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2.姉、シャーロット
「あの、それって問題になるんじゃないでしょうか? 姉妹であっても婚約期間中に別の女性と付き合ってたことになりませんか?」
大勢の前に立たされただけでパニックになりかけているシャーロットはすんなりと婚約破棄を認めたが、女子生徒の一人が勇気を出して疑問の声を上げた。
(そ、そう言えば⋯⋯エドワード様とテレーザってずっと付き合ってた事になる? えっと、でっでも何でこんな人前で発表するのかな)
「確かにその通り。俺はシャーロットとの婚約中から将来の妹としてテレーザと親しくしていた。
テレーザとの仲が変わったのはシャーロット、貴様のせいだぞ!!」
「えー、なにそれ」
「開き直っちゃったよ」
堂々と不貞を口にしたエドワードに向かって大講堂に集められた生徒達からヤジが飛んだ。
「皆、聞いて欲しい。シャーロット・アルフォンスは昨日、カンバード侯爵との不倫騒動で有罪判決を受けたんだ」
「カ? カン⋯⋯どっどなたの事でしょうか?」
初めて聞く名前に戸惑ったシャーロットは震える声で聞き返した。
(えっと、今不倫とか判決とか言ってたような)
「白々しい事を言うのは止めろ。昨日裁判所で有罪を受け入れたんだろう? 学園長先生が見ておられたんだ」
「あの、本当に何のことか分かりません。婚約破棄は喜んで⋯⋯謹んでお受けいたしますし、テレーザともお似合いだと思っていますけど裁判と言うのは⋯⋯」
首を傾げるシャーロットを無視したままエドワードの一人語りが続いた。
「以前からその事で悩んでいた俺を慰めてくれていたのがテレーザだったんだ。
シャーロットは2年間の女子収容所送りが決まった。
この状況で俺の行いを不貞行為だと言う者がいるなら申し出て欲しい。その時は潔く法の元に身を委ねるつもりだ」
誰もが顔を見合わせるだけで何も言わなかった。
「シャーロット・アルフォンス、誠に残念だが君は今日で学園を退学とする。女子収容所で己の所業を反省し更生への道を歩んで欲しいと切に願う」
大げさなそぶりの学園長の言葉が終わると同時に学園の警備員がシャーロットの両腕を拘束した。
バラバラと持っていた本が落ちる。
「あっ、図書館で借りた本が。傷がついちゃう!」
近くにいた生徒が本を拾い上げてくれたが、シャーロットがお礼を言う前にそっぽを向いてしまった。
「君のような人よりこの本の方がよほど価値がある。図書館に戻しておくよ」
「シャーロット、もう悪いことしちゃダメよ。双子として生まれたのにこんなに違ってしまうなんて! 裁判は非公開で行われたから安心していたのかもしれないけど、こんな事が秘密にできるわけないのよ」
顔を覆って泣き真似をするテレーザの肩をエドワードが抱きしめた。
「良いところは全てテレーザに、最低な面はシャーロットに集まってるんだよ。赤の他人だと思えばいい。こんなに似ていない双子は珍しいんだから。
さあ、不道徳な貴様に学園の敷地内にいられるのさえ迷惑だ。とっとと帰って収容所行きの準備でもしたまえ!」
教師達の蔑むような目と生徒達の汚らわしい物を見る目。普段でさえ人前で話すのが苦手なシャーロットは間違いを正す勇気もないまま警備員に引き摺られて学園を追い出された。
(裁判ってなんの事? 不貞がどうとかって⋯⋯)
何が起きたのか全くわからないが、とにかく家に帰って両親に聞くしかないと思ったシャーロットは家に向けてトボトボと歩きはじめた。
(荷物はテレーザが持って帰ってくれるといいな)
普段馬車で通っている道を歩いて、家に辿り着いた時には既にお昼を過ぎていた。
シャーロットを学園から追い出すことに成功したテレーザはニマニマ笑いが抑えられずエドワードの胸に顔を押し付けたままでいた。
「テレーザ、あんな姉のことでこんなに心を痛めて⋯⋯なんて可哀想なんだ」
(醜聞は押し付けたし、将来有望な婚約者を奪って⋯⋯本当にシャーロット様々だわ。
まあ、2年間はいい子にしておかなくちゃいけないけど、女子収容所ってどこにあるんだろ? 近くならまだ使えるかも)
徒歩で帰って来たシャーロットに驚いた門番に門を開けてもらい、玄関へ辿り着いたシャーロットはひんやりした玄関ホールに入って漸くホッと一息つけた。
「シャーロット、こんな時間に何をしているの? 学園はどうしたの?」
「お母様、ちょうど良かった。教えていただきたいことがあるんです。裁判ってなんの事ですか? そのせいで学園を退学だとか婚約破棄だとか言われて⋯⋯学園の警備員に追い出されてしまったんです」
「あ、ああ。そう⋯⋯えーっと、お父様が帰って来られたら教えてくださると思うから部屋にいなさいな」
顔色を変えて逃げ出した母を見て、シャーロットは漸くとんでもないことが起きているのだと実感した。
(誤解があったとかそう言うのじゃないみたい。お母様もテレーザも知っている。お父様も、みんな知ってるのに私にだけ知らせてくれないって一体何があったの?)
トボトボと部屋に戻り着替えを済ませたが食欲もないしいつものように刺繍や読書をする気にもなれない。
公爵家の割には使用人が少ないからかシャーロットがあまり手がかからないからか、シャーロット専属の侍女やメイドはいない。
(こんな時テレーザやお母様みたいに専属の使用人がいたら噂話とか聞けたのかしら)
夕方になり部屋の外が騒がしくなったのはテレーザが学園から帰ってきたからだろう、テレーザはいつも侍女に指示を出しながら部屋に戻る。
「この間作った薄紫のドレスを着るから直ぐに準備して」
「今日のおやつには何? じゃあ紅茶じゃなくてオレンジジュースがいいわ。ちゃんと搾りたてを持ってきて」
「夕食の前にお母様とお話ししたいの。新し⋯⋯」
自分の部屋に向かっているらしいテレーザの声が小さくなっていったが、シャーロットにはドアを開ける勇気がなかった。
テレーザに聞いたらわかるかもと思いつつシャーロットが有罪だと信じていた彼女の冷ややかな目を思い出して肩を落とした。
(家族にあんな目で見られるようなことした覚えなんてないんだけど)
トントンとドアがノックされて執事のエマーソンが入ってきた。
目を背けたまま手に持っていた書類をシャーロットに渡して早口で説明をはじめたエマーソンは居心地悪そうに足を何度も踏み替えていた。
「明後日シャーロット様のお迎えの馬車が来るそうです。荷物は不要で⋯⋯と言うか何も持っていけないそうです。それと、それまでの間お食事はお部屋にお持ち致しますので、お部屋から出られないようにと旦那様が仰っておられました」
エマーソンが渡してきた書類には裁判所が発行した女子収容所への収監日が書かれていた。
「罪状は、不貞行為? 何のことかわからないわ。何故そこに2年も行かなくちゃいけないのかお父様にお伺いしたいのだけど、聞いてきてくれる?」
大勢の前に立たされただけでパニックになりかけているシャーロットはすんなりと婚約破棄を認めたが、女子生徒の一人が勇気を出して疑問の声を上げた。
(そ、そう言えば⋯⋯エドワード様とテレーザってずっと付き合ってた事になる? えっと、でっでも何でこんな人前で発表するのかな)
「確かにその通り。俺はシャーロットとの婚約中から将来の妹としてテレーザと親しくしていた。
テレーザとの仲が変わったのはシャーロット、貴様のせいだぞ!!」
「えー、なにそれ」
「開き直っちゃったよ」
堂々と不貞を口にしたエドワードに向かって大講堂に集められた生徒達からヤジが飛んだ。
「皆、聞いて欲しい。シャーロット・アルフォンスは昨日、カンバード侯爵との不倫騒動で有罪判決を受けたんだ」
「カ? カン⋯⋯どっどなたの事でしょうか?」
初めて聞く名前に戸惑ったシャーロットは震える声で聞き返した。
(えっと、今不倫とか判決とか言ってたような)
「白々しい事を言うのは止めろ。昨日裁判所で有罪を受け入れたんだろう? 学園長先生が見ておられたんだ」
「あの、本当に何のことか分かりません。婚約破棄は喜んで⋯⋯謹んでお受けいたしますし、テレーザともお似合いだと思っていますけど裁判と言うのは⋯⋯」
首を傾げるシャーロットを無視したままエドワードの一人語りが続いた。
「以前からその事で悩んでいた俺を慰めてくれていたのがテレーザだったんだ。
シャーロットは2年間の女子収容所送りが決まった。
この状況で俺の行いを不貞行為だと言う者がいるなら申し出て欲しい。その時は潔く法の元に身を委ねるつもりだ」
誰もが顔を見合わせるだけで何も言わなかった。
「シャーロット・アルフォンス、誠に残念だが君は今日で学園を退学とする。女子収容所で己の所業を反省し更生への道を歩んで欲しいと切に願う」
大げさなそぶりの学園長の言葉が終わると同時に学園の警備員がシャーロットの両腕を拘束した。
バラバラと持っていた本が落ちる。
「あっ、図書館で借りた本が。傷がついちゃう!」
近くにいた生徒が本を拾い上げてくれたが、シャーロットがお礼を言う前にそっぽを向いてしまった。
「君のような人よりこの本の方がよほど価値がある。図書館に戻しておくよ」
「シャーロット、もう悪いことしちゃダメよ。双子として生まれたのにこんなに違ってしまうなんて! 裁判は非公開で行われたから安心していたのかもしれないけど、こんな事が秘密にできるわけないのよ」
顔を覆って泣き真似をするテレーザの肩をエドワードが抱きしめた。
「良いところは全てテレーザに、最低な面はシャーロットに集まってるんだよ。赤の他人だと思えばいい。こんなに似ていない双子は珍しいんだから。
さあ、不道徳な貴様に学園の敷地内にいられるのさえ迷惑だ。とっとと帰って収容所行きの準備でもしたまえ!」
教師達の蔑むような目と生徒達の汚らわしい物を見る目。普段でさえ人前で話すのが苦手なシャーロットは間違いを正す勇気もないまま警備員に引き摺られて学園を追い出された。
(裁判ってなんの事? 不貞がどうとかって⋯⋯)
何が起きたのか全くわからないが、とにかく家に帰って両親に聞くしかないと思ったシャーロットは家に向けてトボトボと歩きはじめた。
(荷物はテレーザが持って帰ってくれるといいな)
普段馬車で通っている道を歩いて、家に辿り着いた時には既にお昼を過ぎていた。
シャーロットを学園から追い出すことに成功したテレーザはニマニマ笑いが抑えられずエドワードの胸に顔を押し付けたままでいた。
「テレーザ、あんな姉のことでこんなに心を痛めて⋯⋯なんて可哀想なんだ」
(醜聞は押し付けたし、将来有望な婚約者を奪って⋯⋯本当にシャーロット様々だわ。
まあ、2年間はいい子にしておかなくちゃいけないけど、女子収容所ってどこにあるんだろ? 近くならまだ使えるかも)
徒歩で帰って来たシャーロットに驚いた門番に門を開けてもらい、玄関へ辿り着いたシャーロットはひんやりした玄関ホールに入って漸くホッと一息つけた。
「シャーロット、こんな時間に何をしているの? 学園はどうしたの?」
「お母様、ちょうど良かった。教えていただきたいことがあるんです。裁判ってなんの事ですか? そのせいで学園を退学だとか婚約破棄だとか言われて⋯⋯学園の警備員に追い出されてしまったんです」
「あ、ああ。そう⋯⋯えーっと、お父様が帰って来られたら教えてくださると思うから部屋にいなさいな」
顔色を変えて逃げ出した母を見て、シャーロットは漸くとんでもないことが起きているのだと実感した。
(誤解があったとかそう言うのじゃないみたい。お母様もテレーザも知っている。お父様も、みんな知ってるのに私にだけ知らせてくれないって一体何があったの?)
トボトボと部屋に戻り着替えを済ませたが食欲もないしいつものように刺繍や読書をする気にもなれない。
公爵家の割には使用人が少ないからかシャーロットがあまり手がかからないからか、シャーロット専属の侍女やメイドはいない。
(こんな時テレーザやお母様みたいに専属の使用人がいたら噂話とか聞けたのかしら)
夕方になり部屋の外が騒がしくなったのはテレーザが学園から帰ってきたからだろう、テレーザはいつも侍女に指示を出しながら部屋に戻る。
「この間作った薄紫のドレスを着るから直ぐに準備して」
「今日のおやつには何? じゃあ紅茶じゃなくてオレンジジュースがいいわ。ちゃんと搾りたてを持ってきて」
「夕食の前にお母様とお話ししたいの。新し⋯⋯」
自分の部屋に向かっているらしいテレーザの声が小さくなっていったが、シャーロットにはドアを開ける勇気がなかった。
テレーザに聞いたらわかるかもと思いつつシャーロットが有罪だと信じていた彼女の冷ややかな目を思い出して肩を落とした。
(家族にあんな目で見られるようなことした覚えなんてないんだけど)
トントンとドアがノックされて執事のエマーソンが入ってきた。
目を背けたまま手に持っていた書類をシャーロットに渡して早口で説明をはじめたエマーソンは居心地悪そうに足を何度も踏み替えていた。
「明後日シャーロット様のお迎えの馬車が来るそうです。荷物は不要で⋯⋯と言うか何も持っていけないそうです。それと、それまでの間お食事はお部屋にお持ち致しますので、お部屋から出られないようにと旦那様が仰っておられました」
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