7 / 149
兄妹の過去
5.ミリアの特技
しおりを挟む
ガルゥ・・。
ウォーカーが木に覆われた杣道を急ぎ足で歩いている時、獣の唸り声が聞こえて来た。
孤児院のある村は『モンストルムの森』から大人の足で一日程度の所にある。
滅多にある事ではないがごく稀に魔物が現れる事があり、子供達は皆木の棒を持ちバシバシと音を立てながら歩くようにしている。
(けっこう大きいのかな? 音で逃げないなんて)
ガルゥ・グオッ・・。
複数の魔物の気配がする。
(ミリア、ごめん。兄ちゃんヤバいかも)
覚悟を決めて走り出したウォーカーの後ろから、ガサガサと言う音と共に獣の足音が聞こえて来た。
(やめろ! 来るな!)
木の棒を捨てて必死に走るウォーカーの前から、ミリアの声が聞こえて来た。
「にーちゃーん」
(ミリア! ダメだ、来るな!)
「にーちゃんをいじめりゅなー! おいたしたらめーすゆよー!」
「ミリアー! こっちに来るな!」
夢中になって走るウォーカーは気付かなかったが、魔物の足が少し遅くなってきている。
ミリアは木の棒を振り上げ、
「めー!」
バシュンと音がして水の玉が物凄い勢いでウォーカーの後ろに飛んでいった。
「キャイン・・」
まるで犬のような鳴き声が聞こえてきたがミリアは何度も、
「めー!」「らめー!」
と、木の棒を振り回す。その度に
「バシュン」「バシュン」
「にーちゃーん、おかえりー」
満面の笑みを浮かべたミリアがウォーカーに飛びついた。
後ろを振り返ると大きな水溜りがいくつも出来ていて、魔物の姿はなくなっていた。
「ミリア、お前今の・・」
「ん? みじゅあしょび? たのちーよ」
ミリア三歳、ウォーカー六歳だった。
週に一度の休みの日、ウォーカーはミリアを連れて近くの山にやって来た。
「ミリア、もう一回この間のアレをやってみて」
「なに?」
「ほら、バシュンって水が出るやつ」
キョトンと首を傾げていたミリアはにっこり笑って、
「みじゅあしょび?」
「そう、それ。出来る?」
「できゆよ」
ミリアが持っていた木の棒を振り下ろすと水の玉が飛んでいった。
(言葉はいらないのか? 魔法を使うのには決まった呪文みたいなのがあるって聞いてたんだけど)
「他にも出来る?」
「うーんとね、ぼーってしがでりゅ」
「まっまじか、もしかしてだけど火が出る?」
「うん。でもちょっとこあいの」
ミリアがしょぼんとして言う。
「兄ちゃんが側にいるからな」
「うん」
元気に首を縦に振って木の棒を前に向け、
「ぼー!」
「ミリア、すぐ水だ。水をかけて!」
想像より強力な火に驚いたウォーカーは慌てて水で火を消させた。
「まさかだけど他にもある?」
「はっぱ、みちゅけゆ? こないだ、まちゅぼっくいみちゅけた」
(やばいな、見つかったら大変な事になる)
「ミリア、兄ちゃんと約束して欲しいんだ。水とか火とか二人だけの時しかやらないって」
「なんで?」
「なんでも、兄ちゃんと二人だけの秘密だ」
「まちゅぼっくいも?」
「そう、そういうのも全部」
ミリアは首を傾げ悩んでいたが、
「にいちゃんとふたりだけのひみちゅ。ふふ」
「兄ちゃんと二人だけの時なら、今日みたいに出来るから我慢な」
「うん。がっまんー、がっまんー。みいあ、がまんでちる!」
「うん、ミリアは良い子だな」
「へへ」
デレっと嬉しそうに笑いながら『がっまん~』とおかしな節をつけて歌っているミリアを見ながら、ウォーカーはこれから先のことを考えて頭を抱えていた。
ウォーカーが木に覆われた杣道を急ぎ足で歩いている時、獣の唸り声が聞こえて来た。
孤児院のある村は『モンストルムの森』から大人の足で一日程度の所にある。
滅多にある事ではないがごく稀に魔物が現れる事があり、子供達は皆木の棒を持ちバシバシと音を立てながら歩くようにしている。
(けっこう大きいのかな? 音で逃げないなんて)
ガルゥ・グオッ・・。
複数の魔物の気配がする。
(ミリア、ごめん。兄ちゃんヤバいかも)
覚悟を決めて走り出したウォーカーの後ろから、ガサガサと言う音と共に獣の足音が聞こえて来た。
(やめろ! 来るな!)
木の棒を捨てて必死に走るウォーカーの前から、ミリアの声が聞こえて来た。
「にーちゃーん」
(ミリア! ダメだ、来るな!)
「にーちゃんをいじめりゅなー! おいたしたらめーすゆよー!」
「ミリアー! こっちに来るな!」
夢中になって走るウォーカーは気付かなかったが、魔物の足が少し遅くなってきている。
ミリアは木の棒を振り上げ、
「めー!」
バシュンと音がして水の玉が物凄い勢いでウォーカーの後ろに飛んでいった。
「キャイン・・」
まるで犬のような鳴き声が聞こえてきたがミリアは何度も、
「めー!」「らめー!」
と、木の棒を振り回す。その度に
「バシュン」「バシュン」
「にーちゃーん、おかえりー」
満面の笑みを浮かべたミリアがウォーカーに飛びついた。
後ろを振り返ると大きな水溜りがいくつも出来ていて、魔物の姿はなくなっていた。
「ミリア、お前今の・・」
「ん? みじゅあしょび? たのちーよ」
ミリア三歳、ウォーカー六歳だった。
週に一度の休みの日、ウォーカーはミリアを連れて近くの山にやって来た。
「ミリア、もう一回この間のアレをやってみて」
「なに?」
「ほら、バシュンって水が出るやつ」
キョトンと首を傾げていたミリアはにっこり笑って、
「みじゅあしょび?」
「そう、それ。出来る?」
「できゆよ」
ミリアが持っていた木の棒を振り下ろすと水の玉が飛んでいった。
(言葉はいらないのか? 魔法を使うのには決まった呪文みたいなのがあるって聞いてたんだけど)
「他にも出来る?」
「うーんとね、ぼーってしがでりゅ」
「まっまじか、もしかしてだけど火が出る?」
「うん。でもちょっとこあいの」
ミリアがしょぼんとして言う。
「兄ちゃんが側にいるからな」
「うん」
元気に首を縦に振って木の棒を前に向け、
「ぼー!」
「ミリア、すぐ水だ。水をかけて!」
想像より強力な火に驚いたウォーカーは慌てて水で火を消させた。
「まさかだけど他にもある?」
「はっぱ、みちゅけゆ? こないだ、まちゅぼっくいみちゅけた」
(やばいな、見つかったら大変な事になる)
「ミリア、兄ちゃんと約束して欲しいんだ。水とか火とか二人だけの時しかやらないって」
「なんで?」
「なんでも、兄ちゃんと二人だけの秘密だ」
「まちゅぼっくいも?」
「そう、そういうのも全部」
ミリアは首を傾げ悩んでいたが、
「にいちゃんとふたりだけのひみちゅ。ふふ」
「兄ちゃんと二人だけの時なら、今日みたいに出来るから我慢な」
「うん。がっまんー、がっまんー。みいあ、がまんでちる!」
「うん、ミリアは良い子だな」
「へへ」
デレっと嬉しそうに笑いながら『がっまん~』とおかしな節をつけて歌っているミリアを見ながら、ウォーカーはこれから先のことを考えて頭を抱えていた。
5
あなたにおすすめの小説
追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?
タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。
白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。
しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。
王妃リディアの嫉妬。
王太子レオンの盲信。
そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。
「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」
そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。
彼女はただ一言だけ残した。
「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」
誰もそれを脅しとは受け取らなかった。
だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。
弟が悪役令嬢に怪我をさせられたのに、こっちが罰金を払うだなんて、そんなおかしな話があるの? このまま泣き寝入りなんてしないから……!
冬吹せいら
恋愛
キリア・モルバレスが、令嬢のセレノー・ブレッザに、顔面をナイフで切り付けられ、傷を負った。
しかし、セレノーは謝るどころか、自分も怪我をしたので、モルバレス家に罰金を科すと言い始める。
話を聞いた、キリアの姉のスズカは、この件を、親友のネイトルに相談した。
スズカとネイトルは、お互いの身分を知らず、会話する仲だったが、この件を聞いたネイトルが、ついに自分の身分を明かすことに。
そこから、話しは急展開を迎える……。
田舎娘をバカにした令嬢の末路
冬吹せいら
恋愛
オーロラ・レンジ―は、小国の産まれでありながらも、名門バッテンデン学園に、首席で合格した。
それを不快に思った、令嬢のディアナ・カルホーンは、オーロラが試験官を買収したと嘘をつく。
――あんな田舎娘に、私が負けるわけないじゃない。
田舎娘をバカにした令嬢の末路は……。
婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました
由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。
彼女は何も言わずにその場を去った。
――それが、王太子の終わりだった。
翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。
裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。
王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。
「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」
ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。
「身分が違う」って言ったのはそっちでしょ?今さら泣いても遅いです
ほーみ
恋愛
「お前のような平民と、未来を共にできるわけがない」
その言葉を最後に、彼は私を冷たく突き放した。
──王都の学園で、私は彼と出会った。
彼の名はレオン・ハイゼル。王国の名門貴族家の嫡男であり、次期宰相候補とまで呼ばれる才子。
貧しい出自ながら奨学生として入学した私・リリアは、最初こそ彼に軽んじられていた。けれど成績で彼を追い抜き、共に課題をこなすうちに、いつしか惹かれ合うようになったのだ。
いつまでも甘くないから
朝山みどり
恋愛
エリザベスは王宮で働く文官だ。ある日侯爵位を持つ上司から甥を紹介される。
結婚を前提として紹介であることは明白だった。
しかし、指輪を注文しようと街を歩いている時に友人と出会った。お茶を一緒に誘う友人、自慢しちゃえと思い了承したエリザベス。
この日から彼の様子が変わった。真相に気づいたエリザベスは穏やかに微笑んで二人を祝福する。
目を輝かせて喜んだ二人だったが、エリザベスの次の言葉を聞いた時・・・
二人は正反対の反応をした。
【完結】恋人との子を我が家の跡取りにする? 冗談も大概にして下さいませ
水月 潮
恋愛
侯爵家令嬢アイリーン・エヴァンスは遠縁の伯爵家令息のシリル・マイソンと婚約している。
ある日、シリルの恋人と名乗る女性・エイダ・バーク男爵家令嬢がエヴァンス侯爵邸を訪れた。
なんでも彼の子供が出来たから、シリルと別れてくれとのこと。
アイリーンはそれを承諾し、二人を追い返そうとするが、シリルとエイダはこの子を侯爵家の跡取りにして、アイリーンは侯爵家から出て行けというとんでもないことを主張する。
※設定は緩いので物語としてお楽しみ頂けたらと思います
☆HOTランキング20位(2021.6.21)
感謝です*.*
HOTランキング5位(2021.6.22)
婚約破棄をしてきた婚約者と私を嵌めた妹、そして助けてくれなかった人達に断罪を。
しげむろ ゆうき
恋愛
卒業パーティーで私は婚約者の第一王太子殿下に婚約破棄を言い渡される。
全て妹と、私を追い落としたい貴族に嵌められた所為である。
しかも、王妃も父親も助けてはくれない。
だから、私は……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる