32 / 149
ハーミット王国、ドワーフの里へ
30.ドワーフの里で大宴会
しおりを挟む
ナナの家の中は男らしい言葉遣いとは裏腹にとても女の子らしく飾られていた。
テーブルの上の一輪挿しには野の花が生けられており、窓辺にはハーブの鉢植えが置かれている。
家具は全て蜜蝋でしっかりと磨き込まれていて、ベッドには手作りらしいキルトがかけられている。
家に入り椅子を勧められたミリアとは違って、ガンツとマックスは床に正座させられた。
「茶入れるからそこに座って聞きやがれ。ガンツ、大体お前は・・」
ミリアはナナの入れてくれた美味しいお茶を飲みながら、正座して説教を受けているガンツとマックスを目線に入れないよう努力していた。
(あっ、人が来る)
誰かが玄関をノックする小さな音が聞こえ、ガンツより大きなドワーフが覗き込んできた。
「ナナちゃん、あの」
「今取り込んでんだ、後にしやがれ!」
「ひっ」
バタンとドアが閉まりパタパタと走り去る音。
「チッ、マーニーの奴使えねえ」
「ああ? ガンツなんか言ったか? 使えねえのはガンツだろうが。大体ガンツはな・・」
腰に手を当てヒートアップしていくナナの前で、
(来るならグレンが来いよ、アイツなら何かしらヘマやらかしてナナの攻撃対象になってくれるんだが。それともマックスを囮に・・)
とても不謹慎な事を考えていた。
ひとしきり小言が続き、ナナの勢いが止まった瞬間を狙ってミリアが話しかけた。
「ナナさん、良かったら甘いお菓子は如何ですか?」
「えっ? お菓子。どんなやつ?」
ナナが勢いよく振り返り目を輝かせた。
「「ミイ、グッジョブ」」
ただ今、説教は小休止中。
何故か今頃やって来たグレンを含めた五人は庭でバーベキューの準備をはじめた。
勝手にやって来たくせにビクビクと挙動不審なグレン。
火をおこし肉を焼きはじめるとあちこちの家からドワーフが顔を覗かせた。
「だから言っただろ? こんな事をしたらやばいってよお」
グレンが周りを見ながらオドオドしている。
匂いに釣られたドワーフがどんどん近づいてくる。
「でも、お肉もソーセージも一杯ありますし。
解体してない魔物のお肉もありますから。足りなくなったら解体お願いしますね」
「ミイちゃん、みんなにちょびっとずつ分けてやってもいいか? みんな新鮮な肉に飢えてるからよお」
「大放出しちゃうつもりなんで、ちょっとと言わずドーンと行っちゃいましょう」
ナナが集まりはじめたドワーフに向けて怒鳴った。
「肉が食いたい奴はでけえ皿もってこい! ガキが一番最初で、あとは早いもん勝ちだからな」
ばらばらと血相を変えて走って行く男達。子供はそれを見た後ナナの所にやって来た。
「お肉?」
「おう、ソーセージもあるってよ。テル、食いたいか?」
「「「うん!」」」
「なら順番に並べ、喧嘩する奴は一番最後だからな」
ミリアが大量のお肉やハム、ソーセージをテーブルに並べる。
「凄えな、こんだけありゃみんなの口に入るぜ」
ナナが嬉しそうにお肉を追加で焼きはじめた。
「足りなければまだまだ出しますね」
「はあ? アンタどんだけ持ってんだよ。
信じらんねえ」
ミリアは焼ける野菜やシチューやスープの入った鍋、その他にもいろんな種類のサラダや果物を出した。
「ここんとこずっと天気が悪くてよお、野菜も肉も何も手に入らなくて。
もうじきうっすいスープで我慢するようになるって言ってたんだ。
俺達は良いけどよ、ちっこい餓鬼が腹減らしてるの見るのはキツかったぜ」
ドワーフが何樽も酒を持ってきて、その夜は里の全員が集まって大宴会となった。
真夜中過ぎ酔っ払ったドワーフが寝落ちしはじめた。
ドワーフの中でもガンツは酒に強い方なのか、半分目が閉じかけているグレンの愚痴を肴に平気な顔で酒を飲んでいる。
マックスは早い段階で長老に潰されていた。
「今日は本当にありがとね。天気はよくなるし、みんなお腹いっぱい食べられたし。
これからは収穫も狩りも出来る、鉱山にも行ける。
これでノッカーのご機嫌が直ってくれたら言うことなしなんだけどね」
ナナの女の子らしい態度と言葉遣いに気付かない振りをしてミリアは頷いた。
「こんな楽しい夜は初めて。ドワーフのみんなは色んな特技があるのね」
ドワーフ達は酒に酔ってくると、楽器を持ち出して来て歌や踊りを披露してくれた。
その横を元気に駆け抜ける子供達。
女達はミリアにお礼を言いにきた後、家に篭っていた間に作ったキルトや保存食の品評会。
ミリアは大きなベッドカバーとジャムや木の実の入った焼き菓子を貰った。
「私もこんなのは久しぶり。ガンツが出て行ってから凄くつまんなかった。
エイダとかラーニーとか、友達が心配して色々声かけてくれるんだけど・・」
パチパチと燃える火を見ながらぼうっとしていると栗鼠のラタトスクが後ろからこっそりと姿を現した。
「珍しい、栗鼠が来るなんて」
「ナナ、私ちょっと出かけてくる」
「こんな夜になんて危ないから駄目だよ」
夜更けに一人で出かけようとしたミリアをナナが引き留めた。
「ナナ、ミイは大丈夫。気を付けて行ってこいよ」
ガンツが声をかけて来た。
「俺っちが着いてってやりてえが、奴はミイ一人に来て欲しいだろうからな」
「行ってきます」
テーブルの上の一輪挿しには野の花が生けられており、窓辺にはハーブの鉢植えが置かれている。
家具は全て蜜蝋でしっかりと磨き込まれていて、ベッドには手作りらしいキルトがかけられている。
家に入り椅子を勧められたミリアとは違って、ガンツとマックスは床に正座させられた。
「茶入れるからそこに座って聞きやがれ。ガンツ、大体お前は・・」
ミリアはナナの入れてくれた美味しいお茶を飲みながら、正座して説教を受けているガンツとマックスを目線に入れないよう努力していた。
(あっ、人が来る)
誰かが玄関をノックする小さな音が聞こえ、ガンツより大きなドワーフが覗き込んできた。
「ナナちゃん、あの」
「今取り込んでんだ、後にしやがれ!」
「ひっ」
バタンとドアが閉まりパタパタと走り去る音。
「チッ、マーニーの奴使えねえ」
「ああ? ガンツなんか言ったか? 使えねえのはガンツだろうが。大体ガンツはな・・」
腰に手を当てヒートアップしていくナナの前で、
(来るならグレンが来いよ、アイツなら何かしらヘマやらかしてナナの攻撃対象になってくれるんだが。それともマックスを囮に・・)
とても不謹慎な事を考えていた。
ひとしきり小言が続き、ナナの勢いが止まった瞬間を狙ってミリアが話しかけた。
「ナナさん、良かったら甘いお菓子は如何ですか?」
「えっ? お菓子。どんなやつ?」
ナナが勢いよく振り返り目を輝かせた。
「「ミイ、グッジョブ」」
ただ今、説教は小休止中。
何故か今頃やって来たグレンを含めた五人は庭でバーベキューの準備をはじめた。
勝手にやって来たくせにビクビクと挙動不審なグレン。
火をおこし肉を焼きはじめるとあちこちの家からドワーフが顔を覗かせた。
「だから言っただろ? こんな事をしたらやばいってよお」
グレンが周りを見ながらオドオドしている。
匂いに釣られたドワーフがどんどん近づいてくる。
「でも、お肉もソーセージも一杯ありますし。
解体してない魔物のお肉もありますから。足りなくなったら解体お願いしますね」
「ミイちゃん、みんなにちょびっとずつ分けてやってもいいか? みんな新鮮な肉に飢えてるからよお」
「大放出しちゃうつもりなんで、ちょっとと言わずドーンと行っちゃいましょう」
ナナが集まりはじめたドワーフに向けて怒鳴った。
「肉が食いたい奴はでけえ皿もってこい! ガキが一番最初で、あとは早いもん勝ちだからな」
ばらばらと血相を変えて走って行く男達。子供はそれを見た後ナナの所にやって来た。
「お肉?」
「おう、ソーセージもあるってよ。テル、食いたいか?」
「「「うん!」」」
「なら順番に並べ、喧嘩する奴は一番最後だからな」
ミリアが大量のお肉やハム、ソーセージをテーブルに並べる。
「凄えな、こんだけありゃみんなの口に入るぜ」
ナナが嬉しそうにお肉を追加で焼きはじめた。
「足りなければまだまだ出しますね」
「はあ? アンタどんだけ持ってんだよ。
信じらんねえ」
ミリアは焼ける野菜やシチューやスープの入った鍋、その他にもいろんな種類のサラダや果物を出した。
「ここんとこずっと天気が悪くてよお、野菜も肉も何も手に入らなくて。
もうじきうっすいスープで我慢するようになるって言ってたんだ。
俺達は良いけどよ、ちっこい餓鬼が腹減らしてるの見るのはキツかったぜ」
ドワーフが何樽も酒を持ってきて、その夜は里の全員が集まって大宴会となった。
真夜中過ぎ酔っ払ったドワーフが寝落ちしはじめた。
ドワーフの中でもガンツは酒に強い方なのか、半分目が閉じかけているグレンの愚痴を肴に平気な顔で酒を飲んでいる。
マックスは早い段階で長老に潰されていた。
「今日は本当にありがとね。天気はよくなるし、みんなお腹いっぱい食べられたし。
これからは収穫も狩りも出来る、鉱山にも行ける。
これでノッカーのご機嫌が直ってくれたら言うことなしなんだけどね」
ナナの女の子らしい態度と言葉遣いに気付かない振りをしてミリアは頷いた。
「こんな楽しい夜は初めて。ドワーフのみんなは色んな特技があるのね」
ドワーフ達は酒に酔ってくると、楽器を持ち出して来て歌や踊りを披露してくれた。
その横を元気に駆け抜ける子供達。
女達はミリアにお礼を言いにきた後、家に篭っていた間に作ったキルトや保存食の品評会。
ミリアは大きなベッドカバーとジャムや木の実の入った焼き菓子を貰った。
「私もこんなのは久しぶり。ガンツが出て行ってから凄くつまんなかった。
エイダとかラーニーとか、友達が心配して色々声かけてくれるんだけど・・」
パチパチと燃える火を見ながらぼうっとしていると栗鼠のラタトスクが後ろからこっそりと姿を現した。
「珍しい、栗鼠が来るなんて」
「ナナ、私ちょっと出かけてくる」
「こんな夜になんて危ないから駄目だよ」
夜更けに一人で出かけようとしたミリアをナナが引き留めた。
「ナナ、ミイは大丈夫。気を付けて行ってこいよ」
ガンツが声をかけて来た。
「俺っちが着いてってやりてえが、奴はミイ一人に来て欲しいだろうからな」
「行ってきます」
6
あなたにおすすめの小説
悪役断罪?そもそも何かしましたか?
SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。
男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。
あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。
えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。
勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。
よくある父親の再婚で意地悪な義母と義妹が来たけどヒロインが○○○だったら………
naturalsoft
恋愛
なろうの方で日間異世界恋愛ランキング1位!ありがとうございます!
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
最近よくある、父親が再婚して出来た義母と義妹が、前妻の娘であるヒロインをイジメて追い出してしまう話………
でも、【権力】って婿養子の父親より前妻の娘である私が持ってのは知ってます?家を継ぐのも、死んだお母様の直系の血筋である【私】なのですよ?
まったく、どうして多くの小説ではバカ正直にイジメられるのかしら?
少女はパタンッと本を閉じる。
そして悪巧みしていそうな笑みを浮かべて──
アタイはそんな無様な事にはならねぇけどな!
くははははっ!!!
静かな部屋の中で、少女の笑い声がこだまするのだった。
断罪中、味方が多すぎて王子が孤立している件について
夏乃みのり
恋愛
バーンスタイン伯爵家の令嬢ラミリアは、魔力も剣の才能もない「ごく普通」の地味な女性。
ある日のパーティーで、婚約者であるジェラルド第二王子から「地味で無能で嫉妬深い」と罵られ、身に覚えのない罪で婚約破棄を突きつけられてしまう。
しかし、断罪劇は予想外の展開へ。
お姉さまに挑むなんて、あなた正気でいらっしゃるの?
中崎実
ファンタジー
若き伯爵家当主リオネーラには、異母妹が二人いる。
殊にかわいがっている末妹で気鋭の若手画家・リファと、市中で生きるしっかり者のサーラだ。
入り婿だったのに母を裏切って庶子を作った父や、母の死後に父の正妻に収まった継母とは仲良くする気もないが、妹たちとはうまくやっている。
そんな日々の中、暗愚な父が連れてきた自称「婚約者」が突然、『婚約破棄』を申し出てきたが……
※第2章の投稿開始後にタイトル変更の予定です
※カクヨムにも同タイトル作品を掲載しています(アルファポリスでの公開は数時間~半日ほど早めです)
偽物と断罪された令嬢が精霊に溺愛されていたら
影茸
恋愛
公爵令嬢マレシアは偽聖女として、一方的に断罪された。
あらゆる罪を着せられ、一切の弁明も許されずに。
けれど、断罪したもの達は知らない。
彼女は偽物であれ、無力ではなく。
──彼女こそ真の聖女と、多くのものが認めていたことを。
(書きたいネタが出てきてしまったゆえの、衝動的短編です)
(少しだけタイトル変えました)
婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~
tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!!
壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは???
一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
私の婚約者でも無いのに、婚約破棄とか何事ですか?
狼狼3
恋愛
「お前のような冷たくて愛想の無い女などと結婚出来るものか。もうお前とは絶交……そして、婚約破棄だ。じゃあな、グラッセマロン。」
「いやいや。私もう結婚してますし、貴方誰ですか?」
「俺を知らないだと………?冗談はよしてくれ。お前の愛するカーナトリエだぞ?」
「知らないですよ。……もしかして、夫の友達ですか?夫が帰ってくるまで家使いますか?……」
「だから、お前の夫が俺だって──」
少しずつ日差しが強くなっている頃。
昼食を作ろうと材料を買いに行こうとしたら、婚約者と名乗る人が居ました。
……誰コイツ。
弟が悪役令嬢に怪我をさせられたのに、こっちが罰金を払うだなんて、そんなおかしな話があるの? このまま泣き寝入りなんてしないから……!
冬吹せいら
恋愛
キリア・モルバレスが、令嬢のセレノー・ブレッザに、顔面をナイフで切り付けられ、傷を負った。
しかし、セレノーは謝るどころか、自分も怪我をしたので、モルバレス家に罰金を科すと言い始める。
話を聞いた、キリアの姉のスズカは、この件を、親友のネイトルに相談した。
スズカとネイトルは、お互いの身分を知らず、会話する仲だったが、この件を聞いたネイトルが、ついに自分の身分を明かすことに。
そこから、話しは急展開を迎える……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる