【完結】私なりのヒロイン頑張ってみます。ヒロインが儚げって大きな勘違いですわね

との

文字の大きさ
20 / 93

20.確か執事と公爵令嬢だったはず

しおりを挟む
「マーシャル夫人から届きました。詳細はお手紙が付けてあるそうです」

「その大きな箱はドレスかしら?」

「恐らくは」

「そう、残念だけどクローゼットは一杯で入りそうにないわね。今度の夜会用のドレスもいずれ届くでしょうし」

「⋯⋯お召しになられないドレスを引き取ります。そうすれば十分なスペースができるかと」

「ではサイズが合わないものでサイズ直しをする予定のない物と、季節や流行に合わないものは全部持っていって下さいね」

「⋯⋯」

 そんな事をすればクローゼットの中が空になると知っているジョージは無言でセアラを睨みつけた。それを無視して窓際の椅子に戻ったセアラはやりかけの刺繍をはじめた。

「⋯⋯では、ケイト達にやらせます」

「あら、不要なものがわかるのかしら? 確か着付けもできないし髪も結えないって言ってたわよね。ジョージも聞いてたでしょう? そんなメイドに任せるなんて⋯⋯まあ、レトビア公爵家の使用人にはそれなりの作法があるようですから任せますわ」


 初めて食堂に呼ばれた日に言われたセリフ。

『私達は着付けも髪結いも出来ませんからぁ。ご自身でどうぞ』

 そのセリフを聞いた時チラリとジョージの顔を見たがいつも通りの眉間に縦筋を入れた能面だったのだ。




 肩をすくめただけで刺繍の手を止めずにジョージ達が退出するまでセアラは顔を上げなかった。

「メイド長に申し付けます」

 余程気に入らなかったのか普段より足音高くジョージが出て行った。




 疲れる攻防の後不機嫌丸出しのメイド長が部屋に入って来て、セアラに声もかけずにクローゼットから乱暴にドレスを抜き出し始めた。乱暴に床に投げ捨てられるドレスをケイト達が慌てて拾い上げている。

(素材は良いのに傷んでしまいそう。バザーに出せば喜んでいただけそうなのにもったいないわ)

 無言で出て行ったメイド長の後ろをドレスの山を抱えたケイト達が続く。ドアの鍵はかかったがレトビア公爵家に来て初めての一人にセアラはふふっと笑みをこぼした。


 開きっぱなしのクローゼットを覗き込み残ったドレスを端に寄せてスペースを作った。マーシャル夫人から届いた箱を開けると3枚のデイドレスと手袋・帽子・日傘・踵の低い靴・髪を結ぶリボン・髪留め・肌を整えるための質の良い化粧品⋯⋯。

 帽子の箱に入っていた手紙を開くとマーシャル夫人のお小言が書いてあった。

『客人に会う時、それに相応しい身なりを整える事は貴族として最低限のマナーです。愚かな使用人を躾けることが貴族の役目であることも忘れないように』


 感謝の気持ちを込めながら一つづつクローゼットにしまっている途中でケイト達が帰ってきた。

(一人で着られるデイドレスと髪留めは特に嬉しいわ。化粧品も夜会に向けて助かるし)

 セアラが持ってきた化粧品はとうの昔に使い切り仕方なく部屋に置いてあったものを使っていたが、香料のせいか古くなっているせいか酷い肌荒れに悩まされていた。

(石鹸やボディーローションまで入ってるなんてあの短い間で状況を理解して帰られたってこと? 肌荒れに気付かれてたなんて恥ずかしすぎるわ)



 片付けをするセアラを遠目に見ながらケイトとナビアはヒソヒソと小声で話をしている。

「役立たずって言われても」
「突然すぎよね」

 ジョージかメイド長に叱られたのかケイト達は機嫌が悪そうだが、セアラが箱から出している品が気になって仕方ないよう。

「あれ、あの瓶なに?」
「日傘って、部屋に閉じ籠ってるのに?」


 閉じ込められてるの間違いだわと思いながら沢山の箱を片付け終わる頃ガチャガチャと鍵が開いてアメリアが部屋に乗り込んできた。

「届け物って何よ!? アンタに届いたって何かの間違いでしょ」

 目を吊り上げて腰に手を当てて金切り声を上げるアメリアを見ながらゆっくりと立ち上がったセアラはニッコリと微笑んだ。

「お久しぶりです。届け物は間違いなくわたくし宛でしたわ。マーシャル夫人からのお手紙もついておりましたから間違いありません」

「はあ? アンタ、一体何を言ってあのババアに取り入ったの!? 乞食みたいに強請ったのかしら? 貧乏伯爵家は物乞いも上手そうね」

「その言葉はマーシャル夫人へ失礼にあたりますわ」

「ふん、そんな事より何が入ってたのか見せなさい! 随分沢山あったそうじゃない」

 無言のまま動かないセアラに痺れを切らせたアメリアは連れていた侍女にクローゼットを開けさせた。クローゼットの右側には元からあったドレスや小物が纏められており、マーシャル夫人からの品は左側に集まっている。

「へえ、全部出して。この女には勿体ないから私が使ってあげるわ」

 侍女がニヤリと感じの悪い笑みを浮かべいそいそとデイドレスを外しはじめた。

「次にマーシャル夫人にお会いした時お礼を申し上げておきますね。大層お気に召してお持ちになられたと」

「はあ? どう言う意味! 私は関係ないでしょ。アンタがもらった物を私が有効に使ってあげるだけじゃない」

 侍女の手が止まりセアラを怒鳴りつけるアメリアの顔色を伺った。

「お使いになるのがアメリア様ならば、アメリア様がお持ちになった品が何と何なのかの説明とお礼を申し上げなくては。
わたくしが持っていない事や使っていない事に気付かれたらマーシャル夫人が『気に入らなかったのか』と思われるかもしれません。そんな事になっては申し訳ありませんもの」


 派手なドレスで夜会に出席させて恥をかかせるつもりだったのに別のドレスを選んだと知り不機嫌だったアメリアの元に、マーシャル夫人からセアラ宛の荷物が届いたと聞いて無策で部屋に乗り込んできたアメリアだった。


「⋯⋯夜会用のドレスといい勝手なことばかりして!! あの小煩いババアを手懐けるなんて信じらんないわ」


(やっぱり昨日並んでいた似合わないドレスはアメリアの差金だったのね)

しおりを挟む
感想 60

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢に仕立て上げられたので領地に引きこもります(長編版)

下菊みこと
恋愛
ギフトを駆使して領地経営! 小説家になろう様でも投稿しています。

【完結】断罪された悪役令嬢は、本気で生きることにした

きゅちゃん
ファンタジー
帝国随一の名門、ロゼンクロイツ家の令嬢ベルティア・フォン・ロゼンクロイツは、突如として公の場で婚約者であるクレイン王太子から一方的に婚約破棄を宣告される。その理由は、彼女が平民出身の少女エリーゼをいじめていたという濡れ衣。真実はエリーゼこそが王太子の心を奪うために画策した罠だったにも関わらず、ベルティアは悪役令嬢として断罪され、社交界からの追放と学院退学の処分を受ける。 全てを失ったベルティアだが、彼女は諦めない。これまで家の期待に応えるため「完璧な令嬢」として生きてきた彼女だが、今度は自分自身のために生きると決意する。軍事貴族の嫡男ヴァルター・フォン・クリムゾンをはじめとする協力者たちと共に、彼女は自らの名誉回復と真実の解明に挑む。 その過程で、ベルティアは王太子の裏の顔や、エリーゼの正体、そして帝国に忍び寄る陰謀に気づいていく。かつては社交界のスキルだけを磨いてきた彼女だが、今度は魔法や剣術など実戦的な力も身につけながら、自らの道を切り開いていく。 失われた名誉、隠された真実、そして予期せぬ恋。断罪された「悪役令嬢」が、自分の物語を自らの手で紡いでいく、爽快復讐ファンタジー。

『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています

六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。 しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。 「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!

悪役令嬢がヒロインからのハラスメントにビンタをぶちかますまで。

倉桐ぱきぽ
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生した私は、ざまぁ回避のため、まじめに生きていた。 でも、ヒロイン(転生者)がひどい!   彼女の嘘を信じた推しから嫌われるし。無実の罪を着せられるし。そのうえ「ちゃんと悪役やりなさい」⁉ シナリオ通りに進めたいヒロインからのハラスメントは、もう、うんざり! 私は私の望むままに生きます!! 本編+番外編3作で、40000文字くらいです。 ⚠途中、視点が変わります。サブタイトルをご覧下さい。

虐げられた人生に疲れたので本物の悪女に私はなります

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
伯爵家である私の家には両親を亡くして一緒に暮らす同い年の従妹のカサンドラがいる。当主である父はカサンドラばかりを溺愛し、何故か実の娘である私を虐げる。その為に母も、使用人も、屋敷に出入りする人達までもが皆私を馬鹿にし、時には罠を這って陥れ、その度に私は叱責される。どんなに自分の仕業では無いと訴えても、謝罪しても許されないなら、いっそ本当の悪女になることにした。その矢先に私の婚約者候補を名乗る人物が現れて、話は思わぬ方向へ・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

死に物狂いで支えた公爵家から捨てられたので、回帰後は全財産を盗んで消えてあげます 〜今さら「戻れ」と言われても、私は隣国の皇太子妃ですので〜

しょくぱん
恋愛
「お前のような無能、我が公爵家の恥だ!」 公爵家の長女エルゼは、放蕩者の父や無能な弟に代わり、寝る間も惜しんで領地経営と外交を支えてきた。しかし家族は彼女の功績を奪った挙句、政治犯の濡れ衣を着せて彼女を処刑した。 死の間際、エルゼは誓う。 「もし次があるのなら――二度と、あいつらのために働かない」 目覚めると、そこは処刑の二年前。 再び「仕事」を押し付けようとする厚顔無恥な家族に対し、エルゼは優雅に微笑んだ。 「ええ、承知いたしました。ただし、これからは**『代金』**をいただきますわ」 隠し金庫の鍵、領地の権利書、優秀な人材、そして莫大な隠し資産――。 エルゼは公爵家のすべてを自分名義に書き換え、着々と「もぬけの殻」にしていく。 そんな彼女の前に、隣国の冷徹な皇太子シオンが現れ、驚くべき提案を持ちかけてきて……? 「君のような恐ろしい女性を、独り占めしたくなった」 資産を奪い尽くして亡命した令嬢と、彼女を溺愛する皇太子。 一方、すべてを失った公爵家が泣きついてくるが、もう遅い。 あなたの家の金庫も、土地も、働く人間も――すべて私のものですから。

無事にバッドエンドは回避できたので、これからは自由に楽しく生きていきます。

木山楽斗
恋愛
悪役令嬢ラナトゥーリ・ウェルリグルに転生した私は、無事にゲームのエンディングである魔法学校の卒業式の日を迎えていた。 本来であれば、ラナトゥーリはこの時点で断罪されており、良くて国外追放になっているのだが、私は大人しく生活を送ったおかげでそれを回避することができていた。 しかしながら、思い返してみると私の今までの人生というものは、それ程面白いものではなかったように感じられる。 特に友達も作らず勉強ばかりしてきたこの人生は、悪いとは言えないが少々彩りに欠けているような気がしたのだ。 せっかく掴んだ二度目の人生を、このまま終わらせていいはずはない。 そう思った私は、これからの人生を楽しいものにすることを決意した。 幸いにも、私はそれ程貴族としてのしがらみに縛られている訳でもない。多少のわがままも許してもらえるはずだ。 こうして私は、改めてゲームの世界で新たな人生を送る決意をするのだった。 ※一部キャラクターの名前を変更しました。(リウェルド→リベルト)

婚約破棄された悪役令嬢、実は最強聖女でした〜辺境で拾った彼に一途に愛され、元婚約者が泣きついてきてももう遅い〜

usako
恋愛
王太子の婚約者でありながら「悪女」と呼ばれ婚約破棄された公爵令嬢リディア。 国外追放されたその日、命を救ってくれたのは無骨な騎士ルークだった。 彼に導かれた辺境の地で、本来の力――“聖女”としての奇跡が目覚める。 新たな人生を歩み始めた矢先、かつて自分を貶めた王太子が後悔とともに現れるが……。 もう遅い。彼女は真の愛を知ってしまったから――。 ざまぁと溺愛が交錯する、爽快逆転ラブファンタジー。

処理中です...