23 / 89
ホットスパー
六月
ーーーーーー
ギータが、集まったメンバーを見回した。
「ウィルソン、見張りがいた場合、この大人数で移動するのは危険だ。目立ち過ぎる」
「わかってる。準備が出来次第、全員で一斉に別方向に出発する。出発して30分程度走って、追っ手がいないことが確認できたら、フォルスの丘に集まってくれ。そこで次の指示を出す。もし誰かにつけられていると分かったら、適当にその辺を流して相手を撹乱してくれ」
「撹乱した後はどうしますか?」ヘンリーが聞いてきた。
「そのまま屋敷に帰り、通常の仕事に戻ってくれ。もし俺達がフォルスの丘に来なかった場合は、バラバラで屋敷に戻るように。ソフィア、リリアみんなに毛布とフードを」
「こんなに沢山の毛布、何に使うんですか?」
「お前たちの抱き枕を作る。俺はアイラ様と一緒に騎乗する。見張りがいた時、誰がアイラ様と騎乗しているか、わからないようにしたいんだ」
それを聞いたエドムントが、
「ひゅー、ウィルソンさんの抱き枕は「黙れ」」ギータに頭を殴られた。
ウィルソンはそれを無視して言った。
「準備ができたら直ぐ出発する。急いでくれ」
「皆さん、毛布はちゃんと持って帰ってくださいね。屋敷中からかき集めたんですから」
「リリアちゃん、俺たちの心配してくれないの?」
「アイラ様とギータさん、どうかお気をつけて」
「多分見張りはいないと思うが。行くぞ」
それぞれが一斉に、別方向に向けて出発した。アイラは足が覗かないように、ウィルソンに抱きついているが、恥ずかしくて顔が上げられないでいる。
ウィルソンは思ったより筋肉質で、長く力強い腕でしっかりと、アイラを抱きしめていた。
少しスピードが落ちてきた。
「もう直ぐフォルスの丘です。アイラ様大丈夫ですか?」
「ええ、大丈夫です。もう足を伸ばしてもいいですか?」
「もう少しお待ち下さい。他の者たちと合流して、追跡者がいない事を確認するまでは」
後をつけられた人はいない様で、フォルスの丘には全員が揃っていた。
「今からホットスパー自警団のサブリーダー、ウォルターに大旦那様の事故について話を聞きに行く。ウォルターは猟師だ。不測の事態が起こらないよう、細心の注意を払って欲しい。何か質問のあるものはいるか?」
「それってやっぱり、あの事故には何かあるってことですか?」
「それを調べに行くんだ。向こうで聞いた事は一切他言無用だ、相手が誰であっても」
ホットスパーの街は、お昼過ぎの暖かい陽射しの中、薄紫色のライラックが甘い香りを漂わせていた。道端には色鮮やかなダイアンサスが咲き綻び、その向こうには亡くなったアイラの母が大好きだったブッシュローズも咲いている。
騎馬での移動は危険なので、馬を引いて移動しているが、アイラだけ未だにフードを被らされている。逆に目立っているようで、気になってしかたがない。
穏やかな田舎道を、馬を連れた複数の男達が歩いてきたので、道を行く人達は怪訝な表情で彼らを眺めていた。
ウォルターの家は、表通りより一つ山際の通りで教会の近くにあった。玄関横にはジニアの鉢植えが、半ば枯れた状態で置かれており、どこか裏ぶれた佇まいだった。
ーーーーーー
ギータが、集まったメンバーを見回した。
「ウィルソン、見張りがいた場合、この大人数で移動するのは危険だ。目立ち過ぎる」
「わかってる。準備が出来次第、全員で一斉に別方向に出発する。出発して30分程度走って、追っ手がいないことが確認できたら、フォルスの丘に集まってくれ。そこで次の指示を出す。もし誰かにつけられていると分かったら、適当にその辺を流して相手を撹乱してくれ」
「撹乱した後はどうしますか?」ヘンリーが聞いてきた。
「そのまま屋敷に帰り、通常の仕事に戻ってくれ。もし俺達がフォルスの丘に来なかった場合は、バラバラで屋敷に戻るように。ソフィア、リリアみんなに毛布とフードを」
「こんなに沢山の毛布、何に使うんですか?」
「お前たちの抱き枕を作る。俺はアイラ様と一緒に騎乗する。見張りがいた時、誰がアイラ様と騎乗しているか、わからないようにしたいんだ」
それを聞いたエドムントが、
「ひゅー、ウィルソンさんの抱き枕は「黙れ」」ギータに頭を殴られた。
ウィルソンはそれを無視して言った。
「準備ができたら直ぐ出発する。急いでくれ」
「皆さん、毛布はちゃんと持って帰ってくださいね。屋敷中からかき集めたんですから」
「リリアちゃん、俺たちの心配してくれないの?」
「アイラ様とギータさん、どうかお気をつけて」
「多分見張りはいないと思うが。行くぞ」
それぞれが一斉に、別方向に向けて出発した。アイラは足が覗かないように、ウィルソンに抱きついているが、恥ずかしくて顔が上げられないでいる。
ウィルソンは思ったより筋肉質で、長く力強い腕でしっかりと、アイラを抱きしめていた。
少しスピードが落ちてきた。
「もう直ぐフォルスの丘です。アイラ様大丈夫ですか?」
「ええ、大丈夫です。もう足を伸ばしてもいいですか?」
「もう少しお待ち下さい。他の者たちと合流して、追跡者がいない事を確認するまでは」
後をつけられた人はいない様で、フォルスの丘には全員が揃っていた。
「今からホットスパー自警団のサブリーダー、ウォルターに大旦那様の事故について話を聞きに行く。ウォルターは猟師だ。不測の事態が起こらないよう、細心の注意を払って欲しい。何か質問のあるものはいるか?」
「それってやっぱり、あの事故には何かあるってことですか?」
「それを調べに行くんだ。向こうで聞いた事は一切他言無用だ、相手が誰であっても」
ホットスパーの街は、お昼過ぎの暖かい陽射しの中、薄紫色のライラックが甘い香りを漂わせていた。道端には色鮮やかなダイアンサスが咲き綻び、その向こうには亡くなったアイラの母が大好きだったブッシュローズも咲いている。
騎馬での移動は危険なので、馬を引いて移動しているが、アイラだけ未だにフードを被らされている。逆に目立っているようで、気になってしかたがない。
穏やかな田舎道を、馬を連れた複数の男達が歩いてきたので、道を行く人達は怪訝な表情で彼らを眺めていた。
ウォルターの家は、表通りより一つ山際の通りで教会の近くにあった。玄関横にはジニアの鉢植えが、半ば枯れた状態で置かれており、どこか裏ぶれた佇まいだった。
あなたにおすすめの小説
タイムリープ〜悪女の烙印を押された私はもう二度と失敗しない
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<もうあなた方の事は信じません>―私が二度目の人生を生きている事は誰にも内緒―
私の名前はアイリス・イリヤ。王太子の婚約者だった。2年越しにようやく迎えた婚約式の発表の日、何故か<私>は大観衆の中にいた。そして婚約者である王太子の側に立っていたのは彼に付きまとっていたクラスメイト。この国の国王陛下は告げた。
「アイリス・イリヤとの婚約を解消し、ここにいるタバサ・オルフェンを王太子の婚約者とする!」
その場で身に覚えの無い罪で悪女として捕らえられた私は島流しに遭い、寂しい晩年を迎えた・・・はずが、守護神の力で何故か婚約式発表の2年前に逆戻り。タイムリープの力ともう一つの力を手に入れた二度目の人生。目の前には私を騙した人達がいる。もう騙されない。同じ失敗は繰り返さないと私は心に誓った。
※カクヨム・小説家になろうにも掲載しています
【完結】傷モノ令嬢は冷徹辺境伯に溺愛される
中山紡希
恋愛
父の再婚後、絶世の美女と名高きアイリーンは意地悪な継母と義妹に虐げられる日々を送っていた。
実は、彼女の目元にはある事件をキッカケに痛々しい傷ができてしまった。
それ以来「傷モノ」として扱われ、屋敷に軟禁されて過ごしてきた。
ある日、ひょんなことから仮面舞踏会に参加することに。
目元の傷を隠して参加するアイリーンだが、義妹のソニアによって仮面が剥がされてしまう。
すると、なぜか冷徹辺境伯と呼ばれているエドガーが跪まずき、アイリーンに「結婚してください」と求婚する。
抜群の容姿の良さで社交界で人気のあるエドガーだが、実はある重要な秘密を抱えていて……?
傷モノになったアイリーンが冷徹辺境伯のエドガーに
たっぷり愛され甘やかされるお話。
このお話は書き終えていますので、最後までお楽しみ頂けます。
修正をしながら順次更新していきます。
また、この作品は全年齢ですが、私の他の作品はRシーンありのものがあります。
もし御覧頂けた際にはご注意ください。
※注意※他サイトにも別名義で投稿しています。
〖完結〗終着駅のパッセージ
苺 迷音
恋愛
過去、使用人に悪戯をされそうになった事がきっかけとなり、分厚い眼鏡とひっつめた髪を編み帽で覆い、自身の容姿を隠すようになった女性・カレン。
その事情を知りながらも夫ローランは、奇妙で地味な姿の妻を厭い目を逸らし続けた。
婚姻してからわずか三日後の朝。彼は赴任先の北の地へと旅立ちその後、カレンの元へと帰省してきたのは、片手で数えるほどだった。
孤独な結婚生活を送る中。
ある冬の日に、ローランの上官であり北の地を治める領主ハルシオン公爵が、カレン夫妻の邸にやってきた。
始まりは、部下の家族を想う上司としての気遣いだった。
他愛もない会話と、節度を守ったやり取り。ほんの僅かな時間を重ねていく。
そのうちに、お互いに灯り始めた小さな心の想い。
だが二人は、それを決して明かさず語ることはなかった。
それから一年ほどたった冬の夜。
カレンから届いた手紙に、たった一度だけハルシオンは返事を書く。
そこには彼の想いが書かれてあった。
月日は流れ、カレンとローランが婚姻して三年目の冬の日。
カレンはひとつの決意と想いを胸に、北へ向かう汽車に乗った。
※微さまぁか、もしくはざまぁになっていないかもしれないです。
※舞台は近世・産業革命初頭を基にした架空世界だと思っていただけましたら有難いです。
稚拙な作品ではありますがご覧くださいましたら凄く嬉しいです。よろしくお願い致します。
【完結】あなたのいない世界、うふふ。
やまぐちこはる
恋愛
17歳のヨヌク子爵家令嬢アニエラは栗毛に栗色の瞳の穏やかな令嬢だった。近衛騎士で伯爵家三男、かつ騎士爵を賜るトーソルド・ロイリーと幼少から婚約しており、成人とともに政略的な結婚をした。
しかしトーソルドには恋人がおり、結婚式のあと、初夜を迎える前に出たまま戻ることもなく、一人ロイリー騎士爵家を切り盛りするはめになる。
とはいえ、アニエラにはさほどの不満はない。結婚前だって殆ど会うこともなかったのだから。
===========
感想は一件づつ個別のお返事ができなくなっておりますが、有り難く拝読しております。
4万文字ほどの作品で、最終話まで予約投稿済です。お楽しみいただけましたら幸いでございます。
とっていただく責任などありません
まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、
団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。
この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!?
ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。
責任を取らなければとセルフイスから、
追いかけられる羽目に。
絶望?いえいえ、余裕です! 10年にも及ぶ婚約を解消されても化物令嬢はモフモフに夢中ですので
ハートリオ
恋愛
伯爵令嬢ステラは6才の時に隣国の公爵令息ディングに見初められて婚約し、10才から婚約者ディングの公爵邸の別邸で暮らしていた。
しかし、ステラを呼び寄せてすぐにディングは婚約を後悔し、ステラを放置する事となる。
異様な姿で異臭を放つ『化物令嬢』となったステラを嫌った為だ。
異国の公爵邸の別邸で一人放置される事となった10才の少女ステラだが。
公爵邸別邸は森の中にあり、その森には白いモフモフがいたので。
『ツン』だけど優しい白クマさんがいたので耐えられた。
更にある事件をきっかけに自分を取り戻した後は、ディングの執事カロンと共に公爵家の仕事をこなすなどして暮らして来た。
だがステラが16才、王立高等学校卒業一ヶ月前にとうとう婚約解消され、ステラは公爵邸を出て行く。
ステラを厄介払い出来たはずの公爵令息ディングはなぜかモヤモヤする。
モヤモヤの理由が分からないまま、ステラが出て行った後の公爵邸では次々と不具合が起こり始めて――
奇跡的に出会い、優しい時を過ごして愛を育んだ一人と一頭(?)の愛の物語です。
異世界、魔法のある世界です。
色々ゆるゆるです。
恋詠花
舘野寧依
恋愛
アイシャは大国トゥルティエールの王妹で可憐な姫君。だが兄王にただならぬ憎しみを向けられて、王宮で非常に肩身の狭い思いをしていた。
そんな折、兄王から小国ハーメイの王に嫁げと命じられたアイシャはおとなしくそれに従う。しかし、そんな彼女を待っていたのは、手つかずのお飾りの王妃という屈辱的な仕打ちだった。それは彼女の出自にも関係していて……?
──これは後の世で吟遊詩人に詠われる二人の王と一人の姫君の恋物語。
母と妹が出来て婚約者が義理の家族になった伯爵令嬢は・・
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
全てを失った伯爵令嬢の再生と逆転劇の物語
母を早くに亡くした19歳の美しく、心優しい伯爵令嬢スカーレットには2歳年上の婚約者がいた。2人は間もなく結婚するはずだったが、ある日突然単身赴任中だった父から再婚の知らせが届いた。やがて屋敷にやって来たのは義理の母と2歳年下の義理の妹。肝心の父は旅の途中で不慮の死を遂げていた。そして始まるスカーレットの受難の日々。持っているものを全て奪われ、ついには婚約者と屋敷まで奪われ、住む場所を失ったスカーレットの行く末は・・・?
※ カクヨム、小説家になろうにも投稿しています