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2.赤の間の記憶
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王城の赤の間に入ると国王陛下と並んで王太子殿下がソファーに座っており、その後ろには側近候補の3人が並んで立っていた。
陛下と王太子殿下の前には眉間に皺を寄せたロクサーナの父と俯き加減で肩を震わせている義母が座っていた。
初めて入った赤の間には明かり取りの窓さえないらしく淀んだ空気に独特な臭いがしていた。
石壁には赤いカーテンがかけられており床にもやはり赤い絨毯が敷かれている。
ソファの色だけが黒い皮で出来ているのがますます部屋を禍々しく見せていた。
壁際には4人の護衛が並んでおり、背丈ほどもありそうなツーハンドソードを背負っている。
「ロクサーナ・モートン、貴様の罪は明白。膝をつき許しを乞うなら温情をかけてやろう」
ソファから立ち上がったリチャードがロクサーナを蔑むような冷たい目で宣言した。
「わたくしの罪とは何の事を仰っておられるのかわかりかねます」
リチャードの側近の一人、宰相の息子であるアーノルドが一歩前に出て来て、大粒のエメラルドとダイヤが飾られた豪華なティアラを差し出した。
「これに見覚えは?」
「ございません」
もう一人の側近、騎士団長の次男ロジャーが前に出て来て右手を前に差し出した。
「これに見覚えは?」
「ございます。去年の暮れに王妃様より頂いたネックレスでございます」
(ステラに取り上げられましたけど)
リチャードは組んでいた腕をほどきティアラとネックレスを指差しながら言った。
「貴様の部屋からこのティアラが出てきた。そして宝物庫にこのネックレスが落ちていた。
どう言う意味かわかるな」
「いいえ、わかりません」
リチャードがわざとらしく大きなため息をついた。
「貴様の手癖の悪さはよくわかっていたが宝物庫にまで侵入するとは。
このティアラは王妃が婚姻の際隣国よりお持ちになられた物。
そのような大切な物を盗むなど」
「陛下、そして王太子殿下。
大変申し訳ありませんでした。このような大それた行いをする前に修道院に入れておくべきでした」
普段殆ど顔さえ見た事のない父親が頭を下げている。
「全く、この子の手癖の悪さには散々泣かされて参りました。
姉のステラは心優しい娘ですから何度悲しい思いをさせたか数え切れませんの」
メリッサはハンカチを口に当て涙を浮かべている。
「其方は王妃にあれほど可愛がられていたと言うのに、此度のことは許し難い。
この場で極刑を申しつける」
重々しい国王の最終通告に、壁際の護衛がロクサーナを無理矢理跪かせ肩と両手を掴んだ。
ロクサーナはしっかりと顔を上げ部屋にいる7人の顔を見た。
冷たく見据えているのは国王と父親、口元を歪めて嘲笑っているのはリチャードと側近の3人。
扇子の陰から嬉しそうに目をぎらつかせているのが義母。
大司教の養子で既に叙階を受け助祭の資格を持つサミュエルが、聖書とロザリオを手に前に出てきた。
「君の罪が許される事を心から祈っているよ」
(この人達にだけは祈って欲しくないわ)
護衛がツーハンドソードをロクサーナの目前に翳した。
ランプの光にキラリと赤く光った剣を見つめ、
(綺麗・・ああ、だからこの部屋は赤かったのね)
と思ったのがロクサーナの最後の記憶だった。
陛下と王太子殿下の前には眉間に皺を寄せたロクサーナの父と俯き加減で肩を震わせている義母が座っていた。
初めて入った赤の間には明かり取りの窓さえないらしく淀んだ空気に独特な臭いがしていた。
石壁には赤いカーテンがかけられており床にもやはり赤い絨毯が敷かれている。
ソファの色だけが黒い皮で出来ているのがますます部屋を禍々しく見せていた。
壁際には4人の護衛が並んでおり、背丈ほどもありそうなツーハンドソードを背負っている。
「ロクサーナ・モートン、貴様の罪は明白。膝をつき許しを乞うなら温情をかけてやろう」
ソファから立ち上がったリチャードがロクサーナを蔑むような冷たい目で宣言した。
「わたくしの罪とは何の事を仰っておられるのかわかりかねます」
リチャードの側近の一人、宰相の息子であるアーノルドが一歩前に出て来て、大粒のエメラルドとダイヤが飾られた豪華なティアラを差し出した。
「これに見覚えは?」
「ございません」
もう一人の側近、騎士団長の次男ロジャーが前に出て来て右手を前に差し出した。
「これに見覚えは?」
「ございます。去年の暮れに王妃様より頂いたネックレスでございます」
(ステラに取り上げられましたけど)
リチャードは組んでいた腕をほどきティアラとネックレスを指差しながら言った。
「貴様の部屋からこのティアラが出てきた。そして宝物庫にこのネックレスが落ちていた。
どう言う意味かわかるな」
「いいえ、わかりません」
リチャードがわざとらしく大きなため息をついた。
「貴様の手癖の悪さはよくわかっていたが宝物庫にまで侵入するとは。
このティアラは王妃が婚姻の際隣国よりお持ちになられた物。
そのような大切な物を盗むなど」
「陛下、そして王太子殿下。
大変申し訳ありませんでした。このような大それた行いをする前に修道院に入れておくべきでした」
普段殆ど顔さえ見た事のない父親が頭を下げている。
「全く、この子の手癖の悪さには散々泣かされて参りました。
姉のステラは心優しい娘ですから何度悲しい思いをさせたか数え切れませんの」
メリッサはハンカチを口に当て涙を浮かべている。
「其方は王妃にあれほど可愛がられていたと言うのに、此度のことは許し難い。
この場で極刑を申しつける」
重々しい国王の最終通告に、壁際の護衛がロクサーナを無理矢理跪かせ肩と両手を掴んだ。
ロクサーナはしっかりと顔を上げ部屋にいる7人の顔を見た。
冷たく見据えているのは国王と父親、口元を歪めて嘲笑っているのはリチャードと側近の3人。
扇子の陰から嬉しそうに目をぎらつかせているのが義母。
大司教の養子で既に叙階を受け助祭の資格を持つサミュエルが、聖書とロザリオを手に前に出てきた。
「君の罪が許される事を心から祈っているよ」
(この人達にだけは祈って欲しくないわ)
護衛がツーハンドソードをロクサーナの目前に翳した。
ランプの光にキラリと赤く光った剣を見つめ、
(綺麗・・ああ、だからこの部屋は赤かったのね)
と思ったのがロクサーナの最後の記憶だった。
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