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16.ランブリュー夫人とタウンハウス
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その当時は学生が教師を雇い給料を支払うパターンと教会が教師に給料を支払うパターンがあり、前者は学生が後者は教会が運営の全てを統括していた。
「世界で最初の校則は学生ギルドが教師に向けて作った、
・学生ギルドに無断で授業を休まない
・学生ギルドに無断で都市からでない
って言うものだったの。
その他にも盗みや殺人をしても身体刑は行わないよう保護されてたから学生はやりたい放題だったって」
「そのせいで『悪い成績をつけた教師を殺してはならない』なんて決まりを作ったギルドもあったわ」
「むっ昔の学生は凄かったんですね。想像もつきません」
「ええ、権力を持つと言うのは一歩間違うととても恐ろしい事だと言う証明ね。
今から伺うのはわたくしのお友達のランブリュー侯爵夫人のタウンハウスなのだけど、この方は広い教養と深い科学や哲学の知識をお持ちなのに謙虚でとても素晴らしい方なの」
「では、サロンの主催者をされてるのですか?」
「ええ、サロニカでも有名なサロンだって聞いているわ」
アリシアとマイラから色々な話を教えてもらっているうちに馬車は貴族街を抜け瀟洒な屋敷の前に停まった。
目の前のタウンハウスは歩道と玄関をつなぐ階段とテラスが設けられ、タウンハウスのファサードは隣に並ぶタウンハウスと連続してひとつの壁面を作っていた。
「サロニカ王国はとても小さな国だから土地を有効活用する為に多くの貴族のタウンハウスはこんな風な作りになってるの。
エリーはこういうの初めて見たでしょう?」
奥行きの深い建物で1階部分が歩道より高くなっており全ての窓から通りを眺められるようになっている。
地階に石炭倉庫や台所と召使いの部屋があり1階にはホールや居間と食堂、2階に客間や応接間。3階以上には寝室がある。
数段ある階段を登りながら階段の横を覗くと半地下のような不思議な空間があった。
「歩道と建物の間のその空間はドライエリアと言って端にある階段を降りると地階の倉庫なんかに直接入ることができるようになってるの。
馬車は敷地の裏のミューズと呼ばれる馬車の通る道を通ってその道沿いにある馬小屋に停めるの」
テラスに着くとノッカーを叩く間も無く中からドアが開かれアリシアが名刺を渡した。
「ランブリュー夫人はご在宅かしら? わたくしはアリシア・コーンウォリスです」
「お待ちしておりました。ご案内致します」
エリー達が2階にある応接間に案内された直後にランブリュー夫人が現れた。
「お待ちしておりましたの。ようこそサロニカへ、こちらが噂のお嬢さんね」
紅茶とお茶菓子を前にアリシアとマイラはランブリュー侯爵夫人と旧交を温めている。
(凄いサロンの主催者の方だなんて緊張する)
30分程度で暇乞いをしてランブリュー夫人が手配してくれていたタウンハウスに向かった。
「暫くの間ここが私達の家になるの。荷物は先に送っておいたんだけど足りない物を準備しなくちゃね、と言うことでまずはエリーの部屋を見に行きましょう」
マイラがエリーの手を引きながら張り切って階段を登って行く後ろからアリシアがゆっくりと登ってくる。
「わたくしは疲れたから部屋で休むとしましょう。後のことはお願いね」
「はい、エリーのドレスが急ぎだと思うからもしかしたら出かけるかも」
マイラの言葉を聞いたアリシアが苦笑いを浮かべた。
「何日も馬車に揺られた後ではわたくしは使い物にならないからマイラがいてくれて助かったわ」
エリーの部屋には規則的な模様の描かれた生成り色の壁紙が貼られ一揃いのオークの家具と天蓋付きのベッドが置かれていた。
「これは壁紙ですか?」
「ええ、壁紙は木綿の屑を素材にして版木刷りで模様を印刷するの。最近はずいぶん種類も増えてきたからリューゼルのお部屋にも貼ったのよ」
エリーはサロニカ王国に来てから初めて見たり聞いたりすることが一杯ありこれからの毎日がますます楽しみになってきた。
「家を出て大正解。シリルさんの所やサロニカで新しいものをたくさん知れて毎日がとても楽しいの」
満面の笑顔で抱きついてきたエリーを抱き返したマイラは背中をトントンと叩きエリーの顔を覗き込んだ。
「じゃあクローゼットの中を確認して明日からの作戦を立てましょう。時間があったら家の中を探検するかドレスを見立てに行くか・・」
「行きたいです。地階の探検もしてみたいしさっき教えて頂いたミューズも見てみたいし」
「あら、ドレスには興味ないのかしら?」
マイラが悪戯っぽい顔でエリーを揶揄う。
「それは・・もう、叔母様意地悪」
赤い顔をしたエリーとマイラはクローゼットの捜索を開始した。
「世界で最初の校則は学生ギルドが教師に向けて作った、
・学生ギルドに無断で授業を休まない
・学生ギルドに無断で都市からでない
って言うものだったの。
その他にも盗みや殺人をしても身体刑は行わないよう保護されてたから学生はやりたい放題だったって」
「そのせいで『悪い成績をつけた教師を殺してはならない』なんて決まりを作ったギルドもあったわ」
「むっ昔の学生は凄かったんですね。想像もつきません」
「ええ、権力を持つと言うのは一歩間違うととても恐ろしい事だと言う証明ね。
今から伺うのはわたくしのお友達のランブリュー侯爵夫人のタウンハウスなのだけど、この方は広い教養と深い科学や哲学の知識をお持ちなのに謙虚でとても素晴らしい方なの」
「では、サロンの主催者をされてるのですか?」
「ええ、サロニカでも有名なサロンだって聞いているわ」
アリシアとマイラから色々な話を教えてもらっているうちに馬車は貴族街を抜け瀟洒な屋敷の前に停まった。
目の前のタウンハウスは歩道と玄関をつなぐ階段とテラスが設けられ、タウンハウスのファサードは隣に並ぶタウンハウスと連続してひとつの壁面を作っていた。
「サロニカ王国はとても小さな国だから土地を有効活用する為に多くの貴族のタウンハウスはこんな風な作りになってるの。
エリーはこういうの初めて見たでしょう?」
奥行きの深い建物で1階部分が歩道より高くなっており全ての窓から通りを眺められるようになっている。
地階に石炭倉庫や台所と召使いの部屋があり1階にはホールや居間と食堂、2階に客間や応接間。3階以上には寝室がある。
数段ある階段を登りながら階段の横を覗くと半地下のような不思議な空間があった。
「歩道と建物の間のその空間はドライエリアと言って端にある階段を降りると地階の倉庫なんかに直接入ることができるようになってるの。
馬車は敷地の裏のミューズと呼ばれる馬車の通る道を通ってその道沿いにある馬小屋に停めるの」
テラスに着くとノッカーを叩く間も無く中からドアが開かれアリシアが名刺を渡した。
「ランブリュー夫人はご在宅かしら? わたくしはアリシア・コーンウォリスです」
「お待ちしておりました。ご案内致します」
エリー達が2階にある応接間に案内された直後にランブリュー夫人が現れた。
「お待ちしておりましたの。ようこそサロニカへ、こちらが噂のお嬢さんね」
紅茶とお茶菓子を前にアリシアとマイラはランブリュー侯爵夫人と旧交を温めている。
(凄いサロンの主催者の方だなんて緊張する)
30分程度で暇乞いをしてランブリュー夫人が手配してくれていたタウンハウスに向かった。
「暫くの間ここが私達の家になるの。荷物は先に送っておいたんだけど足りない物を準備しなくちゃね、と言うことでまずはエリーの部屋を見に行きましょう」
マイラがエリーの手を引きながら張り切って階段を登って行く後ろからアリシアがゆっくりと登ってくる。
「わたくしは疲れたから部屋で休むとしましょう。後のことはお願いね」
「はい、エリーのドレスが急ぎだと思うからもしかしたら出かけるかも」
マイラの言葉を聞いたアリシアが苦笑いを浮かべた。
「何日も馬車に揺られた後ではわたくしは使い物にならないからマイラがいてくれて助かったわ」
エリーの部屋には規則的な模様の描かれた生成り色の壁紙が貼られ一揃いのオークの家具と天蓋付きのベッドが置かれていた。
「これは壁紙ですか?」
「ええ、壁紙は木綿の屑を素材にして版木刷りで模様を印刷するの。最近はずいぶん種類も増えてきたからリューゼルのお部屋にも貼ったのよ」
エリーはサロニカ王国に来てから初めて見たり聞いたりすることが一杯ありこれからの毎日がますます楽しみになってきた。
「家を出て大正解。シリルさんの所やサロニカで新しいものをたくさん知れて毎日がとても楽しいの」
満面の笑顔で抱きついてきたエリーを抱き返したマイラは背中をトントンと叩きエリーの顔を覗き込んだ。
「じゃあクローゼットの中を確認して明日からの作戦を立てましょう。時間があったら家の中を探検するかドレスを見立てに行くか・・」
「行きたいです。地階の探検もしてみたいしさっき教えて頂いたミューズも見てみたいし」
「あら、ドレスには興味ないのかしら?」
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「それは・・もう、叔母様意地悪」
赤い顔をしたエリーとマイラはクローゼットの捜索を開始した。
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☆読者様の御親切に心から感謝申し上げます。本当にありがとうございます。
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