9 / 149
兄妹の過去
7.冒険者ギルド初日
しおりを挟む
「冒険者の登録をしたいんですが」
「字は書ける? じゃあこれに記入してね」
(字を書く練習しといて良かった)
冒険者ギルドの中は思ったより人が少なかった。後で知ったのだが人が増えるのは朝と夕方以降で、お昼前の今は丁度その合間だったそうだ。
正面にカウンターがあり、三人の女性が座っている。
壁には様々な紙が貼ってあり、左手にはテーブルとスツールが六個ずつ。
右手には広い食堂がありここでも良い匂いが漂っている。
(お腹・・恥ずかしいから鳴るなよ)
名前・年齢・特技を記入しカウンターへ持って行った。
「このまま登録したら最低ランクのFランクから。自信があれば試験を受けて、上のランクからはじめられるけどどうする?」
「試験、受けます。どうすれば良いのか教えて下さい」
「Eランクなら実技のみ。Dランクを狙うなら筆記もあるんだけど?」
「Dランクを狙ってみます」
「ならこれを読んで覚えておいてね。
難しくはないけど読めないとこがあったら声をかけてね。試験は明後日だよ」
「はい。あそこのテーブル使っても良いですか?」
「勿論」
夕方過ぎ、ギルドの中が段々騒がしくなって来た。
カウンターの女性の人数も五人に増えて、依頼帰りの冒険者の手続きや素材の買取で忙しそう。
暫くして仕事が一段落したのか、ウォーカーの受付をした女性が横目でちらちら見てくるのに気が付いた。
(やばい、目があっちゃったよ。ずっと座ってるから? 怒られるかな)
女性がカウンターを出てウォーカーが座っているテーブルの所まで歩いて来た。
「ウォーカー君、ご飯は?」
「あー、はい。もうちょっとしたら食べに行ってきます」
女性は腕を組んで首を傾げながら、
「・・ねぇ、今晩の宿はもう決まってるの? ギルドで安全なとこ紹介してあげるよ」
「ありがとうございます。今度教えて下さい」
(う、このままここにいたいけど・・)
「ウォーカー君、その本貸してあげるからご飯食べて宿でしっかり休んだら?」
「はい、もうちょっとし「ちょっとおいで!」」
「えっ? あの?」
連れて行かれたのは屋台の串焼き屋の前。
「おじさん二本、ううん三本ちょうだい」
「あっあの、僕は食べられないんで」
「ダメ」
「毎度あり!」
「いえ、あの・・「食べなさい」」
「あー、仕事疲れたー」
話を聞いて貰うために、ウォーカーは大きな声を出した。
「食べれないんです!」
受付の子・・リラは戸惑ったような顔で、
「大丈夫だよ、奢ったげるから」
「ずっと何も食べてないから、今肉なんて食ったらお腹壊すと思うんです」
「えっ? あっ、ごめん」
「いえ、ありがとうございました」
ウォーカーは頭をペコリと下げてから、ギルドに戻ろうとした。
「坊主、今日の肉は俺が預かっとくから食えそうになったら一番に来いよ」
「はい!」
「あの、ごめんね。もっとちゃんと話聞けば良かった」
「リラちゃん、そそっかしいからなぁ」
「おじさん! 酷いよぉ。そうだ、ちょっとここで待ってて」
リラはギルドの裏に走って行った。
「あいつ、良い子だろ?」
「今日会ったばかりなんで・・」
リラが着替えて戻ってきた。おじさんに『バイバイ』と手を振ってウォーカーの手を引っ張ってズンズン歩いて行く。
「ただいまー。母さん、今日の晩御飯なに?」
「お帰り。全く子供みたいに・・あら、お客さん?」
リラによく似た女性がエプロンで手を拭きながら出てきた。
「うん、スープとかシチューみたいなのある?」
「シチューならあるけど?」
リラはウォーカーの手を掴んだまま奥の部屋のテーブルまでウォーカーを連れて来て、
「座ってて、今シチュー持ってくる」
呆然としたまま椅子に座ったウォーカーの前に熱々のシチューとパンが置かれた。
黙ってシチューの皿を見つめていると、リラが心配そうにウォーカーの顔を覗き込んできた。
「食べて、これなら大丈夫でしょ?」
「えっと、いっ良いんですか? 僕お金が・・」
「勿論! 大丈夫だよ」
久しぶりに食べる温かい食事。お腹がびっくりしないようにゆっくり、少しずつ口に運ぶ。
涙腺が緩むのを止められないまま、黙々と食べ続けるウォーカーをリラとその母親が見つめていた。
「ごちそうさまでした」
パンでスープ皿の中のシチューまで拭い取り、名残惜しげにスプーンを置いたウォーカーに、
「おかわりしなくて良いの?」
「はい、今はこれくらいが丁度良いです」
「そっか、二階にベッドがあるからね。宿なんて取ってないんでしょ?
但し、ギルドには内緒だよ。
特定の冒険者に肩入れすると怒られるから」
(ミリア、お休み)
冒険者の町についた初日、一週間ぶりのベッドでぐっすりと眠りについた。
「字は書ける? じゃあこれに記入してね」
(字を書く練習しといて良かった)
冒険者ギルドの中は思ったより人が少なかった。後で知ったのだが人が増えるのは朝と夕方以降で、お昼前の今は丁度その合間だったそうだ。
正面にカウンターがあり、三人の女性が座っている。
壁には様々な紙が貼ってあり、左手にはテーブルとスツールが六個ずつ。
右手には広い食堂がありここでも良い匂いが漂っている。
(お腹・・恥ずかしいから鳴るなよ)
名前・年齢・特技を記入しカウンターへ持って行った。
「このまま登録したら最低ランクのFランクから。自信があれば試験を受けて、上のランクからはじめられるけどどうする?」
「試験、受けます。どうすれば良いのか教えて下さい」
「Eランクなら実技のみ。Dランクを狙うなら筆記もあるんだけど?」
「Dランクを狙ってみます」
「ならこれを読んで覚えておいてね。
難しくはないけど読めないとこがあったら声をかけてね。試験は明後日だよ」
「はい。あそこのテーブル使っても良いですか?」
「勿論」
夕方過ぎ、ギルドの中が段々騒がしくなって来た。
カウンターの女性の人数も五人に増えて、依頼帰りの冒険者の手続きや素材の買取で忙しそう。
暫くして仕事が一段落したのか、ウォーカーの受付をした女性が横目でちらちら見てくるのに気が付いた。
(やばい、目があっちゃったよ。ずっと座ってるから? 怒られるかな)
女性がカウンターを出てウォーカーが座っているテーブルの所まで歩いて来た。
「ウォーカー君、ご飯は?」
「あー、はい。もうちょっとしたら食べに行ってきます」
女性は腕を組んで首を傾げながら、
「・・ねぇ、今晩の宿はもう決まってるの? ギルドで安全なとこ紹介してあげるよ」
「ありがとうございます。今度教えて下さい」
(う、このままここにいたいけど・・)
「ウォーカー君、その本貸してあげるからご飯食べて宿でしっかり休んだら?」
「はい、もうちょっとし「ちょっとおいで!」」
「えっ? あの?」
連れて行かれたのは屋台の串焼き屋の前。
「おじさん二本、ううん三本ちょうだい」
「あっあの、僕は食べられないんで」
「ダメ」
「毎度あり!」
「いえ、あの・・「食べなさい」」
「あー、仕事疲れたー」
話を聞いて貰うために、ウォーカーは大きな声を出した。
「食べれないんです!」
受付の子・・リラは戸惑ったような顔で、
「大丈夫だよ、奢ったげるから」
「ずっと何も食べてないから、今肉なんて食ったらお腹壊すと思うんです」
「えっ? あっ、ごめん」
「いえ、ありがとうございました」
ウォーカーは頭をペコリと下げてから、ギルドに戻ろうとした。
「坊主、今日の肉は俺が預かっとくから食えそうになったら一番に来いよ」
「はい!」
「あの、ごめんね。もっとちゃんと話聞けば良かった」
「リラちゃん、そそっかしいからなぁ」
「おじさん! 酷いよぉ。そうだ、ちょっとここで待ってて」
リラはギルドの裏に走って行った。
「あいつ、良い子だろ?」
「今日会ったばかりなんで・・」
リラが着替えて戻ってきた。おじさんに『バイバイ』と手を振ってウォーカーの手を引っ張ってズンズン歩いて行く。
「ただいまー。母さん、今日の晩御飯なに?」
「お帰り。全く子供みたいに・・あら、お客さん?」
リラによく似た女性がエプロンで手を拭きながら出てきた。
「うん、スープとかシチューみたいなのある?」
「シチューならあるけど?」
リラはウォーカーの手を掴んだまま奥の部屋のテーブルまでウォーカーを連れて来て、
「座ってて、今シチュー持ってくる」
呆然としたまま椅子に座ったウォーカーの前に熱々のシチューとパンが置かれた。
黙ってシチューの皿を見つめていると、リラが心配そうにウォーカーの顔を覗き込んできた。
「食べて、これなら大丈夫でしょ?」
「えっと、いっ良いんですか? 僕お金が・・」
「勿論! 大丈夫だよ」
久しぶりに食べる温かい食事。お腹がびっくりしないようにゆっくり、少しずつ口に運ぶ。
涙腺が緩むのを止められないまま、黙々と食べ続けるウォーカーをリラとその母親が見つめていた。
「ごちそうさまでした」
パンでスープ皿の中のシチューまで拭い取り、名残惜しげにスプーンを置いたウォーカーに、
「おかわりしなくて良いの?」
「はい、今はこれくらいが丁度良いです」
「そっか、二階にベッドがあるからね。宿なんて取ってないんでしょ?
但し、ギルドには内緒だよ。
特定の冒険者に肩入れすると怒られるから」
(ミリア、お休み)
冒険者の町についた初日、一週間ぶりのベッドでぐっすりと眠りについた。
5
あなたにおすすめの小説
追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?
タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。
白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。
しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。
王妃リディアの嫉妬。
王太子レオンの盲信。
そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。
「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」
そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。
彼女はただ一言だけ残した。
「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」
誰もそれを脅しとは受け取らなかった。
だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。
国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。
樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。
ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。
国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。
「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」
悪役断罪?そもそも何かしましたか?
SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。
男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。
あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。
えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。
勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。
よくある父親の再婚で意地悪な義母と義妹が来たけどヒロインが○○○だったら………
naturalsoft
恋愛
なろうの方で日間異世界恋愛ランキング1位!ありがとうございます!
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
最近よくある、父親が再婚して出来た義母と義妹が、前妻の娘であるヒロインをイジメて追い出してしまう話………
でも、【権力】って婿養子の父親より前妻の娘である私が持ってのは知ってます?家を継ぐのも、死んだお母様の直系の血筋である【私】なのですよ?
まったく、どうして多くの小説ではバカ正直にイジメられるのかしら?
少女はパタンッと本を閉じる。
そして悪巧みしていそうな笑みを浮かべて──
アタイはそんな無様な事にはならねぇけどな!
くははははっ!!!
静かな部屋の中で、少女の笑い声がこだまするのだった。
断罪中、味方が多すぎて王子が孤立している件について
夏乃みのり
恋愛
バーンスタイン伯爵家の令嬢ラミリアは、魔力も剣の才能もない「ごく普通」の地味な女性。
ある日のパーティーで、婚約者であるジェラルド第二王子から「地味で無能で嫉妬深い」と罵られ、身に覚えのない罪で婚約破棄を突きつけられてしまう。
しかし、断罪劇は予想外の展開へ。
お姉さまに挑むなんて、あなた正気でいらっしゃるの?
中崎実
ファンタジー
若き伯爵家当主リオネーラには、異母妹が二人いる。
殊にかわいがっている末妹で気鋭の若手画家・リファと、市中で生きるしっかり者のサーラだ。
入り婿だったのに母を裏切って庶子を作った父や、母の死後に父の正妻に収まった継母とは仲良くする気もないが、妹たちとはうまくやっている。
そんな日々の中、暗愚な父が連れてきた自称「婚約者」が突然、『婚約破棄』を申し出てきたが……
※第2章の投稿開始後にタイトル変更の予定です
※カクヨムにも同タイトル作品を掲載しています(アルファポリスでの公開は数時間~半日ほど早めです)
婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~
tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!!
壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは???
一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
私の婚約者でも無いのに、婚約破棄とか何事ですか?
狼狼3
恋愛
「お前のような冷たくて愛想の無い女などと結婚出来るものか。もうお前とは絶交……そして、婚約破棄だ。じゃあな、グラッセマロン。」
「いやいや。私もう結婚してますし、貴方誰ですか?」
「俺を知らないだと………?冗談はよしてくれ。お前の愛するカーナトリエだぞ?」
「知らないですよ。……もしかして、夫の友達ですか?夫が帰ってくるまで家使いますか?……」
「だから、お前の夫が俺だって──」
少しずつ日差しが強くなっている頃。
昼食を作ろうと材料を買いに行こうとしたら、婚約者と名乗る人が居ました。
……誰コイツ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる