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91.探知機能付きの⋯⋯女優
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「あの、メアリーアンはどこ?」
イーサンが怒りをラーセンにぶつけていた時からセアラはメアリーアンをそれとなく探していた。
メアリーアンはイーサンと同じくらい怒りや悲しみを感じているのだろうと思い心配でたまらなかった。
「えーっと、そう言えば大分前から見かけてない気がする。ラーセン司祭様がいらっしゃった頃かも?」
(誰にも何も言わずメアリーアンがいなくなるなんて何かあったのかしら)
不安に駆られたセアラが外へ探しに出ようとした時、アリエノールの声が聞こえた。
「そう言えばウルリカもいないわ。どこに行ったのかしら?」
(ウルリカ様がいない?)
セアラの背中を冷や汗が伝い落ちた。メアリーアンなら何かしらの任務や独自の調査などで場を離れることもあるだろうし、何かあっても問題ないほど腕が立つ。
(でも、ウルリカ様は⋯⋯アリエノール様に何も言わずいなくなるなんて有り得ない!)
「⋯⋯急いで探さなくちゃ。でも一体誰が」
(ウルリカ様が名指しで招待されたことに不安を感じてたくせに⋯⋯)
「もしかしてメアリーアンはウルリカ様を追いかけたとか探しに行ったとかかしら?」
心配して外に出ようとしたセアラの元にルーク達が集まってきた。
頭脳明晰で既に独自の諜報部隊も持っているウルリカ・ルクセル侯爵令嬢。どうか無事でいて欲しいと願いながらルークと共に神殿を出ようとした時イーサンがセアラの腕に手をかけた。
「⋯⋯あー⋯⋯うぅっと」
話しにくそうに口籠るイーサンはメアリーアンの武術の弟子だと言っていた。
「もしかして何か知ってるの?」
「⋯⋯セアラ様は⋯⋯もし、二人が争っていたらどっちを助ける?」
「どう言う意味?」
「メアリーアンは侯爵令嬢だけどアリエノール様から借りてる使用人ですよね。
ウルリカ様のお父様はメアリーアンのとこと同じ侯爵と言っても内務大臣で、お祖父様は現侍従長。本業は王家の下での情報収集や情報操作と王家の影の管理育成をしてる。
いずれはセアラ様と仕事をしたいって勧誘もされてる」
流石イーサン、驚くほど詳しい情報を持っている。
「だから、何が言いたいの?」
「どっちを助ける? どちらかしか選べないからね、どっちを助けるの?」
「そんなの決まってる。両方とも助けるわ!」
「だーかーらー」
「詭弁だろうと綺麗事だろうと構わない。両方好きだから両方助けるのよ!」
「それは無理だってば。そんなことを言うなら好きにしたらいいさ。俺はメアリーアンの味方だから」
「それも構わないわ。イリス!」
「どーした?」
「最後にメアリーアンにあったのはリチャード殿下達が戦い始める前だった? 後だった?」
「えーっと、戦いのすぐ後に声かけてもらったわ。私結構前の方にいたから『ここは危ないから』って後ろに下がるように言ってくれた」
「ならウルリカ様は大丈夫。メアリーアンを先に探したほうがいいわね。メアリーアンはこの国で生まれたわけじゃない⋯⋯行くとしたらどこかしら?」
「何でウルリカ様は大丈夫だって思うの?」
イーサンが不思議そうに首を傾げた。
「メアリーアンが何をするつもりでもウルリカ様はとりあえず生きてるってわかったからよ。戦いがはじまった時メアリーアンはまだここにいたのよ。彼女が直ぐにウルリカ様に手をかけるつもりならその場でサクッとできたはず。わざわざ連れ出す必要なんてないでしょう?」
「流石、マーシャル夫人が惚れ込むはずだね。咄嗟にそこまで気づくなんて」
「いいえ、ただの大間抜けよ。こんなことになるまで気づかなかったなんて。ルーク、この近くで人を監禁しやすい場所を調べて。私は⋯⋯」
(王都の商店街かしら)
「ちょっと待てよ、別行動はまずい」
「そうだわ、旧神殿の宝物庫は? あそこに閉じ込められたらあっという間に息ができなくなるかも」
「調べてくる、でもお前は勝手に行動したらダメだからな! イリス、セアラを捕まえといてくれ!」
「えーっ、無理だよー!」
走り出したルークの後ろ姿を見送りながらイリスに『ちょっと行ってくる』と言って歩きはじめたセアラ。その横に並んだイーサンは『俺も行く』と言いながら何故か楽しそうに見えた。
「いいわ、その代わり少しでも邪魔したら我が家のお宝を押し付けるからね」
セアラはドレスの裾を絡げ小走りになりながらイーサンに言い放った。
「お宝?」
「ええ、焦げたパンより値段のつかない美術品を部屋に一杯送り届けるから!」
待機していた馬車を見つけたが御者は噂話に夢中でセアラ達に気付いてくれない。
「あの⋯⋯直ぐに商店街に行って買ってこいって王子殿下に無茶を言われてしまって困っていますの。もし言い付け通りにできなかったらどうすればいいのか⋯⋯どなたか王都の商店街までお願いできませんでしょうか?」
ウルウルと目を潤ませて儚げな様子で見上げるセアラを見た御者はすぐに馬車に飛び乗り、警笛を鳴らしながら猛スピードで走り出した。
「セアラ様⋯⋯女ってやっぱ怖えな」
王都の商店街に何かあると知っているわけではないが⋯⋯。
「どうして王都の商店街に?」
「メアリーアンが来るのを嫌がった気がしたから」
セアラが王都見学に誘った時メアリーアンは『私は王都はちょっと⋯⋯』と言って断った。理由は聞いてないがその時のメアリーアンの表情が固かった気がした。
「たったそれだけ?」
「ええ、それだけ。ほとんど野生の勘かも⋯⋯でも、子供の頃からコレが結構役に立ってきたのよ。ただの呑気な伯爵令嬢じゃなかったから、探知機能が装備されてるの。
今回もそれが働いてくれるといいんだけど」
こっそり美術品を買いに出かけようとする祖父に気付いたり、近くに来た悪徳業者を見つけたり⋯⋯。
「メアリーアン⋯⋯無事でいて」
「彼女に怪我をさせられる人なんていない」
「怪我の心配じゃないわ」
メアリーアンが何を考え何をしているのか⋯⋯一人ぼっちでいるのかもと思ったらいても立ってもいられなかった。誰かと一緒にいて笑い合えているならそれでいい。
「私がそばに行っても役には立たないかも⋯⋯だけど、私がそばにいてあげたいって思うから勝手に探すの」
(メアリーアン・グロスタール侯爵令嬢。何ヶ月も一緒にいたのに名前以外何も知らないんだわ。優しくてよく気のつく女性で武術の達人で)
「お嬢さん、着いたよ。買い物が終わるまで待っていてあげるよ」
「いいえ、そこまで我慢は言えないわ。帰りは何とかするから大丈夫。どうもありがとう」
御者に手を振りながら駆け出したセアラをイーサンが追いかける。
セアラは店の前に立つ店員や花売りなどに片っ端から声をかけていった。
「アッシュブラウンの髪を緩くアップにして紫の瞳がすごく綺麗なの。背はこのくらいで⋯⋯スタイルが凄くいいから目立つと思うわ。黒いエプロンドレスを着てたけど多分地味めのローブを羽織ってたかも」
何人か目でそれらしい人の情報を手に入れた。
「川? 大通りの北にある川沿いの店ね。ありがとう、行ってみるわ」
再び走り出したセアラは目標の店の前で大きく息を吸ってほつれた髪を一纏めにし、身だしなみを整えはじめた。
「何してるの?」
「メアリーアンがいた時の為よ」
サムズアップしたセアラは落ち着き払った様子で店のドアを開けた。川沿いにあるその店はテーブル席が4つとカウンターがあるだけの小さなカフェだった。
「お邪魔してもいいかしら?」
「セアラ様、どうしてここに!? イーサン、あんたが裏切るとは思わなかったわ」
イーサンが怒りをラーセンにぶつけていた時からセアラはメアリーアンをそれとなく探していた。
メアリーアンはイーサンと同じくらい怒りや悲しみを感じているのだろうと思い心配でたまらなかった。
「えーっと、そう言えば大分前から見かけてない気がする。ラーセン司祭様がいらっしゃった頃かも?」
(誰にも何も言わずメアリーアンがいなくなるなんて何かあったのかしら)
不安に駆られたセアラが外へ探しに出ようとした時、アリエノールの声が聞こえた。
「そう言えばウルリカもいないわ。どこに行ったのかしら?」
(ウルリカ様がいない?)
セアラの背中を冷や汗が伝い落ちた。メアリーアンなら何かしらの任務や独自の調査などで場を離れることもあるだろうし、何かあっても問題ないほど腕が立つ。
(でも、ウルリカ様は⋯⋯アリエノール様に何も言わずいなくなるなんて有り得ない!)
「⋯⋯急いで探さなくちゃ。でも一体誰が」
(ウルリカ様が名指しで招待されたことに不安を感じてたくせに⋯⋯)
「もしかしてメアリーアンはウルリカ様を追いかけたとか探しに行ったとかかしら?」
心配して外に出ようとしたセアラの元にルーク達が集まってきた。
頭脳明晰で既に独自の諜報部隊も持っているウルリカ・ルクセル侯爵令嬢。どうか無事でいて欲しいと願いながらルークと共に神殿を出ようとした時イーサンがセアラの腕に手をかけた。
「⋯⋯あー⋯⋯うぅっと」
話しにくそうに口籠るイーサンはメアリーアンの武術の弟子だと言っていた。
「もしかして何か知ってるの?」
「⋯⋯セアラ様は⋯⋯もし、二人が争っていたらどっちを助ける?」
「どう言う意味?」
「メアリーアンは侯爵令嬢だけどアリエノール様から借りてる使用人ですよね。
ウルリカ様のお父様はメアリーアンのとこと同じ侯爵と言っても内務大臣で、お祖父様は現侍従長。本業は王家の下での情報収集や情報操作と王家の影の管理育成をしてる。
いずれはセアラ様と仕事をしたいって勧誘もされてる」
流石イーサン、驚くほど詳しい情報を持っている。
「だから、何が言いたいの?」
「どっちを助ける? どちらかしか選べないからね、どっちを助けるの?」
「そんなの決まってる。両方とも助けるわ!」
「だーかーらー」
「詭弁だろうと綺麗事だろうと構わない。両方好きだから両方助けるのよ!」
「それは無理だってば。そんなことを言うなら好きにしたらいいさ。俺はメアリーアンの味方だから」
「それも構わないわ。イリス!」
「どーした?」
「最後にメアリーアンにあったのはリチャード殿下達が戦い始める前だった? 後だった?」
「えーっと、戦いのすぐ後に声かけてもらったわ。私結構前の方にいたから『ここは危ないから』って後ろに下がるように言ってくれた」
「ならウルリカ様は大丈夫。メアリーアンを先に探したほうがいいわね。メアリーアンはこの国で生まれたわけじゃない⋯⋯行くとしたらどこかしら?」
「何でウルリカ様は大丈夫だって思うの?」
イーサンが不思議そうに首を傾げた。
「メアリーアンが何をするつもりでもウルリカ様はとりあえず生きてるってわかったからよ。戦いがはじまった時メアリーアンはまだここにいたのよ。彼女が直ぐにウルリカ様に手をかけるつもりならその場でサクッとできたはず。わざわざ連れ出す必要なんてないでしょう?」
「流石、マーシャル夫人が惚れ込むはずだね。咄嗟にそこまで気づくなんて」
「いいえ、ただの大間抜けよ。こんなことになるまで気づかなかったなんて。ルーク、この近くで人を監禁しやすい場所を調べて。私は⋯⋯」
(王都の商店街かしら)
「ちょっと待てよ、別行動はまずい」
「そうだわ、旧神殿の宝物庫は? あそこに閉じ込められたらあっという間に息ができなくなるかも」
「調べてくる、でもお前は勝手に行動したらダメだからな! イリス、セアラを捕まえといてくれ!」
「えーっ、無理だよー!」
走り出したルークの後ろ姿を見送りながらイリスに『ちょっと行ってくる』と言って歩きはじめたセアラ。その横に並んだイーサンは『俺も行く』と言いながら何故か楽しそうに見えた。
「いいわ、その代わり少しでも邪魔したら我が家のお宝を押し付けるからね」
セアラはドレスの裾を絡げ小走りになりながらイーサンに言い放った。
「お宝?」
「ええ、焦げたパンより値段のつかない美術品を部屋に一杯送り届けるから!」
待機していた馬車を見つけたが御者は噂話に夢中でセアラ達に気付いてくれない。
「あの⋯⋯直ぐに商店街に行って買ってこいって王子殿下に無茶を言われてしまって困っていますの。もし言い付け通りにできなかったらどうすればいいのか⋯⋯どなたか王都の商店街までお願いできませんでしょうか?」
ウルウルと目を潤ませて儚げな様子で見上げるセアラを見た御者はすぐに馬車に飛び乗り、警笛を鳴らしながら猛スピードで走り出した。
「セアラ様⋯⋯女ってやっぱ怖えな」
王都の商店街に何かあると知っているわけではないが⋯⋯。
「どうして王都の商店街に?」
「メアリーアンが来るのを嫌がった気がしたから」
セアラが王都見学に誘った時メアリーアンは『私は王都はちょっと⋯⋯』と言って断った。理由は聞いてないがその時のメアリーアンの表情が固かった気がした。
「たったそれだけ?」
「ええ、それだけ。ほとんど野生の勘かも⋯⋯でも、子供の頃からコレが結構役に立ってきたのよ。ただの呑気な伯爵令嬢じゃなかったから、探知機能が装備されてるの。
今回もそれが働いてくれるといいんだけど」
こっそり美術品を買いに出かけようとする祖父に気付いたり、近くに来た悪徳業者を見つけたり⋯⋯。
「メアリーアン⋯⋯無事でいて」
「彼女に怪我をさせられる人なんていない」
「怪我の心配じゃないわ」
メアリーアンが何を考え何をしているのか⋯⋯一人ぼっちでいるのかもと思ったらいても立ってもいられなかった。誰かと一緒にいて笑い合えているならそれでいい。
「私がそばに行っても役には立たないかも⋯⋯だけど、私がそばにいてあげたいって思うから勝手に探すの」
(メアリーアン・グロスタール侯爵令嬢。何ヶ月も一緒にいたのに名前以外何も知らないんだわ。優しくてよく気のつく女性で武術の達人で)
「お嬢さん、着いたよ。買い物が終わるまで待っていてあげるよ」
「いいえ、そこまで我慢は言えないわ。帰りは何とかするから大丈夫。どうもありがとう」
御者に手を振りながら駆け出したセアラをイーサンが追いかける。
セアラは店の前に立つ店員や花売りなどに片っ端から声をかけていった。
「アッシュブラウンの髪を緩くアップにして紫の瞳がすごく綺麗なの。背はこのくらいで⋯⋯スタイルが凄くいいから目立つと思うわ。黒いエプロンドレスを着てたけど多分地味めのローブを羽織ってたかも」
何人か目でそれらしい人の情報を手に入れた。
「川? 大通りの北にある川沿いの店ね。ありがとう、行ってみるわ」
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