【完結】私なりのヒロイン頑張ってみます。ヒロインが儚げって大きな勘違いですわね

との

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22.ドレス攻防戦

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 夜会用のドレスや小物が部屋に運び込まれケイトやナビアの手を借りてクローゼットに片付けられた。

(さて、当日までこれをどうやって死守するかよね)

 セアラの次の心配はアメリアや使用人が部屋にやって来てドレスや小物を破損すること。部屋を開け閉めできる鍵は使用人達が持っているし出入りを禁止することもできない。それに、使用人やアメリアが何かしようとしたらセアラ一人の手では防ぎきれない。

(この間のアメリアの様子からして何もしないとは思えないのよね)


 当日の朝か前日の午後辺りにドレスに大きな汚れや傷がつけば夜会には間に合わないしセアラに代わりのドレスはない。夜会へ出席せずに済むだけなら良いのだが、代わりのドレスがあればそれを着て出席しろと言われる可能性がある。

 クローゼットにかかっていたドレスからするとメリッサアメリアの姉はセアラよりも背が高く豊満な体つきの人のようで、アメリアは小柄で凹凸の少ないかなり華奢な体つきをしている。

 アメリアのドレスは間違いなく入らないが、メリッサの大きすぎるドレスを着せられたら裾を踏んで転げるかブカブカのドレスが肩から脱げ落ちる自信がある。

(アメリアが代わりのドレスを準備しているっていうのが最悪のパターンだわ。何かやるとしたらいつかしら)




 セアラの予想が当たったのは夜会前日の真夜中だった。カチャリと小さな音がしてドアがゆっくり開いた。入って来たのは背が低く少し横幅のある女性で灯りのついていない部屋を迷いなくクローゼットに向かって歩いていく。

 音を立てないようにクローゼットの扉を開けるとビリリッと布が裂ける音がした。

「こんな夜遅くまでお仕事なんて大変ね」

 明かりをつけるとクローゼットの前にいた女はナイフを手に持ったまま『ひっ!』と声を上げて振り返った。

「その顔は⋯⋯先日見かけたメイド長ね。こんな夜遅くにドレスの片付けかしら? 申し訳ないけれど続きは日が昇ってからお願いね」

 顔を引き攣らせたメイド長が部屋を飛び出していった後クローゼットに近づいて被害を確認したセアラは溜息を漏らした。

「勿体ないこと。教会のバザーに出せば喜んでいただけたのに。お金に余裕のある人のやることって理解できないわ」



 明かりが届かず薄暗い簡易ベッドの前に立ち尽くしているケイトは落ち着き払った様子のセアラの言動に眉を顰めた。

「怖くなかったんですか?」

「何が?」

「真夜中だしナイフを持ってたんですよ!」

「そこまでは予想してたから怖くはなかったわ。パニックになったメイド長が切り掛かってきたら困ったと思うけど」

「訳わかんない。一応貴族の令嬢ですよね。夜中に忍び込んできた人に普通に声をかけて⋯⋯明かりをつけて平気な顔で話をするなんて」

「怪我には気を付けたのよ。だからベッドから降りて近づいたりしなかったし捕まえようともしなかった。
今夜忍び込んでくるってわかってたし、ナイフを持っていても命に関わるような事にはならないって確信があったから落ち着いていられたの。ケイトのお陰だわ」

「私? 私は何も⋯⋯」

「別に気にしてないわ。お陰で心の余裕があったってだけだから」

「何を」

「夜はきっちり閉めるカーテンが今日に限って開いてるの。寝る時は閉まってたはずなんだけど。
今日は晴れて月も出ててお陰で部屋は明かりがなくても歩けるわ。さっきのメイド長も歩きやすそうだったでしょ?」

「⋯⋯偶々、そう偶々です。外の様子を見た後しめ忘れただけですから」

「そうなの? 何度も言うけど気にしてないから」

「ドレスが台無しになっているのに構わないんですか!?」

「そうね、勿体ないとは思うけどこの状態で騒いでも手遅れでしょ?
全く、貧乏伯爵家の娘にはお金持ちの感性は理解できないわ。
朝までもう少し寝ておきたいのだけど、わたくしはとても眠りが浅くて物音がしたらすぐ目が覚めてしまうの。メイド長がかけ忘れた鍵を早めにかけておいてね。
では、お休みなさい」

「この状況で寝るって信じらんない」

 何年もの間祖父と攻防戦を繰り広げながら暮らしていたセアラは小さな物音やコソコソ動く人の気配に敏感になってしまった。

(あんな大きな音を立てたんじゃここにいます!って言ってるようなものだわ。お祖父様の気配の殺し方は優秀すぎて大変だったもの)

 スヤスヤと何の問題もないかのように眠りについたセアラをケイトは朝までまんじりともせず睨みつけていた。





 翌朝、目の下にうっすらとクマを作ったケイトとは違いセアラは旺盛な食欲で朝食を平らげた。
 一体どんな神経をしているのかしらとセアラを警戒した様子のケイトを心配したナビアが声をかけた。

「ケイト、向こうで休憩して来て。クマが凄いよ」


 メイド達の会話を気にする余裕のないセアラはいつもと変わらない態度を装いながら食後の紅茶を口にした。

(この後確認に来るかしら。私だったら絶対確認するけど⋯⋯成功したと思っていたら何もしないとか? 希望的観測すぎるかしら)


 ナビアの説得でケイトが隣の部屋に行きかけた時、目を吊り上げたジョージがマーシャル夫人と4人の女性を伴ってやって来た。

「おはようございます。マーシャル夫人」

「おはよう。この者達は我が家の侍女とメイドなの。今日の支度は全て彼女達が取り仕切ります」

「お言葉ですがセアラ様のお支度には当家の者がおります。専属のメイドも2人おりますし、今日はそれ以外にも数人が担当する予定でおります。渡したいものがあるだけだと仰ったではありませんか!!」

 執事としての采配に口を出されるのが気に入らないのか別の理由があるのかジョージはきつい口調で抗議した。


「渡したいものは準備をする為の使用人よ。わたくしがサイラスからシャペロンの依頼を受けた時、全てわたくしの采配に任せると確約を貰っています。そうでなくては今更面倒なシャペロンなど引き受けたりしませんでした。執事風情が当主の言に異を唱えるのかしら!?」

「ありがとうございます、助かりましたわ。夜までにやらなければならないことがたくさんありましたの。
どなたか素早くドレスの皺を取る方法をご存知ではありませんか?」

 不機嫌なジョージを無視してセアラは女性達に話しかけた。

「はい、ドレスを見せていただきたいのでクローゼットを開けても宜しいでしょうか?」

「ジョージ、こちらの方達に見て頂いても構わない?」

「⋯⋯クローゼットは」

「何か問題でも?」

 マーシャル夫人の冷たい目がジョージのこれ以上深くならない眉間の皺を睨みつけた。

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