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7.しょうがないよね
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「痒い! 誰か、誰かーー」
「お母様! 助けて、痒いよお」
慌てて走って来たメイドや執事は二人の手や顔を見て慌てて叫んだ。
「早く、医者を!」
王妃とメリッサが来た頃にはリチャードの右手とステラの左頬は真っ赤に腫れ上がっていた。しかもステラの頬にはくっきりと指の跡が。
一人ポツンと離れたところにいたロクサーナは、
(仕方なかったの、だって池に落とされるのは嫌だったんだもん)
旧ロクサーナは二人に池に落とされて溺れかけた挙句、濡れたまま帰宅させられて一週間高熱を出して寝込んだのだから。
(あの時二人は大笑いしてたけど、それは我慢してあげる)
リチャードとステラが治療に連れて行かれメリッサはその後をついて行った。
ステラの治療が終わるのを一人客間で待っていた時、ドアが開きチャールズが入ってきた。
「何があったんだ? ステラがどうとか」
「さあ、王子でんかの手が赤くなっていてお姉さまのほほに赤いゆびのあとがあったことしか知りません」
ロクサーナは可愛く首を傾げておいた。
「しかし、何故ステラがここに来ていたんだ。
しかもお前のその下品なドレスはなんだ?」
チャールズが顔を顰めたのでロクサーナは両手を胸の前で握りしめてわざとらしくチャールズを見上げた。
「まあ、お父さま! そんなひどいことをおっしゃるなんて、お義母さまがかわいそうですわ。一日中したてやさんとへやにこもってがんばっておられたのに」
「えっ、ああそうか。そうだな」
「はい。おかあさまのせんたくをひなんするなんて」
ロクサーナは大袈裟に溜息を吐いて悲しそうな顔をした。
「・・一日中部屋に籠って?」
「はい、トニーさんはしごとねっしんなかたですから、いっしょに2人でししつに」
「・・」
チャールズが(ロクサーナの予想通り)思い悩んでいるとドアが開きメリッサと頬に大きな布を貼ったステラが入ってきた。
四阿に行く途中、ハゼの木の樹液を染み込ませた麻の布でステラの髪飾りをそっと撫でたロクサーナ。
旧ロクサーナの記憶には、「綺麗だね」と言ってリチャードがステラの髪飾りに触れたシーンがあったので、リチャードの手がちょっぴり痒くなればと思ったのだが・・。
(まさか顔にまで触ったとは思わなかったのよね。どうか痕になりませんように)
4人で馬車に乗り屋敷に戻ってきたが、馬車を降りた時チャールズが3人に声をかけた。
「聞きたいことがある。執務室に来なさい」
執務室に入ると開口一番メリッサが噛み付いた。
「旦那様、王宮でこんな事になるなんてキチンと責任を取って頂いて下さいね。
ステラは女の子なのに顔にこんな・・」
「どう言う状況だったのか話しなさい。何故ステラの顔に指の痕がついた?」
「えっ、ゆっ指の痕だなんてとんでもない。赤いだけですわ」
「見せなさい」
「・・」
ステラは項垂れてメリッサの陰に隠れた。
「殿下の指の痕だと認めるんだな」
「・・はい」
「それに何故ステラが王宮にいた? 今日は殿下とロクサーナの顔合わせだったはず」
「ステラを一人にするのは可哀想だと思いましたの」
「それでステラには子供らしいドレスを着せて、ロクサーナにはこのドレスを準備したのか?」
「ロクサーナの趣味ですわ! この子はわたくしの言うことなんて聞きませんもの」
「ロクサーナのドレスを仕立てた奴は首だ。次の仕立て屋は私が選ぶ」
「そんな! 彼はとても腕が良いんですのよ。他の者にするなんて」
この先も悪趣味なドレスを着せられる予定だったロクサーナはホッと一安心した。
何しろ次に着るドレスは全身灰色のグラデーションでリチャードとステラからドブネズミだと言われ、「退治してやる!」と小石を投げつけられたのだもの。
(倫理上、不倫は良くないしね)
「話は以上だ」
チャールズが書類箱に手を伸ばしたので、ロクサーナ達は執務室を後にした。
「お母様! 助けて、痒いよお」
慌てて走って来たメイドや執事は二人の手や顔を見て慌てて叫んだ。
「早く、医者を!」
王妃とメリッサが来た頃にはリチャードの右手とステラの左頬は真っ赤に腫れ上がっていた。しかもステラの頬にはくっきりと指の跡が。
一人ポツンと離れたところにいたロクサーナは、
(仕方なかったの、だって池に落とされるのは嫌だったんだもん)
旧ロクサーナは二人に池に落とされて溺れかけた挙句、濡れたまま帰宅させられて一週間高熱を出して寝込んだのだから。
(あの時二人は大笑いしてたけど、それは我慢してあげる)
リチャードとステラが治療に連れて行かれメリッサはその後をついて行った。
ステラの治療が終わるのを一人客間で待っていた時、ドアが開きチャールズが入ってきた。
「何があったんだ? ステラがどうとか」
「さあ、王子でんかの手が赤くなっていてお姉さまのほほに赤いゆびのあとがあったことしか知りません」
ロクサーナは可愛く首を傾げておいた。
「しかし、何故ステラがここに来ていたんだ。
しかもお前のその下品なドレスはなんだ?」
チャールズが顔を顰めたのでロクサーナは両手を胸の前で握りしめてわざとらしくチャールズを見上げた。
「まあ、お父さま! そんなひどいことをおっしゃるなんて、お義母さまがかわいそうですわ。一日中したてやさんとへやにこもってがんばっておられたのに」
「えっ、ああそうか。そうだな」
「はい。おかあさまのせんたくをひなんするなんて」
ロクサーナは大袈裟に溜息を吐いて悲しそうな顔をした。
「・・一日中部屋に籠って?」
「はい、トニーさんはしごとねっしんなかたですから、いっしょに2人でししつに」
「・・」
チャールズが(ロクサーナの予想通り)思い悩んでいるとドアが開きメリッサと頬に大きな布を貼ったステラが入ってきた。
四阿に行く途中、ハゼの木の樹液を染み込ませた麻の布でステラの髪飾りをそっと撫でたロクサーナ。
旧ロクサーナの記憶には、「綺麗だね」と言ってリチャードがステラの髪飾りに触れたシーンがあったので、リチャードの手がちょっぴり痒くなればと思ったのだが・・。
(まさか顔にまで触ったとは思わなかったのよね。どうか痕になりませんように)
4人で馬車に乗り屋敷に戻ってきたが、馬車を降りた時チャールズが3人に声をかけた。
「聞きたいことがある。執務室に来なさい」
執務室に入ると開口一番メリッサが噛み付いた。
「旦那様、王宮でこんな事になるなんてキチンと責任を取って頂いて下さいね。
ステラは女の子なのに顔にこんな・・」
「どう言う状況だったのか話しなさい。何故ステラの顔に指の痕がついた?」
「えっ、ゆっ指の痕だなんてとんでもない。赤いだけですわ」
「見せなさい」
「・・」
ステラは項垂れてメリッサの陰に隠れた。
「殿下の指の痕だと認めるんだな」
「・・はい」
「それに何故ステラが王宮にいた? 今日は殿下とロクサーナの顔合わせだったはず」
「ステラを一人にするのは可哀想だと思いましたの」
「それでステラには子供らしいドレスを着せて、ロクサーナにはこのドレスを準備したのか?」
「ロクサーナの趣味ですわ! この子はわたくしの言うことなんて聞きませんもの」
「ロクサーナのドレスを仕立てた奴は首だ。次の仕立て屋は私が選ぶ」
「そんな! 彼はとても腕が良いんですのよ。他の者にするなんて」
この先も悪趣味なドレスを着せられる予定だったロクサーナはホッと一安心した。
何しろ次に着るドレスは全身灰色のグラデーションでリチャードとステラからドブネズミだと言われ、「退治してやる!」と小石を投げつけられたのだもの。
(倫理上、不倫は良くないしね)
「話は以上だ」
チャールズが書類箱に手を伸ばしたので、ロクサーナ達は執務室を後にした。
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