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兄妹の過去
11.馬車は苦手
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「ミリアの事は僕が守るよ。絶対にね」
「でっでも、あんたが怪我とかしたら?」
ばん! とテーブルを叩いてミリアが立ち上がった。
「大丈夫だもん。だって私のく「ミリア!」」
大声を出してウォーカーがミリアの言葉を遮った。
「心配してくれてありがとう。でもミリアは連れて行く。
これは誰が何を言っても変えないから」
朝食の後、身の回りの荷物を纏めたミリアとウォーカーは孤児院の前でみんなに別れの挨拶をしていた。
「ミリア、随分とでっかい鞄だな。何が入ってるんだ?」
マックスが驚いて見つめた鞄には、ミリアがコツコツと集めた薬草が入っている。
土を固めて作った壺に薬草を詰め、割れないようにボロ布で丁寧に包むと予想以上の荷物になってしまった。
「色々、宝物を詰めてるの」
「それじゃあ、今までありがとうございました」
出発しかけた時、ミリアがシスターに小声で話しかけた。
「シスター、昨日バレリーさんから給金もらい忘れちゃったの。ごめんなさい」
「この後バレリーさんに挨拶して行きなさい。多分今日もミリアが仕事に来るって思ってるはずだから。
もし良ければ代わりの者を行かせますから声をかけて下さいって伝えてね。
その時昨日の給金を貰えたらミリアが貰って行きなさい」
「すみません。ありがとうございます」
手を振る子供達に別れを告げ二人はてくてくと町に向かって歩き出した。
その後ろから、目の縁を赤くしたマックスが走り出してミリアの近くまでやって来た。
「ミリア! 絶対怪我とかすんなよ!
ウォーカー! ミリアを泣かしたらボッコボコにしてやるから覚えとけよ!」
「ありがとう。マックスも頑張ってすっごい武器作ってね」
二人は杣道を進み村までやって来た。
「バレリーさん、私今日孤児院を出るんです」
「また突然だね、隣は誰なんだい?」
「ミリアがお世話になりました。兄のウォーカーと言います。
昨日の夜、ミリアを迎えに帰って来ました」
礼儀正しく挨拶をしたウォーカーを上から下までジロジロ見ていたバレリーはウォーカーに合格点をつけたらしい。
「それでか、ミリアは昨日一日中ソワソワしてて仕事になんなかったもんねえ」
「ごめんなさい」
「じゃあ残念だけど、仕事は終わりなんだね」
「シスターが代わりの子を寄こしますか? って言ってました」
「そうだね、後で行ってみるよ。ちょっと待ってな」
バレリーが店の奥に入って行き、暫くして手に袋を持って出てきた。
「ほら、これは昨日の給金。で、こっちの袋は誕生日のお祝いと餞別。
元気でやるんだよ」
「ありがとうございます。あの、お世話になりました」
ミリアは生まれて初めての駅馬車に揺られている。
馬車が動き始めた頃は三年前ウォーカーが歩いたと言う道を見るのを楽しみにしていたミリアだったが、外の景色どころか尻の痛さに気づく余裕がないほど真っ青な顔で口を押さえていた。
「大丈夫か?」
口の利けないミリアは涙目でウォーカーを見上げ小さく頷いた。
「困ったな。ちっとも大丈夫そうじゃない。気持ち悪いのを抑える薬ってない?」
首を振るミリア。
「嬢ちゃん、これを噛んでみな。うちの子はこれがよく効くんだ。ペパーミントだよ」
ミリア達の向かい側に座っていた女性が声をかけてきた。
お礼を言って受け取り口に含んでいると少しずつ吐き気がおさまってきた。
何枚かのペパーミントを譲ってもらい、二日かけてボロボロのミリアと心配顔のウォーカーはアッシュフォールの町にたどり着いた。
「ミリアがあんなに馬車に弱いなんて」
「兄ちゃん・・私、馬車はムリかも」
「あー、えっと、カランカムの町に行く時また馬車に乗りたいなぁと」
「・・」
「この町で何日か宿に泊まる予定だから」
一年ぶりにやって来たアッシュフォールの町はいつも通り賑わっていて、様々な声や匂いがしている。
「ここでミリアの冒険者登録をするんだけど、ひとまず宿で横になったほうが良さそうだね」
いまだに青い顔でふらふらと振れているミリアの手を引きながら、以前泊まっていた宿に足を向けた。
「ウォーカーじゃない! あんた突然いなくなってみんな心配してたんだよ。
その後ろの子は誰?」
「お久しぶりです。妹です、ちょっと馬車に酔ってしまっていて」
「初めまして、ミリアと言います」
小声で挨拶すると、
「何! もー可愛い~。初めて見た時のウォーカーより可愛いって、リラが知ったらヤバいよ」
二人用の部屋を取り階段を上がった。
ベッドを見た途端マントを脱ぐ間もなく倒れ込んだミリアは、ふーっと大きく深呼吸してうとうとと眠りについた。
部屋には小さいテーブルと椅子が二脚。
マントを脱いで 椅子に腰掛けたウォーカーはぐっすりと眠っているミリアを見つめ続けた。
(やっと一緒に暮らせる。ここからが本当のスタートだ)
ウォーカーは首に掛けていたネックレスを外した。
ウォーカーが作った魔道具の一つで、ミリアの為に作った“着けている者の魔法の威力を高めてくれる” もの。
窓から見える空が少しずつ夕焼けに染まっていった。
「でっでも、あんたが怪我とかしたら?」
ばん! とテーブルを叩いてミリアが立ち上がった。
「大丈夫だもん。だって私のく「ミリア!」」
大声を出してウォーカーがミリアの言葉を遮った。
「心配してくれてありがとう。でもミリアは連れて行く。
これは誰が何を言っても変えないから」
朝食の後、身の回りの荷物を纏めたミリアとウォーカーは孤児院の前でみんなに別れの挨拶をしていた。
「ミリア、随分とでっかい鞄だな。何が入ってるんだ?」
マックスが驚いて見つめた鞄には、ミリアがコツコツと集めた薬草が入っている。
土を固めて作った壺に薬草を詰め、割れないようにボロ布で丁寧に包むと予想以上の荷物になってしまった。
「色々、宝物を詰めてるの」
「それじゃあ、今までありがとうございました」
出発しかけた時、ミリアがシスターに小声で話しかけた。
「シスター、昨日バレリーさんから給金もらい忘れちゃったの。ごめんなさい」
「この後バレリーさんに挨拶して行きなさい。多分今日もミリアが仕事に来るって思ってるはずだから。
もし良ければ代わりの者を行かせますから声をかけて下さいって伝えてね。
その時昨日の給金を貰えたらミリアが貰って行きなさい」
「すみません。ありがとうございます」
手を振る子供達に別れを告げ二人はてくてくと町に向かって歩き出した。
その後ろから、目の縁を赤くしたマックスが走り出してミリアの近くまでやって来た。
「ミリア! 絶対怪我とかすんなよ!
ウォーカー! ミリアを泣かしたらボッコボコにしてやるから覚えとけよ!」
「ありがとう。マックスも頑張ってすっごい武器作ってね」
二人は杣道を進み村までやって来た。
「バレリーさん、私今日孤児院を出るんです」
「また突然だね、隣は誰なんだい?」
「ミリアがお世話になりました。兄のウォーカーと言います。
昨日の夜、ミリアを迎えに帰って来ました」
礼儀正しく挨拶をしたウォーカーを上から下までジロジロ見ていたバレリーはウォーカーに合格点をつけたらしい。
「それでか、ミリアは昨日一日中ソワソワしてて仕事になんなかったもんねえ」
「ごめんなさい」
「じゃあ残念だけど、仕事は終わりなんだね」
「シスターが代わりの子を寄こしますか? って言ってました」
「そうだね、後で行ってみるよ。ちょっと待ってな」
バレリーが店の奥に入って行き、暫くして手に袋を持って出てきた。
「ほら、これは昨日の給金。で、こっちの袋は誕生日のお祝いと餞別。
元気でやるんだよ」
「ありがとうございます。あの、お世話になりました」
ミリアは生まれて初めての駅馬車に揺られている。
馬車が動き始めた頃は三年前ウォーカーが歩いたと言う道を見るのを楽しみにしていたミリアだったが、外の景色どころか尻の痛さに気づく余裕がないほど真っ青な顔で口を押さえていた。
「大丈夫か?」
口の利けないミリアは涙目でウォーカーを見上げ小さく頷いた。
「困ったな。ちっとも大丈夫そうじゃない。気持ち悪いのを抑える薬ってない?」
首を振るミリア。
「嬢ちゃん、これを噛んでみな。うちの子はこれがよく効くんだ。ペパーミントだよ」
ミリア達の向かい側に座っていた女性が声をかけてきた。
お礼を言って受け取り口に含んでいると少しずつ吐き気がおさまってきた。
何枚かのペパーミントを譲ってもらい、二日かけてボロボロのミリアと心配顔のウォーカーはアッシュフォールの町にたどり着いた。
「ミリアがあんなに馬車に弱いなんて」
「兄ちゃん・・私、馬車はムリかも」
「あー、えっと、カランカムの町に行く時また馬車に乗りたいなぁと」
「・・」
「この町で何日か宿に泊まる予定だから」
一年ぶりにやって来たアッシュフォールの町はいつも通り賑わっていて、様々な声や匂いがしている。
「ここでミリアの冒険者登録をするんだけど、ひとまず宿で横になったほうが良さそうだね」
いまだに青い顔でふらふらと振れているミリアの手を引きながら、以前泊まっていた宿に足を向けた。
「ウォーカーじゃない! あんた突然いなくなってみんな心配してたんだよ。
その後ろの子は誰?」
「お久しぶりです。妹です、ちょっと馬車に酔ってしまっていて」
「初めまして、ミリアと言います」
小声で挨拶すると、
「何! もー可愛い~。初めて見た時のウォーカーより可愛いって、リラが知ったらヤバいよ」
二人用の部屋を取り階段を上がった。
ベッドを見た途端マントを脱ぐ間もなく倒れ込んだミリアは、ふーっと大きく深呼吸してうとうとと眠りについた。
部屋には小さいテーブルと椅子が二脚。
マントを脱いで 椅子に腰掛けたウォーカーはぐっすりと眠っているミリアを見つめ続けた。
(やっと一緒に暮らせる。ここからが本当のスタートだ)
ウォーカーは首に掛けていたネックレスを外した。
ウォーカーが作った魔道具の一つで、ミリアの為に作った“着けている者の魔法の威力を高めてくれる” もの。
窓から見える空が少しずつ夕焼けに染まっていった。
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