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9.子供と老人が行く
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「お嬢、わしがお供で本当に大丈夫なんですかい?」
「いいの、お父さまは専属のメイドを連れてけって仰ったの」
「わしはメイドじゃねえですが」
「そうね、メイドには見えないわね」
ふふっと笑ったロクサーナは上機嫌で、庭師の心配などどこ吹く風。
ロクサーナは今、庭師のコナーに頼み込んで王都の職人街にやってきていた。
「お嬢がこんな場所を知っとるとはねえ」
(ほーっほっほ、王太子妃教育の賜物よ)
職人街は一年で最も活気に溢れる季節を迎えていた。
雪と氷に閉ざされた寒い冬を乗り越え、物流が復活し商人達が大量の注文を持ってやってきた。
道ゆく人は上着を手にかけ足早に通り過ぎ、荷を積んだ馬車が横を走り抜けて行く。
荷積みを指示する大きな声や、大口の商談でもまとまったのか肩を叩きあい笑いあう人達。
そんな中を一人の子供と老人が歩いて行くが、たまに不審げな顔をする人がいる程度でほとんどの人は気にもとめていなかった。
ロクサーナ達は繊維問屋街に向かい、その中で最も大店のクラリア商会にやって来た。
店の入り口を入ると大量の布や皮、羊毛や糸等が所狭しと陳列されていた。
(凄い! ユザ○ヤが霞むわ)
「すみません、布と糸と針が欲しいんですが」
棚に布を積み込んでいた店員にロクサーナが声をかけた。
「ん? 嬢ちゃん、裁縫道具が欲しいなら雑貨屋へ行きな」
チラッとロクサーナとコナーを見た店員は作業の手を止めず次の反物に手を伸ばした。
何人かの店員に声をかけたが全員に無視されたロクサーナは両手を腰に当てて怒鳴った。
「生成りと赤・オレンジ・緑を各一反、羊毛100ポンド、フェルトは赤・緑・黄色・黒、刺繍糸の色は布と同じ。針はこの店で1番長いものと刺繍用、さっさと出しなさい!」
店中が静まり返り店員達が手を止めてロクサーナを凝視した。
「お嬢ちゃん、随分と豪勢な買い物だが子供のお使いにしちゃ量が多すぎないか?」
「全部で幾らになるか見積もりを出してちょうだい。子供だからってぼったくろうなんてしたらタダじゃおかないわよ。
相場を知らずに来たとは思わない事ね」
ロクサーナが堂々と胸を張り商会長に指を突きつけたこの時から、クラリア商会会長ネイサンとの長い付き合いがはじまった。
納得のいく買い物を済ませ、荷物をコナー宛に届けてもらう手配を済ませたロクサーナ達は鍵を買いに来ている。
「お嬢、金は大丈夫かい?」
「大丈夫よ、予算に組み込んであるから」
「予算?」
思ったよりチャールズが大盤振る舞いしてくれた事と、布のまとめ買いで散々値切った事でロクサーナの懐にはまだかなりの余裕があった。
並んでいる鍵を見ていると店員が庭師にばかり話しかける。
「ねえ、お爺ちゃんにはこっちの方が良いんじゃないかなあ。
ほら最近ドライバー使うの辛いって言ってたし」
「おっ、ああ。そうだな」
空気を読んだコナーが慌てて返事をしてくれた。
「優しいお孫さんだねえ」
ロクサーナが選んだのはスクリュー錠と呼ばれる物で鎖に引っ掛けて使うタイプ。
(残念だけどドアに取り付けるウォード錠は私じゃつけられないもんね)
その他に小ぶりのドアハンドル4本と釘、短いチェーンと鉄の棒1本。
屋敷へ向かう帰り道、渋い顔をしたコナーが呟いた。
「お嬢が今度俺を年寄り扱いしたらお仕置きだな」
チェーンと鍵と鉄の棒はコナーに預け、深夜静まりかえった屋敷でドアの両面にドアハンドルを取り付けた。
鍵と閂用の鉄の棒は何か仕掛けられたら取り付ける予定。
旧ロクサーナの記憶ではそれ程先の話ではないけれど。
「いいの、お父さまは専属のメイドを連れてけって仰ったの」
「わしはメイドじゃねえですが」
「そうね、メイドには見えないわね」
ふふっと笑ったロクサーナは上機嫌で、庭師の心配などどこ吹く風。
ロクサーナは今、庭師のコナーに頼み込んで王都の職人街にやってきていた。
「お嬢がこんな場所を知っとるとはねえ」
(ほーっほっほ、王太子妃教育の賜物よ)
職人街は一年で最も活気に溢れる季節を迎えていた。
雪と氷に閉ざされた寒い冬を乗り越え、物流が復活し商人達が大量の注文を持ってやってきた。
道ゆく人は上着を手にかけ足早に通り過ぎ、荷を積んだ馬車が横を走り抜けて行く。
荷積みを指示する大きな声や、大口の商談でもまとまったのか肩を叩きあい笑いあう人達。
そんな中を一人の子供と老人が歩いて行くが、たまに不審げな顔をする人がいる程度でほとんどの人は気にもとめていなかった。
ロクサーナ達は繊維問屋街に向かい、その中で最も大店のクラリア商会にやって来た。
店の入り口を入ると大量の布や皮、羊毛や糸等が所狭しと陳列されていた。
(凄い! ユザ○ヤが霞むわ)
「すみません、布と糸と針が欲しいんですが」
棚に布を積み込んでいた店員にロクサーナが声をかけた。
「ん? 嬢ちゃん、裁縫道具が欲しいなら雑貨屋へ行きな」
チラッとロクサーナとコナーを見た店員は作業の手を止めず次の反物に手を伸ばした。
何人かの店員に声をかけたが全員に無視されたロクサーナは両手を腰に当てて怒鳴った。
「生成りと赤・オレンジ・緑を各一反、羊毛100ポンド、フェルトは赤・緑・黄色・黒、刺繍糸の色は布と同じ。針はこの店で1番長いものと刺繍用、さっさと出しなさい!」
店中が静まり返り店員達が手を止めてロクサーナを凝視した。
「お嬢ちゃん、随分と豪勢な買い物だが子供のお使いにしちゃ量が多すぎないか?」
「全部で幾らになるか見積もりを出してちょうだい。子供だからってぼったくろうなんてしたらタダじゃおかないわよ。
相場を知らずに来たとは思わない事ね」
ロクサーナが堂々と胸を張り商会長に指を突きつけたこの時から、クラリア商会会長ネイサンとの長い付き合いがはじまった。
納得のいく買い物を済ませ、荷物をコナー宛に届けてもらう手配を済ませたロクサーナ達は鍵を買いに来ている。
「お嬢、金は大丈夫かい?」
「大丈夫よ、予算に組み込んであるから」
「予算?」
思ったよりチャールズが大盤振る舞いしてくれた事と、布のまとめ買いで散々値切った事でロクサーナの懐にはまだかなりの余裕があった。
並んでいる鍵を見ていると店員が庭師にばかり話しかける。
「ねえ、お爺ちゃんにはこっちの方が良いんじゃないかなあ。
ほら最近ドライバー使うの辛いって言ってたし」
「おっ、ああ。そうだな」
空気を読んだコナーが慌てて返事をしてくれた。
「優しいお孫さんだねえ」
ロクサーナが選んだのはスクリュー錠と呼ばれる物で鎖に引っ掛けて使うタイプ。
(残念だけどドアに取り付けるウォード錠は私じゃつけられないもんね)
その他に小ぶりのドアハンドル4本と釘、短いチェーンと鉄の棒1本。
屋敷へ向かう帰り道、渋い顔をしたコナーが呟いた。
「お嬢が今度俺を年寄り扱いしたらお仕置きだな」
チェーンと鍵と鉄の棒はコナーに預け、深夜静まりかえった屋敷でドアの両面にドアハンドルを取り付けた。
鍵と閂用の鉄の棒は何か仕掛けられたら取り付ける予定。
旧ロクサーナの記憶ではそれ程先の話ではないけれど。
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