【完結】真実の行方 悠々自適なマイライフを掴むまで

との

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宿屋

九月

ーーーーーー

「ここは旦那様の定宿でした。それに旦那様とリューベックの男が、この宿で春頃一度会っていました」
「こんな所で?」

 まさかこんな近場でデイビッドがあの男と会っていたとは。捜索の範囲を王都に限定していたのは失敗だったが、デイビッドの定宿に遭遇したのは運が良かった。

「宿の亭主の話からすると、リューベックの男はここで、旦那様を待ち伏せしていたようです」
「どう言う事?」
「リューベックの男、指無しを見つけた時旦那様はひどく慌てていたそうです。指無しは終始ご機嫌だったようで、何度も笑い声が聞こえてきたとか」

「どんな話をしていたのかしら?」
「残念ながらそれは聞こえなかったようですが、指無しの方が話の主導権を持っているみたいに見えたそうです」

「デイビッドがその男に仕事を依頼したはずなのに?」

「そうなんですが、指無しが色々話して旦那様がそれに答える、と言う感じだったそうです。それに、旦那様は終始指無しの顔色を伺っているように見えたとか」

「と言う事は、最初デイビッドがその男に仕事を依頼した。でもその男はデイビッドの手に負えなくなったって事かしら?」
「可能性はあります」

「あの男がうちに侵入した後、おかしいと思ったの。厳重な警備の屋敷に態々忍び込んで、一体何がしたかったんだろうって。私が地下に行ったのは偶々だったし、ウォルターはもういないでしょう。デイビッドにとって何の意味があるのかしらって。デイビッドの思惑とは別に、何かあるって考えたら納得だわ」

「私とギータも同じ意見です。爵位や財産狙いの旦那様とは、別の思惑を持った人物がいるのではないかと」
「指無しとも違う人と言う事?」
「旦那様が執務室から盗んだメモの事を考えると、他にも誰かいるのではないかと思います」
「確かに。染織工房を狙っているなら、貴族か力のある商人が関係しているはずね。デイビッドの周りで、仲良くしてる商人は居なかったわよね」
「はい、金貸しと賭場の元締めくらいですね」
「その二人のどちらかが、誰かに繋がってるとか?」
「その可能性も否めませんが何とも。範囲が広すぎてまだ何も出てきていないので」
「そうよね、デイビッドがメモを渡した相手が分からないと、範囲が広すぎるわ」

「ただ、かなりの資産を持ってる人が関わってる事は間違いないわね。現状では染織工房を手に入れても、直ぐに収益が出るわけじゃないもの」
「アイラ様、やはり王都へ行かれるのは」
「いいえ、王都でデイビッドを捕まえましょう。彼をつつけば何か分かるかも。その方法は少し考えてあるの」
「また何か企んでますね。この間のような危険な事は絶対にやめてください」

 ウィルソンは、ホットスパーでのアイラの行動を思い出し慌てている。ソフィアとヘンリーも真っ青な顔をしてアイラを止めた。

「大丈夫よ、デイビッドは私に何も出来ない。だって私に何かあったら、彼は全てを失うんだもの」
「しかし」

「それから、なるべくたくさんの夜会やお茶会に出席出来ないかしら。染織工房の事を聞いてくる人がいれば、犯人を特定しやすくなるでしょう? 工房の事はまだそんなに知られてないはずだから」
「・・」
「ウィルソンお願い。私は貴族の知り合いがほとんどいないから、どうすればいいかわからないの。あなたなら夜会の招待状とか、手に入れる方法を知っているでしょう?」
「夜会やお茶会となると、私やヘンリーはお供できません。危険です」
「大丈夫よ、周りにはたくさん人がいるのだし、絶対に深追いはしないから」

 いくら説得しても、アイラは頑として受け付けない。両親の死の真相に中々近づけないもどかしさから、なんとかして解決の糸口を掴もうとしている気持ちはよく分かるのだが・・。
 夜を徹した話し合いの末、ウィルソン達は渋々ながらアイラの提案を受け入れた。

「ジファール侯爵に連絡してみます」
「ジファール侯爵?」
「はい、以前あの方の元で働いた事があります。あの方なら有名貴族の主催する夜会の、殆どの招待状をお持ちだと思います」
感想 10

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