【完結】私なりのヒロイン頑張ってみます。ヒロインが儚げって大きな勘違いですわね

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24.夜会準備は大変

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「初めての夜会では想像以上に疲れてしまわれると思います。夜会中の事についてはシャペロンであるマーシャル夫人に相談されれば良いので割愛いたしますね」

 マチルダは子爵令嬢なので夜会には何度も参加したことがあると言った。

「普段より疲れる上に途中退場できない可能性もございますのでセアラ様はこの後1時間程度お昼寝をしていただきます。
お目覚めになられたら入浴とマッサージ、その後髪を結って化粧を終わらせてから着付けを行います。
夜会の途中で何度もお花摘みに行くのはあまり褒められたことではありませんので午後は水分を控えめにしていただきます。
コルセットを締めると体調を崩しやすい為、マッサージの後すぐ夕食を済ませるのですがその時は軽めのものか量を控えます。
その代わりに帰ってから夜食をいただくのが普通なのですが⋯⋯準備していただけない場合を考えて迎えの馬車に軽食を持たせるようにいたしましょう。
因みに、早めの夕食にすることは可能でしょうか?」

「大体何時ごろなら良いのでしょうか?」

「そうですね。マーシャル夫人は6時半にお見えになると聞いておりますので遅くても5時迄には終わらせておきたいと思います。その時は髪を結った後に夕食となるかと」

「あの、聞いて参ります」

 マチルダ達の仕事ぶりに唖然としたままだったケイトが急いで部屋を出て行った。



 食事の後でセアラがベッドに入るとマチルダたちは壁際に小振の折り畳み椅子を置き持参した食事をはじめた。

「あの、何かお飲み物をお持ちしましょうか?」

 ナビアが声をかけたがマチルダはにっこり笑って首を横に振った。3人は物音を一切立てずに食事をし、その後セアラが目覚めるまで静かに椅子に座り続けていた。

 セアラが目覚める気配に気付いた3人は無言のまま静かに動きはじめた。マーニャは風呂の準備に行きサラはお茶の支度を、マチルダはその様子を確認した後ベッドにゆっくりと近付いてセアラに声をかけた。

「お目覚めですか? 今、お風呂の準備をしております。紅茶はいかがですか?」

「ありがとう、いただきます」


 ケイトとナビアが一番驚いたのは無駄のない3人のメイドが殆ど音を立てないことだった。それ以外にも目配せだけで次の行動に移るにも関わらず無駄もなく連携が取れている。マチルダ達は元々貴族なのかもしれないが動きの一つ一つが洗練されていてケイト達は目が離せなくなった。

 マチルダ達の仕事ぶりを見ていて公爵家のメイドだと言う自負がガラガラと音を立てて崩れ去っていった。

 セアラがマーニャとサラを連れ風呂に行った時ナビアがマチルダに声をかけた。

「あの、私達にもお手伝いさせていただけませんか?」

「⋯⋯お気持ちは嬉しいのですが」

「不勉強で出来ることは少ないのですが何かあれば手伝わせて下さい。お願いします。
あの、皆さんの仕事ぶりを見ていて凄いなって⋯⋯その勉強したいと言うか」

「何か少しでも覚えたいと思っていただけることがあれば嬉しいですわ」

「皆さん全然音がしないのが不思議で」

「メイドの基本だとマーシャル夫人にお仕えした一番はじめに習いました。どんな時でも主人の邪魔になる音を立てない事って。それができるようになるまで次の仕事は教えてもらえませんでしたから」

「!」

「その家によって色々ですからどうかお気になさらず。使用人は当主の鏡だと口を酸っぱくして言われたんです、私達の主人は礼儀作法に殊の外厳しい方ですからまずはそこからって。
後で夕食の様子を聞いて来ていただけると助かります」

 小さく会釈したマチルダは使用し終えた風呂場の片付けに向かった。

「なんか、凄い」
「うん」
「あたし達今まで何やってたんだろう」

 セアラの言動をお高く止まってると思い馬鹿にしていたケイトとナビアは背筋を伸ばしドレッサーの前に優雅に座るセアラと髪を結うマーニャの無駄のない手つきを見つめ溜息をついた。

「セアラ様の言葉や態度は貴族として正しい」
「うん、メリッサアメリアの姉様やアメリア様が違う」


 気に入らないことがあれば使用人に手を挙げ癇癪を起こして怒鳴り物を投げつけるアメリア達が普通の貴族令嬢だと思っていたケイトとナビア。

 外面は良いが家ではやりたい放題で、高価なドレスと宝石で着飾り食事に文句をつけるのが貴族。
 使用人は物と同じでどんな扱いをしても許される。使用人にどんな命令をしても許されるのが貴族。

「貴族って思ってたのと違うね」
「うん、使用人は当主の鏡だって」
「アメリア様付きのメイドよりセアラ様付きのメイドで良かった」
「セアラ様はそう思ってないけどね」
「うん、それは間違いない」

「あたし、セアラ様に生贄のくせにって言っちゃった」
「⋯⋯それヤバすぎ」
「他にもいっぱいあるけど聞く?」
「いや、無理」

「さっき夕食取りに行った時、アメリア様の怒鳴り声が聞こえてた」
「まじ?」
「ここにこようとしてたみたいでさ、ジョージさんが必死で止めてた」
「ざまぁ」
「うん、メイド長は廊下に倒れてた」
「ふふ、いいねぇ。思いっきりざまぁだわ」
「うん」

「マチルダさん、めちゃかっこいい」
「あたしはマーニャさんみたいに編み込みできるようになりたい」
「サラさんの化粧テク知りたい」


 ケイトとナビアの楽しげな会話が終わる頃セアラの準備も終わった。
 レースの手袋をはめながら振り返ったセアラを見たケイト達は言葉を失い口をぽかんと開けて立ち尽くした。

 艶々と輝くハニーブロンドはサイドを緩く編み込んだハーフアップで大粒のルビーの周りをエメラルドが取り囲んだ髪飾りが一つ。濃い紫眼はいつもより大きく輝き、絹のような頬とピンクの唇は思わず手を伸ばしたくなる。14歳の初夜会に相応しい大人しめのドレスだがチョーカーと胸元のコサージュが引き込まれるような未成熟な色気を醸し出していた。

「セアラ様、やばい」
「危険過ぎです」


 ケイト達の呟きが聞こえたセアラはどこかおかしいところがあったのかと不安になり鏡を覗き込んだ。

「とてもよく似合っておいでですよ」
「夜会ではマーシャル夫人のお側から離れませんように。でないと直ぐに攫われてしまいますわ」
「夜会で一番の華になりますわ」


 マーシャル達の言葉に少しばかり勇気を貰ったセアラは部屋を出てマーシャル夫人の待つ馬車へと歩きはじめた。

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