25 / 89
領主館
六月
ーーーーーー
ウォルターを拘束し領主館に戻ってきた。ウォルターは領主館の地下牢に入れ、尋問はギータが担当する事になった。
アイラは執務室へ戻り、銃を片付けてソフィアの入れた紅茶を飲んでいた。
眉間にしわを寄せ、かなりイライラした様子のウィルソンがやってきた。これは危険な兆候だ。
「ウィルソン、何かありましたか?」
「自警団詰所での事です」
アイラはなるべく早く話を切り上げようと早口で話した。
「ああ、上手くいって本当に良かったですわ。ウォルターは直ぐに見つかりましたし。でも男の方が三人もいらっしゃったでしょう? 無事に終わって良かったですわ」
満面の笑みで、誤魔化そうとするアイラ。
「アイラ様、無茶はしないお約束でしたよね」
ウィルソンは拳を握りしめている。
「無茶はしていませんわ。みんな無事だったでしょう?」
アイラはここを何とか切り抜けたいと、肩をすくめ惚けたふりをしたが、
「あれは無茶です。突然銃を向けたら、相手が反射的に撃ち返すことだってあるのですよ。無事だったから良かったものの、心臓が飛び出るかと思いました」
「ごめんなさい。あの時話した人があそこにいたから、絶対に逃しては駄目だと思って」
「二度とあんなことはしないで頂けますか? お約束できないなら、この先ずっとお部屋からお出しできません」
「・・しないとは約束出来ないけど、これからはもう少し慎重になります。それじゃ駄目かしら」
「もっともっと慎重になってください。宜しいですね」
「はい」
「自信過剰はとても危険なことです。何年も銃を持っておられないのですから、勘が鈍っているかもしれません」
「・・・・そうね。ええ、次から気をつけるわ」
アイラは昔からウィルソンには嘘や隠し事ができた試しがない。
「アイラ様?」
「ん? 何かしら」
「隠し事されてますね。お話をお聞かせ願えますか? 話して頂けるまでいくらでも、明日の朝まででもお待ちしますよ」
こうなった時のウィルソンは、とにかくしつこい。アイラは諦めてため息を一つついた。
「あのね、えっと・・お父様から言われたのだけど、お前には銃の才能は無いって」
「・・はぁ?」
「結構練習したのですけど、全然上手くならなくて」
「腕前はお墨付きだというのは嘘だったということですか?」
ウィルソンの青かった顔色はこれ以上ないほど真っ白になった。
「お父様から銃の腕はからっきしでも、ハッタリは役に立つって言って頂いたの。だからあれは、嘘じゃなくてハッタリ。上手くいったでしょう」
「ぷっ」
ソフィアが吹き出した。その横に立っているリリアは、笑いを堪えて真っ赤な顔になりプルプルと震えている。
「ソフィア、笑わないで助けてちょうだい。ウィルソン顔が怖いですわ。ソフィアお願い助けて」
「ぶっ、あっはっは。ウィルソン、やられたわね。アイラ様ものすごいやんちゃで、よく大旦那様からお尻をぶたれていたもの」
「やっていいなら、今でもぶってやりたい」
ウィルソンは拳を握り締め、ふるふると震えながら奥歯を噛み締めて話している。
「だっ駄目ですよ。淑女のそういう所をぶつなんて、別の場所も駄目ですからね。ウィルソンにはお休みをあげますから、ソフィアとゆっくりしてきたらどうかしら? お天気も良いし、ピクニックとか」
「うっ、ごめんなさいアイラ様、もう駄目。あーっはっは、おっおなか痛い。リリア後はよろしく」
「えっえー、無理無理無理絶対無理ですぅ」
ウィルソンの真っ白かった顔が真っ赤になり、本当にお尻を打たれるのかと不安になったアイラは、お尻を両手で隠しながら、後ろに一歩下がった。
ウィルソンが近づいてきてアイラの両腕を掴み・・・・キスをしてきた。
永遠かと思うほど長いキスが終わった時には、ソフィアもリリアもいなくなっていた。
(私のファーストキス)
「俺が好きなのはソフィアじゃないです。ソフィアはただの幼なじみです」
「そうなの? ごめんなさいね。勘違いしてましたわ」
「多分アイラ様は分かってない。俺はアイラ様の側で貴方を支えたい」
「いつも支えてくれてありがとう。子供の頃もこの二年間も、ウィルソンがいてくれたから迷わずやってこれたのよ」
(やっぱりアイラ様は分かってない)
ーーーーーー
ウォルターを拘束し領主館に戻ってきた。ウォルターは領主館の地下牢に入れ、尋問はギータが担当する事になった。
アイラは執務室へ戻り、銃を片付けてソフィアの入れた紅茶を飲んでいた。
眉間にしわを寄せ、かなりイライラした様子のウィルソンがやってきた。これは危険な兆候だ。
「ウィルソン、何かありましたか?」
「自警団詰所での事です」
アイラはなるべく早く話を切り上げようと早口で話した。
「ああ、上手くいって本当に良かったですわ。ウォルターは直ぐに見つかりましたし。でも男の方が三人もいらっしゃったでしょう? 無事に終わって良かったですわ」
満面の笑みで、誤魔化そうとするアイラ。
「アイラ様、無茶はしないお約束でしたよね」
ウィルソンは拳を握りしめている。
「無茶はしていませんわ。みんな無事だったでしょう?」
アイラはここを何とか切り抜けたいと、肩をすくめ惚けたふりをしたが、
「あれは無茶です。突然銃を向けたら、相手が反射的に撃ち返すことだってあるのですよ。無事だったから良かったものの、心臓が飛び出るかと思いました」
「ごめんなさい。あの時話した人があそこにいたから、絶対に逃しては駄目だと思って」
「二度とあんなことはしないで頂けますか? お約束できないなら、この先ずっとお部屋からお出しできません」
「・・しないとは約束出来ないけど、これからはもう少し慎重になります。それじゃ駄目かしら」
「もっともっと慎重になってください。宜しいですね」
「はい」
「自信過剰はとても危険なことです。何年も銃を持っておられないのですから、勘が鈍っているかもしれません」
「・・・・そうね。ええ、次から気をつけるわ」
アイラは昔からウィルソンには嘘や隠し事ができた試しがない。
「アイラ様?」
「ん? 何かしら」
「隠し事されてますね。お話をお聞かせ願えますか? 話して頂けるまでいくらでも、明日の朝まででもお待ちしますよ」
こうなった時のウィルソンは、とにかくしつこい。アイラは諦めてため息を一つついた。
「あのね、えっと・・お父様から言われたのだけど、お前には銃の才能は無いって」
「・・はぁ?」
「結構練習したのですけど、全然上手くならなくて」
「腕前はお墨付きだというのは嘘だったということですか?」
ウィルソンの青かった顔色はこれ以上ないほど真っ白になった。
「お父様から銃の腕はからっきしでも、ハッタリは役に立つって言って頂いたの。だからあれは、嘘じゃなくてハッタリ。上手くいったでしょう」
「ぷっ」
ソフィアが吹き出した。その横に立っているリリアは、笑いを堪えて真っ赤な顔になりプルプルと震えている。
「ソフィア、笑わないで助けてちょうだい。ウィルソン顔が怖いですわ。ソフィアお願い助けて」
「ぶっ、あっはっは。ウィルソン、やられたわね。アイラ様ものすごいやんちゃで、よく大旦那様からお尻をぶたれていたもの」
「やっていいなら、今でもぶってやりたい」
ウィルソンは拳を握り締め、ふるふると震えながら奥歯を噛み締めて話している。
「だっ駄目ですよ。淑女のそういう所をぶつなんて、別の場所も駄目ですからね。ウィルソンにはお休みをあげますから、ソフィアとゆっくりしてきたらどうかしら? お天気も良いし、ピクニックとか」
「うっ、ごめんなさいアイラ様、もう駄目。あーっはっは、おっおなか痛い。リリア後はよろしく」
「えっえー、無理無理無理絶対無理ですぅ」
ウィルソンの真っ白かった顔が真っ赤になり、本当にお尻を打たれるのかと不安になったアイラは、お尻を両手で隠しながら、後ろに一歩下がった。
ウィルソンが近づいてきてアイラの両腕を掴み・・・・キスをしてきた。
永遠かと思うほど長いキスが終わった時には、ソフィアもリリアもいなくなっていた。
(私のファーストキス)
「俺が好きなのはソフィアじゃないです。ソフィアはただの幼なじみです」
「そうなの? ごめんなさいね。勘違いしてましたわ」
「多分アイラ様は分かってない。俺はアイラ様の側で貴方を支えたい」
「いつも支えてくれてありがとう。子供の頃もこの二年間も、ウィルソンがいてくれたから迷わずやってこれたのよ」
(やっぱりアイラ様は分かってない)
あなたにおすすめの小説
タイムリープ〜悪女の烙印を押された私はもう二度と失敗しない
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<もうあなた方の事は信じません>―私が二度目の人生を生きている事は誰にも内緒―
私の名前はアイリス・イリヤ。王太子の婚約者だった。2年越しにようやく迎えた婚約式の発表の日、何故か<私>は大観衆の中にいた。そして婚約者である王太子の側に立っていたのは彼に付きまとっていたクラスメイト。この国の国王陛下は告げた。
「アイリス・イリヤとの婚約を解消し、ここにいるタバサ・オルフェンを王太子の婚約者とする!」
その場で身に覚えの無い罪で悪女として捕らえられた私は島流しに遭い、寂しい晩年を迎えた・・・はずが、守護神の力で何故か婚約式発表の2年前に逆戻り。タイムリープの力ともう一つの力を手に入れた二度目の人生。目の前には私を騙した人達がいる。もう騙されない。同じ失敗は繰り返さないと私は心に誓った。
※カクヨム・小説家になろうにも掲載しています
【完結】傷モノ令嬢は冷徹辺境伯に溺愛される
中山紡希
恋愛
父の再婚後、絶世の美女と名高きアイリーンは意地悪な継母と義妹に虐げられる日々を送っていた。
実は、彼女の目元にはある事件をキッカケに痛々しい傷ができてしまった。
それ以来「傷モノ」として扱われ、屋敷に軟禁されて過ごしてきた。
ある日、ひょんなことから仮面舞踏会に参加することに。
目元の傷を隠して参加するアイリーンだが、義妹のソニアによって仮面が剥がされてしまう。
すると、なぜか冷徹辺境伯と呼ばれているエドガーが跪まずき、アイリーンに「結婚してください」と求婚する。
抜群の容姿の良さで社交界で人気のあるエドガーだが、実はある重要な秘密を抱えていて……?
傷モノになったアイリーンが冷徹辺境伯のエドガーに
たっぷり愛され甘やかされるお話。
このお話は書き終えていますので、最後までお楽しみ頂けます。
修正をしながら順次更新していきます。
また、この作品は全年齢ですが、私の他の作品はRシーンありのものがあります。
もし御覧頂けた際にはご注意ください。
※注意※他サイトにも別名義で投稿しています。
〖完結〗終着駅のパッセージ
苺 迷音
恋愛
過去、使用人に悪戯をされそうになった事がきっかけとなり、分厚い眼鏡とひっつめた髪を編み帽で覆い、自身の容姿を隠すようになった女性・カレン。
その事情を知りながらも夫ローランは、奇妙で地味な姿の妻を厭い目を逸らし続けた。
婚姻してからわずか三日後の朝。彼は赴任先の北の地へと旅立ちその後、カレンの元へと帰省してきたのは、片手で数えるほどだった。
孤独な結婚生活を送る中。
ある冬の日に、ローランの上官であり北の地を治める領主ハルシオン公爵が、カレン夫妻の邸にやってきた。
始まりは、部下の家族を想う上司としての気遣いだった。
他愛もない会話と、節度を守ったやり取り。ほんの僅かな時間を重ねていく。
そのうちに、お互いに灯り始めた小さな心の想い。
だが二人は、それを決して明かさず語ることはなかった。
それから一年ほどたった冬の夜。
カレンから届いた手紙に、たった一度だけハルシオンは返事を書く。
そこには彼の想いが書かれてあった。
月日は流れ、カレンとローランが婚姻して三年目の冬の日。
カレンはひとつの決意と想いを胸に、北へ向かう汽車に乗った。
※微さまぁか、もしくはざまぁになっていないかもしれないです。
※舞台は近世・産業革命初頭を基にした架空世界だと思っていただけましたら有難いです。
稚拙な作品ではありますがご覧くださいましたら凄く嬉しいです。よろしくお願い致します。
【完結】あなたのいない世界、うふふ。
やまぐちこはる
恋愛
17歳のヨヌク子爵家令嬢アニエラは栗毛に栗色の瞳の穏やかな令嬢だった。近衛騎士で伯爵家三男、かつ騎士爵を賜るトーソルド・ロイリーと幼少から婚約しており、成人とともに政略的な結婚をした。
しかしトーソルドには恋人がおり、結婚式のあと、初夜を迎える前に出たまま戻ることもなく、一人ロイリー騎士爵家を切り盛りするはめになる。
とはいえ、アニエラにはさほどの不満はない。結婚前だって殆ど会うこともなかったのだから。
===========
感想は一件づつ個別のお返事ができなくなっておりますが、有り難く拝読しております。
4万文字ほどの作品で、最終話まで予約投稿済です。お楽しみいただけましたら幸いでございます。
とっていただく責任などありません
まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、
団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。
この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!?
ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。
責任を取らなければとセルフイスから、
追いかけられる羽目に。
絶望?いえいえ、余裕です! 10年にも及ぶ婚約を解消されても化物令嬢はモフモフに夢中ですので
ハートリオ
恋愛
伯爵令嬢ステラは6才の時に隣国の公爵令息ディングに見初められて婚約し、10才から婚約者ディングの公爵邸の別邸で暮らしていた。
しかし、ステラを呼び寄せてすぐにディングは婚約を後悔し、ステラを放置する事となる。
異様な姿で異臭を放つ『化物令嬢』となったステラを嫌った為だ。
異国の公爵邸の別邸で一人放置される事となった10才の少女ステラだが。
公爵邸別邸は森の中にあり、その森には白いモフモフがいたので。
『ツン』だけど優しい白クマさんがいたので耐えられた。
更にある事件をきっかけに自分を取り戻した後は、ディングの執事カロンと共に公爵家の仕事をこなすなどして暮らして来た。
だがステラが16才、王立高等学校卒業一ヶ月前にとうとう婚約解消され、ステラは公爵邸を出て行く。
ステラを厄介払い出来たはずの公爵令息ディングはなぜかモヤモヤする。
モヤモヤの理由が分からないまま、ステラが出て行った後の公爵邸では次々と不具合が起こり始めて――
奇跡的に出会い、優しい時を過ごして愛を育んだ一人と一頭(?)の愛の物語です。
異世界、魔法のある世界です。
色々ゆるゆるです。
恋詠花
舘野寧依
恋愛
アイシャは大国トゥルティエールの王妹で可憐な姫君。だが兄王にただならぬ憎しみを向けられて、王宮で非常に肩身の狭い思いをしていた。
そんな折、兄王から小国ハーメイの王に嫁げと命じられたアイシャはおとなしくそれに従う。しかし、そんな彼女を待っていたのは、手つかずのお飾りの王妃という屈辱的な仕打ちだった。それは彼女の出自にも関係していて……?
──これは後の世で吟遊詩人に詠われる二人の王と一人の姫君の恋物語。
母と妹が出来て婚約者が義理の家族になった伯爵令嬢は・・
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
全てを失った伯爵令嬢の再生と逆転劇の物語
母を早くに亡くした19歳の美しく、心優しい伯爵令嬢スカーレットには2歳年上の婚約者がいた。2人は間もなく結婚するはずだったが、ある日突然単身赴任中だった父から再婚の知らせが届いた。やがて屋敷にやって来たのは義理の母と2歳年下の義理の妹。肝心の父は旅の途中で不慮の死を遂げていた。そして始まるスカーレットの受難の日々。持っているものを全て奪われ、ついには婚約者と屋敷まで奪われ、住む場所を失ったスカーレットの行く末は・・・?
※ カクヨム、小説家になろうにも投稿しています