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30.ポンコツリチャード王子の一言
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アリエノールはミリセントと過去の失敗談や最近の四方山話に花を咲かせていたはずが、突然立ち上がり怒りだした。
「そうだわ、今夜お兄様とセアラを引き合わせようと思ってたのだけどやめにしたの。お兄様は当分セアラの側には近づけないつもりだから!」
「でもアレは⋯⋯まあ、仕方ないんじゃないかしら。わたくし、リチャードの気持ちがちょっぴり理解できたもの。ほんのちょっぴりね。シルスも顔を赤くしていたから同じ事を思っていたと思うわ」
「いいえ、アレはダメ。お母様にお話しして王子教育を一からやり直すべきだわ! お兄様も一緒に」
何があったのか想像もつかないセアラは目を吊り上げて怒るアリエノールとケラケラと笑うミリセントを交互に見遣り首を傾げた。
「お兄様にはまだセアラの事は話してないの。だから作戦を変更するべきだわ。あんな⋯⋯あんな。セアラはわたくしの大切なお友達なのに。まだ会ってお話しするのは2回目だけど、2回目だけど大切なお友達だと思っているの。それなのにお兄様ったら」
「もしかしてわたくしが何かしでかしてしまったという事でしょうか。それであればあの。全然気付かなくて申し訳ありませんでした」
アリエノールの話を聞いたセアラが慌てて頭を下げて謝罪するとアリエノールが慌ててセアラの横に座り込みセアラの手を握りしめた。
「セアラはなんの問題もないの。勘違いさせるようなことを言ってしまってごめんなさいね」
「アリエノールは温厚篤実なんて言われているけど本当の性格は悪戯好きのお転婆娘なの。思った事ははっきり口にするし口も悪いし」
「ミリーったら、わたくしの仮面は完璧だからバラさないで!」
「これでも褒めてるのよ。そんな人が王女らしく頑張って仮面を⋯⋯いえ、まあ、ね?
それに良いことかもしれないと思ったりもするのよ。リチャードに細かい演技は無理かなって思ったりもするし」
「うーん」
腕を組んで悩んでいたアリエノールが『確かに⋯⋯許せないけど、うーん。でも、いいのかも』と一人でぶつぶつ一人百面相を披露しはじめた。
「うん、お兄様の発言はともかく今日のところはこれで目標達成としましょう。お兄様とセアラが会う機会は直ぐにやってくることですし」
どうやら何があったのかは聞かせてもらえないらしいとセアラは不安げな思いをしながら頷いた。
「あのねリチャードったらセアラを見た時『可愛い⋯⋯けど、なんかエロい』って言ったの」
「は? えっ?」
「ミリー! セアラに失礼だわ」
「だって知らないままだとセアラは不安でしょう? そんな気持ちのまま帰って下さいだなんて可哀想だわ」
「そうね、中途半端に口にしたわたくしが間違っていたわ。セアラは何も間違っていないの。お兄様の薄汚い下心が漏れ出したのが気に入らなかっただけなの。殿方ってなんであんなに変態なのかしら」
壇上に上がり陛下に挨拶をしていたセアラを見たリチャードがぽつりと呟いた一言が隣に並んでいたアリエノールに聞こえたらしい。
呆然とした顔を少し赤らめセアラを見つめ続けるリチャードの靴をアリエノールがヒールで思い切り踏みつけた。
『なあ、セアラ・レトビア嬢って今季お前の秘書役に任命された令嬢だよな』
紹介して欲しそうにヒクヒク動く耳とブンブンと振っている尻尾が見えそうな勢いにアリエノールはそっぽを向いた。
『だとしてもお兄様にはなんの関係もございません。わたくしの友人を下劣な目で見ないでくださいませ。セアラが汚れます!』
「そんなわけだから内容は兎も角想像以上に上手くいっているとも言えるの」
モヤモヤを抱えたままのアリエノールの代わりにミリセントが説明してくれた。
今回の急な夜会への参加は予想通りアリエノール達が密かに流した噂が原因だった。
「最近レトビア公爵家の養女になった【レトビアの荊姫】は閉月羞花で成績優秀、性格もマナーも申し分のない完璧な令嬢でこの度生徒会長の秘書に任命されたって社交界のお喋り雀にあちこちで囁いてもらったの」
「そっ、それはまた随分と⋯⋯」
今日いらした方々はさぞがっかりしたことだろうとセアラが青褪めるとアリエノールが自慢げににっこりと笑みを返した。
「皆さん、噂通りだって仰って大絶賛しておられるわ」
「マーシャル夫人がシャペロンをして下さっているのも大きいでしょうね。
あの方は礼儀作法にとてもお厳しい方なの。何人もの方があの方にダメ出しをされていて、殆どの人は指導を受けられずに終わるの。マーシャル夫人の指導は叱らず拒否するって有名で、褒められたことのある方はいないって言われているわ。
そんな方にシャペロンをしていただいてるのですもの、それだけで噂は事実だってみんな思っているわ」
「マーシャル夫人には感謝することばかりでしたがそれ程とは思っておりませんでした」
(さっき褒めていただいたような。お叱りは⋯⋯拒否はされてないし色々いただいた上に夜会の準備まで)
「お兄様がね、新学期が始まってから剣術の講師で学園にいらっしゃることになったわ。ずっと断っておられたのだけどセアラを見た途端『講師やる』って張り切ってしまわれて。
毎年4月に行われる剣術大会の為の外部講師を毎年断ってばかりだったのにね」
「元々計画の為にお願いする予定だったのだから良かったじゃない」
「邪な思いがなければね。お兄様がセアラに夢中になりすぎて計画を忘れないことを祈るわ」
「生徒会でお手伝いすることがあると言うことでしょうか?」
「ええ、剣術大会の開催自体が各学園の生徒会主導で行われるから忙しくなるわ」
王都にある3校合同で行われる剣術大会では各学園との打ち合わせや会場準備、出場者の選出まで全て生徒会で取り仕切ると言う。
「優勝者のほとんどはケールズ騎士学校。次に強いのがうちの学園で、もう一つのサワシリア学園はダークホース。時折すごく強い選手がいるから。
新学期が始まったら直ぐに打ち合わせする予定だからセアラも出席してね」
ケールズ騎士学校はその名の通り騎士になる事を目的として設立された学校で、貴族平民に限らず剣技の優秀なものが入学する。卒業後は王国騎士団へ登用される可能性もあり優秀な脳筋の集まりだと言われている。
セアラがいるベルスペクト王立学園は貴族の交流を目的に作られ、2年生からは騎士科と淑女科に分かれて素養を磨く。卒業後領地を治める貴族やその婚約者が多いが王宮務めを望む者も多い。大学への進学を希望する者の殆どがこの学園の卒業生だと言うほどレベルが高く退学する者が後を立たない。
サワシリア学園は試験の結果次第で貴族平民を問わず受け入れる。爵位を継承しない下位貴族と志ある平民で構成され、卒業後は文官や武官への登用と高位貴族家に仕える者や商売をはじめる者がほとんどを占める。
授業料は無料で職業訓練の科目も選択できるようになっている。
「今年の剣術大会は荒れるって言われているの」
「そうだわ、今夜お兄様とセアラを引き合わせようと思ってたのだけどやめにしたの。お兄様は当分セアラの側には近づけないつもりだから!」
「でもアレは⋯⋯まあ、仕方ないんじゃないかしら。わたくし、リチャードの気持ちがちょっぴり理解できたもの。ほんのちょっぴりね。シルスも顔を赤くしていたから同じ事を思っていたと思うわ」
「いいえ、アレはダメ。お母様にお話しして王子教育を一からやり直すべきだわ! お兄様も一緒に」
何があったのか想像もつかないセアラは目を吊り上げて怒るアリエノールとケラケラと笑うミリセントを交互に見遣り首を傾げた。
「お兄様にはまだセアラの事は話してないの。だから作戦を変更するべきだわ。あんな⋯⋯あんな。セアラはわたくしの大切なお友達なのに。まだ会ってお話しするのは2回目だけど、2回目だけど大切なお友達だと思っているの。それなのにお兄様ったら」
「もしかしてわたくしが何かしでかしてしまったという事でしょうか。それであればあの。全然気付かなくて申し訳ありませんでした」
アリエノールの話を聞いたセアラが慌てて頭を下げて謝罪するとアリエノールが慌ててセアラの横に座り込みセアラの手を握りしめた。
「セアラはなんの問題もないの。勘違いさせるようなことを言ってしまってごめんなさいね」
「アリエノールは温厚篤実なんて言われているけど本当の性格は悪戯好きのお転婆娘なの。思った事ははっきり口にするし口も悪いし」
「ミリーったら、わたくしの仮面は完璧だからバラさないで!」
「これでも褒めてるのよ。そんな人が王女らしく頑張って仮面を⋯⋯いえ、まあ、ね?
それに良いことかもしれないと思ったりもするのよ。リチャードに細かい演技は無理かなって思ったりもするし」
「うーん」
腕を組んで悩んでいたアリエノールが『確かに⋯⋯許せないけど、うーん。でも、いいのかも』と一人でぶつぶつ一人百面相を披露しはじめた。
「うん、お兄様の発言はともかく今日のところはこれで目標達成としましょう。お兄様とセアラが会う機会は直ぐにやってくることですし」
どうやら何があったのかは聞かせてもらえないらしいとセアラは不安げな思いをしながら頷いた。
「あのねリチャードったらセアラを見た時『可愛い⋯⋯けど、なんかエロい』って言ったの」
「は? えっ?」
「ミリー! セアラに失礼だわ」
「だって知らないままだとセアラは不安でしょう? そんな気持ちのまま帰って下さいだなんて可哀想だわ」
「そうね、中途半端に口にしたわたくしが間違っていたわ。セアラは何も間違っていないの。お兄様の薄汚い下心が漏れ出したのが気に入らなかっただけなの。殿方ってなんであんなに変態なのかしら」
壇上に上がり陛下に挨拶をしていたセアラを見たリチャードがぽつりと呟いた一言が隣に並んでいたアリエノールに聞こえたらしい。
呆然とした顔を少し赤らめセアラを見つめ続けるリチャードの靴をアリエノールがヒールで思い切り踏みつけた。
『なあ、セアラ・レトビア嬢って今季お前の秘書役に任命された令嬢だよな』
紹介して欲しそうにヒクヒク動く耳とブンブンと振っている尻尾が見えそうな勢いにアリエノールはそっぽを向いた。
『だとしてもお兄様にはなんの関係もございません。わたくしの友人を下劣な目で見ないでくださいませ。セアラが汚れます!』
「そんなわけだから内容は兎も角想像以上に上手くいっているとも言えるの」
モヤモヤを抱えたままのアリエノールの代わりにミリセントが説明してくれた。
今回の急な夜会への参加は予想通りアリエノール達が密かに流した噂が原因だった。
「最近レトビア公爵家の養女になった【レトビアの荊姫】は閉月羞花で成績優秀、性格もマナーも申し分のない完璧な令嬢でこの度生徒会長の秘書に任命されたって社交界のお喋り雀にあちこちで囁いてもらったの」
「そっ、それはまた随分と⋯⋯」
今日いらした方々はさぞがっかりしたことだろうとセアラが青褪めるとアリエノールが自慢げににっこりと笑みを返した。
「皆さん、噂通りだって仰って大絶賛しておられるわ」
「マーシャル夫人がシャペロンをして下さっているのも大きいでしょうね。
あの方は礼儀作法にとてもお厳しい方なの。何人もの方があの方にダメ出しをされていて、殆どの人は指導を受けられずに終わるの。マーシャル夫人の指導は叱らず拒否するって有名で、褒められたことのある方はいないって言われているわ。
そんな方にシャペロンをしていただいてるのですもの、それだけで噂は事実だってみんな思っているわ」
「マーシャル夫人には感謝することばかりでしたがそれ程とは思っておりませんでした」
(さっき褒めていただいたような。お叱りは⋯⋯拒否はされてないし色々いただいた上に夜会の準備まで)
「お兄様がね、新学期が始まってから剣術の講師で学園にいらっしゃることになったわ。ずっと断っておられたのだけどセアラを見た途端『講師やる』って張り切ってしまわれて。
毎年4月に行われる剣術大会の為の外部講師を毎年断ってばかりだったのにね」
「元々計画の為にお願いする予定だったのだから良かったじゃない」
「邪な思いがなければね。お兄様がセアラに夢中になりすぎて計画を忘れないことを祈るわ」
「生徒会でお手伝いすることがあると言うことでしょうか?」
「ええ、剣術大会の開催自体が各学園の生徒会主導で行われるから忙しくなるわ」
王都にある3校合同で行われる剣術大会では各学園との打ち合わせや会場準備、出場者の選出まで全て生徒会で取り仕切ると言う。
「優勝者のほとんどはケールズ騎士学校。次に強いのがうちの学園で、もう一つのサワシリア学園はダークホース。時折すごく強い選手がいるから。
新学期が始まったら直ぐに打ち合わせする予定だからセアラも出席してね」
ケールズ騎士学校はその名の通り騎士になる事を目的として設立された学校で、貴族平民に限らず剣技の優秀なものが入学する。卒業後は王国騎士団へ登用される可能性もあり優秀な脳筋の集まりだと言われている。
セアラがいるベルスペクト王立学園は貴族の交流を目的に作られ、2年生からは騎士科と淑女科に分かれて素養を磨く。卒業後領地を治める貴族やその婚約者が多いが王宮務めを望む者も多い。大学への進学を希望する者の殆どがこの学園の卒業生だと言うほどレベルが高く退学する者が後を立たない。
サワシリア学園は試験の結果次第で貴族平民を問わず受け入れる。爵位を継承しない下位貴族と志ある平民で構成され、卒業後は文官や武官への登用と高位貴族家に仕える者や商売をはじめる者がほとんどを占める。
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