【完結】双子だからって都合よく使われて犯罪者にされたので、ざまあしようとしたら国をあげての大騒ぎになりました

との

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1.妹、テレーザ

「判決を申し渡す。シャーロット・アルフォンス公爵令嬢に女子矯正労働所にて2年間の無料奉仕活動を命じる」

 判決を神妙な態度で聞き入れたシャーロットは小さく頭を下げてから弁護士と共に退席した。


「テ⋯⋯シャーロット。まさかこんな事になるなんて!」

 涙で化粧が落ちているのをハンカチで隠したフィアナはシャーロットの母で、険しい顔で隣に並んで立っているのは父親のローラン・アルフォンス公爵。


 勝ち誇った笑みを浮かべてやって来たのは今回の裁判の原告であるエスメラルダ・カンバード侯爵夫人。扇子をヒラヒラと揺らしながらシャーロットを睨みつけた夫人は捕まえた鼠を痛ぶる猫のように目を細めた。

「優秀な弁護士のお陰かしら⋯⋯たった2年で済んで良かったですわねえ。シャーロット様は16歳、退所した時18歳なら人生やり直しできるかもしれませんわね。
最も今回のお話は社交界に広がるでしょうから、真面なお相手とのご縁は期待できないでしょうけど」



 今回有罪とされたシャーロットの罪は『不貞行為』

 エルバルド王国は先代の国王の時から不貞行為や不倫について非常に厳しく罰せられるようになった。

 婚約者がいるにも関わらず別の者と交際し平然と婚約破棄を行う者が増え、当たり前のように愛人を見せびらかし非嫡出子が量産される事が社会問題となっていた頃⋯⋯。

 当時の第一王子が他国の高官を招いた王城のパーティーで派手に婚約破棄騒動を起こした後廃嫡された。それをキッカケに国王が退位し法改正が行われた。

 正式に書類を交わした婚約や教会で祝福された婚姻に対し不貞行為を行った者は、その内容によって強制労働が課せられることになった。

「たった16歳で既に男狂いだなんて噂が流れてはねぇ。シャーロット様の将来が楽しみですわ」

 シャーロットの年齢を考慮し裁判は非公開で行われたが、エスメラルダは噂を広げる気満々のよう。


「今回の件でエスメラルダ様はカンバード侯爵と離縁し実家に戻ることになったのでしたわねえ。良いご縁が見つかる事をお祈りしておりますわ」


 バキリと扇子が折れる音がしてエスメラルダがシャーロットに掴みかかろうとした。

「エスメラルダ、負け犬の遠吠えなど気にすることはない。この女はこれから地獄の女子収容所に行くんだから」

 シャーロットが行く女子矯正労働所は別名女子収容所と呼ばれ、体罰好きの女性領主の元で洗濯・掃除・家畜の世話などを行なわされる。

「ふふっ、その綺麗な手が何日持つのかしらね?」

 刑期を終えた後はガリガリに痩せ衰え見る影もなくなっている女性が殆どで、小さな物音にさえ怯えるようになっている人も多い。



 喜色満面のエスメラルダが家族と共に裁判所を出ていくとシャーロットが『ふん』と鼻で笑った。

「だーれがあんなとこ行くもんですか。だってぇ、行くのはだもの」


 先程までしおらしい態度だったがにんまりと笑った。

「出発は3日後だったから、それまでにもう一つ片付けておかなくちゃね。
お母様ぁ、すごく疲れちゃったわ。気分転換に新しいドレスを見てから帰りましょうよ」



 若干16歳で妻子あるカンバード侯爵と不倫騒動を起こしたのは双子の妹のテレーザだったが、当人は『自分は姉のシャーロットだ』と名乗っていた。
 勿論、裁判所にやって来たのはシャーロットのふりをしたテレーザ。

 社交が苦手で学園以外は家に篭ってばかりの姉のシャーロットと、華やかな場所でチヤホヤされるのが好きな妹のテレーザは一卵性双生児。
 親もいまだに見間違えるくらいそっくりな二人だが家の外に出る時ほぼ素顔のシャーロットと、きちんと化粧をして着飾ったテレーザは全くと言っていいほど似ていない。



(いけない遊びには惹かれるけど自分の将来を賭けるのは嫌よ⋯⋯そうだわ、いいこと思いついちゃった!)

 テレーザは姉のシャーロットだと名乗り大人の社交場に出かけて行った。妻帯者であろうと独身であろうと楽しい会話をしてくれるイケメンで金払いがいいなら問題無し。

 ダンス・カジノ・ヨット・二人だけの部屋での秘密のお楽しみ、お酒・煙草・違法な薬⋯⋯。自分の罪を肩代わりしてくれる姉の存在があれば怖いものはない。



 妻にバレたと青い顔で侯爵が告白して来た時には『カンバード侯爵は金払いは良かったけどしつこくなってたから手が切れてラッキー』だと思っていた。

 まさかエスメラルダが裁判所に訴え出るとは思わなかったが、訴えられたのは『姉のシャーロット』なのでテレーザにしてみれば飽きていた男と手が切れた⋯⋯程度にしか思っていない。

(さあ、この件が表沙汰になるまでにあっちを済まさなくちゃ)




 裁判の翌日⋯⋯。


 妹が自分の名前を騙って遊んでいる事も昨日裁判が行われた事も知らずに、授業前の時間を使って学園の図書館に篭っていたシャーロットは突然の大講堂への呼び出しに首を傾げた。

(こんな時間になんだろう? 全校集会が早まったとかかな?)

 学園では月の半ばに全校集会が開かれる。今月の予定は来週だったはずだが見間違えたのだろうか⋯⋯と思いながら席を立った。

(みんなも突然聞いたんだわ、何かとんでもないことがあったのかしら)

 バタバタと教室を飛び出していく生徒や楽しげに笑いながら大講堂に向かう生徒達を横目に、少し俯いたままのシャーロットは抱えていた本を持ち直しながら早足で通り過ぎた。



『テレーザ様とは随分違ってらっしゃるのねえ』

『お友達もおられないのかしら?』

 人見知りで引っ込み思案なシャーロットの側で聞こえよがしに嫌味を言うクラスメイトの声は聞こえないふりをして歩き続け、大講堂でなるべく隅の席をゲットしようと急いでいたシャーロットの目に婚約者のエドワード・フォルスト侯爵令息と妹のテレーザが手を繋いで歩いているのが見えた。

(本当にお似合いよね。テレーザと婚約し直した方がいいと思う)


 5年前に婚約してから数えるほどしか話したことがない婚約者のエドワードは学園でも王都でもテレーザと一緒にいるところを頻繁に見かける⋯⋯らしい。

 クラスメイトが虐めがてらに何度も言ってくるところをみると本当のことだろうと思うし、エドワードが家に来るのもテレーザを迎えに来る時くらい。


 大講堂に全校生徒が集まり何があったのかとソワソワしている中、テレーザの腰を抱いたエドワードがひな壇に立った。

「シャーロット・アルフォンス公爵令嬢、前へ出てこい!」

 大講堂の隅で気配を殺していたシャーロットは生徒や教師がキョロキョロとあたりを見回す中で恐る恐る立ち上がった。注目を浴びて真っ青になったシャーロットはブルブルと震えながらひな壇の手前まで歩いた。
 


「フォルスト侯爵嫡男エドワードはここにシャーロット・アルフォンス公爵令嬢との婚約破棄を宣言する!
そして、テレーザ・アルフォンス公爵令嬢との婚約を発表するものである!」

「えっ、それヤバくない?」

「侯爵家でも拙いだろ」


「つ、謹んでお受けいたします。妹テレーザとの婚約おめでとうございます」

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