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情報
十一月
ーーーーーー
途中一泊した宿屋は、美しく紅葉したメープルの林立するクラフ山の麓にあった。近くを流れるローレンヌ川は、流れも緩やかで川幅も広く、彼方此方に小さな手漕ぎボートが見受けられた。
「とても素敵な景色だわ。時間があれば、私達もボートに乗ってみたかったわね」
「帰り道であれば、ゆっくりと紅葉を楽しめると思いますよ」
「そうね、もし時間があったら、みんなで楽しみましょう」
もしデイビッドの情報が得られなかったら、ここで少し余暇を楽しんでも良いかも知れない。今王都にいても、何も思いつかなさそうだ。気分転換を兼ねてのんびりすれば、何か良い方法が見つかるかもしれない。
次の日の朝、ウィルソンがやってきた。一晩中馬を走らせていたようで、少し顔色が悪い。
「ウィルソン、大丈夫? 疲れてるのでしょう?」
「大丈夫です。この後の移動の間に、一眠りするつもりなので」
「出発を少し遅らせましょう。今日明日中に着けば良いのだから、急ぐ事はないわ」
「いえ、出来れば早く侯爵邸に着きたいので、出発しましょう」
ウィルソンの様子がおかしい。疲れているのだろうが、それ以外にも何かを隠している気がする。
「・・ウィルソン、私と一緒に乗ってちょうだい。少し話を聞かせて」
「アイラ様と一緒では居眠り出来ないので、後ろに乗った方が」
「クッションと毛布があるから、馬車の中で寝てちょうだい。移動中に馬車から転がり落ちたら大変よ」
「ウィルソンはアイラ様に、寝顔を見られるのが恥ずかしいんですよ」
「そうなの? だったらずっと目をつぶってる。目隠ししてもいいし」
「ウィルソン、諦めた方がいいわ。アイラ様も頑固だから」
ウィルソンは渋々馬車に乗り込んできて、ソフィアの隣に腰掛けた。
「ソフィア、こっちにきてちょうだい。ウィルソン1人なら横になれないかしら」
「流石に横にはなれないので、このままでお願いします」
「それで、何があったの?」
「一昨日アイラ様宛に、送り主の書いていない手紙が届きました」
「なんて書いてあったの?」
「・・話がしたいと」
「まさか、一人で会いに行ったの?」
「落ち着いてください。相手は女性だって分かっていたので」
「誰なのか書いてあったってこと?」
「いえ、字と文章が明らかに女性のものでした」
「このタイミングって言うと、シンディね」
「はい、シンディ達が侯爵家から追い出されたのはご存知ですよね」
「ええ、夜会の次の日に離婚して、ブリジット共々追い出したって侯爵が仰ってたわ」
「その時、持っていた宝石類など全て取り上げられたそうです」
「まぁ、それじゃあ生活に困ってしまうでしょう?」
「はい、それでシンディは情報を売りたいと言ってきました」
(シンディは私の事を嫌っていたはず、彼女の話は信用出来るのかしら)
「アイラ様のお気持ちは分かります。私も同じでしたから」
ウィルソンが上着の内ポケットに手を入れて、何かを取り出した。
「これは・・あのメモ?」
「はい、アイラ様の字ですし、伯爵家の透かし模様も入っています。シンディはこれを、執務机の引き出しから盗んだそうです」
「デイビッドは、侯爵の指示でこれを盗んだのかしら?」
「と言いますと?」
「この間からずっと考えていたのだけど、デイビッドは侯爵の事が苦手なんじゃないかって。二人が一緒にいるところはあまり見たことがないのだけど」
アイラはメモを見つめながら、言葉を繋いだ。
「このメモを侯爵が持っている。それを盗むように侯爵がデイビッドに指示をしたのなら、共犯者になるでしょう? だったらデイビッドは侯爵に対して、もう少し違う態度だったんじゃないかしら」
「このメモを侯爵に届けたのは、恐らく指無しだと思います」
「デイビッドから指無しに渡されて、侯爵に?」
「侯爵家の温室で、侯爵が男からメモを渡されるのを見たそうです。その時侯爵が“オレルアンか” と言ったのが聞こえたと言っていました。その後の侯爵家の夜会で、アイラ様と侯爵が染織工房の話をしていた時、オレルアンと言ったのを聞いて、そのメモが染織工房に関係していると分かったそうです」
「それでこのメモを盗んだの?」
「ここ最近は侯爵と上手くいってなかったので、もしもの時の保険にしようと考えたそうです」
「ウィルソン、シンディは何故侯爵ではなくアイラ様に言ってきたの?」
「侯爵よりもアイラ様の方が高く買ってくれそうだからと。多分腹いせもあるんじゃないでしょうか」
「何故その男が指無しだと?」
「猫背の小男で茶髪。気持ちの悪い笑い方」
「間違いないわね」
デイビッドと指無しは宿屋で会っていた。そして指無しは侯爵にメモを渡した。
漸く一つ証拠が掴めた。
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途中一泊した宿屋は、美しく紅葉したメープルの林立するクラフ山の麓にあった。近くを流れるローレンヌ川は、流れも緩やかで川幅も広く、彼方此方に小さな手漕ぎボートが見受けられた。
「とても素敵な景色だわ。時間があれば、私達もボートに乗ってみたかったわね」
「帰り道であれば、ゆっくりと紅葉を楽しめると思いますよ」
「そうね、もし時間があったら、みんなで楽しみましょう」
もしデイビッドの情報が得られなかったら、ここで少し余暇を楽しんでも良いかも知れない。今王都にいても、何も思いつかなさそうだ。気分転換を兼ねてのんびりすれば、何か良い方法が見つかるかもしれない。
次の日の朝、ウィルソンがやってきた。一晩中馬を走らせていたようで、少し顔色が悪い。
「ウィルソン、大丈夫? 疲れてるのでしょう?」
「大丈夫です。この後の移動の間に、一眠りするつもりなので」
「出発を少し遅らせましょう。今日明日中に着けば良いのだから、急ぐ事はないわ」
「いえ、出来れば早く侯爵邸に着きたいので、出発しましょう」
ウィルソンの様子がおかしい。疲れているのだろうが、それ以外にも何かを隠している気がする。
「・・ウィルソン、私と一緒に乗ってちょうだい。少し話を聞かせて」
「アイラ様と一緒では居眠り出来ないので、後ろに乗った方が」
「クッションと毛布があるから、馬車の中で寝てちょうだい。移動中に馬車から転がり落ちたら大変よ」
「ウィルソンはアイラ様に、寝顔を見られるのが恥ずかしいんですよ」
「そうなの? だったらずっと目をつぶってる。目隠ししてもいいし」
「ウィルソン、諦めた方がいいわ。アイラ様も頑固だから」
ウィルソンは渋々馬車に乗り込んできて、ソフィアの隣に腰掛けた。
「ソフィア、こっちにきてちょうだい。ウィルソン1人なら横になれないかしら」
「流石に横にはなれないので、このままでお願いします」
「それで、何があったの?」
「一昨日アイラ様宛に、送り主の書いていない手紙が届きました」
「なんて書いてあったの?」
「・・話がしたいと」
「まさか、一人で会いに行ったの?」
「落ち着いてください。相手は女性だって分かっていたので」
「誰なのか書いてあったってこと?」
「いえ、字と文章が明らかに女性のものでした」
「このタイミングって言うと、シンディね」
「はい、シンディ達が侯爵家から追い出されたのはご存知ですよね」
「ええ、夜会の次の日に離婚して、ブリジット共々追い出したって侯爵が仰ってたわ」
「その時、持っていた宝石類など全て取り上げられたそうです」
「まぁ、それじゃあ生活に困ってしまうでしょう?」
「はい、それでシンディは情報を売りたいと言ってきました」
(シンディは私の事を嫌っていたはず、彼女の話は信用出来るのかしら)
「アイラ様のお気持ちは分かります。私も同じでしたから」
ウィルソンが上着の内ポケットに手を入れて、何かを取り出した。
「これは・・あのメモ?」
「はい、アイラ様の字ですし、伯爵家の透かし模様も入っています。シンディはこれを、執務机の引き出しから盗んだそうです」
「デイビッドは、侯爵の指示でこれを盗んだのかしら?」
「と言いますと?」
「この間からずっと考えていたのだけど、デイビッドは侯爵の事が苦手なんじゃないかって。二人が一緒にいるところはあまり見たことがないのだけど」
アイラはメモを見つめながら、言葉を繋いだ。
「このメモを侯爵が持っている。それを盗むように侯爵がデイビッドに指示をしたのなら、共犯者になるでしょう? だったらデイビッドは侯爵に対して、もう少し違う態度だったんじゃないかしら」
「このメモを侯爵に届けたのは、恐らく指無しだと思います」
「デイビッドから指無しに渡されて、侯爵に?」
「侯爵家の温室で、侯爵が男からメモを渡されるのを見たそうです。その時侯爵が“オレルアンか” と言ったのが聞こえたと言っていました。その後の侯爵家の夜会で、アイラ様と侯爵が染織工房の話をしていた時、オレルアンと言ったのを聞いて、そのメモが染織工房に関係していると分かったそうです」
「それでこのメモを盗んだの?」
「ここ最近は侯爵と上手くいってなかったので、もしもの時の保険にしようと考えたそうです」
「ウィルソン、シンディは何故侯爵ではなくアイラ様に言ってきたの?」
「侯爵よりもアイラ様の方が高く買ってくれそうだからと。多分腹いせもあるんじゃないでしょうか」
「何故その男が指無しだと?」
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「間違いないわね」
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漸く一つ証拠が掴めた。
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