【完結】私なりのヒロイン頑張ってみます。ヒロインが儚げって大きな勘違いですわね

との

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67.後悔先に立たず

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「ふむ、それではホプキンス伯爵家にはフリューゲルの地を与え侯爵に陞爵する。これよりベネディクトと名乗るが良い」

 大臣達から『おおー!』とやや抗議じみた声が上がった。

 フリューゲルはホプキンス伯爵領の南西に位置する穀倉地帯で現在は王家の直轄領となっている。メリストン山脈から流れる水量豊かな川と肥沃な土地で農業と酪農が盛んなこの地は安定した税収が見込める。

「お待ち下さい。陛下、それは流石に如何なものかと。その者達が調査団に協力したのは事実ではありますが、フリューゲルと言うのは⋯⋯」

「調査が行き詰まっておる時、この者達は口の重かった教会関係者より情報を聞き出した。さらに、極寒の中座り込みをして情報を手に入れた。命をかけた行いに相応しいと思うが?」

「⋯⋯は、仰せの通りかと。ご無礼を致しました」

 陛下に異議を申し立てた大臣が苦々しげな顔で頭を下げた。



「ライル・ベネディクトよ。其方がベネディクト侯爵を継承する時よりフリューゲルを治めよ。見事イリス・ラーニアとの婚約を手にすることが出来たならばその祝いにもなろう。婚約が不調となった場合は⋯⋯そうよのう、共同統治とするが良かろう」

 これからラーニア子爵家に結婚の申込みに行く予定だと陛下に知られている。ライルは喜びで赤らめていた顔をますます真っ赤にさせて、ニヤついたイリスに『頑張れ~』と肘で突かれた。

「有難いお言葉感謝致します」

「其方らの父が長年領地経営に苦しんでいた事は聞いておるがどのような理由であっても子を守るは親の務め。領地に戻り『我が子を守れぬ者に領民が守れるとは思えぬ』と伝えよ」

「はい、必ず申し伝えます」


「伯爵の浅慮な行いと邪な公爵のお陰で優秀な令嬢の協力を得られた事は幸いであったがな」

「勿体無いお言葉感謝致します。妹には苦労ばかりかけてきましたが、これからは一令嬢らしい穏やかな暮らしをさせてやりたいと思っています」


「セアラに穏やかな暮らしはちと、難しいやもしれんな。そうであろう?」

 ニヤリと笑った陛下がチラリとリチャード王子を見ると、真剣な顔でセアラを見つめていたリチャードが小さく頷いてセアラの前までやってきた。

「これより先、リチャード・ベルスペクトはベルスペクト王国とセアラ・ベネディクト侯爵令嬢に忠誠を誓い、この剣を捧げる」

 片膝をついてセアラに剣を捧げたリチャード王子がセアラと目を合わせた。何も知らされていなかった大臣達が小さく悲鳴を上げ、王妃とアリエノールが顔を見合わせて呆れたような顔で肩をすくめた。


 第一希望が農民か商人で、第二希望は貴族家に仕える事と考えていたセアラは突然の騎士の誓いに思わず一歩後ろに下がってしまった。
 誓いの言葉と共に目の前に捧げられた長剣と真剣なリチャードの目。

(ずるいですわ。こんな大勢の前でなんて断れないじゃないですか)

 長剣を両手で受け取りリチャードの右肩に当てる。

「その御心、お聞き届けいたします」

「よっしゃ!」

 立ち上がり満面の笑みを浮かべたリチャードを見ながらアリエノールが苦笑いを浮かべた。

「もう、お兄様⋯⋯さっきまで割と素敵でしたのに。お顔がデレてますわ」

 苦虫を噛み潰したような顔で『くそっ、やられた』と呟いたルークの声は大騒ぎしはじめた者達の声にかき消された。

 数日後、生徒会室で『二番煎じになるのは⋯⋯』とぶつぶつ言っていたルークがウルリカに頭を叩かれた。




「さて、セアラにも褒美を取らせたいが⋯⋯なんなりと申してみよ」

「この度の件は私欲もあってお手伝いさせていただきました。感謝することはいくつも思いつきますが褒美を頂くような事をしたとは思っておりません」

「では、王妃とアリエノール王女に任せよう。二人ならば余の気持ちを汲みセアラの働きに相応しい褒美を思いつくであろう」

「承知いたしました。セアラの知恵と努力と献身に見合う礼を考えましょう」

 王妃の満面の微笑みに背筋を凍らせたセアラだった。

(アリエノール様の笑顔と一緒で、とんでもなく嫌な予感がする。適当なお願いをしておけば良かったかも)

 後悔先に立たず⋯⋯。


 その後ルーク達に陛下からのお言葉があり褒賞が授与された。





 謁見室を出た後、緊張をほぐす間も無く王妃のお茶会の時と同じコンサバトリーに呼ばれたセアラ達三人は、王家一家・ルーク・辺境伯と言う総勢11名でテーブルを囲んでいた。

「疲れた?」

 セアラを最も緊張させた元凶リチャードが隣の席から顔を覗き込んできた。

「思い当たる節がおありなのでしたらお聞きになられない方が賢明かと存じます」

「セアラの言う通りだわ。不意打ちなんて可哀想だと言いましたのに、陛下まで手を貸してしまわれるなんて可哀想ですわ」

「仕方ないだろ? 他の時だと断られるに決まってるんだから」

「良いではないか。優秀な人材を王家に繋ぎ止めるには一番の方法であったし、セアラならばリチャードを更生させることができるやもしれん」

「遅れを取り戻すには手段を選んではいられないからね」

 陛下とリチャード王子が途轍もなく悪辣な顔で笑うのを横目に見ながら『もしかしてリチャードは負けそうなの?』とアリエノールの耳元で囁いた王太子がチラッとルークに目線を送った。


「王女が私費で出した支援金であるが余の資産で肩代わりしようと思うておる。其方の屋敷にある美術品を支援金と同等額で購入するのでな、帰り次第手続きをはじめよ。
それらを並べ美術館でも作るとするかのう」

「我が家の美術品はガラクタばかりで全てを売り払ってもパンひとつの値段にもなりません。それどころか処分代を払えと言われるような物ばかりでございます故」

「構わぬ。【国を救ったガラクタ】であるからのう。最も大切なのが何であるかを知る縁として代々受け継いでも良かろう」

「我が家の恥が代々⋯⋯それはあまりにも⋯⋯笑えない冗談でございます故ご勘弁のほど」

 セアラが青褪めながら答えた横でライルが頭を抱えた。




「話は変わるのだけど、セアラに帝国とイーバリス教会への使節団に加わってもらえないかと思ってるの」

 セアラ達が実家に放置されている美術品擬きを思い出しているとありがたい事にアリエノールが別の話をふってくれた。

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