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49.「I amヒロイン」 絶好調
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「リチャード、お疲れ様。とても素晴らしい練習でしたわ」
いそいそと近づいてきたアメリアの後ろにはアメリアの取り巻きが並んでいた。
「やあ、来てたのに気付かなかった」
「練習中のお邪魔にならないよう控えておりましたの。この後生徒会室までご一緒いたしますわ。友達はルーク様とお話ししたいと申しておりますし」
「そうなんだ。俺はセアラと帰るから⋯⋯ルークならあそこにいるよ」
リチャードはアメリアの言葉を気にした様子もなくルークの方を指差した。
「セアラと? どうしてリチャードがセアラなどと一緒に行動されるのですか? 先ほども何度も声をかけておられましたし、そのような事をすればリチャードとセアラの間違った噂が流れてしまいますわ」
「講師の間の世話役をセアラに頼んだんだ」
「は? 世話役でしたら私がおりますでしょう?」
「アメリアは生徒会には所属していないから頼めないんだ」
「そんな! それでしたらローランドがおりますでしょう? 彼に世話役を申し付けておきます」
「勝手な事をしないでくれ。セアラを世話役にしたいと思ったのは俺なんだから」
「⋯⋯もしかして近々義姉になるからと気を遣っておられますの?」
「何のことだかわからないな。それじゃあ失礼するよ」
「リチャード! お茶会の準備を既にはじめておりますのよ」
「そうか⋯⋯じゃあ」
早足でセアラの元に急ぐリチャードの後ろ姿をアメリアが睨みつけていた。
「待たせたかな?」
「いえ、こちらは大丈夫です」
「そうか、暗くなる前に寮まで送りたいと思ってたんだが予想より遅くなってしまったな。生徒会室へ急ごう」
セアラをエスコートするリチャードの嬉しそうな笑顔とそれに応えるセアラの様子は瞬く間に広がった。
「リチャード王子が浮気を!」
「アメリア様を振ってセアラをエスコートして行ったなんて」
「セアラはリチャード様の護衛やルーク様にまで傅かれていたんですのよ」
剣技大会の練習は順調にはじまったがセアラの周りは以前よりも険悪になってきた。
リチャード王子の接待役はセアラの担当となり練習の行き帰りは常に寄り添い、途中休憩の時にはリチャード王子がセアラの元に走って戻ってくる。リチャードはセアラの顔を覗き込むようにして話しかけセアラがにっこりと微笑み返す。
「信じられないわ」
「リチャード王子は既にアメリア様と婚約が決まられてるのに!」
「ルーク様まで侍らせて」
「リチャード様の護衛もセアラの側でデレデレしてるし」
「練習日はリチャード様が寮まで送っていかれてるのよ」
「リチャード様がいらっしゃらない日はルーク様に寮まで送り迎えさせてるんですって」
物がなくなる壊されるのは日常茶飯事になり、ほんの少しでも隙ができたらあからさまな悪口や嫌味が聞こえてくる。足を引っ掛けたり突き飛ばされるのでルークの侍女がいなければお花摘みにも行けない有様だった。
(まさにヒロインだわ。ここまで予想通りになるなんて)
初日の練習日の翌日からローランドがしょっちゅう生徒会室に出入りして話に割り込んでくるようになった。その上、昼食会にも無理やり参加してくるので余計な事は話せない。アリエノールの部屋でとる夕食の後にリチャード抜きの作戦会議を行うのが恒例になった。
「大変な思いをさせてごめんなさいね」
「大丈夫です。予想していた範囲内ですし、普段はルークと侍女のティナがいてくれるのでご心配いただくほどではありませんから」
「お喋り雀を使ったとは言え噂の広がり方が早すぎる気がするので調べさせています」
社交界や王都で秘密裏に噂を流したい時に利用する『お喋り雀』は対価を払えばどんな噂でも流してくれる。噂の内容や広めたい場所、広めたい相手によって大きく金額が異なる。
「王妃様にお聞きしたのだけど先日レトビア公爵が陛下のところに抗議しに来たんですって」
レトビア公爵はリチャードとアメリアの婚約を正式発表するようねじ込んできた。王命を出せと脅してきたようだが、陛下はリチャードは一時的にのぼせ上がっているだけなのでもう暫く様子を見てはどうかと提案して場を濁した。
『其方の娘ならば政略結婚ではなくともリチャードを振り向かせることなど容易かろう?』
「明日の一次試験だけど試験官としてルーカン第一騎士団団長とショーン・マクシミリアン近衛騎士団長がいらっしゃるの。それとカーマイン公爵」
「反レトビア公爵派のカーマイン公爵は確か、リチャード様とアメリアの婚姻を反対していると聞いたことがあります」
「ええ、その話を利用するつもり。私たちがやっていることはカーマイン公爵には話していないのだけど、お兄様とセアラの仲の良さを吹聴してもらうにはちょうど良い人物だから。
彼はちょっと⋯⋯個人の利益とか自分の派閥に重きを置いている感があって、あまり信用していないけどね」
昔からカーマイン公爵とレトビア公爵は犬猿の仲で、お互いに足を引っ張り合い相手を引き摺り下ろそうと画策していると言う。
「アリエノール様からお聞きした例のお話をカーマイン公爵様はご存じないのですか?」
「ええ、ありがたいことにね。カーマイン公爵は若い頃から野心家でレトビア公爵家と反発していたから陛下は『彼は危険だから』とお話にならなかったの。
それにあの話、本当は代々の国王と王妃だけしか知らないの」
今回ミリセントを含めた陛下の子供達全員が知ることになったのはアメリアの不用意な一言とレトビア公爵の強欲さのせいだった。
「二人は昔から仲が悪くて有名なんだけど、ある夜会でメリッサとアメリアが喧嘩になったの」
『アンタが王子様と結婚なんてできるわけないじゃない! チビでブスで貧乳で』
『なによ、このデブババア! あたしはお姫様になる選ばれた娘なんだから! 18で死んじゃうアンタとは違うのよ!』
『私、婚約が決まったのよねぇ。さっさと結婚するからアンタが【レトビアの荊姫】よ。
良かったわねぇ、ほんとにお姫様になれて』
『あたしは公爵家を継ぐから神殿の宝物はあたしの物。聖女になったあたしはリチャードと結婚するって決まってるの!』
「テラスで喧嘩してた二人のその話をたまたまシルスお兄様が聞いてしまって。だからみんなして陛下に聞きに行ったの」
いそいそと近づいてきたアメリアの後ろにはアメリアの取り巻きが並んでいた。
「やあ、来てたのに気付かなかった」
「練習中のお邪魔にならないよう控えておりましたの。この後生徒会室までご一緒いたしますわ。友達はルーク様とお話ししたいと申しておりますし」
「そうなんだ。俺はセアラと帰るから⋯⋯ルークならあそこにいるよ」
リチャードはアメリアの言葉を気にした様子もなくルークの方を指差した。
「セアラと? どうしてリチャードがセアラなどと一緒に行動されるのですか? 先ほども何度も声をかけておられましたし、そのような事をすればリチャードとセアラの間違った噂が流れてしまいますわ」
「講師の間の世話役をセアラに頼んだんだ」
「は? 世話役でしたら私がおりますでしょう?」
「アメリアは生徒会には所属していないから頼めないんだ」
「そんな! それでしたらローランドがおりますでしょう? 彼に世話役を申し付けておきます」
「勝手な事をしないでくれ。セアラを世話役にしたいと思ったのは俺なんだから」
「⋯⋯もしかして近々義姉になるからと気を遣っておられますの?」
「何のことだかわからないな。それじゃあ失礼するよ」
「リチャード! お茶会の準備を既にはじめておりますのよ」
「そうか⋯⋯じゃあ」
早足でセアラの元に急ぐリチャードの後ろ姿をアメリアが睨みつけていた。
「待たせたかな?」
「いえ、こちらは大丈夫です」
「そうか、暗くなる前に寮まで送りたいと思ってたんだが予想より遅くなってしまったな。生徒会室へ急ごう」
セアラをエスコートするリチャードの嬉しそうな笑顔とそれに応えるセアラの様子は瞬く間に広がった。
「リチャード王子が浮気を!」
「アメリア様を振ってセアラをエスコートして行ったなんて」
「セアラはリチャード様の護衛やルーク様にまで傅かれていたんですのよ」
剣技大会の練習は順調にはじまったがセアラの周りは以前よりも険悪になってきた。
リチャード王子の接待役はセアラの担当となり練習の行き帰りは常に寄り添い、途中休憩の時にはリチャード王子がセアラの元に走って戻ってくる。リチャードはセアラの顔を覗き込むようにして話しかけセアラがにっこりと微笑み返す。
「信じられないわ」
「リチャード王子は既にアメリア様と婚約が決まられてるのに!」
「ルーク様まで侍らせて」
「リチャード様の護衛もセアラの側でデレデレしてるし」
「練習日はリチャード様が寮まで送っていかれてるのよ」
「リチャード様がいらっしゃらない日はルーク様に寮まで送り迎えさせてるんですって」
物がなくなる壊されるのは日常茶飯事になり、ほんの少しでも隙ができたらあからさまな悪口や嫌味が聞こえてくる。足を引っ掛けたり突き飛ばされるのでルークの侍女がいなければお花摘みにも行けない有様だった。
(まさにヒロインだわ。ここまで予想通りになるなんて)
初日の練習日の翌日からローランドがしょっちゅう生徒会室に出入りして話に割り込んでくるようになった。その上、昼食会にも無理やり参加してくるので余計な事は話せない。アリエノールの部屋でとる夕食の後にリチャード抜きの作戦会議を行うのが恒例になった。
「大変な思いをさせてごめんなさいね」
「大丈夫です。予想していた範囲内ですし、普段はルークと侍女のティナがいてくれるのでご心配いただくほどではありませんから」
「お喋り雀を使ったとは言え噂の広がり方が早すぎる気がするので調べさせています」
社交界や王都で秘密裏に噂を流したい時に利用する『お喋り雀』は対価を払えばどんな噂でも流してくれる。噂の内容や広めたい場所、広めたい相手によって大きく金額が異なる。
「王妃様にお聞きしたのだけど先日レトビア公爵が陛下のところに抗議しに来たんですって」
レトビア公爵はリチャードとアメリアの婚約を正式発表するようねじ込んできた。王命を出せと脅してきたようだが、陛下はリチャードは一時的にのぼせ上がっているだけなのでもう暫く様子を見てはどうかと提案して場を濁した。
『其方の娘ならば政略結婚ではなくともリチャードを振り向かせることなど容易かろう?』
「明日の一次試験だけど試験官としてルーカン第一騎士団団長とショーン・マクシミリアン近衛騎士団長がいらっしゃるの。それとカーマイン公爵」
「反レトビア公爵派のカーマイン公爵は確か、リチャード様とアメリアの婚姻を反対していると聞いたことがあります」
「ええ、その話を利用するつもり。私たちがやっていることはカーマイン公爵には話していないのだけど、お兄様とセアラの仲の良さを吹聴してもらうにはちょうど良い人物だから。
彼はちょっと⋯⋯個人の利益とか自分の派閥に重きを置いている感があって、あまり信用していないけどね」
昔からカーマイン公爵とレトビア公爵は犬猿の仲で、お互いに足を引っ張り合い相手を引き摺り下ろそうと画策していると言う。
「アリエノール様からお聞きした例のお話をカーマイン公爵様はご存じないのですか?」
「ええ、ありがたいことにね。カーマイン公爵は若い頃から野心家でレトビア公爵家と反発していたから陛下は『彼は危険だから』とお話にならなかったの。
それにあの話、本当は代々の国王と王妃だけしか知らないの」
今回ミリセントを含めた陛下の子供達全員が知ることになったのはアメリアの不用意な一言とレトビア公爵の強欲さのせいだった。
「二人は昔から仲が悪くて有名なんだけど、ある夜会でメリッサとアメリアが喧嘩になったの」
『アンタが王子様と結婚なんてできるわけないじゃない! チビでブスで貧乳で』
『なによ、このデブババア! あたしはお姫様になる選ばれた娘なんだから! 18で死んじゃうアンタとは違うのよ!』
『私、婚約が決まったのよねぇ。さっさと結婚するからアンタが【レトビアの荊姫】よ。
良かったわねぇ、ほんとにお姫様になれて』
『あたしは公爵家を継ぐから神殿の宝物はあたしの物。聖女になったあたしはリチャードと結婚するって決まってるの!』
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