【完結】私なりのヒロイン頑張ってみます。ヒロインが儚げって大きな勘違いですわね

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62.リチャードの作戦と能天気なセアラ

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「ご無沙汰しております。先日の夜会では大変お世話になりましたのにお礼のお手紙も差し上げず失礼致しました。あの時は本当にありがとうございました」

「とても元気そうで安心しました。とても丁寧なお手紙をいただいて日々の暮らしを楽しんでいると知り、わたくしまで楽しい気持ちを感じさせて頂くことが出来ました。
今日は何やら面白そうな趣向があると聞いて出かけてきましたが、セアラ様のそのご様子からすると女神は本当に降臨しそうですね」

「無遠慮に長いお手紙を書いてしまい申し訳ありませんでした。書きたいことが多すぎて何から書いたら良いのか悩んでしまって」

「とても楽しく読ませていただきました。ルーク様とも随分と親しくなられたようで安心致しました」

 マーシャル夫人の言葉でちっとも安心できなくなったリチャード王子がチラチラとセアラの顔を覗き込んだ。

「ルーク⋯⋯いやいやいや、まだ負けてないはず」

 顔を引き攣らせたリチャード王子の独り言が聞こえたマーシャル夫人がにっこりと笑った。

「王子殿下、うかうかしているとセアラは飛んでいってしまうかも。あちこちからお誘いがありますからね。そう言うわたくしも狙っておりますの」


 マーシャル夫人とセアラが話をしているところにマクルーガー辺境伯夫妻がやってきた。

「お久しぶりね。ルークは面倒をかけていないかしら?」

「クラスでも生徒会のお仕事でもとても親切にしてくださるので、助けていただいてばかりです」

「良かったわ。もしかしたらこれをきっかけに帰ってくる気になるかもね。そうなったらマーシャル夫人とセアラのお陰だわ」

「ルークは見た目がアレだし口も悪いが中々の有望株だと思うぞ」

 まるで辺境伯達の声が聞こえたかのようにルークがこちらを見て片眉を上げた。



「リチャード、こちらにいらっしゃったのね」

 空気を読まないアメリアの声が聞こえるとセアラ達の元へ来ようとしていたルークが足を止めてクルッと向きを変えた。

「撤退のタイミングを見間違わないのは騎士の基本だな」

 辺境伯の呟きにディアナ辺境伯夫人が肘鉄を食らわせた。

「リチャード、この後少し宜しいかしら。見ていただきたいものがありますのよ」

 チラリとセアラを見て含み笑いを浮かべたアメリアがリチャードの腕に手をかけた。

「何のことかな?」

「もうお分かりでしょう? 二人の特別な日のために取っておくつもりでしたけど、リチャードが見たがっているみたいだからつけてきましたの」

 アメリアが誇らしげにつけているティアラとブレスレットは秀逸で、加工の難しいプラチナに細かい細工が施されている。ピジョン・ブラッドのルビーをクオリティーの高そうな美しく輝くダイヤモンドが取り囲む魅力溢れる品だった。

(神がイーバリス教会に下賜されたティアラとブレスレット⋯⋯綺麗だわ)



「そう言えばルークとは別のクラスだから接点がないと言ってたね」

「え? ええ、でも」

 今はそれどころじゃなくティアラをつけてきた事に感謝してみんなから賞賛されたいと思っていたアメリアは、意表を突いたリチャード王子の言葉に声を詰まらせた。

「セアラ、少しいいかな? アメリアにルークを紹介してくるから。
すぐに戻ってくるからここにいてくれよ」

「あの、今夜はいいわ。ルークを紹介してくれるのは嬉しいけど、お話ししたがっていたのはわたくしではなく別の令嬢で、今夜はここに来ていないはずだから」

 リチャードが話している『ルークに紹介する令嬢』は同じクラスの生徒だが1週間以上学園を休んでいる。
 その子爵令嬢はアメリアの指示でセアラを突き飛ばした生徒のことで、あの日以来アメリアの元にやってきてはしつこく催促していた。

『アメリア様、まだですか?』
『最近セアラと仲良くなりすぎてます』
『他の令嬢がまた声をかけてました!』

 あまりのしつこさに辟易しはじめたアメリアはお金か宝石でも与えて黙らせようかと思っていたので、授業に出てこなくなったのはラッキーだとさえ思っていた。


「リチャード王子殿下、わたくし是非ルーク様とお話ししてみたいです」

 アメリアの取り巻きの一人でシャーロットやグレイスの近くでもよく見かける令嬢が声を上げた。

 キッと睨んだアメリアに気付いていないようで隣に並んでいる令嬢と頷き合っている。

「じゃあ行こうか。ルークは一年生ながら優勝候補筆頭だからね。声をかけるなら早い方がいいかもしれないよ」

 テキパキと話を纏めてルークの元へアメリアと取り巻き達を連れて行くリチャードの顔は満面の笑みを浮かべていた。


「おやおや、リチャード王子殿下のライバルを追い落とす作戦かな?」

(リチャード王子のライバル? ルークかしら)

「中々考えましたわね」

「どちらに勝利の女神は微笑むのか楽しみですね」

「ルークはとても腕がいいですからリチャード王子殿下もとても気にしておられましたわ。なんでも力技に長けている上に小技も侮れないとか」

「⋯⋯ふむ、所謂⋯⋯そうなのか?」

 意味不明の辺境伯の言葉にキョトンと首を傾げたセアラの横でディアナがくすくすと笑い出し、マーシャル夫人が扇子で口元を隠した。

「人によって得手不得手がありますからね」

 未だに剣技の話だと思っているセアラはマーシャル夫人の言葉に大きく頷いた。

(グレイ様は長期戦が苦手で、タイラー様はグレイ様のようなタイプが苦手だって。リチャード王子やルークはよくわからないわ)




 夜会の終盤で、盛大な拍手と共に各校の選手達がひな壇前に並んだ。

「王太子殿下のお言葉にあったように今年は選手達に祝福を与えるセレモニーを行いたい。選手一同、礼!」

 選手全員が右手を左胸に当てて騎士の礼をした。

「今年のテーマに従って女神による祝福の儀を行う」


 セアラがリチャードのエスコートでひな壇から降りはじめた。緊張したセアラの唇が震えている。

「大丈夫、ただの余興だよ。笑って」

 セアラの耳元で囁くリチャードの様子は、まるで愛を囁いているように見え微笑みを浮かべたセアラは本物の女神のように輝いていた。




「待ちなさい!! 一体全体どういうつもり!?」
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