【完結】私なりのヒロイン頑張ってみます。ヒロインが儚げって大きな勘違いですわね

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21.セアラVSアメリア

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「ジョージからドレス選びについてはマーシャル夫人に従うようにと聞いておりましたの。レトビア公爵様のご意向だと思いそのようにしましたが何か問題がありましたでしょうか?」

「お父様は何もわかっておられないのよ。大体あんな年寄りが選ぶドレスなんて時代遅れに決まってるわ」

「わたくしはレトビア公爵様にお会いする機会がありませんのでアメリア様からそのように仰ってみられたら如何でしょうか?」

(アメリアはマーシャル夫人が余程嫌いなのね。その所為でドレス選びや今日届いた品に難癖をつけているのかしら? であれば昨日並んでいたドレスは私だけでなくマーシャル夫人も貶めるため)


「ドレスは私が選び直すわ。マーシャル夫人の選んだのは気に入らないってアンタが言ってるって言えばお父様は納得してくださるもの」

 何が何でも夜会用のドレスを変更したいらしいアメリアは口を開くたびに愚かさと姑息さを暴露している事に気付いていない。

(マーシャル夫人を私のシャペロンに決めたのはレトビア公爵なのだけど。アメリアがそれに異を唱えたらレトビア公爵はどうするのかしら。あの人がアメリアに甘くて言いなりの人なのかどうかがわかるかも)


「わかりました。ではそのようになさって下さいませ。レトビア公爵様やマーシャル夫人にお会いした際にアメリア様のお気遣いをお伝えいたしますね。
マーシャル夫人は夜会でシャペロンを努めてくださるそうですし、レトビア公爵様には夜会でお会いできるでしょう。ドレスの評価の全てはアメリア様のだと夜会の参加者の方にもお伝えしなくては。
養女でしかないわたくしのドレスまで選んでくださった親切なアメリア様の心配りを忘れずにお伝え致しますね」

「⋯⋯もう、勝手になさい!」

 顔を真っ赤にしたアメリアが部屋を出て行き慌てた侍女が後に続いた。




「はあ、せっかく片付けたのに」

 大きく溜息をついたセアラがクローゼットに向かうと後ろから声が掛かった。

「ねえ、あんなこと言って大丈夫なの? いえ、大丈夫なんですか?」

「うーん、大丈夫じゃないかもね」

 呑気なセアラの返事にメイド達が顔を見合わせた。ケイトやナビアにとって公爵家の人に楯突くなどあり得ない。生贄の養女が楯突く姿は無謀すぎて理解できないことだった。

「だったら何であんなことを言ったんですか?」

「昨日のナビアとした話と同じかしら。黙ってアメリア様の好きにさせたらマーシャル夫人に対して失礼にあたるわ。夜会用のドレスもここに届いたお品もアメリア様の勝手にさせるのは時間と手間をかけてくださったマーシャル夫人への侮辱になるもの」

「⋯⋯それが昨日と同じ話⋯⋯なんですか?」

「そう。誰かの機嫌を損ねると分かっていてもわたくしが黙って流された所為で不快な思いをする方がおられると知っているなら行動しなくてはいけないと思ったの。
それにまあ、大した実害はないしね」

「怒られたり怒鳴り散らされたりして不快な思いをしたのはセアラ⋯⋯様ですよね。それなのに実害はないんですか?」

 メイド二人が仲良く首を傾げた。

「マーシャル夫人からお叱りを受けたのは当然のことだと思っているし、あなた達とアメリア様に嫌われてるのは初めて会った時からでしょ? 今回の件があってもなくても別に違いはないと思わない?」

 ケイトとナビアの顔が真っ青になった。




 その後妙に大人しくなったケイト達はソファではなく隣の部屋に籠っているので、セアラはベッドの陰でストレッチをはじめた。祖父が兄に体を鍛えるために教えていたのをこっそり覚えた柔軟体操は軟禁生活のストレスと運動不足の解消に役立っている。


 夕食と風呂を済ませたセアラが夜着に着替えてドレッサーの前で髪を梳かしているとナビアが淹れ立てのハーブティーを持ってきた。コトンと音を立ててドレッサーの隅に置かれたカップからはカモミールの優しい香りが漂っている。

「あの、宜しければどうぞ」

「ありがとう」

 居心地が悪そうにモジモジしているナビアはブラシを置いてカップを手にしたセアラを横目で見ている。

「美味しいわ。お風呂上がりで喉が乾いてたの」

 ハーブティーを飲み切ってまた髪を梳きはじめたセアラにナビアが言いにくそうにモゴモゴしていたがセアラはそのまま気づかないふりをしていた。

「ほっ、他にご用はございまちぇんか」

 緊張しすぎで噛んでしまったナビアは顔を真っ赤にして俯いた。

「うっ、ふふっ。ありがとう。特にないのでナビアももう休んで」

 立ち上がりベッドに入ったセアラが灯を消して横になるとナビアの小さな声が聞こえてきた。

「その、今まで申し訳ありませんでした。明日から掃除は私達がやります」

「ありがとう。良い夜を」



 アメリアの乱入などなかったかのようにいつもと変わらない日が過ぎ、午後一番にお直しの済んだドレスが届くと連絡が来た。
 セアラはマーシャル夫人からいただいたデイドレスを着て髪を緩く結い上げ仕立て屋が来るのを待っていると、眉間のシワを普段の3割り増しに深くしたジョージがやって来た。

「マーシャル夫人が仕立て屋を伴いお越しです」

 今日は仕立て屋だけが来るはずだったが、一緒にマーシャル夫人が来たことでジョージの機嫌が悪くなったのだろう。

 軽く頷いて部屋を出たセアラはジョージの先導で応接室に向かった。今日はケイトが後ろからついてきている。


「お待たせいたしました。今日はようこそおいで下さいました」

「思った以上に似合っていますね。今日はわたくしが来るとは知らなかったはずでは?」

「はい。もしかしたら最終確認にお越しいただけるのではないかと思い準備しておりました。過分なお品を頂戴し心よりお礼申し上げます」

「肌の調子も良いようですね。贈った化粧品が合っていたようで安心しました。どんな化粧品を使っていたのか知りませんがあのような状態ではどんなドレスを仕立てても嘲笑の的になるだけでしたからね」

「はい」

「では着替えてごらんなさい。夜会は明後日の夜ですからもう時間がありませんからね、これ以上直すところがなければ良いのですが」

 既製品は着心地の悪いものが多いからと言うマーシャル夫人に礼をして漸くジョージが応接室を出て行った。


 ドレスを着てチョーカー・手袋・靴⋯⋯。

「当日はサイドを編み込みましょう。そこに髪飾りをつければ良いわね。セアラの髪質では巻いても直ぐに落ちてしまいそうね」

「はい、以前何度か試してみたのですが柔らかすぎるのか上手くいきませんでした」

「細くて絹糸みたいね。王宮で今回使う大広間には豪華なシャンデリアがあるの。その灯りで綺麗に輝いてくれそうです。きちんと手入れしておきなさい」

「はい」

「ではわたくしは当日の夕方来ますから準備を済ませておくように」


 ドレスは予想以上にセアラによく似合っていた。満足げなマーシャル夫人を見送ったセアラは次なる問題の解決策が未だに思い付かないせいで小さく溜息をついた。

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