【完結】やり直しですか? 王子はいらないんで爆走します。忙しすぎて辛い(泣)

との

文字の大きさ
9 / 41

9.子供と老人が行く

しおりを挟む
「お嬢、わしがお供で本当に大丈夫なんですかい?」

「いいの、お父さまは専属のメイドを連れてけって仰ったの」

「わしはメイドじゃねえですが」

「そうね、メイドには見えないわね」

 ふふっと笑ったロクサーナは上機嫌で、庭師の心配などどこ吹く風。



 ロクサーナは今、庭師のコナーに頼み込んで王都の職人街にやってきていた。

「お嬢がこんな場所を知っとるとはねえ」

(ほーっほっほ、王太子妃教育の賜物よ)



 職人街は一年で最も活気に溢れる季節を迎えていた。
 雪と氷に閉ざされた寒い冬を乗り越え、物流が復活し商人達が大量の注文を持ってやってきた。

 道ゆく人は上着を手にかけ足早に通り過ぎ、荷を積んだ馬車が横を走り抜けて行く。

 荷積みを指示する大きな声や、大口の商談でもまとまったのか肩を叩きあい笑いあう人達。
 そんな中を一人の子供と老人が歩いて行くが、たまに不審げな顔をする人がいる程度でほとんどの人は気にもとめていなかった。


 ロクサーナ達は繊維問屋街に向かい、その中で最も大店のクラリア商会にやって来た。

 店の入り口を入ると大量の布や皮、羊毛や糸等が所狭しと陳列されていた。

(凄い! ユザ○ヤが霞むわ)


「すみません、布と糸と針が欲しいんですが」

 棚に布を積み込んでいた店員にロクサーナが声をかけた。

「ん? 嬢ちゃん、裁縫道具が欲しいなら雑貨屋へ行きな」

 チラッとロクサーナとコナーを見た店員は作業の手を止めず次の反物に手を伸ばした。


 何人かの店員に声をかけたが全員に無視されたロクサーナは両手を腰に当てて怒鳴った。

「生成りと赤・オレンジ・緑を各一反、羊毛100ポンド、フェルトは赤・緑・黄色・黒、刺繍糸の色は布と同じ。針はこの店で1番長いものと刺繍用、さっさと出しなさい!」


 店中が静まり返り店員達が手を止めてロクサーナを凝視した。


「お嬢ちゃん、随分と豪勢な買い物だが子供のお使いにしちゃ量が多すぎないか?」

「全部で幾らになるか見積もりを出してちょうだい。子供だからってぼったくろうなんてしたらタダじゃおかないわよ。
相場を知らずに来たとは思わない事ね」


 ロクサーナが堂々と胸を張り商会長に指を突きつけたこの時から、クラリア商会会長ネイサンとの長い付き合いがはじまった。



 納得のいく買い物を済ませ、荷物をコナー宛に届けてもらう手配を済ませたロクサーナ達は鍵を買いに来ている。

「お嬢、金は大丈夫かい?」

「大丈夫よ、予算に組み込んであるから」

「予算?」


 思ったよりチャールズが大盤振る舞いしてくれた事と、布のまとめ買いで散々値切った事でロクサーナの懐にはまだかなりの余裕があった。


 並んでいる鍵を見ていると店員が庭師コナーにばかり話しかける。

「ねえ、お爺ちゃんにはこっちの方が良いんじゃないかなあ。
ほら最近ドライバー使うの辛いって言ってたし」

「おっ、ああ。そうだな」

 空気を読んだコナーが慌てて返事をしてくれた。

「優しいお孫さんだねえ」


 ロクサーナが選んだのはスクリュー錠と呼ばれる物で鎖に引っ掛けて使うタイプ。

(残念だけどドアに取り付けるウォード錠は私じゃつけられないもんね)


 その他に小ぶりのドアハンドル4本と釘、短いチェーンと鉄の棒1本。



 屋敷へ向かう帰り道、渋い顔をしたコナーが呟いた。

「お嬢が今度俺を年寄り扱いしたらお仕置きだな」



 チェーンと鍵と鉄の棒はコナーに預け、深夜静まりかえった屋敷でドアの両面にドアハンドルを取り付けた。


 鍵とかんぬき用の鉄の棒は何か仕掛けられたら取り付ける予定。

 旧ロクサーナの記憶ではそれ程先の話ではないけれど。

しおりを挟む
感想 137

あなたにおすすめの小説

【大賞・完結】地味スキル《お片付け》は最強です!社畜OL、異世界でうっかり国を改革しちゃったら、騎士団長と皇帝陛下に溺愛されてるんですが!?

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞で大賞をいただきました】→【規約変更で書籍化&コミカライズ「確約」は取り消しになりました。】 佐藤美佳子(サトウ・ミカコ)、享年28歳。死因は、過労。連日の徹夜と休日出勤の果てに、ブラック企業のオフィスで静かに息を引き取った彼女が次に目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界だった。 新たな生を受けたのは、田舎のしがない貧乏貴族の娘、ミカ・アシュフィールド、16歳。神様がくれた転生特典は、なんと《完璧なる整理整頓》という、とんでもなく地味なスキルだった。 「せめて回復魔法とかが良かった……」 戦闘にも生産にも役立たないスキルに落胆し、今度こそは静かに、穏やかに生きたいと願うミカ。しかし、そんな彼女のささやかな望みは、王家からの突然の徴収命令によって打ち砕かれる。 「特殊技能持ちは、王宮へ出仕せよ」 家族を守るため、どうせ役立たずと追い返されるだろうと高をくくって王都へ向かったミカに与えられた任務は、あまりにも無謀なものだった。 「この『開かずの倉庫』を、整理せよ」 そこは、数百年分の備品や資材が山と積まれ、あまりの混沌ぶりに探検隊が遭難したとまで噂される、王家最大の禁足地。 絶望的な光景を前に、ミカが覚悟を決めてスキルを発動した瞬間――世界は、彼女の「お片付け」が持つ真の力に震撼することになる。 これは、地味スキルでうっかり国のすべてを最適化してしまった元社畜令嬢が、カタブツな騎士団長や有能すぎる皇帝陛下にその価値を見出され、なぜか過保護に甘やかされてしまう、お仕事改革ファンタジー。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

襲ってきた王太子と、私を売った婚約者を殴ったら、不敬罪で国外追放されました。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。

悪役令嬢は大好きな絵を描いていたら大変な事になった件について!

naturalsoft
ファンタジー
『※タイトル変更するかも知れません』 シオン・バーニングハート公爵令嬢は、婚約破棄され辺境へと追放される。 そして失意の中、悲壮感漂う雰囲気で馬車で向かって─ 「うふふ、計画通りですわ♪」 いなかった。 これは悪役令嬢として目覚めた転生少女が無駄に能天気で、好きな絵を描いていたら周囲がとんでもない事になっていったファンタジー(コメディ)小説である! 最初は幼少期から始まります。婚約破棄は後からの話になります。

毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。

克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。

【完結】勘違い令嬢はお花屋さんを始めたい ~婚約者契約は円満に終了しました

九條葉月
恋愛
【ジャンル1位獲得!】 【HOTランキング1位獲得!】 とある公爵との契約(婚約者関係)を無事に終えたシャーロットは、夢だったお花屋さんを始めるための準備に取りかかる。 順調に準備を進めていると、契約を終えたはずの公爵様や王太子殿下たちがなぜか次々とお店にやって来て――!?

処理中です...