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53.突撃する天然と歴史マニア
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「うんと昔、ある高名な大司教様がお生まれになった町なんだけど今は結構寂れているらしいって仰ったの。その大司教様所縁の教会があるからもしかしたら古い資料とかが残っているかもしれないって。
で、行ってみたら大正解!」
『遠路はるばるお越しいただいた方にこのような事を申し上げるのは失礼だと思いますが、イーバリス教会にとってベルスペクト王国は今でも敵国なのです。
それに、この教会にある資料は非常に大切な価値ある物なのでお見せすることはできません』
「だからライルと二人で座り込みしたの」
「真冬なのに!?」
「そう。それも狙いだったの。お話しした司祭様はとてもお優しい方だったからこんな寒空の下で寝泊まりさせるなんて可哀想だなって思ってくれるかもって。
案の定一晩たたずに教会に入れてくださったの」
冬の寒空の下、毛布にくるまって震える二人を見かねた司祭は『取り敢えず』と言いながら中に入れてくれた。暖炉の前を勧められた二人は司祭が出してくれた蜂蜜を入れた暖かいミルクを飲みながら質問に答えた。
『何故そこまでしてイーバリス教の歴史を知りたいと思うのですか?』
『私には3つはなれた妹がいます。妹はとある公爵に無理矢理養子にされてしまいました。理由を詳しく話すことはできませんがイーバリス教が関係しているんです』
『もしかして【レトビアの荊姫】ですか?』
『ご存知なんですか?』
『勿論です。イーバリス教会に関わる者であれば皆知っています。破壊された神殿と失われた宝、戦乙女ディースの呪い。
但しイーバリス教会の中では呪いではありません。イーバリス教が真実神に祝福された宗教であることの証明だと伝えられています』
『あの神殿襲撃は間違っていたと私たちは思っています。だからこそ私たちの国には【レトビアの荊姫】がいる。
間違いを正したい。正して妹を助けたいんです』
翌日、司祭はイリス達を地下の資料室に案内してくれた。
「まるで冒険小説みたい」
「でしょう? すっごく素敵な司祭様だったし。よく通る穏やかな声でゆっくりと話してくださるの。全てを見通すような青い澄んだ目と大きな手でね、ライルも私もすっかりファンになっちゃった。
だからって訳じゃないんだけど⋯⋯私達⋯⋯結婚しましたー!」
「はっ? 誰⋯⋯と、誰が?」
「ライルとぉ、わ・た・し。これからはお姉様と呼んでも宜しくてよ。ふふっ」
したり顔のイリスを見ながら首を傾けたセアラは話の急展開についていけていない。あと一歩が出なくて見ていてジレジレさせるライルとふわふわ浮かぶ綿毛みたいなイリス⋯⋯。
(確か、司祭様が素敵って話してて⋯⋯)
『イリス、結婚してくれないかな。教会の前で二人で毛布にくるまってた時にさ、なんかこう今だって思ったんだ。ああ、そうかって。
イリスとずっと一緒にいたいけどそれはもう少し先の事で、イリスが友達を作って学園生活を楽しんで⋯⋯それから言おうって思ってたんだけど。
でも、この教会であの司祭様の前で結婚の誓いを交わすのが一番しっくりくるような気がするんだ』
「焦ったい! お兄様らしいけど焦ったいわ」
「でしょう。だからなんか安心しちゃった。私もなんとなくおんなじ事を思ってたしね。ライル、あったかいなぁって。真夜中に毛布一枚だけなのにホワホワって幸せだったのよね」
「そっ、それって凍死しか「けてません!!」」
「全くもう、どうしてセアラってそっち方面だけ疎いのかなぁ。そう言う私もあの時までライルの気持ち気づいてなかったけどね」
「お兄様は昔からイリスの事が大好きだったのよ。私たちが遊んでたら何かしら用事を作り出しては声をかけに来てたでしょう?」
「で、大概悪戯を見つけられちゃう」
「そう。お兄様ってタイミングが悪いの」
「知ってる。ウサギを捕まえたいって言って落とし穴作ってたら落ちるし」
「木に登って鳥の巣を覗こうとしてたら私達の代わりに親鳥に攻撃されるし」
「嫌じゃない? 友達から、えーっと⋯⋯家族になるのってさぁ」
「友達が家族になったんだもの。嬉しいに決まってるじゃない」
翌朝メアリーアンが朝の支度にやって来るとセアラとイリスが二人並んでベッドに寝ていた。
(朝方までお話ししておられたようですし、今日はお休みだと学園に連絡を入れておきましょう)
セアラとイリスが楽しくお喋りを楽しんでいた頃、ライルはくしゃみを繰り返しながらホプキンス家とラーニア家に宛てて手紙を書いていた。
(まずいなあ、気が抜けて風邪を引いたかも)
一日しっかりと休みをとったセアラは学園で授業を受けていた。休学中だったイリスも久しぶりに登校し必死にノートを取り、休学前に仲良くなった友人と一緒に行動している。
『シャーロット達が纏わりついてこなくなったなら一緒に行動しようよ。みんなすっごくいい子ばかりなんだから』
『ありがとう。生徒会の手伝いで忙しいから時間があったらご一緒するね』
『ねえ、なんか隠してるでしょ。お姉様にはお見通しだよ』
イリスはお姉様呼びがいたくお気に召したらしい。
(学園では秘密にしているけど二人になると使ってくるからバレるのは時間の問題かもね)
慰労会の後、護衛付きで寮に戻ったローランドは体調不良を理由に学園を休んでいる。薬の成分分析結果でイヌサフランが検出されたが、今のところ処分は保留にされている。
「前回の毒物混入事件と一緒に処分を決定しようと思うんだけどどうかしら?」
「はい、アリエノール様にお任せいたします」
前回は王宮内で起こり今回は王族が関係している為不問と言うわけにはいかないが、レトビア公爵家の断罪と併せて罪を公にするのが良いのではないかとなった。
「ローランドは1週間寮で反省してもらうわ。その後も行動はしっかりと監視するつもり」
授業と生徒会の仕事で息つく暇もないセアラの元に王妃殿下からお茶会のお誘いが届いた。
で、行ってみたら大正解!」
『遠路はるばるお越しいただいた方にこのような事を申し上げるのは失礼だと思いますが、イーバリス教会にとってベルスペクト王国は今でも敵国なのです。
それに、この教会にある資料は非常に大切な価値ある物なのでお見せすることはできません』
「だからライルと二人で座り込みしたの」
「真冬なのに!?」
「そう。それも狙いだったの。お話しした司祭様はとてもお優しい方だったからこんな寒空の下で寝泊まりさせるなんて可哀想だなって思ってくれるかもって。
案の定一晩たたずに教会に入れてくださったの」
冬の寒空の下、毛布にくるまって震える二人を見かねた司祭は『取り敢えず』と言いながら中に入れてくれた。暖炉の前を勧められた二人は司祭が出してくれた蜂蜜を入れた暖かいミルクを飲みながら質問に答えた。
『何故そこまでしてイーバリス教の歴史を知りたいと思うのですか?』
『私には3つはなれた妹がいます。妹はとある公爵に無理矢理養子にされてしまいました。理由を詳しく話すことはできませんがイーバリス教が関係しているんです』
『もしかして【レトビアの荊姫】ですか?』
『ご存知なんですか?』
『勿論です。イーバリス教会に関わる者であれば皆知っています。破壊された神殿と失われた宝、戦乙女ディースの呪い。
但しイーバリス教会の中では呪いではありません。イーバリス教が真実神に祝福された宗教であることの証明だと伝えられています』
『あの神殿襲撃は間違っていたと私たちは思っています。だからこそ私たちの国には【レトビアの荊姫】がいる。
間違いを正したい。正して妹を助けたいんです』
翌日、司祭はイリス達を地下の資料室に案内してくれた。
「まるで冒険小説みたい」
「でしょう? すっごく素敵な司祭様だったし。よく通る穏やかな声でゆっくりと話してくださるの。全てを見通すような青い澄んだ目と大きな手でね、ライルも私もすっかりファンになっちゃった。
だからって訳じゃないんだけど⋯⋯私達⋯⋯結婚しましたー!」
「はっ? 誰⋯⋯と、誰が?」
「ライルとぉ、わ・た・し。これからはお姉様と呼んでも宜しくてよ。ふふっ」
したり顔のイリスを見ながら首を傾けたセアラは話の急展開についていけていない。あと一歩が出なくて見ていてジレジレさせるライルとふわふわ浮かぶ綿毛みたいなイリス⋯⋯。
(確か、司祭様が素敵って話してて⋯⋯)
『イリス、結婚してくれないかな。教会の前で二人で毛布にくるまってた時にさ、なんかこう今だって思ったんだ。ああ、そうかって。
イリスとずっと一緒にいたいけどそれはもう少し先の事で、イリスが友達を作って学園生活を楽しんで⋯⋯それから言おうって思ってたんだけど。
でも、この教会であの司祭様の前で結婚の誓いを交わすのが一番しっくりくるような気がするんだ』
「焦ったい! お兄様らしいけど焦ったいわ」
「でしょう。だからなんか安心しちゃった。私もなんとなくおんなじ事を思ってたしね。ライル、あったかいなぁって。真夜中に毛布一枚だけなのにホワホワって幸せだったのよね」
「そっ、それって凍死しか「けてません!!」」
「全くもう、どうしてセアラってそっち方面だけ疎いのかなぁ。そう言う私もあの時までライルの気持ち気づいてなかったけどね」
「お兄様は昔からイリスの事が大好きだったのよ。私たちが遊んでたら何かしら用事を作り出しては声をかけに来てたでしょう?」
「で、大概悪戯を見つけられちゃう」
「そう。お兄様ってタイミングが悪いの」
「知ってる。ウサギを捕まえたいって言って落とし穴作ってたら落ちるし」
「木に登って鳥の巣を覗こうとしてたら私達の代わりに親鳥に攻撃されるし」
「嫌じゃない? 友達から、えーっと⋯⋯家族になるのってさぁ」
「友達が家族になったんだもの。嬉しいに決まってるじゃない」
翌朝メアリーアンが朝の支度にやって来るとセアラとイリスが二人並んでベッドに寝ていた。
(朝方までお話ししておられたようですし、今日はお休みだと学園に連絡を入れておきましょう)
セアラとイリスが楽しくお喋りを楽しんでいた頃、ライルはくしゃみを繰り返しながらホプキンス家とラーニア家に宛てて手紙を書いていた。
(まずいなあ、気が抜けて風邪を引いたかも)
一日しっかりと休みをとったセアラは学園で授業を受けていた。休学中だったイリスも久しぶりに登校し必死にノートを取り、休学前に仲良くなった友人と一緒に行動している。
『シャーロット達が纏わりついてこなくなったなら一緒に行動しようよ。みんなすっごくいい子ばかりなんだから』
『ありがとう。生徒会の手伝いで忙しいから時間があったらご一緒するね』
『ねえ、なんか隠してるでしょ。お姉様にはお見通しだよ』
イリスはお姉様呼びがいたくお気に召したらしい。
(学園では秘密にしているけど二人になると使ってくるからバレるのは時間の問題かもね)
慰労会の後、護衛付きで寮に戻ったローランドは体調不良を理由に学園を休んでいる。薬の成分分析結果でイヌサフランが検出されたが、今のところ処分は保留にされている。
「前回の毒物混入事件と一緒に処分を決定しようと思うんだけどどうかしら?」
「はい、アリエノール様にお任せいたします」
前回は王宮内で起こり今回は王族が関係している為不問と言うわけにはいかないが、レトビア公爵家の断罪と併せて罪を公にするのが良いのではないかとなった。
「ローランドは1週間寮で反省してもらうわ。その後も行動はしっかりと監視するつもり」
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