間違いありません」
「はあ? アンタ、一体何を言ってあのババアに取り入ったの!? 乞食みたいに強請ったのかしら? 貧乏伯爵家は物乞いも上手そうね」
「その言葉はマーシャル夫人へ失礼にあたりますわ」
「ふん、そんな事より何が入ってたのか見せなさい! 随分沢山あったそうじゃない」
無言のまま動かないセアラに痺れを切らせたアメリアは連れていた侍女にクローゼットを開けさせた。クローゼットの右側には元からあったドレスや小物が纏められており、マーシャル夫人からの品は左側に集まっている。
「へえ、全部出して。この女には勿体ないから私が使ってあげるわ」
侍女がニヤリと感じの悪い笑みを浮かべいそいそとデイドレスを外しはじめた。
「次にマーシャル夫人にお会いした時お礼を申し上げておきますね。アメリア様が大層お気に召してお持ちになられたと」
「はあ? どう言う意味! 私は関係ないでしょ。アンタがもらった物を私が有効に使ってあげるだけじゃない」
侍女の手が止まりセアラを怒鳴りつけるアメリアの顔色を伺った。
「お使いになるのがアメリア様ならば、アメリア様がお持ちになった品が何と何なのかの説明とお礼を申し上げなくては。
わたくしが持っていない事や使っていない事に気付かれたらマーシャル夫人が『気に入らなかったのか』と思われるかもしれません。そんな事になっては申し訳ありませんもの」
派手なドレスで夜会に出席させて恥をかかせるつもりだったのに別のドレスを選んだと知り不機嫌だったアメリアの元に、マーシャル夫人からセアラ宛の荷物が届いたと聞いて無策で部屋に乗り込んできたアメリアだった。
「⋯⋯夜会用のドレスといい勝手なことばかりして!! あの小煩いババアを手懐けるなんて信じらんないわ」
(やっぱり昨日並んでいた似合わないドレスはアメリアの差金だったのね)
「その大きな箱はドレスかしら?」
「恐らくは」
「そう、残念だけどクローゼットは一杯で入りそうにないわね。今度の夜会用のドレスもいずれ届くでしょうし」
「⋯⋯お召しになられないドレスを引き取ります。そうすれば十分なスペースができるかと」
「ではサイズが合わないものでサイズ直しをする予定のない物と、季節や流行に合わないものは全部持っていって下さいね」
「⋯⋯」
そんな事をすればクローゼットの中が空になると知っているジョージは無言でセアラを睨みつけた。それを無視して窓際の椅子に戻ったセアラはやりかけの刺繍をはじめた。
「⋯⋯では、ケイト達にやらせます」
「あら、不要なものがわかるのかしら? 確か着付けもできないし髪も結えないって言ってたわよね。ジョージも聞いてたでしょう? そんなメイドに任せるなんて⋯⋯まあ、レトビア公爵家の使用人にはそれなりの作法があるようですから任せますわ」
初めて食堂に呼ばれた日に言われたセリフ。
『私達は着付けも髪結いも出来ませんからぁ。ご自身でどうぞ』
そのセリフを聞いた時チラリとジョージの顔を見たがいつも通りの眉間に縦筋を入れた能面だったのだ。
肩をすくめただけで刺繍の手を止めずにジョージ達が退出するまでセアラは顔を上げなかった。
「メイド長に申し付けます」
余程気に入らなかったのか普段より足音高くジョージが出て行った。
疲れる攻防の後不機嫌丸出しのメイド長が部屋に入って来て、セアラに声もかけずにクローゼットから乱暴にドレスを抜き出し始めた。乱暴に床に投げ捨てられるドレスをケイト達が慌てて拾い上げている。
(素材は良いのに傷んでしまいそう。バザーに出せば喜んでいただけそうなのにもったいないわ)
無言で出て行ったメイド長の後ろをドレスの山を抱えたケイト達が続く。ドアの鍵はかかったがレトビア公爵家に来て初めての一人にセアラはふふっと笑みをこぼした。
開きっぱなしのクローゼットを覗き込み残ったドレスを端に寄せてスペースを作った。マーシャル夫人から届いた箱を開けると3枚のデイドレスと手袋・帽子・日傘・踵の低い靴・髪を結ぶリボン・髪留め・肌を整えるための質の良い化粧品⋯⋯。
帽子の箱に入っていた手紙を開くとマーシャル夫人のお小言が書いてあった。
『客人に会う時、それに相応しい身なりを整える事は貴族として最低限のマナーです。愚かな使用人を躾けることが貴族の役目であることも忘れないように』
感謝の気持ちを込めながら一つづつクローゼットにしまっている途中でケイト達が帰ってきた。
(一人で着られるデイドレスと髪留めは特に嬉しいわ。化粧品も夜会に向けて助かるし)
セアラが持ってきた化粧品はとうの昔に使い切り仕方なく部屋に置いてあったものを使っていたが、香料のせいか古くなっているせいか酷い肌荒れに悩まされていた。
(石鹸やボディーローションまで入ってるなんてあの短い間で状況を理解して帰られたってこと? 肌荒れに気付かれてたなんて恥ずかしすぎるわ)
片付けをするセアラを遠目に見ながらケイトとナビアはヒソヒソと小声で話をしている。
「役立たずって言われても」
「突然すぎよね」
ジョージかメイド長に叱られたのかケイト達は機嫌が悪そうだが、セアラが箱から出している品が気になって仕方ないよう。
「あれ、あの瓶なに?」
「日傘って、部屋に閉じ籠ってるのに?」
閉じ込められてるの間違いだわと思いながら沢山の箱を片付け終わる頃ガチャガチャと鍵が開いてアメリアが部屋に乗り込んできた。
「届け物って何よ!? アンタに届いたって何かの間違いでしょ」
目を吊り上げて腰に手を当てて金切り声を上げるアメリアを見ながらゆっくりと立ち上がったセアラはニッコリと微笑んだ。
「お久しぶりです。届け物は間違いなくわたくし宛でしたわ。マーシャル夫人からのお手紙もついておりましたから間違いありません」
「はあ? アンタ、一体何を言ってあのババアに取り入ったの!? 乞食みたいに強請ったのかしら? 貧乏伯爵家は物乞いも上手そうね」
「その言葉はマーシャル夫人へ失礼にあたりますわ」
「ふん、そんな事より何が入ってたのか見せなさい! 随分沢山あったそうじゃない」
無言のまま動かないセアラに痺れを切らせたアメリアは連れていた侍女にクローゼットを開けさせた。クローゼットの右側には元からあったドレスや小物が纏められており、マーシャル夫人からの品は左側に集まっている。
「へえ、全部出して。この女には勿体ないから私が使ってあげるわ」
侍女がニヤリと感じの悪い笑みを浮かべいそいそとデイドレスを外しはじめた。
「次にマーシャル夫人にお会いした時お礼を申し上げておきますね。アメリア様が大層お気に召してお持ちになられたと」
「はあ? どう言う意味! 私は関係ないでしょ。アンタがもらった物を私が有効に使ってあげるだけじゃない」
侍女の手が止まりセアラを怒鳴りつけるアメリアの顔色を伺った。
「お使いになるのがアメリア様ならば、アメリア様がお持ちになった品が何と何なのかの説明とお礼を申し上げなくては。
わたくしが持っていない事や使っていない事に気付かれたらマーシャル夫人が『気に入らなかったのか』と思われるかもしれません。そんな事になっては申し訳ありませんもの」
派手なドレスで夜会に出席させて恥をかかせるつもりだったのに別のドレスを選んだと知り不機嫌だったアメリアの元に、マーシャル夫人からセアラ宛の荷物が届いたと聞いて無策で部屋に乗り込んできたアメリアだった。
「⋯⋯夜会用のドレスといい勝手なことばかりして!! あの小煩いババアを手懐けるなんて信じらんないわ」
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