【完結】私なりのヒロイン頑張ってみます。ヒロインが儚げって大きな勘違いですわね

との

文字の大きさ
50 / 93

50.それぞれの慰労会

しおりを挟む
「レトビア公爵は以前から無理難題を押し付けてきていて、陛下の政務が混乱したり議会が紛糾したりしていたから覚悟を決められていたみたい。
これ以上はどうにもならないから密約を公開するおつもりだと仰っていらしたわ」

 シルス王太子は公開する覚悟があるのならできることを試してみたいと言い、全員が賛成し解決方法を模索していた。

「そこでね、セアラが手伝ってくれるなら例の『悪役令嬢とヒロイン』が使えるんじゃないかって話になったの」

 密約を盾にして自分に都合のいい話を国王に押し付けすぎていなければ陛下は共倒れ覚悟で密約を公開しようなどとは思わなかっただろうし、アメリアが少しでも聡明なら夜会などと言う人の多い場所で軽々しく秘密を口にしたりしなかったかもしれない。



「もう少しアメリアを追い詰めたら公の場所に宝物を着けて来させるわ」

「それまでに調査団が情報を手に入れなくては言い逃れされてしまいます」

「王家の宝物庫にもないほどの宝物ですよね」

 セアラはどのような物ならアメリアにそれ程の自信を持たせられるのか考えてみた。宝物庫の中など見たことはなくても『ない』と言い切れる物。

「よほど大きな宝石とかでしょうか? アメリアの性格からすると特別な力を持っているとかではなくて、パッと見ただけで凄いってわかる物だと思うのです。先日の夜会でつけていたネックレスがそうでしたし」

「豪華さで言えば大きさか数かのどちらかかしら」

「帝国は18歳で成人になります。その歳の娘に呪いがかけられると言うことを考えると、聖女が初めての儀式で正装する為の宝物を奪われた為に戦乙女ディースが呪いをかけたのかなと。
もしこの仮説があっているなら聖女の正装ってどんな物なんだろうと気になっています」

「ティアラ⋯⋯」

 ウルリカがぽつりと呟いた。

「うん、確かにそれはあり得そうだわ。アメリアが結婚式につけると言っていたのだし、ネックレスやイヤリングよりも可能性がありそうね」



「では、リチャード様からそれとなく『王家の宝物庫にあるティアラ』についてアメリアに話してもらうのはどうでしょうか? 迂闊なアメリアなら何かリアクションをするかもしれません」

「いい考えだわ、アメリアが話していたのがティアラなら対抗意識を燃やすはずね。次にお会いした時お兄様に話しておきましょう。
セアラに犠牲を敷いてまで特典を差し上げたのだから、お兄様に頑張っていただかなくては」



 各教科の小テストを無事クリアした翌週の土曜日、剣技大会用選抜試験の日がやって来た。28名の生徒は緊張で肩を怒らせてリチャード王子の前に整列した。

「今回の試験官はルーカングレイスの父第一騎士団団長とマクシミリアン近衛騎士団長と俺の3名で行う。それとオブザーバーとしてカーマイン公爵が来られている。
今回の合格予定数は10名。試合はそれぞれ2回行い勝敗数に各試験官の持つ点が加算される。
全員後悔のない戦いを」


「たったの10人なんて厳しいな」
「3人はほぼ決定ですから後7名ですわ」

「対戦相手次第だよなぁ」


 前回の練習日に籤引きを行い各選手候補の番号が決まっている。

「こちらに番号順に2列で並んで下さい。隣の方が対戦相手になります」

 マーカス書記の号令で籤に書かれた番号順に選手候補が並んでいった。ローランドは番号の書かれたメモをチェックしながら列を整えて行く。
 
「では、1番と2番は前へ」

 練習場の中央に二人の選手候補が対峙し一礼。

「はじめ!!」



 剣技大会に出場する生徒の多くは高位貴族の令息のうち爵位が継げない次男や三男で、騎士団や近衛騎士団希望者が多い。
 リチャード王子の目に留まれば出世は確定。団長二人の目に留まっても騎士団入りが確定になる。カーマイン公爵の私設の軍隊も精鋭揃いだと評判が高い。
 彼らがいるので選手候補達の気合の入り方が違っていた。


「噂通り3人の戦いは圧巻ですな」

「これで学生と言うのだから、騎士団の見習いなど瞬殺されそうです」

「一年生であれだけの技術を持っているとは末恐ろしい。しかし辺境伯が離しますまい」

 試験の合間に噂されているのは勿論、

 一年生のルーク・マクルーガー
 二年生のグレイ・ガーラント
 三年生のタイラー・ヒックス



 試験は2日に及び10名の合格者が発表された。試合に参加した28名の選手候補達は試験官と共に講堂に準備された慰労会に出席した。

 立食形式で行われた慰労会は生徒達の最後のアピールの場でもある。疲れた顔を見せず自分から積極的に声をかける者と料理に夢中になる者に明確に分かれた。

 生徒会役員はホスト役で秘書は裏方として参加したがリチャードはセアラを手から離さず常にそばに置いている。不足した飲み物の手配に行こうとするとリチャードが別の秘書に声をかけ、汚れた皿を片付けようとしたセアラの手を捕まえたまま話を続ける。

「セアラ、諦めなさいな。貴方はお兄様のお世話係でしょう?」

「はい。でも」

「生徒会長の許可ももらった事だし⋯⋯向こうのテーブルにスイーツがあったから取りに行こう」

「噂には聞いていたがリチャードはセアラ嬢の事が随分とお気に入りのようだな」

 カーマイン公爵がリチャード達の仲の良さに食いついた。

「世話係ですからね」

「しかし、アメリア嬢のご機嫌が悪いと聞くが大丈夫なのかね」

「まあ、それは⋯⋯」

「はっはっは、若いうちは色々あるしな。しかもリチャードはかなり趣味がいい」

 カーマイン公爵の大きな声は会場中に広まっている事だろう。



 裏方を指示されているローランドはチッと舌打ちしてセアラを睨みつけた。アメリアから慰労会に入れるよう手配しろと言われたがウルリカから却下されマーカスには苦い顔をされた。

(アイツのせいで散々だ)

 期末試験で首位を奪われたローランドは父親に叱られた。セアラに言い負けたグレイスは機嫌が悪く、会うたびに何かしら高価な贈り物をねだられローランドは借金まみれになってしまった。

(アメリア様にボロカスに言われた上に、この僕が裏方!? アイツが王子の隣で媚を売ってるのに次期伯爵の僕が裏方だなんて!)

 ローランドと同じ秘書のルークは選手候補として先程からセアラの側を彷徨きながら黙々と料理を平らげている。
 あと二人の秘書ケント・タイラーとサミュエル・アイシュタインは仲良くお喋りをしながら時々会場を回っては使用人に声をかけている。

(この薬をあのアバズレに飲ませてやろうか⋯⋯)



 慰労会に参加するのは無理だと伝えた時アメリアに渡された薬の瓶をポケットの中で握りしめた。

しおりを挟む
感想 60

あなたにおすすめの小説

断罪中、味方が多すぎて王子が孤立している件について

夏乃みのり
恋愛
バーンスタイン伯爵家の令嬢ラミリアは、魔力も剣の才能もない「ごく普通」の地味な女性。 ある日のパーティーで、婚約者であるジェラルド第二王子から「地味で無能で嫉妬深い」と罵られ、身に覚えのない罪で婚約破棄を突きつけられてしまう。 しかし、断罪劇は予想外の展開へ。

婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。

黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」 豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。 しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。

誤解は解きません。悪女で結構です。

砂礫レキ
恋愛
オルソン家の伯爵令嬢エリカ。彼女は亡き母がメイドだった為に異母姉ローズとその母によって長年虐げられていた。 二人から男好きの悪女の噂を流布され、それを真に受けた結婚相手に乱暴に扱われそうになる。 その瞬間エリカは前世の記憶を思い出した。そして今の自分が「一輪の花は氷を溶かす」という漫画のドアマットヒロインに転生していることに気付く。 漫画の内容は氷の公爵ケビン・アベニウスが政略結婚相手のエリカを悪女と思い込み冷遇するが、優しさに徐々に惹かれていくという長編ストーリーだ。 しかし記憶を取り戻した彼女は呟く。「そんな噂を鵜呑みにするアホ男なんてどうでもいいわ」 夫からの愛を求めない新生エリカは悪女と呼ばれようと自分らしく生きることを決意するのだった。

婚約破棄で、おひとり様になれるはずだったのに!?

パリパリかぷちーの
恋愛
主人公ルシアン・ヴァイオレットは、「悪役令嬢」として振る舞う孤独愛好家の公爵令嬢。念願だった第一王子アランとの婚約破棄を言い渡されると、内心では歓喜し、大都会の喧騒から逃れて森の奥の廃墟同然の別荘へと引きこもる。ルシアンの目的は、誰にも邪魔されない至高の静寂ライフを満喫することだった。 しかし、彼女の理想郷にはすでに先客がいた。それは、無口で無愛想だがハイスペックな謎の男、キース。実は彼は、王国の裏社会を統べる『影の英雄』と呼ばれる辺境伯であり、ルシアンの孤高の姿に心奪われた重度の隠れファンだった。

恋愛戦線からあぶれた公爵令嬢ですので、私は官僚になります~就業内容は無茶振り皇子の我儘に付き合うことでしょうか?~

めもぐあい
恋愛
 公爵令嬢として皆に慕われ、平穏な学生生活を送っていたモニカ。ところが最終学年になってすぐ、親友と思っていた伯爵令嬢に裏切られ、いつの間にか悪役公爵令嬢にされ苛めに遭うようになる。  そのせいで、貴族社会で慣例となっている『女性が学園を卒業するのに合わせて男性が婚約の申し入れをする』からもあぶれてしまった。  家にも迷惑を掛けずに一人で生きていくためトップであり続けた成績を活かし官僚となって働き始めたが、仕事内容は第二皇子の無茶振りに付き合う事。社会人になりたてのモニカは日々奮闘するが――

乙女ゲームの悪役令嬢に転生してしまった私は、全力で死亡フラグを回避したいのに、なぜか空回りしてしまうんです(涙)

藤原 柚月
恋愛
(週一更新になります。楽しみにしてくださる方々、申し訳ありません。) この物語の主人公、ソフィアは五歳の時にデメトリアス公爵家の養女として迎えられた。 両親の不幸で令嬢になったソフィアは、両親が亡くなった時の記憶と引き替えに前世の記憶を思い出してしまった。 この世界が乙女ゲームの世界だと気付くのに時間がかからなかった。 自分が悪役令嬢と知ったソフィア。 婚約者となるのはアレン・ミットライト王太子殿下。なんとしても婚約破棄、もしくは婚約しないように計画していた矢先、突然の訪問が! 驚いたソフィアは何も考えず、「婚約破棄したい!」と、言ってしまう。 死亡フラグが立ってしまったーー!!?  早速フラグを回収してしまって内心穏やかではいられなかった。 そんなソフィアに殿下から「婚約破棄はしない」と衝撃な言葉が……。 しかも、正式に求婚されてしまう!? これはどういうこと!? ソフィアは混乱しつつもストーリーは進んでいく。 なんとしてても、ゲーム本作の学園入学までには婚約を破棄したい。 攻略対象者ともできるなら関わりたくない。そう思っているのになぜか関わってしまう。 中世ヨーロッパのような世界。だけど、中世ヨーロッパとはわずかに違う。 ファンタジーのふんわりとした世界で、彼女は婚約破棄、そして死亡フラグを回避出来るのか!? ※この作品はフィクションです。 実在の人物、団体などに一切関係ありません。 誤字脱字、感想を受け付けております。 HOT ランキング 4位にランクイン 第1回 一二三書房WEB小説大賞 一次選考通過作品 この作品は、小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。

婚約破棄だ!と言われ実家に帰ったら、最推しに餌付けされます

黒猫かの
恋愛
王国の第一王子クレイスから、衆人環視の中 で婚約破棄を言い渡されたローゼン侯爵令嬢ノエル。

悪役令嬢発溺愛幼女着

みおな
ファンタジー
「違います!わたくしは、フローラさんをいじめてなどいません!」  わたくしの声がホールに響いたけれど、誰もわたくしに手を差し伸べて下さることはなかった。  響いたのは、婚約者である王太子殿下の冷たい声。  わたくしに差し伸べられたのは、騎士団長のご子息がわたくしを強く床に押し付ける腕。  冷ややかな周囲のご令嬢ご令息の冷笑。  どうして。  誰もわたくしを信じてくれないまま、わたくしは冷たい牢の中で命を落とした。

処理中です...